The Jancis Robinson Story (ポッドキャスト) | Mission Blind Tasting | Wine writing competition

エルミタージュの抱える難問

• 5 分で読めます
the Hill of Hermitage

これはフィナンシャル・タイムズに掲載された記事のロング・バージョンである。

アンドレ・ジュリアン(André Jullien)がかの有名な世界のブドウ畑の調査を19世紀初頭に行った時、彼は三大銘醸地を迷いなく選んだ。ボルドーのシャトー・ラフィット、ブルゴーニュのロマネ・コンティ、そして北部ローヌのエルミタージュの丘である。しかし今日、前者2つは若いヴィンテージで1本千から数千ポンドで取引されるのに対し、若いエルミタージュの価格が1本100ポンドを超えることはめったにない。

毎年北部ローヌへの訪問時に生産者から聞こえてくる嘆き節の一つは、エルミタージュを売る難しさである。非常に奇妙な話だ。なぜならエルミタージュはシラーの生まれ故郷として広く認められており、今そのシラーは世界中で最も人気の高い品種の一つであるからだ。

最も著名な北部ローヌのシラー主体のワインは二つ。一つはエルミタージュで、その名をタンの街の名前のあとに続ける。そしてもう一つはコート・ロティであり、タンから車で北に45分、アンピュイの街にそびえる急斜面に作られた段々畑だ。

コート・ロティは伝統的に固いエルミタージュに比べて軽くフレッシュだったが、大手生産者であるギガルは1980年代に3つの特別な、非常に凝縮感の高い銘柄を打ち出し、数量を制限して市場に流すことでコート・ロティの商業的な活性化に成功した。それがラ・ラズとして知られるラ・ランドンヌ、ラ・ムーリンヌ、そしてラ・トゥルクである。今やコート・ロティは非常にダイナミックで、アペラシオンには多くの生産者がおり、その多くが若く国際感覚を身に着けた人々で、どちらかというと典型的な伝統製法に従ってワインを生産している。

それと対照的にエルミタージュは一握りの巨大な生産者が優勢だ。アペラシオンの、これ以上拡大できない136ヘクタール(226エーカー)のうち約半分はシャプティエと地元の組合であるカーヴ・ド・タンの所有だ。さらに残りの三分の一はポール・ジャブレ・エネとドゥラス、そして最も有名な家族経営の栽培・生産者であるJ・L・シャーヴが占めている。ただ幸運なことに、これらの生産者は品質に非常に重きを置いている。

シャプティエのエルミタージュ(彼らはErmitageと表現する)の畑は長い間ビオデナミで、そこから生まれる赤も白も劇的に素晴らしいものだ(マルサンヌとルーサンヌから作られる白のエルミタージュは、かつては赤よりも称賛を集め、今でもワインの世界での長きにわたる驚異であり、エルミタージュの生産量の五分の一を占める)。エルミタージュの丘のふもとにあるカーヴ・ド・タンの本部からはビオデナミの畑仕事に欠かせないシャプティエの馬のパドックがよく見える。

そしてそのカーヴ・ド・タンはフランスで最も経営が順調な生産者組合だ。ラングドックの多くの組合と違い、カーヴ・ド・タンは非常に明確なビジョンを持ち、潜在的な市場をしっかりと把握し、最近は豪華な新型の醸造機器に1000万ユーロの投資を行った。35の発酵槽は流行のコンクリートで、難しかった2014のヴィンテージからはパーセルごとの違いやブドウの品質をより精密に区別することができるようになった。そのブドウは合計で1000ヘクタールの彼らとその300に上るメンバーが所有する畑で収穫されたもので、北部ローヌの総生産量の三分の一を占める。彼らはイギリスのスーパー向けのオリジナルラベルから最高品質で彼らの創立者であるガンベル・ド・ロシュの名を冠したエルミタージュ、甘口の珍しいヴァン・ド・パイユまで何でも作る。また、その15%ほどはバルクで他の瓶詰業者に販売される。

