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ブルジョワの抱える痛み

2017年10月7日 土曜日 • 5 分で読めます
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この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。185本の2015クリュ・ブルジョワのテイスティング・ノートも参照のこと。

熟した親しみやすい2015のヴィンテージは、称賛を浴びにくいボルドーのシャトーにはもってこいの好機ではなかろうか。2009が非常にうまくいったように。

いわゆる(まったく古臭い呼び方だが)クリュ・ブルジョワはメドックの格付けシャトー(クリュ・クラッセ)の下に位置づけられたメドックのシャトーであり、ブラインド・テイスティングに基づいて毎年見直される、その年に優れた品質のボルドー赤を生産したシャトーを指す。この品質に焦点を当てた新たな試みが2009年に始まって以来、それらは常に私から見て称賛の対象だった。

対照的に、格付けシャトーははるか昔の1855年にその高い地位を与えられて以来、多くのシャトーでその境界線や所有者、管理者が変わってきたことを除いて、ほとんど変化がない。これは現在のクリュ・ブルジョワの仕組みと比べて実力主義とは言い難い。一方で、クリュ・ブルジョワでは2014 crus bourgeois and a new plan でも詳細を報告した通り、3段階の区分を新設し、その見直しを数年ごとに行う計画がある。

これらの格付け落選者(訳注:=クリュ・ブルジョワ)はその多くがオー・メドック、またはメドックのアペラシオンを名乗るが、中にはベスト・バリュー・ボルドーに求めるべきものをそのまま体現しているものもある(上の写真はシャトー・パヴェイユ・ド・リューズで、クリュ・ブルジョワの仕組みの再建に大きく影響を与えた故フレデリック・ド・リューズの所有だ)。予算さえあれば、これらのシャトーは格付けシャトーとほぼ同じ方法でブドウを育て、ワインを作ることができるのだ。彼らのシャトーが位置的、あるいはテロワールとして不利な場所にあるため、涼しい年や雨の多い年には果実を十分に熟成させられないこともあるが、暖かく乾燥した2009、2010、2015、2016のような年にはこのテロワールの違いはそれほど明確に出ない。

確かに、北部メドック(南のオー・メドックに対し単にメドックと名乗るシャトーを指す)はヘンリー(訳注:嵐の名前)の打撃を受けたし、2015年9月中旬には完全に水浸しとなったが、収量が高すぎない限り、そしてブドウが収穫前に十分乾燥した場合にはそれほど大きな痛手ではなかったはずだ。

先々週、2015年がクリュ・ブルジョワとして認定された271のシャトーが発表され、そのうち190がその直後、素晴らしい運営だったロンドンでのテイスティングで披露された。

プロのテイスターからは、そのうちいくつかのワインは期待外れだったという文句も耳にしたが、私から見ると想定内だと言える。細かく階層化された序列社会であるボルドーの低い地位にあることはこの上なく厳しい環境だ。クリュ・ブルジョワでの生産コストは格付けシャトーのそれと大きく変わるわけではない。一方ボルドーのネゴシアンが格付けシャトー1本あたり通常40-45ユーロ(最も有名なシャトーにはそれよりはるかに高い金額)を支払うのに対し、ほとんどのクリュ・ブルジョワに支払われるのは10ユーロに満たない。

最近のフランスへの訪問で、ボルドーの奇抜なワインをオーストラリアに入れているイギリス人のインポーター、トム・マンローは、大企業によって赤のボルドーが瓶詰めされ、フランスのスーパーで1ユーロ以下で積極的に販売されているのを目にして衝撃を受けた。(The other Bordeaux - part 1を参照のこと)

彼のボルドーの規格外シャトーへの最近の訪問はマルゴーにあるシャトー・ベレール・マルキ・ダリーグル(Ch Bel Air Marquis d'Aligre)で、その風変わりな所有者は20ものヴィンテージにわたり10万本のストックを保有している。たった6か月で瓶詰めも遥か先のワインをほとんどの生産者が売りたがるボルドーにおいてはまれな(非)販売戦略といえる。

毎年努力をしている生産者にとっては気の滅入る話だと思うが、イギリスのザ・ワイン・ソサイエティのように尊敬を集め、入念に選択を行う小売店ですら、熟成したオー・メドック、1998のシャトー・フォンテストゥ(Fontesteau)が11月下旬に到着すれば会員価格で14.95ポンドという安さで販売することができる。すなわちそれほどの価格で入手しているのだ。

