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ラフィットの作る中国ワイン、ついにお披露目

Saturday 6 July 2019 • 7 分で読めます
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長く待たれていた中国での船出に関するこの記事のショート・バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

シャトー・ラフィットはボルドーの1級シャトーの中で最も有名であり、世界のワインの中でも最も有名なものだと言える。もちろん、世界で最も早いスピードで成長を遂げ、最もブランドに注目し、偽ワインが横行する中国市場で最も知名度が高いことは言うまでもない。

そしてついにそのラフィットが11年もの準備期間を経て中国で作るワインを発表したのだから、これは大きな出来事だ。

私がこのワイナリーを初めての外部からの訪問者として訪れたのは2月のことで、機密保持の誓約を求められた。中でも最重要機密事項はその新しいワインの名前だった。ボルドーのラフィットのスタッフも、中国でワインを作っている、フランス人主体の多国籍チームですらワインがなんと呼ばれるのか、ラベルのデザインすら今週になるまで知らされていなかった。

中国人の口の軽さも、中国製の偽造技術からも逃れるため、ラベルは何重にも及ぶ機密保持契約の下にボルドーで印刷された。そのラベルはボトルからはがすことはできず、首に巻かれたフォイルは紙幣並みの偽造防止策を施した模様で縁どられている。

このワインは水曜日、小規模だが豪華なランチに地元の重要な役人を全て招待し、かの中国のワイナリーでお披露目された。この会にはバロン・エリック・ド・ロートシルトとその娘サスキア、ドメーヌ・バロン・ド・ロートシルトのCEOであるジャン・ギョーム・プラッツも馳せ参じた。決して容易でなかったプロジェクトの集大成と言えよう。

ラフィットが山東省にワイナリーを作る計画だという噂が最初に流れたのは2008年のことで、それに驚いた向きもあるだろう。山東省は東海岸にあり、近代の中国ワイン業界は当初その地の海運利便性や、毎年秋に苦労してブドウを土に埋めなくてはならないほど冬が寒くない気候に注目していた。だが、そこには些細とは言い難い不利益があった。この地域は7月後半から8月中盤にかけて定期的にモンスーンに襲われるのだ。これはブドウが腐敗とカビの大きな危険にさらされることを意味する。幸いなことに気候は年々暖かく雨が少なくなってきたが、今度はあまりに雨が少ないため春先に使う灌漑設備の導入を検討しているほどだ。言うまでもなく真夏の農薬散布は必須で、ブドウ畑には地元の人々が過剰な水分を防ぐために設置した銀色のシートの残りがはためいている。

(隣接するトリーティ・ポート(Treaty Port)ワイン・エステートのクリス・ラッフルがこの点について誤りを指摘してくれた。「小さな間違いがあります。あなたがご覧になった銀のシートは水分とは無関係です。リンゴ農家の多くはフジという品種のリンゴを日本市場向けに作っています。リンゴを栽培する際、虫による傷を防ぐために紙の袋をかけるんです。収穫の2,3週間前になるとその紙を外し、リンゴの木の下に銀色のシートを敷いてリンゴに良い色がつくようにします。(カリフォルニアのサーファーがやっているようなことですね)」)

彼はさらに付け加えて「気候変動についてのあなたの理解は正しいと思います。2017年と今年はこれまでにないほど記録的な干ばつに見舞われています。過去15年間は7月後半から8月前半の雨に対応しようと苦慮してきましたが(果皮の暑い品種を選んだり、地上から90㎝ほどの高さに仕立てたり、カバークロップを用いたり、ブドウの房が密集してしまう前に予防的な農薬を撒いたり、いろいろやりました)、今や水を購入しているんですから!」と伝えてきた。

このワイナリーの土壌の初期状態に関する大きな問題点についても噂が流れており、実際に丁寧に作られた段々畑状の畑に植えられた最も古いブドウは2011年のものだ。当初のワイナリー・ディレクターである故ジェラール・コランは中国で初めて本格的な赤ワインを生産したグレース・ヴィンヤードから引き抜かれた人物で、さらに中国の遥か西部で新たな事業を確立する仕事も任された。そこでようやく作られたワインのファースト・ヴィンテージは2014だったが、その後2ヴィンテージも含めてすべて蒸留所に送られ、デビュー・ヴィンテージとなる2017と市場で混乱されることのないよう徹底した配慮がなされた。

八という数字の中国での重要性は明らかで、ラフィットのチーム(ポヤックで2008ヴィンテージを作っている)は当初2018年8月8日にこのブランドの発表を行いたいと考えていたのだが、今年の9月19日まで延期せざるを得なくなった。中国では数字は非常に重要なのだ。

しばらくの間ラフィットは中国最大の貿易会社の一つ、CITICとこの事業について共同運営をしていた(その名称は上の写真の石碑にも刻まれている)が、そのような企業にとってワインはその輝きをいくらか失ったようで、現在はラフィットで働くために市民の義務を放棄した地元の村長の協力はあるものの、ロートシルトが単独で経営している。

煙台と蓬莱の間にあるこの田舎は非常に山がちで、ラフィットはその様々な斜面による日照の違いをフルに生かしている。周辺には数件のワイナリーがあり、スコットランドの城をモチーフとしたクリス・ラッフルのトリーティ・ポートもその一つだ。ラフィットがこの地域の名を広めたこともあり、今では他にもワイナリーがあるようだが、中国所有の畑は肥沃で平坦な場所にある傾向にある(そしてワイナリーの建物は非常に派手で目立つものが多い)。対照的にラフィットは地元の花崗岩主体の最も痩せた土壌を選び、30ヘクタールに満たないブドウ畑は43のプロットに分かれた360段に及ぶ段々畑となっている。

