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エルミタージュの抱える難問

2016年6月23日 木曜日 • 5 分で読めます
the Hill of Hermitage

これはフィナンシャル・タイムズに掲載された記事のロング・バージョンである。

アンドレ・ジュリアン(André Jullien)がかの有名な世界のブドウ畑の調査を19世紀初頭に行った時、彼は三大銘醸地を迷いなく選んだ。ボルドーのシャトー・ラフィット、ブルゴーニュのロマネ・コンティ、そして北部ローヌのエルミタージュの丘である。しかし今日、前者2つは若いヴィンテージで1本千から数千ポンドで取引されるのに対し、若いエルミタージュの価格が1本100ポンドを超えることはめったにない。

毎年北部ローヌへの訪問時に生産者から聞こえてくる嘆き節の一つは、エルミタージュを売る難しさである。非常に奇妙な話だ。なぜならエルミタージュはシラーの生まれ故郷として広く認められており、今そのシラーは世界中で最も人気の高い品種の一つであるからだ。

最も著名な北部ローヌのシラー主体のワインは二つ。一つはエルミタージュで、その名をタンの街の名前のあとに続ける。そしてもう一つはコート・ロティであり、タンから車で北に45分、アンピュイの街にそびえる急斜面に作られた段々畑だ。

コート・ロティは伝統的に固いエルミタージュに比べて軽くフレッシュだったが、大手生産者であるギガルは1980年代に3つの特別な、非常に凝縮感の高い銘柄を打ち出し、数量を制限して市場に流すことでコート・ロティの商業的な活性化に成功した。それがラ・ラズとして知られるラ・ランドンヌ、ラ・ムーリンヌ、そしてラ・トゥルクである。今やコート・ロティは非常にダイナミックで、アペラシオンには多くの生産者がおり、その多くが若く国際感覚を身に着けた人々で、どちらかというと典型的な伝統製法に従ってワインを生産している。

それと対照的にエルミタージュは一握りの巨大な生産者が優勢だ。アペラシオンの、これ以上拡大できない136ヘクタール(226エーカー)のうち約半分はシャプティエと地元の組合であるカーヴ・ド・タンの所有だ。さらに残りの三分の一はポール・ジャブレ・エネとドゥラス、そして最も有名な家族経営の栽培・生産者であるJ・L・シャーヴが占めている。ただ幸運なことに、これらの生産者は品質に非常に重きを置いている。

シャプティエのエルミタージュ(彼らはErmitageと表現する)の畑は長い間ビオデナミで、そこから生まれる赤も白も劇的に素晴らしいものだ(マルサンヌとルーサンヌから作られる白のエルミタージュは、かつては赤よりも称賛を集め、今でもワインの世界での長きにわたる驚異であり、エルミタージュの生産量の五分の一を占める)。エルミタージュの丘のふもとにあるカーヴ・ド・タンの本部からはビオデナミの畑仕事に欠かせないシャプティエの馬のパドックがよく見える。

そしてそのカーヴ・ド・タンはフランスで最も経営が順調な生産者組合だ。ラングドックの多くの組合と違い、カーヴ・ド・タンは非常に明確なビジョンを持ち、潜在的な市場をしっかりと把握し、最近は豪華な新型の醸造機器に1000万ユーロの投資を行った。35の発酵槽は流行のコンクリートで、難しかった2014のヴィンテージからはパーセルごとの違いやブドウの品質をより精密に区別することができるようになった。そのブドウは合計で1000ヘクタールの彼らとその300に上るメンバーが所有する畑で収穫されたもので、北部ローヌの総生産量の三分の一を占める。彼らはイギリスのスーパー向けのオリジナルラベルから最高品質で彼らの創立者であるガンベル・ド・ロシュの名を冠したエルミタージュ、甘口の珍しいヴァン・ド・パイユまで何でも作る。また、その15%ほどはバルクで他の瓶詰業者に販売される。

