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ボルドー~プリムールで買う価値のあるワインは?

Saturday 9 April 2016 • 5 分で読めます
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この記事のやや短いバージョンはフィナンシャル・タイムズに掲載されている。

ここしばらくはガトウィックからボルドーへの飛行機には追加の負荷がかかることになる。先週の2015ヴィンテージのテイスティングから帰国するワイン商全員の荷物の中に、世界的な企業間高級ワイン取引市場であるLiv-ex による100ページ500gもあるボルドー市場のレポートが入っているのだから当然だろう。

プリムール直前というボルドーの成功がかかっている時期に出版された今年のレポートでは、不安定な市場が浮き彫りとなっていた。2015ヴィンテージは品質・量ともに過去4年間と比べて期待が持てるものだが、このフランスの高級ワイン産地の運命の大きな転機となるに違いない。

だがLiv-exのグラフはボルドーのネゴシアンと彼らからワインを購入した人々にとって利益率が急降下していることを示している。ボルドーのネゴシアンの在庫日数は2013年から2014年にかけて246日から305日に伸びている一方、営業利益は2011年の7%から2014年の3%へと落ちている。イギリスの高級ワイン業界はフランスのそれとともにボルドー・プリムールにとって最も重要な顧客であるが、在庫量をかなり減らしているにもかかわらず両者とも営業利益はほぼ同様に下落している。

最もわかりやすいグラフではシャトー蔵出し価格の、ワインが供給された先の最終市場価格(プリムールでテイスティングを行ってから2年以上が経過したもの)に占める割合を示したものだ。不運だった2011は売り上げが少なかったこともあり、シャトー所有者の利益分配率は90%を超えていたのに対し、2008,2005,2003にはたった40%でしかなかった。その後所有者の利益分配率は下落し、この10年でプリムール投資家にとって最も良い年とされる2012でも70%以下に留まっている。Liv-exの試算によると平均的に見るとプリムール購入者は、現在の中間価格とワイン商の平均的なリリース価格の比較で9%の小幅高を示す2012を除き2008以降すべてのヴィンテージで実質的に損をしていることになる。

ボルドーのプリムール取引がここまで低いレベルに至ったのは驚くことではない。Liv-ex はプリムールが彼らの取引に占める比率をヴィンテージごとに総売上高に対するパーセンテージとして算出している。2009と2010ではそれぞれ15%と11%だったその比率は2013と2014にはたった1%にまで下がっている。品質のよりよい2015はこのプリムール市場を生き返らせるに足る力はあるのだろうか。

Liv-exがコメントする通り、2009と2010が提供された頃の市場の健全性は劇的に向上していた。これは一時的な中国からの需要の増加によるものだが、現在の中国の経済環境からはこの状況の再来はないと考えられる。また伝統的に高級ワインをイギリスのワイン商から求めていた、税金のかからない香港の需要も、この十年ほどほぼ横ばいだ。

イギリスの業界とその顧客の抱える現時点での問題は、1年前の2014がリリースされた時と違い、昨年の11月以来13%も下がっているポンドの対ユーロ安だ。イギリスのワイン商は6月23日のEUに関する国民投票(訳注:英国のEU離脱の是非を問う)によってポンドが回復した場合、その時点で購入したボルドーが国民投票前のプリムールで購入した価格より安く感じられるのではないかという点を恐れている。デイヴィッド・キャメロンは明らかに、彼が選んだ日付が通常プリムールがほぼ終了する時点にあたるためにボルドーのバイヤーにとって不都合な日だということには気づいていない。

比較的最近、アメリカがボルドー市場の救世主とみられていたことがあった。間違いなくドル・ユーロ換算比は昨年とそれほど大きく変わっていないにも関わらず、アメリカのワイン商はプリムールでの大量購入という習慣をやめてしまったように見える。ただ、先週のボルドーでは少なくともアメリカ人はテイスティングに来ていたようには見えたが。

2015ヴィンテージの価格設定は明らかに重要だ。だが私のような解説者やイギリスのワイン商のような人間は同じことを毎年言っている。変化があったとすれば世界のワイン・コレクターの投資予算について他のワイン産地との競合が増した点である。

Liv-ex取引における様々な産地のシェアを比較するのは様々なワインに対する世界中の興味を知ることと同様、良い指標となる。ごく最近までボルドーは世界中で高級ワイン取引になくてはならないものだった。だが2010のボルドーが取引の95%以上を占めていたのに対し、昨年はそれが75%にまで落ち込んでいる。

入手可能な量が少ないにもかかわらず、ブルゴーニュは上昇傾向にある。特にアジアの富裕層にいるワイン愛好家の間では。一方、イタリアワインは昨年ブルゴーニュよりもその重要度を増しているし、シャンパーニュの取引は量ベースで倍増している。だが昨年最も急速に発展したのはLiv-exで「その他の世界の産地」という名で知られているカテゴリーで、2.3%から5%まで増加している。明らかにアメリカ(カリフォルニアと解釈できる)のワインはその動力源だ。そしてその市場というのはグローバルと銘打っているものの、ロンドンに拠点を置くそれなのである。

ついでながら大きなボルドーのネゴシアンはLiv-ex はそれほど国際的ではなく、実際にはネゴシアンよりも取引が少ないのではと異義を唱えている。その一方で彼らは個々のシャトーの実績について公平な情報を提供することなど夢にも考えていない。とはいうものの、数少ないネゴシアンが非公式に明かしてくれた期待以上の実績を残しているシャトーを以下に一覧とした。

多くの資産クラスやコモディティーで自信が失われかけているこの時代、最も人気の高いワインに投資したいと考える人々はLiv-exが比較するファイン・ワイン100と2015年のFTSE、金、銅、ブレント原油の動きに慰めを見出しているのではないだろうか。ワインはそれらのすべてに勝っているからだ。ただし、ユーロでは。

だが昨年発表された別の報告書では中国に始まった「にわか景気」の頃、2007年前後に急増したワイン投資ファンドの一つに関する警告がなされている。ローザンヌのエコール・オテリエール・ド・ローザンヌのフィリップ・マセット博士(Philippe Masset)とジャン・フィリップ・ワイスコップ博士(Jean-Philippe Weisskopf)は6つの最重要ワイン・ファンドの業績を調査し、それらのうち2つは一般的なワイン市場平均を下回ることを見出し、この上なく期待以上の業績を残していると主張するあるファンドの査定に関しては、大きな疑義を突き付けた。彼らはそれに関与するファンド・マネージャ、すなわち市場の傾向に対応するためにその傾向を読む人物であり、彼らだけが入手可能な情報からおそらく利益を得ていたであろう人物たちの能力に好印象を持っていないようだが、その例外としてワイン・インベストメント・ファンドを挙げていた。

Liv-exによるボルドー・レポートの大部分は彼らが最も重要だと考える70のボルドーワインに関する詳細なヴィンテージごとの分析からなり、ここ10年のプリムールの購買による平均利益で締めくくられている。そのうち22%はマイナスだが、中価格帯のワインの中には若干価格の上昇を見ているものもある。

Liv-exによるプリムール投資の利益分析の結果、全体を通して最も業績が良かったのは1級格付けシャトーのセカンド・ワインだった。その最も顕著なものはシャトー・ムートン・ロートシルトのル・プティ・ムートンだ。例えば非常に美味しい2008は現在ベリー・ブラザーズ・ラッドで166ポンドが付いているが、シャトーでつけられた価格は32ポンドだった。写真はプリムールのサンプルで、スティーブン・スパリアー(Steven Spurrier)とニール・マーティン(Neal Martin;GRIMESと書いたTシャツ)がシャトー・ベルグラーヴで評価しているところだ。ここではネゴシアンのドルト/CVIGIが同業者であるジョアンヌ(Joanne)、ユーリス・カザボーン(Ulysse Cazabonne)、ヴィンテックス(Vintex)同様に快適で使いやすいテイスティング会場を設置してくれていた。来週月曜からは私の百以上に及ぶボルドー2015のテイスティング・ノートの公開を始められたらと考えている。

これらのワインの複数のヴィンテージに関するテイスティング・ノートは125,000以上のデータベースから参照することができる。販売業者はwine-searcher.com参照のこと。

安心できる高品質ボルドー

10年以上もの間以下のワインは平均して1本100ポンドを切る価格であり、Liv-ex の計算によるとその価値は明確に上がってきている。価格の高い順に並べてある。

Beauséjour Duffau, St-Émilion
Lynch-Bages, Pauillac
Clos Fourtet, St-Émilion
Smith Haut Lafitte, Pessac-Léognan
Beychevelle, St-Julien
Calon-Ségur, St-Estèphe
Duhart-Milon, Pauillac
Clerc Milon, Pauillac
Brane-Cantenac, Margaux
Talbot, St-Julien

(原文)

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