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ブルゴーニュ白の水平テイスティング

Saturday 20 May 2017 • 5 分で読めます
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この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。これらのワイン全てのテイスティング・ノートを含むtasting article も参照のこと。

熟成中のボルドー赤のヴィンテージを評価することは、それが安物でなければ十分一般的なことだ。そのような現実もあって、数少ない例外を除きほとんどのボルドーのシャトーの畑は非常に広大だ。

ところが同じことはブルゴーニュにはなかなか当てはまらない。ボルドーのセラーは同じワインの入った何百という樽を熟成させるための空間が必要なのに対し、ブルゴーニュの生産者は自分の作った多くのワインの樽を片手で数えられる。

この点が、熟成した、あるいは熟成中のブルゴーニュ赤の本格的な比較テイスティングがあまり行われない大きな理由だ。それが白ワインとなればなおさらである。そういう意味で、私の友人でマスター・オブ・ワインでもあるサラ・マーシュ(Sarah Marsh)がクライヴ・コーツ(Clive Coates)MWからメーリング・リストを引き継いで以来、ブルゴーニュについて書き続けているのには頭が下がる。

彼女は毎年ブルゴーニュのヴィンテージ評価を行う取り組みを8年(あるいは9年)連続しており、自身が定期的に訪問する生産者からボトルを集め、興味を持った人々のためにそれらをたった一度のテイスティングのために全て抜栓する。2008白に注目した最初の試みは、今月初旬にワイン商であるグッドハウス(Goedhuis)のロンドンに新設したオフィスで開催された。共催者はデヴィット・ロバーツ(David Roberts)MWで、ベリー・ブラザーズ・アンド・ラッドで1993年にキャリアを始め、現在はグッドハウスでブルゴーニュのバイヤーを務める人物だ。

我々ブルゴーニュ愛好家皆がそう感じるように、マーシュもまた、ほとんどのブルゴーニュ白が比較的若いうちに飲まれてしまう、あるいは若すぎるうちに飲まれてしまう点をよく理解している。これまで長いこと(私からすると間違った理解だが)白ワインは赤ワインほど重要ではないとみなされてきた。そしてプレマチュアオキシデーションの不安が近年あまりに的中したこともあり、ブルゴーニュ白のバイヤーたちは特にこれらを熟成させることに消極的になっているのだ。

実際、例年開催されるブルゴーニュ白のヴィンテージ評価で意義のあるものは南カリフォルニアで開催される、アメリカ人弁護士でありワイン偽造者摘発の貢献者でもあるドン・コーンウェル(Don Cornwell)によるものだけだが、彼の主要な目的は自身のウェブサイト(https://oxidised-burgs.wikispaces.com)に掲載するために非常に高価なワインの中からプレモックス(プレマチュアオキシデーション)の被害者を特定することのようだ。

マーシュのアプローチはそれより攻撃性は低い。彼女の招待状にその目的は「ブルゴーニュ白の熟成による質の向上を明確にすることです。多くの生産者はある程度の年月を経て複雑さを獲得した白ワインを楽しんでもらいたいと考えています。ベストタイミングはいつなのでしょう」と書かれている。

我々の多くにとって2008のブルゴーニュ白の質の向上はある意味難題と言える。様々な理由で2007と2009は比較的読みやすいのだが、2008年のブルゴーニュはひどく寒く雨の多い夏とそれに続く9月13日からの好天で何とかブドウの成熟にこぎつけた年だからだ。しかもそのブドウは生育期終盤に吹いた冷たい北東の風のために粒が小さく縮み、糖と酸が高くなった。1996年のシャンパーニュに似ているとも言える。1996のシャンパーニュはけしてすべてが優雅に熟成したわけではない。では2008ブルゴーニュの振る舞いはどうだったのだろうか。

我々がテイスティングしたのはキャロリーヌ・レティム(Caroline Lestimé)のスクリューキャップのオート・コート・ド・ボーヌからシャンピーのグランクリュでブルゴーニュにしては珍しい多くの情報が記載されたバックラベルの付いたコルトンシャルルマーニュまで24種だったが、その多くはプルミエ・クリュのものだった。そしてこれらのボトルは各生産者が選んだものであり、我々はおそらく彼らの自慢の2008を評価していたことになる。

そのため今回プレモックス祭りにならなかったのは不思議なことではない。1本、ややブショネが見つかったものの、およそ10年前に瓶詰めされたものとしては驚異的にその割合は低い。