私がダニエル・ブリソ(Daniel Brissot)、エルミタージュの丘に生まれカーヴ・ド・タンの畑をこの32年守ってきた人物に恐る恐る、その特徴的なワインを売る難しさについて話したことがある。私は彼が保守的な回答をするのではと予測していたのだが、実際には彼は躊躇なく同意した。「生産者が少なすぎるのです。生産者間の連携がうまくいっていた時期もありましたが、カーヴのメンバーは増えることなく、むしろ減っています。問題は畑の地価が非常に高く、ヘクタールあたり100万ユーロもすることです。そしてこれがワインの価格と同調しない。よりダイナミックなコート・ロティにはまったく及びません。そのため深刻な相続の問題が出てきているのです。」フランスの相続税はこの国のブドウ畑を破滅に追い込み続けているのだ。

カーヴ・ド・タンにブドウを提供している農家のほとんどは他の作物も栽培している。典型的なものとしては杏とサクランボだ。これらの栽培サイクルがブドウと異なるため、動労者をフルタイムで調達することができる。

私がワインについて書き始めたのはほぼ40年前のことだが、当時私の周囲のワイン関係者誰もが夢見ていたワインがあった。それはエルミタージュ・ラ・シャペル・1961、ポール・ジャブレ・エネのものだ。もちろん今ではめったのないことだが、私が幸運にもテイスティングする機会を得たそのようなワインは、ボルドーの伝説の1961を推し量る指標となる。当時の「ジャブ」とは、非常に有名なカリスマ、ジェラール・ジャブレ(Gérard Jaboulet)を指す。彼は国際的なワイン業界で最も知られた人物でもあった。彼は1997年に急逝し、その家族は彼の残した偉大な業績を生かすことはなかった。

そのため2006年にフレイ・ファミリーという、ボルドーのシャトー・ララギューヌも所有しており、最近ではブルゴーニュのシャトー・ド・コルトン・アンドレにも出資している一族に売却された。キャロライン・フレイ(Caroline Frey)の指揮の下、彼らはかつての栄光を取り戻すため懸命に再建に努め、タン・レルミタージュの街にビストロと小売り向け展示場を開き、ラ・ロッシュ・ド・グラン(La Roche de Glun)にある近代的なセラーの資金に充てる意向だ。しかしまだまだ時間がかかっている。

ドゥラスも年々良いワインを生み出しているとはいえ、やはり今の主導者はただ2軒、シャプティエとシャーヴだろう。後者は現在ジャン・ルイ・シャーヴ(Jean-Louis Chave)の経営で、彼は事業を拡大しタンの街からローヌ川を隔てたモーヴの小さな町に自身のネゴシアンビジネスのための新しいセラーを建設している。そしてシャーヴは未だ沈黙を守り、2013をリリースしていない。

エルミタージュのほとんどの生産者が長いこと停滞、あるいは衰退といってもいい期間を経験した今、北部ローヌで今一番注目すべきアペラシオンはサン・ジョセフだという点を彼らも認めるだろう。そこは地価が比較的安く、ヘクタールあたり平均12万ユーロである。これはエルミタージュの丘のふもとのあまり成功の兆しが見えず平坦で機械化が容易で、それゆえに利益の出やすいクローズ・エルミタージュの土地とほぼ同じ価格だ。カーヴ・ド・タンはクローズの半分を生産していることを付け加えておく。

エルミタージュにはイメージ・コンサルタントが必要なのではないだろうか?ワインには一つも悪いところはないのだから。

素晴らしいエルミタージュ2013

素晴らしいポテンシャルを持った多くのワインが涼しい2013年の生育期おかげで生み出され、エルミタージュの全体的な品質はこれまでにないほど良い。単一畑での生産も増えている。

Chapoutier, Ermitage Blanc de l'Orée and L'Ermite

Delas, Dom des Tourettes

Fayolle Fils et Fille, Les Dionnières

Ferraton, Le Miaux and Le Reverdy

Philippe et Vincent Jaboulet

Tardieu Laurent

Vins de Vienne, La Bachole

Chapoutier, Ermitage Le Méal, L'Ermite and Le Pavillon

J L Chave

Yann Chave

Delas, Dom des Tourettes and Les Bessards

Fayolle Fils et Fille, Les Dionnières

Ferraton, Les Dionnières

Guigal, Ex Voto

Maison Nicolas Perrin

Tardieu Laurent

他に類を見ないローヌ2013の一連の記事はロンドンでのテイスティングのあとすぐ追加されると思われるが、「Rhône 2013 - a guide」を参照してほしい。

(原文)

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