ボルドーはこれまでにない頻度で壊滅的な気象条件に苦しんでいる地域といえる。雹はもちろんのこと、春には4月末の絶望的な霜によって2017年の作物の75%に至るほどの損失を出したヴィニュロンもいる。特にこの注目を浴びづらい地域でその現象は顕著だ。(格付けシャトーの中にもジロンド川に近かったせいでジャック・フロスト(訳注:霜の怪物の意)の手にかかったものもある)

そのため、冬や早春に剪定をあまり強く行わないという誘惑もあるに違いない。そのようなことを考えると、クリュ・ブルジョワの畑のいくつかでは元々全体的に収量が高かった2015年の収穫時にブドウが過剰気味だったのではないかとの疑念が浮かんでくる。シーズンの後半になって人を雇い、余剰と思われる房を刈り取る作業には莫大な予算が必要だ。フランスの雇用法のもとではなおさらである。

しかも販売価格が1本あたり数ユーロとなれば、樽の購入費用を抑えようという気にもなるだろう。オー・メドック、サンテステフ、ムーリの100本近い2015をテイスティングしたが(その他のアペラシオンは同僚でMWのリチャード・ヘミングがテイスティングした)、いくつかのワインにはクラッシックではない樽の香りが感じられた。

テイスティングしたワインはかなりばらつきが大きかったものの、中にはとびぬけて素晴らしいものもあり、さらに価格もこの上なく良心的なものが見受けられた。テイスティング用の小冊子にはイギリスの推奨価格も掲載されており、その幅は10.50ポンド(シャトー・シャントメール(Ch Chantemerle)2015)から34.50ポンド(シャトー・レスタージュ・シモン(Ch Lestage Simon))まで非常に広かった。ワインにはよくあることだが、この価格と品質にはほとんど関連性がないように感じられた。私が非常に気に入ったワインの一つ、シャトー・ド・ジロンヴィルは1本たったの9ポンドだった。ただし、これは税金のかからないフランスだから可能なことのようにも感じられた。

ワインのスタイルも同様に多様だった。ブドウの成熟と樽を最大限に追及した(1990年代の神だ)ものもあれば、最近の時代精神であるさわやかで「石のようなニュアンス」に明確に沿っているものもあった。

これらワインの多くはすでに飲み頃と思われるが、野心的に作られているものは5年程度、中にはもっと長く熟成が可能だろう。繰り返すが、寿命の長さに関しても、かなり大きな差が出る。

ブドウ品種に関しては、早熟で肉付きの良いメルローがこのレベルの品質では主たる地位を占める。おそらく不安定な気候に対する保険という意味もあるのだろう。だがこれらの多くはもちろん、有名な色の濃いボルドー品種とのブレンドであり、特に最近その割合が増えてきた晩熟のプティ・ヴェルドもそこに含まれる。

クリュ・ブルジョワのワインにはすべてスマートフォンでその背景を知ることができるシールがついている。さらに良心的なことにクリュ・ブルジョワの組織はワイン偽造を防ぐ特別なシールも備えているのだ。今のところ偽造者の注目はこれらのワインにはあまり向いていないとは思うのだが。

赤のボルドーの上質な代替品

以下の2015には最近すべて20点満点で17点以上をつけたが、それ以外にもテイステイングした94本のうち25本には16.5点をつけている。2015はようやく市場に出始めたところで、ザ・ワイン・ソサイエティのような小売店では当分販売しないことに注意してほしい。来週紹介する、これまでにないマルゴーの熟成したヴィンテージはまだ入手可能だ。世界の取扱業者はwine-searcher.comで、2015クリュ・ブルジョワのテイスティング・ノートも参照のこと。

Ch Barreyres 2015 Haut-Médoc
セインズベリーズのお気に入りで12ポンドだが現行ヴィンテージはようやく2014に入ったところだ

Ch Bel Air Marquis d'Aligre 2009 and 2010 Margaux
12本549ポンド、Christopher Keiller

Ch Belle-Vue 2015 Haut-Médoc
保税価格12本144 ポンド、 Millésima UK

Ch Le Boscq 2015 St-Estèphe
保税価格12本252 ポンド、Millésima UK

Ch de Gironville 2015 Haut-Médoc
フランスで9.50ユーロ

Ch du Taillan 2015 Haut-Médoc
ケベックで27.95カナダドル

原文

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