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ボルドー2016~右岸はタイミングがカギ

Friday 14 April 2017 • 5 分で読めます
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この記事のやや短いバージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されており、いつもより早くft.com で公開されたのでこの記事も早めに公開することにした。数多くのテイスティング・ノートが含まれるguide to coverage of Bordeaux 2016も参照のこと。

(写真のヴュー・シャトー・セルタンのように)霧の立ち込める月曜の朝に始まった先週のボルドーはその後ずっと晴れだった。そして最新ヴィンテージのプリムールに参加したテイスターと生産者の心も。多くのワインは飲んで心地よいもので、中にはとびぬけて素晴らしいものもあったが、2016は間違いなく、生育期には恵まれなかったヴィンテージだ。

ラフルールのバプティスト・ギノドー(Baptiste Guinaudeau)によると、彼とワインメーカーで妻のジュリーはブドウが収穫されて2か月以上経ったクリスマスが明けるまで、自分たちの手にそれほど特別なものがあるとは認識していなかった。その内省の時期に至るまでに彼らの考えが及んだのは、2016年に彼らがくぐり抜けなくてはならなかった様々な課題でしかなかった。

昨年はほとんどのフランスのヴィニュロンにとって悪夢のような年だった。このヴィンテージは霜と、特にブルゴーニュとロワールでひどかった雹などのおかげで収量が激減した。ボルドーには特有の心配もある。この数年の中で最も雨の多い春と初夏は地下水位の再上昇をもたらしたものの、どんよりとした灰色の空の下、べと病の脅威に常におびえなくてはならなかった。2016を生き抜くには繰り返し農薬の散布(現在保護衣は必須だ)が必要だった。ヨーヨーのように大きく変動する気温がカビ病の脅威を減らすことはなく、ブドウの生育サイクルを遅らせ、ブドウの成熟に苦慮した2013のような悪夢の年を多くのブドウ生産者が思い起こしていた。

この悪夢はジロンド川の右岸(最も重要なのはサンテミリオンとポムロール)でさらに大きな脅威となった。奇跡的にも開花がうまくいきブドウの収量に期待が持てた時期のあと、夏は恐ろしい勢いでブレグジットのその日、6月23日にやってきた。ボルドーはそれから9月13日までまとまった雨のない、これまでになく長い干ばつに見舞われたのである。

ル・パンのティエンポンは夏に畑でする作業がほとんどなかったと述べた。なぜならほとんどの右岸の畑ではブドウが防御的なショック状態となり成長を止めてしまったからだ。光合成も、それに伴うブドウの成熟も止まり、若木、特に砂質土壌に植えられているものの中には非常に苦しみ、葉が黄色く変色したり、落葉したりして、2016の成熟過程が終わりを迎えてしまったものものあった。

このような乾燥した夏が日常の南フランスではIの付く単語がささやかれることが多くなってきた。Irrigation(灌漑)はフランスでは若木以外には禁止されている。私の推測では「若い」という単語の解釈に大きな柔軟性が出てきたと見える。またストレスを受けた古樹にかなり希釈した農薬を散布する頻度は間違いなく昨夏は増えていた。

ところが6月の降雨量はボルドーの30年間の平均の十分の一しかなく、8月は四分の一だったにもかかわらず、奇跡的にも多くのブドウ、特に古樹で根が深く張り、春の猛烈な雨の(訳注;地下水位の上昇を意味すると思われます)恩恵を受けることができたものは非常に良くこの干ばつに耐え、青々とした葉と垂直方向への成長を遂げた(これはラングドックでも目撃した現象だ)。まるでブドウが気候変動に適応する術を学んでいるかのようだ。

一方ヴィニュロンたちは最新のテクノロジーと20年前はあり得なかった精密さに適応する術を学んでいる。サンテミリオンの最高峰、シャトー・シュヴァル・ブランのピエール・オリヴィエ・クルエ(Pierre-Olivier Clouet)が指摘するように、偉大な1982年といえども完ぺきな成熟状態で収穫されたのは80%に過ぎなかった。10%程度は未熟で青臭かったし、あとの10%は食べられないほど過熟だった。「でも2016はすべての区画で完ぺきな成熟度で収穫できたんです。」ボルドーの畑は(その対極でもあるナパに倣って)畑を注意深く均一な区画に分けて収穫を行い、その進行を外科医並みの精密さで完ぺきな状態に制御してから、それらを合わせて醸造を行う。

ヴュー・シャトー・セルタンでは、アレクサンドル・ティエンポン(Alexander Thienpont)の息子ギョーム(Guillaume)は赤外線技術を導入し、色のついたリボンで区画ではなく個々のブドウに印をつけることで素晴らしい2016を生み出した。彼らはこれまでよりもはるかに正確に最高の果実を選ぶことができるようになったのだ。多くの生産者同様、ティエンポンも偉大なボルドーのヴィンテージとして2009と2010、2015と2016の組み合わせに強い共通点を見出しているようだ。どちらの組み合わせでも後のヴィンテージの方が成熟度は控えめで、前のヴィンテージよりもクラシックな作りになっている。

2016がこれほどクラシカルな理由は、夏は非常に乾燥していたものの馬鹿々々しいほど暑かったわけではなく、夜はすがすがしかったことで不都合なほどに劇的な酸の低下が起こらずに済んだことだ。だがこのヴィンテージは最後まで目の離せないものになったことも確かだ。結局ブドウは成熟したのだろうか?と。

9月13日に本当に意味のある嵐のおかげで干ばつが終わりを告げるころまでには成熟過程は再び動き出していたが、日は短くなっており(3月の日の長さを思い起こして欲しい)、気温ももはや秋のそれだった。そのため成熟はカタツムリのように進行が遅かった。バプティスト・ギノドーが述べたように、2016年の9日間の成熟は酷暑の2009年の2日分に相当する。

そして現在全てのボルドーの生産者が過敏になっている点はフェノリック、特にタンニンの成熟だ。そのためほとんどの生産者が待って待って待ち続ける。例えばル・パンの収穫はこの年初めて、10月になるまで開始しなかったほどだ。

収穫日はバラバラで、多くの生産者がメルローの収穫を9月の終わりごろに行ったのに対し、カベルネ・ソーヴィニヨンが成熟するのに十分暖かい例外的な場所を除く右岸で左岸よりも重要な位置を占めるカベルネ・フランはその収穫期を10月まで延ばした。さらに活気にあふれるカスティヨンなど、海から離れるに従い11月まで食い込んだ地域もある。

干ばつのおかげで果粒は全体的に非常に小さく果皮は厚く、タンニンとアントシアニンでいっぱいだ。そのため先週私がテイスティングしたワインは健康的で深い深紅色をしており、生き生きした酸とこの上なく熟したタンニンの組み合わせが食欲をそそるものだった。ただし、ほんの一部ではこの傾向が行き過ぎているものがあった。アレクサンドル・ティエンポンが指摘したように「2016年の比較的高い収量には救われたんですよ。もしこれで収量が低かったら、ワインは凝縮しすぎてしまいますから」。一方で最高のものは抽出を最大限に行う1990年代のレシピを使っているような、特にサンテミリオンの変わった生産者のものですら、素晴らしいみずみずしさを備えていた。

ほとんどの生産者よりも早く(9月21日から10月4日に)収穫を行った、恵まれた右岸の生産者の一人がレグリーズ・クリネ(L'Église-Cline)のドゥニ・デュラントゥ(Denis Duranto)だ。特にメルロー重視のポムロールではタンニンが少し固いように感じられたが、私は彼がこの年を総括して述べたこのコメントが面白いと感じた。「メルローの反逆の年ですよ。コンサルタントは皆プティ・ヴェルドなど他の品種を植えるよう勧めてきました。でも2016はメルローがいかにすばらしいものになるのか、低いpH、低いアルコール、カベルネと同様なタンニンで証明したんです。残念ながらメディアの注目は(カベルネ主体の)左岸ですけどね」

来週は左岸についてレポートするが右岸には栄光が溢れている。

下の写真はレヴァンジルで撮ったものだが中国の影響はそこかしこに見られた。中国のバイヤーや、少なくともテイスターたちの力が再び大きくなっているようだ。


右岸2016のスターたち
これらのワインに私は20点満点中18点以上を付けているが、多くのワイン、そのすべてとは言わないが非常に高価であると思われるものも17点以上を付けた。増え続けるtasting notes on 2016sも参照のこと。

ポムロール

Hosanna
Lafleur
Petrus
Le Pin
Trotanoy
Vieux Château Certan

サンテミリオン

Ausone
Canon
Cheval Blanc
Figeac
Tertre Roteboeuf

(原文)

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