私がダニエル・ブリソ(Daniel Brissot)、エルミタージュの丘に生まれカーヴ・ド・タンの畑をこの32年守ってきた人物に恐る恐る、その特徴的なワインを売る難しさについて話したことがある。私は彼が保守的な回答をするのではと予測していたのだが、実際には彼は躊躇なく同意した。「生産者が少なすぎるのです。生産者間の連携がうまくいっていた時期もありましたが、カーヴのメンバーは増えることなく、むしろ減っています。問題は畑の地価が非常に高く、ヘクタールあたり100万ユーロもすることです。そしてこれがワインの価格と同調しない。よりダイナミックなコート・ロティにはまったく及びません。そのため深刻な相続の問題が出てきているのです。」フランスの相続税はこの国のブドウ畑を破滅に追い込み続けているのだ。

カーヴ・ド・タンにブドウを提供している農家のほとんどは他の作物も栽培している。典型的なものとしては杏とサクランボだ。これらの栽培サイクルがブドウと異なるため、動労者をフルタイムで調達することができる。

私がワインについて書き始めたのはほぼ40年前のことだが、当時私の周囲のワイン関係者誰もが夢見ていたワインがあった。それはエルミタージュ・ラ・シャペル・1961、ポール・ジャブレ・エネのものだ。もちろん今ではめったのないことだが、私が幸運にもテイスティングする機会を得たそのようなワインは、ボルドーの伝説の1961を推し量る指標となる。当時の「ジャブ」とは、非常に有名なカリスマ、ジェラール・ジャブレ(Gérard Jaboulet)を指す。彼は国際的なワイン業界で最も知られた人物でもあった。彼は1997年に急逝し、その家族は彼の残した偉大な業績を生かすことはなかった。

そのため2006年にフレイ・ファミリーという、ボルドーのシャトー・ララギューヌも所有しており、最近ではブルゴーニュのシャトー・ド・コルトン・アンドレにも出資している一族に売却された。キャロライン・フレイ(Caroline Frey)の指揮の下、彼らはかつての栄光を取り戻すため懸命に再建に努め、タン・レルミタージュの街にビストロと小売り向け展示場を開き、ラ・ロッシュ・ド・グラン(La Roche de Glun)にある近代的なセラーの資金に充てる意向だ。しかしまだまだ時間がかかっている。

ドゥラスも年々良いワインを生み出しているとはいえ、やはり今の主導者はただ2軒、シャプティエとシャーヴだろう。後者は現在ジャン・ルイ・シャーヴ(Jean-Louis Chave)の経営で、彼は事業を拡大しタンの街からローヌ川を隔てたモーヴの小さな町に自身のネゴシアンビジネスのための新しいセラーを建設している。そしてシャーヴは未だ沈黙を守り、2013をリリースしていない。

エルミタージュのほとんどの生産者が長いこと停滞、あるいは衰退といってもいい期間を経験した今、北部ローヌで今一番注目すべきアペラシオンはサン・ジョセフだという点を彼らも認めるだろう。そこは地価が比較的安く、ヘクタールあたり平均12万ユーロである。これはエルミタージュの丘のふもとのあまり成功の兆しが見えず平坦で機械化が容易で、それゆえに利益の出やすいクローズ・エルミタージュの土地とほぼ同じ価格だ。カーヴ・ド・タンはクローズの半分を生産していることを付け加えておく。

エルミタージュにはイメージ・コンサルタントが必要なのではないだろうか?ワインには一つも悪いところはないのだから。

素晴らしいエルミタージュ2013

素晴らしいポテンシャルを持った多くのワインが涼しい2013年の生育期おかげで生み出され、エルミタージュの全体的な品質はこれまでにないほど良い。単一畑での生産も増えている。

Chapoutier, Ermitage Blanc de l'Orée and L'Ermite

Delas, Dom des Tourettes

Fayolle Fils et Fille, Les Dionnières

Ferraton, Le Miaux and Le Reverdy

Philippe et Vincent Jaboulet

Tardieu Laurent

Vins de Vienne, La Bachole

Chapoutier, Ermitage Le Méal, L'Ermite and Le Pavillon

J L Chave

Yann Chave

Delas, Dom des Tourettes and Les Bessards

Fayolle Fils et Fille, Les Dionnières

Ferraton, Les Dionnières

Guigal, Ex Voto

Maison Nicolas Perrin

Tardieu Laurent

他に類を見ないローヌ2013の一連の記事はロンドンでのテイスティングのあとすぐ追加されると思われるが、「Rhône 2013 - a guide」を参照してほしい。

(原文)

購読プラン
スタンダード会員
$135
/年間
年間購読
ワイン愛好家向け
  • 297,331件のワインレビュー および 16,160本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
  • askJancisへのアクセス(AIワインアシスタント)
プレミアム会員
$249
/年間
 