飲み頃を過ぎていたワインもほとんどなかった。この点も十分に吟味して選ばれたものであるから不思議はない。それらは明らかに非常に酸が高く、場合によっては更に、凝縮した糖分を発酵した結果である顕著なアルコールが余韻に感じられるものもあった。これらワインのほとんどは13.5%とラベルに記載があった。一方ラミー・ピヨ(Lamy-Pillot)のシャサーニュ・プルミエ・クリュ・グラン・モンターニュは14%と堂々と掲げていたが、フレッシュさに変わりはないように思えた。

私がその味を楽しめなかったワインに欠けていたのは味わいの中間にしっかりと感じられる何かだ。確かにキリリとしてはいたが、筋肉は、面白みはどこにあるのか?その原因は果たして十分に果実が熟成せず、乾燥によって縮んだからだろうか?2003のボルドー赤を思い起こさせる。

本当の複雑さが熟成によって得られないのであれば、そのワインのために何年もセラーの場所を使い、それを保管するために経費を使う意味はない。残念なブルゴーニュ白の2008のほとんどは単に若すぎただけで、将来第2あるいは第3アロマを生み出す可能性はあるかもしれない。だが9年も経っているプルミエ・クリュならば少なくともその片鱗ぐらいは見えるのではないだろうか。

とはいえ、以下に掲載したワインはどれも優れたものだった。非常に爽やかで、満足感のえられる熟成感が感じられるものの行き過ぎていない。ラミーのワインはおそらく最も熟成が進んだ例でそのアペラシオンはサントーバンだったが、2008年、今回のラインナップの中では最も光り輝いていた村で地理的にも近いシャサーニュ・モンラッシェと同等と言えるかもしれない。総合的に私が最も気に入ったのはフィリップ・コラン(Philippe Colin)のものだった。

全体的にムルソーの輝きはあまり感じられなかったが、パトリック・ジャヴィエ(Patrick Javillier)はその驚くほど長命な村名ワインとしてその守備能力を称賛すべきだろう。ピュリニーではカリヨン・ドメーヌ(Carillon domaine (分裂前のもの))がプルミエ・クリュであるペリエールと変わらない品質を備えた村名ワインとして特筆に値する。

さて、上質な2008ブルゴーニュ白をいつ飲むべきかという最初の疑問に戻ろう。私の考えではここ数年以内というところだ。私はテイスティング・ノートを書く際には常に(半ば仕方なしに)20点満点の点数をつけることにしている。そしてグラスから感じた味わいに基づき、理想的な賞味期限も添えている。今回の24種のワインのうち、抜栓をさらに待つ価値のあると思われたワインは2本だけだった。1つはボワイエ・マルトノ(Boyer-Martinot)のムルソー アン・ロルモーで、甘い第一印象と酸の強いフィニッシュが十分に溶け合い、その合間に非常に面白いニュアンスを醸し出している。もう1本はバロ・ミロ(Ballot-Millot)の ムルソー・シャルムで、マグナムから注がれたことがその熟成の遅さの理由かもしれないが、非常に印象的だった。

このテイスティングを通じて私が思っていたことはブルゴーニュ以外で作られた最高品質のシャルドネがこのラインナップに加わったらどうだったのかということだ。確かに2008年当時のアメリカでは軽やかなスタイルへの飛躍はまだまだ過渡期だったが、
オーボンクリマ、アイリー、レミーならば候補を出すことができたのではないだろうか。オーストラリアならビンディ、カレン、カーリー・フラット、ジャコンダ、ルーウィン、ピエロ、タパナッパなどがすでに素晴らしく洗練されたものを作っていた。ニュージーランドのベル・ヒル、フェルトン・ロード、クメウ・リヴァーも然りだ。

その価格を考慮に入れると、最高品質の新世界のシャルドネが断然勝利するだろう。

優れた2008 ブルゴーニュ白


シャサーニュ・モンラッシェ

Domaine Jean-Claude Bachelet, La Boudriotte Premier Cru
Domaine Blain-Gagnard, Clos St-Jean Premier Cru
Domaine Philippe Colin, Chenevottes Premier Cru
Domaine Jean-Noel Gagnard, Caillerets Premier Cru
Domaine Bernard Moreau, Morgeot Premier Cru
Domaine Jean-Marc Pillot, Vergers Premier Cru
Domaine Seguin Manuel, Vergers Premier Cru

ムルソー

Domaine Patrick Javillier, Clousots
Domaine Remi Jobard, Genevrières Premier Cru

サントーバン

Domaine Hubert Lamy, En Remilly Premier Cru

これらワインのテイスティング・ノートは2008 white burgundies - ready or not? を参照のこと。(希少な)取扱業者はwine-searcher.comで探すことができる。

原文

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