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ボルドー 2014 ~今が正念場か

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これはフィナンシャルタイムズに掲載した記事のかなり長いバージョンである。これら若いバレル・サンプルのテイスティング・ノートを450以上含む guide to coverage of this vintageも参照してほしい。

最近ボルドーで過ごした一週間の間にテイスティングした中で唯一の素晴らしいワインは夕方のダイニング・テーブルで飲んだものだった。熟成期間が6か月に満たない2014のワインが並んでいるプリムール・テイスティングでは、テイスティングした中で最高のものでも、「偉大」ではなく「優良な」ものでしかなかった。しかし、最も印象に残ったのは初めて聞いたフランス語、「ル・ボルドー・バッシング」という言葉だった。

確かにそのような現象はそこかしこに見られるので驚くほどのことではないだろう。フランスで最も重要な高級ワイン産地の外では非常に多くのワイン愛好家およびプロからボルドーに対する非難の声が上がっているが、これを後押しするような明白な事実がロンドンを拠点とするプロのためのワイン取引プラットフォーム、Liv-ex主催のプリムール・テイスティングの直前に赤裸々な数字となって表れた。

Liv-ex はなんとも絶妙なタイミングとタイトルで、史上初の20世紀のボルドーの価格推移に関わる膨大なデータを「Bordeaux 2014 - A price guide for Liv-ex members(Liv-ex会員のための価格ガイド)」というタイトルでA4版68ページの小冊子にまとめる決断をしたのだ。そこには過去5年間のヴィンテージのボルドーをプリムールで買うことは概して金銭的な損失につながってきたこと、そして2003年以降で投資が利益につながったのは2004、2005、2007、2008年のみだとする根拠が明確に記されていた。瓶詰すらされていない状態でワインを購入するメリットは支出を抑えられることだとされているが、最近の偉大なヴィンテージである2009や2010をプリムールで購入した人たちは未だに(Live-exの数字によると)それぞれ18および17%の損失を被っているのである。

ボルドーに滞在中、私はワイン業界の様々な著名人にこのLiv-ex のレポートを見たか尋ねてみた。彼らは沈鬱な表情で「見た」と回答した。

最大の疑問は、これら赤ん坊のような2014の価格がどうなるかということだけではなく、もし適正な価格が付いたとして、そのことに注意を払う人がどれだけいるのかということだ。特に最近の若手ワイン愛好家の間にはボルドー離れが蔓延している。ボルドーの複雑なシステムは作り手と飲み手の間に大きな壁として立ちはだかる。彼らの間には最も少なく見積もってもクルティエ(ブローカー)、ボルドーのネゴシアン(ワイン商)、インポータ、そして小売店が入り込む。しかもシャトーのオーナーが気にかけているのは相変わらず自分のワインに近隣のシャトーより高い値がつくかどうか(プライドの問題)であり、最終消費者に彼らのワインが届くかどうかではないようだ。そして豪華な新しい建物の建設計画が最高級のワインを生み出す地区で目立っていることから推測するに、トップシャトーにはまだまだ資金が潤沢にあるか、あるいはムッシュー・オランド(大統領)とその政府に渡る税金をできるだけ少なくしたいと必死になっているのかもしれない。

一方、ボルドーのネゴシアンのセラーは最近の売れないヴィンテージではち切れんばかりである。彼らにとって今は非常に厳しい時代だが、2014に関してはおそらくプライドの高いシャトーの人々とぎりぎりまで無理を強いられているネゴシアンの間(もちろん彼らの仕事に重なる部分はあるのだが)に立つクルティエが最も辛い立場にあるだろう。ボルドーのネゴシアンの中で犠牲になるものが出るか、少なくともより多くの統合が起こることが予想される。

1月、イギリスに拠点を置く高級ボルドーを取り扱う第一線のバイヤー12名(その全員がこれまで数年にわたるプリムール取引の事実上の停滞を経験してきた人物である)が、ボルドーに対して2014の価格決定には特に慎重になるよう求め、ここ10年で最安値が付いた2008と同等の価格が妥当であるという共同声明を発表した。今世紀最悪のヴィンテージになるであろう2013の価格より20%も下げるという要求は控え目に言ってもさすがにやりすぎだろう。特に2014は明らかに2013よりもはるかに高品質で、多くのものが2012や2011よりもよいからだ。

このイギリスのワイン商たちの早すぎる段階での過度な要求は自分で自分の首を絞めてしまった可能性がある。これに対する典型的なボルドーの反応は怒りであったし、ここ数年多くのアジア人がイギリスの企業からボルドーを買っていたところをボルドーが活発なアジアの市場と直接取引のルートを開いたことに関するイギリス業者のやっかみではないかという見方もされてしまったからだ。イギリス人たちがこの新しいヴィンテージをテイスティングしてからこの声明を発表していたら、もう少し効果的だったかもしれない。その疑う余地のない品質はボルドー人たちが守備を固める武器庫の新たな弾薬となってしまった。

一方、偉大なヴィンテージである2010に2014が匹敵するとする向きもあるが、それは誇張というものだ。2014の生育期の特殊な気候を知っているものなら誰もがわかるように、このようなヴィンテージは少なくとも記憶に残っている限り前例がない。穏やかで雨の多い冬のあと、発育は非常に早く開始し(一般的には良い兆候と言える)、霜の深刻な被害もなかった。カベルネの花つきは天気の良い6月のおかげで多かった。これは収量が増えることを意味し、非常に収量が少なくボディが軽かった2013の翌年だっただけに安心をもたらした。

そして夏とは呼べない夏の到来だ。多くの地域で、特にメドック南部とグラーヴでは7月と8月は最悪と言えるほど曇りがちで雨が多かった。そのためブドウは果実味の本質的な凝縮と偉大なヴィンテージには不可欠とされる極めて重要な夏のウォーター・ストレス(訳注:適度に水が不足することでブドウにストレスがかかること)を受けることができなかった。一方メドックの北部はやや降雨量が少なく、日差しもあった(ただしメドックの最北部は6月初旬にひどい雹の被害を受けた)。ブドウが葉を増やすためではなく、成熟していくブドウのためにエネルギーを送り込むよう導くには多大な労力を必要とした。このような畑での大きな労力は、経済的に余裕のないシャトーにとっては厄介で不条理な経済的負担を意味する。8月の終わりに成熟していないブドウを覆ってしまうほど茂ってしまった樹冠はヴィニュロンにとって望ましいことではなく、彼らの間には絶望に近いものが広がっていたが、史上稀にみるほど降雨が少なく暖かかった9月のおかげでその最悪の状況から救われた。例年になく暖かい秋は10月まで続いたが、前半、とくに10月8日の雨は、かなり日が短く夜の気温が低くなってきたこともあり成熟の遅いカベルネ・ソーヴィニヨンがそのポテンシャルを最大限に発揮することを阻んだ。カベルネ・フランは特に2014の右岸で状態がよかったが、多くのシャトーでは生産者が十分な成熟に至るまでひたすら待ったため、収穫は非常に遅かった。

このヴィンテージの圧倒的な特徴は高い酸である。暖かい秋のおかげで糖度は上がり、さらに乾燥した風が吹いたことでブドウの実が縮み、全ての要素、つまり糖(すなわちそれに伴うアルコール)、香り、そして最も顕著なものとして酸が凝縮したのである。2014のタンニンは成熟して豊かだが、多くの赤の酸は心地よいと呼ぶにはほんの少し強すぎる。

一方白はというと、辛口甘口共に高い酸は多くの場合恵みとなる。辛口の白ではまだかなり強いが(中には強すぎるものもあるが)、注目すべきは甘口の白で、そのさわやかな酸が10月後半の完璧な収穫環境でのボトリティスの影響と相まって最高の状態をもたらした。そろそろソーテルヌの人々の苦労が報われる時が来たのではないだろうか。

では、2014の赤は買うべきだろうか?もしボルドー人がプライドを胸にしまい、前年の低品質なヴィンテージにつけたような過剰な価格をやめ、2008と同様な低い価格を付けたとしたら、もちろん答えはイエスだ。だがあなたがもし熟成中の赤のボルドーをセラー一杯に持っているのなら答えはノーだ。今のところ、シャトーからのユーロでのリリース価格は良くて2013と同じ程度だと考えられる(ジェーン・アンソンがデカンター誌のこの記事で的を得た指摘をしているように、我々はこの数年価格設定に心を砕いてきた生産者たちの「声なき声」に耳を傾けるべきだろう。訳注;ボルドーの中で高価格に固執しているのは15軒程度の一部のシャトーであり、その他のシャトーは適正な価格をつけようと努力はしているが様々なしがらみがあり表立って声を上げることはできないという記事)。ユーロの弱さが言い訳として使われるのは間違いないだろうが、Liv-exの報告書は明らかにネゴシアンとインポータのマージンがここ数年でどれほど侵害されてきたかを示している。生産者たちはこれまで絶対的な勝者であり続けたのだ。そして、ネゴシアンは2013の配分を逃れたい衝動に駆られたには違いないが、過去4年で最高のこのヴィンテージを見逃すはずがない。

これらのワインはあまり多くの要素を含まないため、通常は早熟な魅力を発揮する。非常に大雑把に言うと、サンジュリアンは最も安定したアペラシオンで(あることが非常に多く)、ポヤックはいつものことだが表現が過剰になりがちだ。しかし2014はサンテステフにとって素晴らしいヴィンテージで、その更に北の地域からも掘り出し物があるかもしれない。ポムロールはおそらくサンテミリオンより優れていると思われるが、このアペラシオンは有難いことにようやく地に足がついてきた。

ところが2014年の価格設定がボルドー人にとってそれほど重要なことではないかのように、今年の彼らは我が道を行くようだ。この数十年の間に、シャトーの所有者はアメリカのボルドー専門家、ロバート・パーカーのつける点数に依存して価格を設定するようになってきた。しかしつい先日パーカーは採点を非常に若いイギリス人の同僚、ニール・マーティン(Neal Martin)に譲ると発表した。彼の好みはいまだ謎のベールに包まれたままだ。それと時を同じくしてパーカーは業界紙であるザ・ドリンクス・ビジネスに「プリムールは今や瀕死の状態だ」とのコメントもしている。彼は正しいかもしれない。何しろプリムールは比較的新しい仕組みだ。もしかしたら儚い、束の間の夢なのかもしれない。

お気に入り

これが役に立つかどうか何とも言えないが、私の採点で20点満点中18点以上を獲得したワインは以下に示すものだけだ。クリマンスはテイスティングしていないが、これまでを見る限り素晴らしいものになるだろう。

ソーテルヌ
Chx Coutet, Doisy-Daëne L'Extravagant, Doisy-Védrines, de Fargues, Suduiraut, La Tour Blanche, Yquem

ペサック・レオニャン
Haut-Brion Blanc

ポヤック
Latour

サンテステフ
Cos d'Estournel

ポムロール
Petrus, Vieux Château Certan

サンテミリオン
Tertre Roteboeuf

原文

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