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ワインはますます贅沢品に

Saturday 19 October 2019 • 5 分で読めます
Penfolds Special Bin 111a

ワイン愛好家にとってお買い得品を見つけることはますます困難になっている。写真のペンフォールズの最新作は小売価格の設定が1本850ポンドだ。この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

ワインの価格がどれほど高くなっているか皆さんはお気づきだろうか?ブレグジットに揺れる我々イギリス人はポンド安もあいまってそう気づくのはたやすいだろう。なにしろあまりに多くのワインをユーロ圏から輸入しているのだから。ワインの価格の高騰は世界的な流れでもあり、安価なものから高価なものまで当てはまるが、特に最高品質のものに顕著だ。

イギリスでは、お買い得品を探そうとする向きは1980年代から1990年代にスーパーマーケットの専門バイヤーがライバルより少しでも品質の良いものを揃えることに心血を注ぎ、価格の変動もほとんどなかった黄金時代の恩恵を受けることができた。その後今世紀初頭の非常に競合の激しい数年間はワインの価格は明らかに安定していたものの、結果として品質は急落することとなった。1本あたりのわずかな利益を上げることにうんざりしたブランド・オーナーたちは中国や北ヨーロッパなど、より利益の上がる市場へそのターゲットを移し、残されたスーパーマーケットはその多くが輸送コストを少しでも下げるためにイギリス国内で瓶詰めされるようになったプライベート・ブランドのワインに大きく依存するようになっていった。

そしてここ数年は、急落の著しいポンド、連続する増税、そしてもっとも明白なものとしては少しずつ縮小を始めたイギリスのワイン市場、などの影響でスーパーマーケットの価格ですら上昇を始めている。大手の小売店が売り上げを維持しなくてはならないのはもちろんだが、ワインに少なからず特徴を求める向きにとっては5ポンドのワインははるか遠い記憶となってしまった。

有名な例外であるドイツやオランダを除き、その他の国々はイギリスに比べて価格にそれほど敏感ではない。実際、アメリカ人や中国人は価格の高いワインを積極的に探しているように見えることもある。つい最近までアメリカと中国でワインの売り上げは急成長を見せていたが、輸出業者が最もその期待を寄せてきたこれらの2つの市場はその数量ベースの面では遅滞が見られるようになってきた。

だがこのことは(まだ?)最高級品の価格上昇に歯止めをかけることにはなっていないようだ。ぜいたく品として積極的に販売されているボルドーの1級シャトーの無情なまでの価格上昇や象徴的なトロフィー・ワインが軽く1本500ポンドを超えるのを我々は指をくわえて見ているしかないのだ。そしてLVMHの傘下にあるいくつかのシャトー(特にシュヴァル・ブランやシャトー・ディケム)はボルドーの長い鎖のようにつながった販売網ではなく、エンド・バイヤーと直接取引をする方向へ転換し始めている。

今や世界の花形となったブルゴーニュで最も畏敬されるワイン、すなわち屈指の生産者によるグラン・クリュはここ数年でボルドーの1級シャトーを飛び越えた。ドメーヌ・アルマン・ルソーのシャンベルタンは1本4桁の価格がつくが、1本単位で販売されることはめったにない。むしろ成層圏級の価格がつくケース単位で販売され、取引ごとに価格の上がっていく高級ワインのメリーゴーラウンドに乗っている。

この価格高騰はブルゴーニュの序列にあますところなく浸透している。少なくともロンドンの某高級ワインインポータはこれがインターネットのせいだとこぼしていた。貴重な配当を失うことを恐れ、オフレコで、と彼が話したところによると、「問題は、彼らが自分たちのワインが世界中で今どのぐらい売れているのか手に取るように知りうるということです。そしてより大きなシェアを手にしたいと考えます。」生産者が生産コストに対し控え目に上乗せしていた時代もまた、遥か彼方になってしまった。

近年このような野心的な価格設定が加速する決定的な要素は20年前にと比較して対数的に伸びてきた著名なワインに喜んで大枚をはたく裕福層の増加だ。名のある生産者は財布の紐の固いイギリスやアメリカのバイヤーが彼らのトロフィー・ワインを敬遠しても、アジアやロシア、ブラジルなどには、それを喜んで補ってくれる収集家やトロフィー・ワインを追い求める買い手がいることを知っているのだ。

さらに、ブルゴーニュで立て続けに見られた生産量の低いヴィンテージと需要の急速な増大が重なったことで、例えばローヌやイタリアで注目を浴びるような産地の比較的著名な生産者が価格を上げる流れにつながった。(カルフォルニアはすでに完成し、資金も十分な国内市場があるためそのような理由付けは必要はなかった。シリコン・ヴァレーはナパ・ヴァレーからリムジンですぐだ)

少なくともブルゴーニュには、すでに広く受け入れられているアペラシオンのヒエラルキーと長きにわたる名声がある。では国際的な名声のないワイン産地のはるかに新しい生産者はどう価格を設定するのだろうか?結局のところ、我々の興味を最もそそるのはトロフィー・ワインのレベルよりはるかに下の価格帯ということになるわけである。

それほど遠くない昔、ワインの最初の価格はそれほど高くなく、名声や、スコアによって上がっていく傾向にあった。だが今では最初から多くのワイン生産者たちが非常に野心的な価格をつけるようになっている。これはたとえ多くの国で飲まれるワインの量がこれまでほどではなくなったにしろ(特にイギリスではノンアルコールや低アルコールの社会的飲料がジンやクラフトビール、カクテルなどと共に注目を浴びている)、飲み物に対して市場が高級志向となる傾向にあるという事実によって生産者たちが大胆になり始めているというのも理由の一つだ。高尚なジム通いを強調し週末に本当に特別な1本を楽しむ人々は少量ずつ週に何度も飲むような一団を凌駕しつつある。このことはもしかして健康志向の指導者を喜ばせることになるのだろうか?

イギリスの小売店の棚やワインリストで、読者の皆さんが最も興味を持つであろう価格帯は10ポンドから25ポンドではないかと私は見ている(そしてクリスマスに向けて4週間紹介するお勧めリストでもこの価格帯に注力する予定だ)。だが、1本25ポンド以下で本当に面白いと思えるワインを見つけるのはどんどん難しくなってきている。

ラングドックはフランス・ワインの生産地としては非常に価値の高いワインの供給源だ。なぜなら土地は比較的安く、世界的な名声を確立しているのはラ・グランジュ・デ・ペールやマス・ド・ドマ・ガサックなどのごく一部の生産者のみだからだ。だがこの夏に比較的新しい生産者のワインをテイスティングした際、それらの価格はその平均をはるかに超え、明確な論理も理由もない状態で蔵出し価格が1本40ポンド強という自制心を失った状態だった。ラングドックの丘陵地にあるACテラス・デュ・ラルザックの野心的なワイン生産者、ラ・ペイラの現在のレンジを私は最近非常に楽しくテイスティングした。その非常に美味しいトップレンジの赤ワインはラ・ペイラという名で、小売価格は1本およそ50ポンドだった。同じ価格帯のボルドー赤と比較してまったくそん色のない味わいであったものの、正直その価格での販売は非常に難しいと考えざるを得なかった。

西オーストラリアのマーガレット・リヴァーにほんの数年前に移住しブドウ栽培とワイン造りを始めたアメリカ人、ウィル・ベルリンズ(Will Berlins)もまた、トップレンジから始めることに決めた。カンタス・ワインでは彼の2016カベルネを1本350オーストラリアドルで販売している。彼の近隣は羨ましがっているかもしれないが、同時に自分たちも値上げができる空気になったことを喜んでいるかもしれない。実際、ほとんどすべての人がそう思っているように。

品質に比べて価格が低く設定されているワイン(今のところ)

コート・デュ・ローヌ赤
ボルドー・クリュ・ブルジョワやその周辺
ロワールの白、特にミュスカデ
ボージョレ
アルト・ピエモンテ
バルバレスコ
アルト・アディジェ
ドイツの白
ギリシャ
ポルトガル
スペインのガルナッチャ
南アフリカ
チリ

国際市場での価格はWine-Searcher.comを参照のこと。また175000件に上るテイスティング・ノートのデータベースではGV (good value) をコメントに含むとして検索するとよい。

原文

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