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正しいワイン旅行者になるには

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この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

ワイン・ツーリズムがかつてない盛況をみせ、珍しいワインにはよくあることだが、帰宅して鉛色の空の下で飲んでみたら全く印象が異なるといういたずらがあったとしても(これはワインの嗜好に主観が大きくかかわる例と言えるかもしれない)現地で購入したボトルは購入者にとって特別な意味をもつ。

そこで一年のこの時期に、訪問試飲する際のエチケットを紹介することは有用だと考える。まずどのような条件下でも当てはまる以下の警告は、ワイン・テイスティングと銘打ったイベントで、あるいは理想的には上質なワインが提供されると思われるディナーの席でも考慮してほしいものだ。

香りというのはワイン・テイスティングでは最も大切なものだ。嗅球は非常に感受性の高い味覚の感覚器である脳の入り口にある器官で、鼻の最上部にあり、ワインの香りを構成する一連の複雑な香りのメッセージは、そこを通じて我々の感じた香りを伝達する。我々が口の中で感じるものはワインの性質ではなく、その構成要素だ。どれほど甘いか、酸っぱいか、タンニンが強いか(腰が強い(Chewy)か)、苦いのか、アルコールが強いのか、という感覚なのである。

そのためワインをテイスティングする際は必ず最初にゆっくりと香りを嗅いでほしい。できればワインをグラスの中で回し、香りの成分、すなわち香りのメッセージを解き放つと良い。香りの感覚をノーズ・クリップや重度の風邪で失うと、テイスターは例えばすりおろしたリンゴと玉ねぎの区別すらできないという研究結果が数多く示されている。

このことは邪魔になる香りを最小限にすることが思いやりであり、礼儀である理由だ。すなわち、あなた自身が清潔であること、煙草を吸ったり、煙草の匂いが服にしみついていたりしないことを意味する。だがそれだけではなく、出発前の浴室や寝室での配慮も意味する。強い香水はワイン・テイスティングそのものを言葉通り台無しにする。先月ロンドンで開催したテイスティング講座の後に私が受け取った次のようなメールを見れば明らかだろう。「昨晩はクリスティーズのテイスティングであなたに再びお目にかかることができ、大変うれしかったです。しかもあなたから2列目の席に座ることができたのですから。ところがあの夜途中で私とあなたの間に女性が座った瞬間からあなたが彼女の強烈さに(私同様)落ち着きを失ったのではと思わずにはいられませんでした。あの強烈な香水に!おかげであの日はほぼ台無しになりました。」

ワインのイベントに女性が参加することが当たり前になると、アマチュアでもプロでも、男性から苦情が出るのは女性の香水なのだが、一方でアフターシェーブ・ローションの強烈な香りもまた大きな邪魔であり、非難の対象であることを言わせてもらいたい。念頭に置いていただきたいのは、香水やそのたぐいのものを付けている本人は慣れてしまってそれを感じなくなっているという点だ。周囲の私たちにとってそれは深刻な妨害物質なのである。

ワインをテイスティングする会場に強い香りのするユリはもちろん、めったに花が置いていないのはこれが理由である。そしてワイン・テイスティングを行う部屋は事前に積極的に換気される理由だ。ブルブルブル・・・

さらに議論の対象となるのが食べ物の香りだ。アロマ・ポリスと言うべき人々はプロ向けにワインのテイスティングを行う同じ部屋で食べ物が提供されることに否定的だ。最近ロンドンのレドンホール・マーケットで開催された南アメリカワインの大規模なテイスティング会場の片隅から漂うバーベキューの肉の煙には眉間にしわを寄せる人もいた。だがもちろん、ワインは食べ物と一緒に楽しむために作られている。だから私は個人的には食べ物に関わる香りにはやや寛容だ。

ワイナリーやセラーを訪れる際にももちろん、香りの問題に気を遣う必要があるが、他にもお作法がある。まずは訪問のタイミングだ。ヨーロッパ、とくにフランスでは、ランチタイムを避けることが賢明であり、ほぼ必須であると言える。訪問の予約は事前にするのが理想的だ。最近の生産者のほとんどは連絡先を明記したウェブサイトをもっている(当サイトの「Learn」のページには個々の生産者の情報を紹介する各地のウェブサイトの一覧が掲載されている)。有名なワイン産地、ブルゴーニュの最も有名な村のように需要が供給を大きく上回るような場所では特に、現地にのみ「テイスティングと販売あり(dégustation and vente)」と掲げられている場所もあり、予約せずに訪問することができる。ただし、そのような自由な環境で本当に素晴らしいワインに巡り合うことができるのはとんでもなく幸運な場合だけだ。

ワインの世界で、フランスの多くの地域も含むそれほど有名でない地域ではワイン生産者は想定外の訪問者が現れた場合に大喜びすることもある。彼らの多くにとって商品を売ることは作ることよりもはるかに、はるかに難しいのだ。あなたは彼らの術中にはまることになるだろう。またワインの世界の生産者の多くはファーム・ゲート、あるいはセラー・ドアと呼ばれる現地販売に強く依存している。イギリス、ニューヨークのフィンガー・レイク、ニュー・サウス・ウェールズのハンター・ヴァレーなどは人口の多い都市部から容易にアクセスできるわかりやすい例であり、以前Being a tourist in the Napa Valley で紹介したようにワイン・ツーリズムが広く受け入れられている地域だ。これらの地域でのワイン・テイスティングは基本的に予約・課金制であり、ワイン・ツーリズムの最も進化した形であると言える

一方ヨーロッパのワイナリーやセラー訪問は遥かに洗練されておらず、生産者自身が案内を行うことが多い。だが、誰がワインを注ぐにしても順番としては品質が低いものから高いものになる。だから最初のうちは絶賛の言葉は飲みこんだ方が賢明だ。最初のワインには喜びと尊敬をもって接するべきだが、情熱のピークをそこに持ってこない方が良い。

もしホストがワイン・シーフ(wine thief;訳注・ワイン泥棒の意)を使って樽からワインを抜き出すことがあれば(上の写真参照;オスピス・ド・ボーヌのセラーでジョン・ワイアンド撮影)、自分の分を受けやすいようグラスを準備し、残りは樽に戻すことを申し出よう。

また、特に2軒以上の訪問を予定している場合は、人目をはばからずワインを吐き出すことができれば非常に有用だ。ワインの生産者とスタッフは訪問者は吐き出すものだと思っており(事前に洗面所で練習しておくとよい)、通常は吐器や吐き出すべき場所を示してくれる。気を付けなくてはならないのは、生産者がグラスの残りを別の容器に集める場合がある点だ。想像に難くないように、グラスの残りの中に吐き出すことは重大な罪となる。

通常白ワインから始まりロゼ、赤と進むが、これはグラス一つだけが提供されることが理由であり(ワインのプロは色の異なるワインに同じグラスを用いることはいとわない)、視覚的にも妥当な進行である。だが一部の地域、例えばボルドーやブルゴーニュの高級な産地では白ワインを赤ワインの後に提供するのが通例だ。最善の策は何事にもけして驚きを見せないことである。単純に注がれたものを感謝して受け取ればよい。

それからワインをテイスティングする直前に歯磨き粉を使ってはならない。ワインの味をひどいものにするからだ。「wine and teeth」でも紹介したように長時間のワイン・テイスティングのあとも、すぐに歯を磨くのは避けるべきだ。酸によって弱まったエナメルを傷つけてしまう。

テイスティングおよび訪問時のエチケットまとめ

予約をする
香水やアフターシェーブ・ローションを使わない
ワインを回し、嗅いで、すすって、吐き出す
歯磨きをする際は要注意

(原文)

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