ワイナリーのマネージャー、Charles Treutenaereは以前アジアのスピリッツ事業でプラッツと共に働いていた人物だが、彼はそれらの畑一つ一つを監視できるソフトウェアを考案した。だがこのプロジェクトで真にカギを握るのはこの上なく有能な27歳のフランス人ヴィンヤード・マネージャー、ジュリエット・クデール(Juliette Couderc)だろう。彼女はフランスに加えチリとニュージーランドでも経験を積み、この若いチームのみならず、そこら中にいる野良犬たちからも愛されている。「女性の上司であることはフランスよりも中国の方が格段に楽です。」彼女は私に断言した。「中国人は階層を重んじますから」

彼女が参画したのは2017年のことだが、2月の訪問時に飲ませてもらった様々に異なる畑から作られた2018のサンプル・ワインに私は心から驚いた。

慎重に計算されて1100元に設定された(ジャン・ギョーム・プラッツによって「最低でも1500元、販売チャネルによってはそれ以上」という設定から修正された)、9月に市場に出回ることになるこの注目の2017は、一般消費者にとってどんな影響を与えるだろうか?ジャン・ギョーム・プラッツはLVMH在職時このライバルとなるフランス人所有の意匠を凝らした中国産赤ワインの設立の責任者も務めている。中国南部にある雲南省のアオ・ユン(Ao Yun)は2017年に野心的な2800元、すなわち320ユーロ相当の野心的な価格で発売された。中国から航空便で、さらにロンドンからパリへユーロスターを使って運ばれたラフィットの新しいワインを紹介しながら、プラッツはグレース・ヴィンヤードのトップレンジの赤、チェアマンズ・リザーヴの価格は800元だと話していた。

まず、その名前だ。このLong Dai という名前の他にどれほどの候補があったのかはわからないが、「深い(険しい)山」という意味の名前はいささか期待外れだ。だがきっと、名前はさほど重要ではないのだろう。中に入っている液体と、ラフィットとのつながりの方がよほど重要なのだ。

2017の収量はわずか20 hl/haだったため、12本入りでたった2500ケースしか存在しないが、今後5年ほどでそれを4000ケースほどまでに増やせると考えているようだ。(良い年ならラフィットは2万ケースほどが作られる)。この2017のブレンドは半分がカベルネ・ソーヴィニヨン、残りがカベルネ・フランと中国人のお気に入り品種マルスランだ。Long Daiは当初ステータスに敏感な中国市場をターゲットとしていたが 、年末に向けてバンクーバーやシドニーに移住した中国人コミュニティも視野に入れる予定だ。

ワイナリーの建物は控え目で驚くほどサステイナブルかつモダンな灰色の石造りで、ロンドンを拠点とする建築家、ピエール・イヴ・グラフ(Pierre-Yves Graffe)が2009年以来取り組んできたものだ。ビジター・センターは上の写真、下はエンターテイメント用にデザインされたグレート・ホールだ。

ワインに関しては期待通り、ラフィットらしい造りだ。半分はポヤックにあるラフィット所有の樽メーカーによる新樽で熟成され、ボルドーの一級シャトー同様に完全な辛口。この上なく素晴らしいとはいかないまでも、まったくもって適切な味わいと言える。その時のテイスティング・ノートは下記の通り。

Long Dai 2017 山東省
ドメーヌ・バロン・ド・ロートシルトの新たな中国の赤ワインがついに2019年9月から中国の業界に発売される。およそ50%がカベルネ・ソーヴィニヨン、25%がカベルネ・フラン、25% がマルスランで1%ほど地元の果肉まで色のついたヤン(Yan)をブレンド。 pH 3.61。半分はカリュアドの樽メーカー(年間2000樽を生産)による新樽にて熟成。
深い、黒みがかった深紅色。香りにはなにかスパイシーなものを感じる。酸は非常に高い―間違いなくフレッシュだ!2019年2月にテイスティングした2018のサンプルほどの壮麗さはない。細やかなタンニン。素晴らしい余韻の長さ。すべては新樽だ。甘めというよりは辛口の味わい。余韻は挑戦的なほどドライ。テイスティングした際、最初は渋すぎるのではないかと心配したが、ボトルを開けたまま一晩置いておくと上質なヴィンテージのラフィットをほうふつとさせる長期熟成を期待させる品質が顔をのぞかせた。デビュー作としてはほとんどの中国の赤ワインよりも辛口に仕上がっているものの、素晴らしい努力の結晶だ。提供前には間違いなくエアレーションとデカンタージュが必要で、私の開発した若いワイン用デカンターなら言うことはない。

飲み頃は2019 - 2029

おそらく2018の方がより魅力的になると思われる。中国で作られる多くの野心的な赤ワインと比較してLong Daiは繊細な作りとスタイルを目指している。

中国人にとっては繊細過ぎるのではないだろうか?と問うと「こういう経験は何度もしています」とプラッツは言い、「でも何が起こるかはわかりません。人々が熱狂するのか、それとも懐疑的になるのか。それは誰にもわかりませんから。」

記事内の高品質な写真はプロの写真家、リチャード・ホートンによるものだ。私が撮ったものがどれかすぐにわかるだろう。。。

中国のトロフィー・ワイン

Ao Yun, Yunnan
(LVMH所有)

Long Dai, Shandong
(ドメーヌ・バロン・ド・ロートシルト所有)

Grace Vineyard, Chairman's Reserve, Shanxi
(香港のチャン家所有)

Legacy Peak, Ningxia
(中国のLiu Hai所有)

Domaine Franco-Chinois, Hebei
(台湾のCher Wang所有)

Chateau Changyu, Changyu-Moser XV
(中国最古のワイナリーとAmaretto di Saronno fameのILVAの共同所有)

原文

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