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ポーランドの発展するワイン文化

Saturday 4 February 2017 • 5 分で読めます
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この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。 Wines with real Polishも参照のこと。

大人になってからのほとんどの期間を振り返ってみると、ヨーロッパで行ったことのない国はポーランドだけだった。ヨーロッパの他の国とは異なり、ポーランドではまともなワインを作っておらず、私から見るとそもそもワインを飲むことにすら興味を持っていないように思われていた。私の知る限りポーランドとワインの交差する唯一の点は19世紀にブドウを栽培していたシレジア人たちが宗教的迫害から逃れるため南オーストラリアのバロッサ・ヴァレーに移住したことだけだ。(そしておそらく最も有名なポーランド系のワイン生産者はワレン・ウィニアルスキー(Warren Winiarski)で、彼は1976年かのフランス対カリフォルニアワインの対決で勝利したナパのカベルネを作った人物だ)

ところが、近年のポーランドでは急速にワイン文化が発達しつつある。スティルワインの売り上げはこの10年で約60%もの上昇を見せているのだ。昨秋ついにポーランド訪問を達成した際にはポーランドにはドイツよりも多くのワインバーがあると聞かされた。ただし、その時のホスト達はもしかしたら最も客観的な類の人々ではなかったかもしれない。私をクラクフ(偶然にもブリティッシュエアウェイズがワインを買い入れることが決まった地域だ)に招いたのは今ポーランドで最も輝いている2冊の消費者向けのワイン雑誌の一つ、ツァス・ヴィナ(Czas Vina)だからだ。その数はイギリスと同じで、フランスよりも一つ多い。

おそらくポーランドを初めて訪問したイギリス人でこの国とその町がこれほど栄えていることに驚いたのは私が初めてではないだろう。イギリスの多くの街よりもはるかに栄えているのだ。おそらくワインを飲む文化の成長はこの繁栄を映すものであり、ポーランド人がライアンエアーを多く利用しそのマイルを貯めていることの結果でもあるのだろう。

滞在中ポーランド人のワインに関わる女性の団体、コビエティ・イ・ウィノ(Kobiety I Wino)を訪問したが、私はワインのプロの団体でこれほど活発なものに遭遇したことはない。今でもコビエティ・イ・ウィノ・ブランドの製品が私の持ち物のあちこちに顔を見せている。上のモノクロ写真はその協会の長を務めるモニカ・ビエルカ・ヴェスコヴィ(Monika Bielka-Vescovi;彼女はかつてアメリカでソムリエとして働いていた)とのもので、私はツァス・ヴィナが私をワイン・パーソン・オブ・ザ・イヤーに指名してくれた際にくれた帽子をかぶっている(残念ながら白黒ではクジャクの羽の美しさはお楽しみいただけないが)。

気候変動の影響もあって、ポーランドは消費だけではなくワインの生産も行うようになってきた。中世前期、はるかに温暖な気候だったころにはポーランドはブドウの栽培を活発に行っていたのだが、気温が下がるにつれそれはビールとスピリッツにとって代わられた。現在はポーランドとなっている(当時はプルシアだった)南西部のシレジア人の中には自家消費のためのワインを作っているものもいたが、ポーランド人は基本的にワイン、特にハンガリーワインの輸入者であり、彼らのお気に入りは有名なデザートワインであるトカイだった。

16世紀から18世紀にかけて、ハンガリーのワインはひ弱なフランスワインと比べてはるかに魅力的な甘みと、スパイシーで力強さを備えていると捉えられており、多くのワイン商は、特に南部にあるクラクフでトカイを樽で輸入し、彼ら独自の考えでそれを熟成させることで(それ以外に方法があるとは思えないが)さらに品質を上げていた。現在でもポーランド人にとってハンガリーワイン以上に優れたワインはないと言わしめる所以だ。

18世紀終盤のポーランドでは、ハンガリーとの貿易が減ってフランスワインが流行したため、ポーランド人の貴族たちは1世紀以上熟成したものを含めトカイをすべて売り払ってしまった。だがワルシャワのワイン商フキエ(Fukier)は世界最高のトカイのコレクションを誇り、最古のものは1606までさかのぼる。残念ながらフキエのようなワイン商は多くが1920年代に破産し、それらのコレクションはドイツ人、続いてはロシア人が略奪したため、それらのボトルの行方は私の友人でトカイの歴史専門家であるヒュー・ジョンソンをもってしても杳として知れない。現在のフキエは有名なレストランとなり、モダンなポーランドで開催されるワインのイベント会場としても使われている。

旅の最初の数時間はポーランドの地下150mにある岩塩抗で過ごすと聞いて驚いたのだが、これこそが繁栄するクラクフのツーリズムの目玉であり、ユネスコの世界遺産にも認定されているものだった。その岩塩抗をくりぬいて作られた写真の巨大な教会は結婚式場として人気となっている。

私の訪問はもちろんワインに関係してのものだったため、この岩塩抗では最高の給仕による最高のランチがフィリポナのクロ・デ・ゴワセ・シングル・ヴィンヤードでの食前酒に続いて提供された。ランチのワインは近くにウィーウェスカ(Wieliczka)ヴィンヤードを所有するアグニエスカ・ワイロベク・ルソー(Agnieszka Wyrobek-Rousseau)直々の提供だった(岩塩抗の上120mにある、というのが彼女の表現だ)。彼女のワイナリーはポーランドで唯一ヨーロッパ系ヴィティス・ヴィニフェラのみだけを植えている。シャルドネはまさにそれと認識できるものだったし、最初の収穫だと言うメルロはアルコール度数を上げる補糖をせずに12%だったが、さらに称賛に価するものだった。

厳しい大陸性気候のポーランドに植えられているほとんどのブドウはソラリスやロンド、あるいはレゲント(フレンチ・オークでの熟成に耐えうると考えられている)などのような交配種だ。これらはポーランドの厳しい冬が来る前に成熟させることが可能だからだ。一方、ブルゴーニュの赤用品種であるピノ・ノワール(ドイツのガイゼンハイムからもたらされたもの)の人気がじわじわと上がってきている。公式に登録された商業的なブドウ畑は150以上に上り、ブドウが植えられている面積はおよそ200ヘクタールだ(参考までにイングランドとウェールズの畑の2013年時点での面積はそれぞれ1571と537ヘクタールだ)

現在ポーランドでのワイン人気が非常に高いため新しい畑が増えており、まだ生産できる状態ではないものも多いが、一部の見解ではポーランドのブドウ畑が1000ヘクタールを超えるのも時間の問題だとのことだ。

ワイロベク・ルソー(Wyrobek-Rousseau)はこの国で修業したたった二人のエノロジストの一人だが、一方で35年も前にブドウを植えゴレス・ワインズ(Golesz wines)を作った写真家のローマン・ミスリウィエカ(Roman Myśliwieca)にも出会った。彼は現代に入って最初のポーランド人醸造家の一人であり、今もワイン業界に参入してくる人々にアドバイスを与えている。

ほとんどの畑はこの国の南部にあるのは言うまでもないが、北部の海沿いにも一つ畑がある。海洋性の気候が生育期を延ばす助けになる土地だ。ポーランドの醸造家は2015にはこれ以上にない爽やかな気候を満喫したが、昨年はいくつか大きな衝撃を受けることとなった。

非常に楽観的なポーランド人のワイン愛好家でさえ、この国の全人口3800万人のうち、たったの100万人程度しかこの国のワインブームを支えている人はおらず、そのほとんどが都会に住む人たちだと言うことを認めている。しかし彼らはこれ以上になく熱心な愛好家だ。すでに世界的な教育機関であるWSETのプログラムが4つ以上のワインスクールで運営されている。私がそこでの時間も楽しみ、テイスティングした16種のポーランド・ワインから厳しい気候の影響を払拭すべく真摯に取り組んでいる姿を垣間見ることができた。ウォッカと有名なバイソン・グラスを漬け込んだ飲み物がこの国の食後酒の定番だ。

偶然にもポーランドのシードルは同様にブームだ。かつてポーランドのリンゴの70%を輸入していたロシアもそうだったのだが、現在は下火である。ポーランドのシードルを飲むことはジョージアのワインを飲むのに似て、反ロシアの愛国的な行動とみなされるのは言うまでもない。

卓越したポーランド・ワイン
パープル・ページの会員はWines with real Polishですべてのテイスティング・ノートを見ることができる。

Pałac Mierzęcin Riesling 2015
まさにリースリングの味わい。

Turnau Riesling 2015
オフドライでまちがいなくリースリングと認識できる。北西部にあるこの大きな生産者は有名な歌手の所有。

Płochockich, Inspira Volcano 2013
強烈な、ハンガリーに刺激されて作った白ワインでドイツの交配種、チェコで広く使われるHibernalを用いている

Miłosz Pinot Noir 2014
驚くほどにブルゴーニュスタイル。詩人に転向したジャーナリストが作る。

Wieliczka Merlot 2015
ヴィティス・ヴィニフェラのみでワインを作る生産者の尊敬に値する単一品種ワイン。

Golesz, Feromer 2011
実は2011ではなく、酒精強化した2009と2013のブレンド!

(原文)

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