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65歳、マコンの恐るべき子供

Saturday 18 January 2020 • 5 分で読めます
Maine and Jean-Marie Guffens, Mâconnais wine producers

Long-lived treasures from Guffens' cellarで紹介したワインに関連する夫婦に関するこの記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

「俺の問題点は、酔った時には思ったままのことを口にすること。そしてさらに酔うと思っていないことまで口にしてしまうことだね。」そんな危険を示唆しつつ、いつもの上ずった笑いと共に、ベルギー人のジャン・マリー・ギュファンは1980年代から作っている素晴らしいブルゴーニュ白の膨大なテイスティングを始めた。彼の罵り言葉はテイスティングが始まってわずか9分で始まった。彼は自身が粗野な人物だとして有名なことを明らかに楽しんでおり、錚々たるワインの大御所の目の前で居眠りをすることでも知られている。

高級ワイン業者、ファー・ヴィントナーズは彼のワインを1990年代初頭から輸入しており、彼の65歳の誕生日を祝してギュファンのテイスティングを提案した。彼は何かやろうと決めたら(多くの場合はその逆にやらないと決めるのだが)徹底的にやるので、11月の終わりには我々ワイン・ライターの一団とワイン業界人たちは54種類もの彼のワインを知るまたとない機会をワンズワースのテームズ川沿いにあるファーの本部で得ることとなった。

ギュファンはそのキャリアをマコンで始めた。崇め奉られるコート・ドールの南に位置し、貧乏人のブルゴーニュ白の生産地として知られる地だ。彼は後に北上し「黄金の丘」でのワイン作りも行い、ヴェルジェというネゴシアン名で相当量のシャブリを作ったのだが、彼の人生の目的はマコンの白が白ワインで有名なムルソーやピュリニー・モンラッシェのような村で作られるものよりも良いものになり得ると証明することだと言っても過言ではないだろう。今回のこの上なく繊細で長命なワインのテイスティングでは彼のその仮説がおおむね証明されたようだ。

彼は嬉しそうに、有名なアメリカの評論家、ロバート・パーカーが1983年に「一人のクレージーなベルギー人がピュリニーに匹敵するほど素晴らしいワインを作った」と書いたことに触れた。パーカーが彼を訪問して2週間後、ギュファンはパーカーにそんな言葉は最悪だと伝えたそうだ。「俺は別に誰にもなりたいわけではない。俺のやり方でやっているだけだ。芸術を比較なんてするな」と。

この上なく寛大な彼の妻の旧姓にちなんだドメーヌ・ギュファン・エナンのファースト・ヴィンテージ、1980はひどく成熟が遅く未熟だった。セカンド・ヴィンテージの1981寒すぎた。最初の「まともな」ヴィンテージは1982だったが決して完璧な出来ではなかった。彼の言葉によると「やりすぎた」そうだ。それでも、そんな初期のワインですらパーカーに十分な印象を与えただけでなく、尊敬に値するオランダのインポータ、オクハイセン(Okhuysen)の目にも止まり、その代表者もまたロンドンでのテイスティングに参加していた。だがこの中規模のドメーヌはたった2500ケースしか生産できなかったため、ギュファンはもっと大きなキャンヴァスが欲しくなったようだ。

ネゴシアン、ヴェルジェは1990年に創設され、ブルゴーニュでブドウを買い入れることが敬意をもって捉えられるようになるはるか前のことだった。最初のころは同じくベルギー人のジャン・リケールの助けもあり、また近隣のワイン生産者オリヴィエ・メルランがギュファンのテイスティング能力に惜しみない賛辞を送ったこともあり、ギュファンはヴェルジェのブランドですぐに誰が見ても上質な(凡庸なアペラシオンとは信じがたい)マコンのワインを作るようになった。シャブリを買い入れるようになる前のことだ。コート・ドールのワインを作った最後の年である2009年は特に、ギュファンはシャブリのブドウを「誰も欲しがっていなかったから」と相当量買いこんでいる。

「マコン・ピエールクロ、トリ・ド・シャヴィーニュが一番好きだね」と話した。「それが一番最初にワインを作った畑だけど、その畑のある斜面があまりに急すぎて誰も買わなかったんだ。俺は他の人がやりたがらないことをするのが好きだから。ゴミ箱を漁るみたいなもんだよ」彼は妻に微笑みかけてからこう付け加えた。「俺は素晴らしいワインを有名な、例えばムルソーなんかでは作れない。だってそのスタイルを変えられないし、自分のやり方でやれないからね。」

