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シャンパーニュのマグナム~長期熟成だけのためのもの?

Thursday 22 October 2015 • 5 分で読めます
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この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズに掲載されている。

私がロンドンのチャールズ皇太子公邸の目と鼻の先にある67ポール・モールに着くと、舞い散る埃の中に3人の建設作業員が立っていた。彼らの一人に石炭用マンホール脇の正面階段を降りるよう促されると、洗練されたテイスティング・ルームにスクール形式で机が配置され、陽の光を模した眩いライトに照らされた中で有能なソムリエの一団が750杯ものシャンパーニュをこのロンドンに新しく誕生したワインに注力するクラブで初めて開催されるイベントで提供するために待ち構えていた。

私が最後にこのハンブロス銀行の地下を目にしたのは67ポール・モールの創設者であり元ヘッジファンド・マネージャーのグラント・アシュトンと一緒に、ここがまだ薄汚れた窓のないオフィスと金庫室でしかなかった時のことだが、今ではこのラッチェンスの建築したビルの下三階分は上品なホテル風装飾が施されたメンバーズ・クラブ、一般のレストランよりも安価にワインを楽しめるレストラン、そしてクラブのセラーに保管した自分のワインを楽しめる場所へと形を変えた。公式オープンはいささか慎重に、来月半ばに予定されている。

このテイスティングは始めに上質なシャンパーニュをアペリティフとして選んだ後、大胆にも6種の最高級シャンパーニュについてマグナムと通常サイズのボトルをブラインドで比較し、どちらが通常サイズでどちらがワインをゆっくりと長期にわたって熟成させると言われる大型のボトルから注がれたかを見分けることができるか、がテーマだった。このマニアックな企画はニック・ベーカー(Nick Baker)という創業間もないザ・ファイネスト・バブル(The Finest Bubble)の個人事業主が企画したものだ。ベーカーはワイン業界のベテランで、市場の隙間である最高級のシャンパーニュの即日配送に目を付けた人物だ。下の写真は彼が群衆に向かい気の利いたiPhoneの投票システムについて説明しているところだ。(イベントの写真は全てマット・マーティン(Matt Martin)によるもので、部屋は我々がテイスティングしたワインの生産者の写真で飾られていた。下はドン・リュイナールのフレデリック・パナイオティス(Frédéric Panaïotis)とポル・ロジェのユベール・ド・ビー(Hubert de Billy)で、コリン・ハンプデン・ホワイト(Colin Hampden-White)撮影)

彼は明らかにそれらシャンパーニュと密に関わってきている人物だ。この56名の有料ゲストを迎える野心的なイベントの前日、彼はドンペリニヨンの2002から2006までの連続した5ヴィンテージというめったにないブラインド・テイスティングのために私を自宅に招いた。それが終ると彼は1999を(検証目的だと言って)抜栓すると言い張った。私が帰った後には自慢のドンペリニヨン2002が予想より熟成が進んでしまっていた結果に落胆し、どうやらそれをもう1本開けたようだ(彼はそれを1本149.94ポンドで販売している)。

この非常に面白い通常サイズ対マグナムのテイスティング(通常サイズだけテイスティングしたとしても素晴らしい経験だった)の結果としてまず言えることは、結論は出なかったと言うことだ。自身のiPhoneを登録して投票した47名のテイスターのうち、どちらが通常サイズでどちらが大型のボトルかを正確に特定できたのはたった一人だった。一方、一般参加者の多くは大方がマグナムを正確に特定できた。例外は最初に行ったテタンジェ・コント・ド・シャンパーニュ2002で、この組は混乱を招いた。片方が明らかに熟成したブーケを放っていたため多くの参加者が通常サイズだと考えたのだが、実際にはそちらがマグナムだったのである。波乱の幕開けだった。

シャンパーニュ専門のテイスターであるサイモン・ストックトン(Simon Stockton)が後方の座席から指摘した通り、ボトルのサイズ以外にも結果に影響を及ぼす要素が多くある。幸運なことに、ニック・ベーカーはそのうち最も重要な要素である保存条件については解消していた。彼は一組を除きすべてをイギリスのインポータから直接買い付けていたのだ。来歴が大きく異なった唯一の組はポル・ロジェ・ウィンストン・チャーチル1998で、この豊潤でたばこの香りのするシャンパーニュは唯一二次市場から買い付けたものだった。これはかなり熟成が進んでおり、私からすると酸化との境界線上にあるほどだった。だが驚いたことに多くの一般参加者が素晴らしく引き締まった、インポータであるポル・ロジェUKから直接買い付けたマグナムよりもそちらが好ましいと判断したのである。

だが、潜在的に各ワインの味わいに影響する要素には個々のコルクやドサージュの量(シャンパーニュと糖の混合物を最後のコルクの打栓直前に注ぎ足すこと)などがある。例えばクリスタルのようなワインならばマグナムは通常サイズより6か月遅くドサージュを行い、同じワインの通常サイズよりも糖の量は少ない。更にデゴルジュマンの日付という要素もある。これは泡を生み出す二次発酵によってできた澱を凍らせて取り除いたのがいつかということで、その際にドサージュと最後のコルクの打栓が行われる。理論的にはデゴルジュマンが新しければ新しいほどワインの熟成は遅いはずだ。

今回の組の中にはデゴルジュマンの日付(通常サイズと大きなサイズの投票が済み、銘柄が公開された後でその来歴と共に公表された)が通常サイズとマグナムとで近いものもあったが、それ以外では不可解な現象がみられた。例えばドン・リュイナール1998のマグナムは通常サイズの丸一年後、2010年の3月ではなくの2011年の3月にデゴルジュされていた。ところが直観とは逆にマグナムの方が円熟してまろやかで、より甘味が感じられたのである(しかも1本はコルクの品質が悪くグループ・スコアを引き下げただろう)。

また、もしこの3つ(通常の2つではなく)のサイズのクリュッグ1998を正確に特定できる人がいたら私は脱帽する。通常サイズは2007年10月というかなり前の時期に、マグナムは2010年春、ジェロボアム(マグナムの倍のサイズ)は最も遅く2013年の秋にデゴルジュされたものだ。どれも品質は素晴らしいものだったが私が最も気に入ったのはその引き締まり具合からジェロボアムだと考えていたマグナムだった(ワインはジェロボアムのボトルのみで熟成されたもので、大きなサイズのシャンパーニュに時々あるように小さなボトルから移し替えたものではないそうだ)。

テイスターの一団が気に入ったものはと言えば、最も古い1996のクリスタルを除くと全て通常サイズのものだった。そうなると非常に長い間置いておきたい場合を除いてシャンパーニュをマグナムで買う意味はないということになるのではないか。ただ、我々は皆これほど熟成したヴィンテージのクリスタルをテイスティングできたことにはこれ以上ないほど謝した。人気の高いこのワインはこれまでずっと世界中の夜の街で若いうちに(飲む側ではなくワインが)消費されてしまったためだ。一組を除き我々テイスターが好んだのは通常サイズだったが、上述の通りコント・ド・シャンパーニュ2002は多くがマグナムに軍配を上げた。

また、ニック・ベーカーと彼のチームは我々全員、特に女性のテイスターは夜が深まるにつれスコアが甘くなることを証明した。滑稽な話だ。

お気に入りのプレステージ・シャンパーニュ

詳細に検討された6種の通常サイズの20点満点のグループ・スコアの順は以下の通り。だが、テイスティングした順番(若いものから古いものへ)も影響していたと考えられる。それぞれの通常サイズにつけた私の個人的な点数は括弧内。

価格はザ・ファイネスト・バブルでの1本あたり。それ以外の取扱業者についてはwine-searcher.com 参照のこと。

Louis Roederer, Cristal 1996 17.4 (19) £499.95

Krug 1998 16.9 (18.5) £255

Pol Roger, Sir Winston Churchill 1998 16.7 (17.5) £285

Dom Ruinart Blanc de Blancs 1998 16.1 (18.5) £149

Taittinger, Comtes de Champagne Blanc de Blancs 2002 15.9 (19) £165

Bollinger RD 2002 15.4 (18) £169.95

完全なテイスティングノートと詳細は「Champagne- bottles v magnums」参照。

原文

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