本格的な愛好家向け

「メンバー」プランの内容に加えて

  • 最新ワインレビューへの早期アクセス(48時間前)
  • 最新記事への早期アクセス(48時間前)
プロフェッショナル
$299
/年間
ワイン業界関係者(個人)向け 
  • 297,331件のワインレビュー および 16,160本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
  • askJancisへのアクセス(AIワインアシスタント)
  • 最新のワイン・レビュー と記事に先行アクセス(一般公開の48時間前より)
  • 最大25件のワインレビューおよびスコアを商業利用可能(マーケティング用)
ビジネスプラン
$399
/年間
法人購読

「プロフェッショナル」プランの内容に加えて

  • 最大250件のワインレビューおよびスコアを商業利用可能(マーケティング用)
  • レビュー依頼用のワインを提出可能
  • 従業員向けにメンバーシップを提供し、一元的に管理可能
  • APIアクセス(※別途料金)
Visa logo Mastercard logo American Express logo Logo for more payment options
で購入
ニュースレター登録

編集部から、最新のワインニュースやトレンドを毎週メールでお届けします。

プライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます。

More 無料で読める記事

Alaverdi Monastery, in Akhmeta, Kakheti
無料で読める記事 この記事はAIによる翻訳を日本語話者によって検証・編集したものです。(監修:小原陽子) ジョージアのワインは驚きを与え続けている...
Markus and Eben Sadie at Berry Bros April 2026
無料で読める記事 この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。 パラディウスのヴァーティカル・テイスティングも参照のこと...
Sam Neill
無料で読める記事 ジャンシスが、これまで出会った中で最も魅力的なワイン生産者を偲ぶ。写真上は、自身のトゥー・パドックスのブドウ畑にいるニール。...
A glass of Sauvignon Blanc at an airport bar
無料で読める記事 第一次審査を終え、今年のライティング・コンペティションの優秀作品の掲載を開始できることを嬉しく思う。選ばれた作品はすべて編集なしで掲載され...

More from JancisRobinson.com

The Crest Vineyard, terroir of Moutou
今週のワイン ドメーヌ・ラファージュのムトゥ(Moutou)はコート・カタラン(Côtes Catalanes)産で、美味しいだけでなく...
Dugladze amber Rkatsiteli, walnuts and shoti, bread cooked on the inside of an oven
テイスティング記事 この記事はAIによる翻訳を日本語話者によって検証・編集したものです。(監修:小原陽子) ジャンシスがこの個性的なワインに飛び込む...
Penfolds Magill Estate chimney and vines
テイスティング記事 ペンフォールズの世界では大柄な赤ワインが依然として主流だが、変化の兆しが見えている。写真上はペンフォールズのマギル・エステート。...
Boscareto vineyard in the snow
テイスティング記事 このアクセスしやすいヴィンテージに関するウォルターのレポートの後編。今回は、カスティリオーネ・ファッレット、モンフォルテ・ダルバ...
Barale estate and vineyards
テイスティング記事 困難なヴィンテージに関する最終報告。驚くほどフレッシュでアクセスしやすいワインに仕上がっている。本日は、複数の村のワインと、ケラスコ...
Valle de Guadalupe vineyards
現地詳報 メキシコのワイン産業は気候変動への対処法について教訓を与えてくれる、とメキシコを拠点とするジャーナリスト兼ソムリエのカルロス・ボルボア...
Richard Hemming and Hiromi Ohno outside Sushi Oono
Vinomakase リチャードの新連載「Vinomakase」では、専門家たちがワインと日本料理をどのようにマッチングさせているかを探る。第1回は...
Hops hang from the ceiling at Dylan's at The Kings Arms in St Albans
Bite-sized セント・オールバンズの大聖堂地区にある15世紀のパブで、最新の料理を堪能できる。 フロント・バーは今も安心できるほどパブらしさを保っている...
JancisRobinson.comニュースレター
最新のワインニュースやトレンドを毎週メールでお届けします。
JancisRobinson.comでは、ニュースレターを無料配信しています。ワインに関する最新情報をいち早くお届けします。
なお、ご登録いただいた個人情報は、ニュースレターの配信以外の目的で利用したり、第三者に提供したりすることはありません。プライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます.