The Jancis Robinson Story (ポッドキャスト) | Mission Blind Tasting | Wine writing competition

ワインの配送に少々お時間を頂いております

• 5 分で読めます
Post Brexit wine paperwork at Freight Transport

ブレグジットがイギリスへのワインの輸入に与える影響について書いたこの記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。上の写真はポーツマスにあるフライト・トランスポート社(Freight Transport)のオフィスでわずか1週間に蓄積した、保税ワイン到着に対応するための書類の山だ(税金を支払ったワインを除いてこの量だ)。

ワクチン担当相のナディム・ザハウィがイギリスのワイン業界の守護神でないことは確かだ。それでも、イギリスの驚くほど速いワクチンへの対応のおかげでポンドが安定し、イギリスのワイン商はブレグジット後に増加したEUからのワイン輸入にかかるコストになんとか対応することができた。

その代わり、ワイン商たちが最も強い口調で批判しているのが輸送と書類仕事の問題であり、特にその書類仕事が文字通り「書類」すなわち紙ベースであるという点が非難の的となっている。ブレグジット以降、イギリスへEUからワインを輸入するスムーズなデジタル・システムが、煩雑な、印刷した用紙を埋める作業にとって代わられてしまったのだ。

ルーマニアにあるフィリップ・コックス(Philip Cox)のワイナリー、レカシュ(Recaş)は世界中に輸出を行っている。特にイギリスに対しては、イギリスに年間700万ポンドもの税収を生み出すほどの輸出量を誇る。彼は「世界中がデジタルへ向かっているこの時代にイギリスだけが、まるで自国の市場だけの問題と言わんばかりに一方的に紙ベースでの書類に退化することを決めてしまった」ことに激怒している。「CHIEF(通関)はもうジョークとしか言いようがありません。40年ほど前の状態に戻ってしまい、目的を達することができないのですから。」

一方、フランスのワイン生産者はフランスの税関に特別な輸出申告書、EX1を書いて提出しなくてはならない。彼らの多くは、その記載方法が非常に複雑なため、専門業者に依頼するよう、税関から言われているという。そのコストは1件につき50ユーロから70ユーロで、さらにセットアップ料金がかかるため、小規模生産者にとっては煩わしいことこの上ない。

もし、ワイン生産者がそのEX1の料金をイギリスのワイン商が負担するよう要求すれば、イギリスへの輸入書類に関わる経費に1件あたり110ポンド以上が追加されることになる。小さな会社であれば単一のワイン生産者からパレット1枚分(一般的に600-720本)程度しか買い取らない。そうなるとボトル1本あたり15ペンスが余計にかかることになるのだ。

ストンーン・ヴァイン&サンのサイモン・テイラーによると、「これまでは新世界からよほど大量の輸送をしない限り、ヨーロッパからの輸送の方が安いのは明らかでした。でも今はそうではありません」。

1月1日からは輸送コストも大幅に上がった。その理由の一つは、新しい官僚主義が輸送時間にも影を落としているためだ。たとえば少量生産で趣のある職人的ワインは多くの場合混載されるが、そのうちたった1件のワインの書類にミスがあれば、そのコンテナ丸ごとが1日、あるいはそれ以上立ち往生するのである。また、イギリスからヨーロッパへの輸出が縮小している今、イギリスとの海峡を積荷なしで戻らなければならない多くのトラックの輸送費を補わねばならず、さらにコストは高くなる。フライト・トランスポートはワイン専門の輸送会社だが、ヨーロッパへ向かって海峡を越えるトラックの30-50%は空だという。2021年以前は5%以下だった。

イギリスのワイン商、プライベート・セラーはワインをEUからイギリスと、ドバイに輸送している。ドバイへの輸出にはEX1は必要なく、数ユーロで発行できる原産地の保証書を電子ベースで求められるだけだ。イギリスはというと、はるかに複雑だ。プライベート・セラーのニコラ・アーセデクネ・バトラー(Nicola Arcedeckne-Butler) MWは「フランスの多くの有識者や、生産者からは多くの不満が聞かれます。でもEUを離脱したのは彼らの選択ではなく、イギリスのものですから、その結果を私たちは甘んじて受け止めるしかありません。」と話す。ブレグジット後、彼女はイギリスにワインを輸入する手順のフローチャートを作成したが、そこには25ものステップを踏まなくてはならないと示されている。

小さな単位で輸送されるワインはこの新しいシステムの悪影響を最もひどく受けている。グラン・クリュや格付けシャトーのレベルになれば1本あたり1,2ポンドの追加で大きな影響は出ない。また、巨大なタンカーでいくつものパレットを輸送し、スーパーマーケットに向けられるようなワインも同様だ。ところが、ワイン愛好家が最も興味を持つような中価格帯のワインを、ほどほどの量でイギリスのインポータと取引していた小さなワイン会社は大きな危機に直面している。

彼らは今のところ、力を増してきたポンドの影響に救われている。例えば今年、リアル・ワイン・カンパニーのマーク・ヒューはラングドックのローラン・ミケル(Laurent Miquel)を2パレット輸入した。その輸送費は昨年の461ポンドから541ポンドに上がったものの、為替レートの上昇のおかげで、結果的に1本あたり5ペンス安く済んだという。

実はこのパレットも悩みの種だ。今やイギリスはEUではないため、木製のパレットに寄生虫がいない証明が必要となり、そのコストがかかるのだ。

オーガニック・ワインの輸入はさらに面倒なことになる。7月1日から、イギリスのインポータはオーガニック製品とそうでないものの混同を防ぐため、イギリスのソイル・アソシエーション、あるいは同等の機関による定期的な査察を受ける必要がある。そのコストは年間
750ポンドだ。さらにインポータはその査察認定用紙を生産者に送り、生産者はそれを認証機関に送って承認印をもらわなくてはならない。そしてその証書はワインと共に送られ、港の保健局に提出される。それを前に、6月のオーガニック・ワインの輸入は記録的な量となるに違いない。

さらに、サンプルの問題がある。インポータが新たにワインをポートフォリオに加えるにも、またワイン・ライターにとっても、サンプルは必須だ。インディゴ・ワインの輸送専門家、ルイス・ウッドは現在の状況をこう話す。「もう悪夢でしかありません。荷物が税関で何週間も止められることもあるので、多くの配送業者は半ばあきらめ気味です。」私自身も人生で初めて、EUから送られてくるサンプルにイギリスの関税とVATが課税されることになる。この問題に関してヤップ・ブラザーズのトム・アシュワースはもう少し楽天的で、1月には5ユーロ相当のサンプル2本に50ポンド取られたことを「ちょっとした苦痛」と表現している。

インディゴ・ワインのベン・ヘンショーはパンデミック以前にはレストランやバーへの卸が専門だった。彼はブレグジットに起因する問題についてはさらに広い視野を持ち、人材確保という意味での問題をこう指摘する。「多くのレストランのスタッフたちはヨーロッパ出身者が多いので、ブレグジット後のイギリスは彼らにとって魅力に欠ける場所になります。」そしてこう続けた。「ホスピタリティ業界と関連事業にとって、これは長期的なデメリットとなると考えられます」。

一方、大西洋の向こう側の事情は少し良いようだ。2019年10月、エアバス問題への報復としてEUのワインに課せられたアメリカの25%の関税がようやく廃止されたのだ。窮地に立たされていたアメリカのインポータたちはこれが永遠に続くことを願っている。ニューヨークにあるスクーニック・ワインズ(Skurnik Wines)のハーモン・スクーニック(Harmon Skurnik)はアメリカ・ワイン業界連盟(US Wine Trade Alliance)の役員で、昨年この関税に絡んで200万ドル以上を支払ったと話すが、「誰も望んでいなかった長く暗い貿易戦争の苦難に満ちた時間がようやく終わりを迎えそうです!」とメールに書いてよこした。

対照的に、中国が11月末にオーストラリアからの輸入に課すことを決めた壊滅的な関税の影響で、昨年12月のオーストラリアから中国への輸出は昨年比でたったの2.3%だった。

これほどまでに政治的な逆風が国際的なワイン貿易に影響を与えた事例を私は知らない。

原文

購読プラン
スタンダード会員
$135
/年間
年間購読
ワイン愛好家向け
  • 297,198件のワインレビュー および 16,153本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
  • askJancisへのアクセス(AIワインアシスタント)
プレミアム会員
$249
/年間
 