彼のやり方は時間がかかる。収穫はできるだけ遅くする。「急ぐのは本当に完璧なヴィンテージの時だけ。よくないヴィンテージの場合はとにかくゆっくり、ゆっくり。俺が興味があるのはワインの活力だけだから。ワインにはなにか意味がないとダメ。あんたに語りかけるものがね。あんたは今まで、よくできているけどつまらないワインにどれだけ出会った?そのヴィンテージで何がいいのか、何を避けるべきなのか自分で考えなくちゃ。そのヴィンテージを受け入れ、それに逆らったらダメなんだよ。誰かが作ってほしいものなんて作ってちゃだめ。」

彼はまた自分の顧客にも全く幻想を抱いていない。「ヴェルジェみたいなビジネスをやるためには馬鹿なやつも必要なんだ。知ることよりも飲むことが好きだと言うようなやつらだよ。だってビジネスとしては品質の低いワインを簡単に売る必要もあるだろ?」

さらに彼はつづけた。「俺はいい暮らしをしてるけどね、すごい金持ちには売りたくないんだ。金を稼ぎたきゃ株でもなんでもやればいいんだよ。それよりもほんとうにワインに興味を持っている、決してめちゃくちゃ金持ちじゃない奴の方が面白い。そいつらにはこう言うね「目を覚ませ。ブルゴーニュには超高いくそみたいなワインがあるんだ。それでいいのか。俺はムルソーって言い続けているけどはっきり言ってムルソーのことなんて知らないんだ。だってそんなものもう買いもしないし飲みもしないからな」ってね」。

通常のワイン流通ルートでギュファンを見かけない読者が多いのも無理もない。彼が一般的な常識にはとらわれていないからだ。彼は誰のワインを尊敬するかと尋ねられると大抵想像もしない答えを返す。例えば相当マイナーなアペラシオンであるコート・デュ・ヴィヴァレの地味な生産者、ドメーヌ・ガルトリ(Domaine Gallety)などだ。彼はまた、ようやく実現したマコンでのプルミエ・クリュの導入がもたらす効果について尋ねられると「なんにも変わりやしないさ」と答えた。そして肩をすくめながらマコンとコート・ドールの間にあるアペラシオンを例に挙げて付け加えた。「じゃあモンタニのプルミエ・クリュなんて誰が知ってるんだ?」と。

だが彼のワインの好みの一部はもう少し予測可能かもしれない。「ソーヴィニョン・ブランは大っ嫌いだ。猫のおしっこが嫌いだからね。俺は(ロワールで最も高価なソーヴィニョンを作る生産者である故)ディディエ・ダグノーとはすごく仲よかったけど、一度あいつに言ったことがあるよ、お前のワインは薄すぎて向こうが透けて見えるって」。

彼はまた、フランスの生産者の中でもいち早くスクリューキャップを導入した一人で、その導入は2003年と早い。彼は「俺はスクリューキャップをたくさん使うよ。スクリューキャップを嫌う生産者は、ワインに問題があった場合に自分たちに非があると認めざるを得ない(コルクのせいにできない)からだろ」。

5フライトのうち4つ目のフライトは(ランチの前に3フライト、ランチ後に2フライトだった)標高が最も高く、プイィ・フュメのアペラシオンの中でも最高の区画のものだった。「このテイスティングは俺もやったことないんだ」ギュファンは嬉しそうにそう述べた。「石灰質のラ・ロシュはヴェルジッソンのモンラッシェって呼んでるんだよ」。そして5つ目のフライトはコート・ドールのグラン・クリュの白、例えば1994のモンラッシェやシュヴァリエ・モンラッシェなども含むもので、ヴェルジェでコート・ドールのワインをまだ作っていた頃のものだ。それらはこの上なく素晴らしいものだったが、ギュファンは彼の妻に向かって「素晴らしい。俺の作るマコンのワインにまあまあ匹敵するぐらいいいワインだ」と言った。

マコンのスター
ギュファンはキュヴェの名称を少しずつ変え続けている点には注意してほしい。

ドメーヌ・ギュファン・エナン
Mâcon-Pierreclos, Chavigne 1997, 2000, 2002, 2004, 2006, 2010, 2011

Pouilly-Fuissé, Clos des Petits Croux 1997, 2002, 2005

Pouilly-Fuissé, La Roche 1997, 2004, 2008

Pouilly-Fuissé, Premier Jus 1998, 2003

Pouilly-Fuissé, Les Hauts des Vignes 2000, 2003

ヴェルジェ

St Véran, Terres Noires Atom Heart Mother 2002

Mâcon-La-Roche-Vineuse, Vieilles Vignes de Sommere 2002

Mâcon-Vergisson, La Roche 2006

これらすべてのワインのテイスティング・ノートはLong-lived treasures from Guffens' cellarを参照のこと。ギュファンとヴェルジェのワインの取扱業者はWine-Searcherを確認のこと。おそらくもっと若いヴィンテージのものになると思うが。

原文

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