ヴォルカニック・ワイン・アワード | The Jancis Robinson Story (ポッドキャスト) | Mission Blind Tasting

落ち着きを取り戻したサンテミリオン

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この記事のショート・バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。最近行われたサウスウォールド・オン・テームズのボルドー2014テイスティングでのテイスティング・ノートも参照のこと。最近及び過去のテイスティング記事へのリンクはguide to Bordeaux 2014から。

今年のサウスウォールド・オン・テームズのボルドー・テイスティングは明らかに何かが違っていた。

長年にわたりワイン商やワイン・ライターたちはサフォークの海辺の町に集まり、最も重要なボルドーの代表的なワインについて3年ほど前のヴィンテージの水平テイスティングを行ってきた。それが最近は高級ワイン商であるファー・ヴィントナーズのロンドンにあるテームズのオフィスで行われている(我々参加者にとってはオゾンが少なく、二酸化炭素排出量の多い場所となるのだが)。

毎年我々は200強のワインをシングル・ブラインドでアペラシオンごとにテイスティングする。すなわち何が提供されるかはわかっているが、どのグラスがどれなのかは知らされていないというものだ。私が思い起こせる限りほぼすべての年で、一番がっかりするフライトはサンテミリオンだった。

全てのボルドーのアペラシオンの中で、サンテミリオンは最も積極的に近代化した場所だ。ただし、けして改善したという意味ではなく、最近の表現を借りれば「色気づいた」とでも言えようか。世紀が変わる頃、アペラシオンにある800のシャトー(その多くは元々ただの農家のような佇まいだった)のほとんどが投資家の手中にあり、彼らがアメリカ人評論家から高得点を獲得することに心血を注いでいたのは明らかだった。このことは凝縮感が高くドラマチックで多くの場合甘い樽の香りが際立ったワイン、多様なサンテミリオンのテロワールというよりは典型的なナパ・ヴァレーの赤を思い起こさせるワインの作り方を熟知したコンサルタントを雇うことを意味することも多かった。

古典的なサンテミリオンは常に甘やかであり、特にカベルネ・ソーヴィニョンよりも豊満なメルローを主体とするためにメドックと比べて甘く、親しみやすいプラムやフルーツケーキなどの果実味が豊かだった。そこにカベルネ・フラン由来の青みのある香りが加わることも多かった。熟成するにしたがい色は褪せていき、代わりに動物的で、時に血や肉を思い起こさせるような複雑な香りに変わっていったものだ。

だが近代化したサンテミリオンはそうではなかった。何年もの間色は濃く凝縮感は高いままで、甘さとアルコールと樽の香りをうまく溶け込ませることに成功していたのは比較的少数だった。ブドウからあまりに多くのものを抽出した結果、余韻に渋いタンニンを過剰に感じるだけに終わることが多かった。

サウスウォールドのテイスティングではほぼ毎回、サンテミリオンに隣接し同様にメルロー主体のポムロールの方が優しい舌触りと愉しさをもたらす味わいであり、はるかにうまく作られていて魅力的であるとの結論に至っていた。これはおそらく、ポムロールの大半が何十年も同じ人物、あるいはその次世代の手によって作られてきたことにあるのだろう。アペラシオンがサンテミリオンよりもはるかに小さく、ボルドーで最も高価なワインの2つ、ペトリュスとル・パンを誇るこの地は希少価値という意味でも魅惑的であるという意味でもそ価格が高騰してきた。だから下手に弄り回す必要もなかったのだ。また、サンテミリオンと対照的にポムロールは評判を立てることに気を取られた大金持ちの新参者ははるかに少なかった。

ところが今月の初め、サンテミリオンの3フライト、ポムロールの2フライトを含む239本の2014をテイスティングしたところ、私の記憶にある限り初めて、サンテミリオンがポムロールよりも優れていたのだ。サンテミリオン、特に名のあるシャトーのものは明らかにスタイルに和らぎが見て取れた。全体的に過度な抽出が控えられ、アルコールも突出せず、かつてよりも調和して表現力が豊かなものになっていたのだ。特に高価なものに至ってはまるでブルゴーニュのように感じられるものもあり、あらゆる意味でサンテミリオンの異端児であるシャトー・テルトル・ロートブッフが何年もの時間をかけ、セラーの中の作業ではなく畑に力を注ぐことで会得した甘さと透明感を伴ったものだった。