本格的な愛好家向け

「メンバー」プランの内容に加えて

  • 最新ワインレビューへの早期アクセス(48時間前)
  • 最新記事への早期アクセス(48時間前)
プロフェッショナル
$299
/年間
ワイン業界関係者(個人)向け 
  • 297,198件のワインレビュー および 16,153本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
  • askJancisへのアクセス(AIワインアシスタント)
  • 最新のワイン・レビュー と記事に先行アクセス(一般公開の48時間前より)
  • 最大25件のワインレビューおよびスコアを商業利用可能(マーケティング用)
ビジネスプラン
$399
/年間
法人購読

「プロフェッショナル」プランの内容に加えて

  • 最大250件のワインレビューおよびスコアを商業利用可能(マーケティング用)
  • レビュー依頼用のワインを提出可能
  • 従業員向けにメンバーシップを提供し、一元的に管理可能
  • APIアクセス(※別途料金)
Visa logo Mastercard logo American Express logo Logo for more payment options
で購入
ニュースレター登録

編集部から、最新のワインニュースやトレンドを毎週メールでお届けします。

プライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます。

More 無料で読める記事

Markus and Eben Sadie at Berry Bros April 2026
無料で読める記事 この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。 パラディウスのヴァーティカル・テイスティングも参照のこと...
Sam Neill
無料で読める記事 ジャンシスが、これまで出会った中で最も魅力的なワイン生産者を偲ぶ。写真上は、自身のトゥー・パドックスのブドウ畑にいるニール。...
A glass of Sauvignon Blanc at an airport bar
無料で読める記事 第一次審査を終え、今年のライティング・コンペティションの優秀作品の掲載を開始できることを嬉しく思う。選ばれた作品はすべて編集なしで掲載され...
Boscastle harbour
無料で読める記事 この記事はAIによる翻訳を日本語話者によって検証・編集したものです。(監修:小原陽子) ザ・ロケット...

More from JancisRobinson.com

Boscareto vineyard in the snow
テイスティング記事 このアクセスしやすいヴィンテージに関するウォルターのレポートの後編。今回は、カスティリオーネ・ファッレット、モンフォルテ・ダルバ...
Barale estate and vineyards
テイスティング記事 困難なヴィンテージに関する最終報告。驚くほどフレッシュでアクセスしやすいワインに仕上がっている。本日は、複数の村のワインと、ケラスコ...
Valle de Guadalupe vineyards
現地詳報 メキシコのワイン産業は気候変動への対処法について教訓を与えてくれる、とメキシコを拠点とするジャーナリスト兼ソムリエのカルロス・ボルボア...
Richard Hemming and Hiromi Ohno outside Sushi Oono
Vinomakase リチャードの新連載「Vinomakase」では、専門家たちがワインと日本料理をどのようにマッチングさせているかを探る。第1回は...
Hops hang from the ceiling at Dylan's at The Kings Arms in St Albans
Bite-sized セント・オールバンズの大聖堂地区にある15世紀のパブで、最新の料理を堪能できる。 フロント・バーは今も安心できるほどパブらしさを保っている...
Person in Domaine Sérol's vineyards in the Côte Roannaise (credit Le Bon Cliché)
今週のワイン フランス中部の赤ワインに見る、渇きを癒すフレッシュさ。 £15.50、$26.95から 。...
CWL Wines of Brazil over map
書籍レビュー クラシック・ワイン・ライブラリーへの3つの新刊と、ポルトガル・ワインに関する自費出版ガイド。 以下のレビューのうち3冊は、アカデミー・デュ...
Sadie Family winery exterior
テイスティング記事 南アフリカで最も人気の高い白ワインの進化をたどる、示唆に富んだヴァーティカル・テイスティング。このワインは...
JancisRobinson.comニュースレター
最新のワインニュースやトレンドを毎週メールでお届けします。
JancisRobinson.comでは、ニュースレターを無料配信しています。ワインに関する最新情報をいち早くお届けします。
なお、ご登録いただいた個人情報は、ニュースレターの配信以外の目的で利用したり、第三者に提供したりすることはありません。プライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます.