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ワイン専門保管倉庫

Saturday 10 March 2018 • 6 分で読めます
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この記事のショート・バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。世界でどこにワインを補完すべきかも参照のこと。

イギリス人の間では今その信頼に曇りが見えているかもしれないが、我々が世界をけん引してきたものの一つがワイン専門保管倉庫だ。オリンピック種目のように市民権がないのは残念だ。

冷涼な気候と何世紀にもわたる高級ワイン貿易における実力、そして何よりも都合よく再利用された地下軍需貯蔵庫の組み合わせは世界中の多くのワイン収集家がその貴重なワインをイギリスの地(時にはその地下)にある保税倉庫に保管するよう導いてきた。故バロネス・フィリピーヌ・ド・ロートシルトはかつて彼女のシャトー・ムートン・ロートシルトは冷涼なイギリスで保管したものの方がボルドーで保管していたものより美味しいと断言していたほどだ。

もちろん、その資金さえあればアメリカ風に自身の豪華なワインセラーを作るということもできるが、大都市では必ずしも可能とは言えない。実際多くのアメリカ人ワイン愛好家は少なくとも彼らのコレクションの一部をイギリスで保管している。一方カリフォルニアのコレクターやワイン専門家は2005年、ベイ・エリアのワイン倉庫経営者が自身のごまかしの証拠を消すためにワイン倉庫に火をつけ、450万本の高級ワインを灰にした事件に震撼した。イギリスの主要なワイン保管施設はワイン愛好家のためにその在庫を50か国以上から預かり、ワインが最高の状態になるまで時間を要するという特性の恩恵を受けている。

だが、このようなイギリスのワイン専門保管倉庫は現在世界中からの競合という脅威にさらされている。約10年前に関税がほぼゼロとなって以来、香港はアジアの高級ワインのハブとなった。かつてはこの植民地の愛好家たちは当然のごとくワインをイギリスに保管していた。とりわけ2004年まで香港にはワイン専門保管倉庫が一つもなかったためだ。現在香港では44以上ものワイン専門保管倉庫が香港当局に公式に登録されている(高級ワインの保管にふさわしいものについてはWhere to store guideに一覧にしてある)。

赤のボルドーは最も代表的なワイン投資の対象だ。これまでワインをイギリスに保管してきた個人の投資家たちは次第にボルドーにある保税倉庫を使うようになってきた。これは規制が緩み、倉庫の数がボルドーに増えてきたためだ。デュクロ(Duclot)やジョアンヌ・アンド・ミレジマ(Joanne and Millésima)のようなワイン商がサービスの一環として保管場所を提供しているだけでなく、ボルドー・シティ・ボンド(Bordeaux City Bond)のように世界中の個人顧客を明確なターゲットとし、ヴィネクスポの背後にいる人々が一部出資している特注の施設すらある。

LCBディントン(LCB Dinton)のようにソールズベリーの近くにある15軒ものかつての国防省の貯蔵庫をワイン倉庫に作り替えたものは別として、最近ワイン倉庫業界に参入したものは地上にある。このことはすなわちエネルギーのコストはかかるが過剰な湿度のリスクは避けられることを意味する。

最近の住宅ではワインにふさわしい保管場所はどんどんなくなってきている。ワイン保管は温度が非常に重要で、安定した13度程度の温度が理想的であり、20度を超えると特にデリケートなワインには悪影響が出る可能性が示唆されている。温度が高ければ高いほどワインの熟成は早くなるとされている。また0度よりはるかに低い温度ではワインは凍って膨張し、最悪の場合はコルクをボトルネックから押し出したり、ガラス瓶を破裂させたりする。

ワインが湿度を好むのはコルクを湿った状態にするためだがワイン・バイヤー、特にアジアの人々はラベルに汚れがないものを好むため相対湿度70%程度がワインには理想的であるとされる。イギリスの地上にある一流の高級ワイン保管施設でバートン・オン・トレントにあるヴィクトリア調の古い麦芽製造施設を使ったLCBヴィノテーク(LCB Vinothèque)は「イギリスで唯一の完全な環境制御機能を備えたワイン倉庫」であることを誇っている。

LCBはロンドン・シティ・ボンドの意味で、ロンドン東部バーキングに取引用の通常在庫を補完している。彼らの目下のライバルはオクタヴィアン(Octavian)で、ウィルトシャー州コーシャム近郊にある元軍需貯蔵庫を地下に所有し、ワインをケースで出し入れするためにはラック式の鉄道を使うことになる(下の写真は地上階から見たところだ)。

だが、ここでワインが動くことはあまりない。多くの木箱は数年ごとに持ち主が変わる。例えば同じイギリスのワイン商の顧客間だったり、シンガポール人がロンドンでワインをオークションにかけそれをアメリカ人に売った場合だったり。だが箱そのものは地下深くに眠り、所有者のラベルが張り替えられるだけだ。

20世紀後半に数件のイギリスのワイン商が倒産したことからもわかるように、所有権を持つ個人顧客にとってワインの各ロットがきちんとその現在の所有者を明確にする証を備えていることは非常に重要だ。このことはとりわけ、顧客にそのワインを彼らの倉庫(実際には専門の第三者機関に当たることがほとんどだが)に保管することを勧め、さらに顧客同士でそのワインを取引するよう仕向けているイギリスのワイン商にとって非常に重要だ。LCBのジェレミー・ピアソン(Jeremy Pearson)が言うように、彼らにとって「今日のプリムールでの売り上げは明日の取引につながる」のだ。

自社の保税倉庫を持っている数少ないイギリスのワイン商のうち二つはベイジングストークに所有し、ことさら保管状況の細かな確認と信頼性を強調しているベリー・ブラザーズ・アンド・ラッドと、サフォークに倉庫を所有し、その立地から保管料の競争力が高いサックフォードだ。その近代的な施設をスティーブニッジに所有しているザ・ワイン・ソサイエティは同様な理由ですでに満杯になってしまったため彼らから購入した顧客からのワインに限って保管している。

また、努力を重ねているワイン商と言えばプライベート・リザーブスで、保管はオクタヴィアン(上の写真、コーシャムにある地下施設)に依頼しているものの、ワイン商ジョニー・グッドハウスの妻ローラが運営している。彼女によるとかつてのOWロエブの顧客たちの多くが最近になってその在庫を彼らの元に移動しているそうだ。設立30周年を記念し、プライベート・リザーブスは今年の4月1日までに保管場所を彼らの元へ移す場合荷揚げ料と保管料の大幅な免除を提供する。4月からの彼らの保管料はVATを含んで12本1ケースあたり年間13.5ポンドであり、さらに彼らが誇るのは6本1ケースの料金設定もあることで、6.75ポンドとなっている(最近は高級ワインの価格の高騰が激しいため、6本1ケースでの販売増えているためだ。こちらを参照のこと)。一方LCBは1本あたりで課金している。

私たちのまとめたワイン倉庫案内には13か国100種類以上の手法が記載されており、そのうち28はイギリスの様々なワイン商や配送業が提供するものだが、一握りの施設を共有している。ワインをそこからいかに安く引き出し配送できるかは施設によって異なる。提供される細かな条件を比較していくと気が狂いそうになるが、そのうち最も有用であると思われる施設は下記にまとめてある。

これらの多くは保険(オクタヴィアンはアカウントあたり5億ポンドまで)もその料金に含んでいる一方、LCBは保険詳細を確認し、取り違えに関する保険契約のみ顧客の名前で行うこととした。それに伴いケース当たりの料金を下げ、そこに総額に応じて異なる保険料を加えることとした(例えば年間100ポンドで5万ポンドまでのワインを保証するなど)。

イギリスのワイン専門保管倉庫は保管されているワインの高級ワイン取引所ライブ・エックス(Liv-ex)を通じた査定やオンラインで個々の顧客やコレクションにアクセスできる仕組み提供するようになってきた。だが、詐欺師たちもそのほんの半歩後ろに迫っている。ワインをどこに保管するのか選ぶ前にしっかりとした安全性の確認をすることは必要だ。

ジェレミー・ピアソンはそのワイン保管者、そして厳密には配送者としての長いキャリアの終盤にあるが、彼曰く最近は「ワイン商や代理店、ブランドオーナーなどと配送手段を提供する企業との間のバランスが変わり、その信用は配送業者が業務を行うためのシステムによるコミュニケーションとダウンロードに依存しています。ワイン業界は売り上げとマーケティングに注力する必要があること、それには配送業者との密な連携が不可欠であることに気づくまでに時間がかかりました。先日のケンタッキー・フライド・チキンに起きた騒ぎを見れば配送業者の重要性がわかるでしょう!」

著名なワイン貯蔵施設

イギリス
Berry Bros & Rudd
LCB Vinothèque
Locke-King Vaults
Octavian
Seckford
The Wine Society

アメリカ
Domaine Wine Storage, DC
Western Carriers, NJ

フランス
Bordeaux City Bond

ホンコン
Crown Wine Cellars and many more

オーストラリア
MacPhee's
Wine Ark

オクタヴィアンによる最近の高級ワイン貯蔵施設の発展まとめ

・飲むためではなく投資のためにワインを購入する個人顧客の大規模な増加

・詳細な情報や保管場所の視察の要請が高まっている。

・2012年以降ボトルの写真(状態や液面などの確認のため)を求める件数が月間500件から7500件に増加

・梱包の大きさにばらつきが出るように。2012年には保管しているワインの80%は12本入りだったが現在その比率は50%を少し上回る程度。

・特に高価なワインについてはケースごとにその証明を求めるケースが増え、その確認に多くの時間と労力が必要。そろそろ業界標準のシステムを導入するべきか。

・少なくとも1件、個人顧客がオクタヴィアンにあるコレクションの一部を担保にアメリカの銀行に数百万ドルの融資交渉を行っている。

(原文)

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