一方のポムロールはいつものドラマと豊かさに欠けていた。確かに2014の気候はサンテミリオンとポムロールのある右岸のヴィニュロンにとって苦労を強いられるものだった。「8月の終わりは1963の再来かと思うほど悲劇的でした」ポムロールにあるヴュー・シャトー・セルタンのアレクサンドル・ティエンポンは2015年にワインをプリムールで提供した際そう述べていた。完璧なまでにタイミングの悪い雨と非常に寒い夏のせいで糖が高く果皮の薄い右岸のメルローは季節の切り札であるインディアン・サマーの恩恵も左岸のカベルネに比べて受けることができなかった。(今年のサウスウォールド・テイスティングで最高だったワインはメドック北部のサンジュリアン、ポヤック、サンテステフ甘口の白だった)

つまり、全体として右岸のメルロー主体のワインはいつもより控え目だった
これはポムロールには功を奏さなかったのだが、しばしば過度に力の入りすぎているサンテミリオンにはちょうどよかったのかもしれない。だが、サンテミリオンの和らぎは2014の気候だけによるものではないと私は考える。過度に主張の強いワインは流行でなくなっているのは明らかだ。そして20世紀終盤には新参の生産者が畑で数列のブドウを購入し自宅のガレージで作ったワインをスーパー・ブランドに変えてしまったガラジスト現象もほとんどが影を潜めた。最も腕の立つ初期のガラジスト達だけは、シャトー・ヴァランドローのジャン・リュック・テュヌヴァンのように自分のワインの地位が確立し、10年ほどに一度見直されるサンテミリオンの格付けに入るのを見届けた。

新しい所有者であるジェラール・ペルスのファースト・ヴィンテージが賛否両論だった過保護とみなされているシャトー・パヴィですら、今では初期のワインと大きく異なる、バランスがよくテロワールに主眼を置いたワインを作っている。

旅行者のメッカでもある中世の街サンテミリオン周辺で起こったさらに劇的な変化と言えば、ワイン地図だ。現在ではその目的は異なるかもしれないが、街の後ろにそびえる砂質、粘土質、砂利質の台地、そしてその下に切り立つ石灰岩の斜面を求める新たな投資家たちの数は衰えを見せない。ある香港のビジネスマン、ピーター・クォク(Peter Kwok)は2018年までに3つ以上のサンテミリオンのシャトー、ベルフォン・ベルシエ、オー・ブリッソン、シャトー・トゥール・サン・クリストフ(とポムロールにも3軒)を所有している。アンドレイ・フィラトフ(Andrey Filatov)はロシアで蓄えた財産を注ぎ込み、多くの受賞歴のある建築家、ジャン・ヌーヴェルの力を借りてかつて控え目だったシャトー・ラ・グラス・デュ・デ・プリウールをサンテミリオンの伝統とは想像もつかないほどかけ離れたロシア美術のギャラリーとセラーに変えた。一方LVMHがサンテミリオンの1級シャトー、シュヴァル・ブランを最近改築した際にはなかなかいい仕事をしている。

右岸にはシャトー・フォンロックの所有者や最近のシャトー・トロロン・モンドの売却に見られるように、保険会社が参入している。最近の最重要事項は統合だ(下記リスト参照)。右岸の不動産にとってはいい時代だろう。

サンテミリオンはもはや、戦後すぐに中世の騎士団であるジュラード・ド・サンテミリオンをよみがえらせ、ジロンド川をはさんだ強大な対岸のメドックがそれに続くのを見て満足していた地元の小規模農家の聖地ではないのかもしれない。だが、サンテミリオンの生産者の多くは新旧を問わず、正しい道を進み始めていると確かに思える。

凝集するサンテミリオン

非常に野心的なシャトーの多くはここのところ近隣の買収に忙しい。その理由は主に名のある畑の所有を増やしたいためだ。以下はその著名なものであり、現在の所有者を一番上にしてある。

Ch Ausone
Ch La Clotte

Ch Belair-Monange (リブルヌのJPムエックス所有)
Was Ch Belair, Ch Magdelaine and Clos La Madeleine

Ch Canon (シャネルと左岸の2級、シャトー・ローザン・セグラを所有する一族の所有)
Ch Matras and Ch Berliquet

Ch Dassault
Ch Faurie de Souchard and Ch Trimoulet

Ch Quintus (左岸の1級、シャトー・オー・ブリオンを所有するディロンの所有)
Was Ch Tertre Daugay and Ch l'Arrosée

Ch Soutard
Ch Petit Faurie de Soutard

Ch Trottevieille
Ch Bergat

最近及び過去のテイスティング記事へのリンクはguide to Bordeaux 2014参照のこと。

原文

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