ヴォルカニック・ワイン・アワード | The Jancis Robinson Story (ポッドキャスト)

追悼・セルジュ・ホシャール

2015年1月1日 木曜日 • 3 分で読めます
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悪い知らせと言うものは恐ろしく速く伝わるものだ。電話口からその震えが伝わるマイケル・ブロードベントの知らせで私はシャトー・ミュザールのセルジュ・ホシャール(Serge Hochar)が新年の休暇中に水泳中の事故で亡くなったことを知った。彼は11月に迎えた75歳の誕生日をメキシコのアカプルコで祝っていたそうだ。1時間前のその電話の頃にはツイッターはすでにこの並外れた人物の話で持ちきりだった。

セルジュはワイン生産者の枠にとどまらない人物であり、レバノンで最も有名なワイナリーを支える原動力でもあった。彼は強い精神力の持ち主であったが禁欲的というわけではなく、実際にはいい意味で茶目っ気たっぷりの人物だった。常に快活で、人間の性質を表面だけではなく深く理解している印象を与える人物だった。彼と時間を共にする機会は多くあったが、どんな場合でも非常に楽しく、ワインのみならず多くのことを語り合った。

私が彼と最も密度の濃い時間を過ごしたのは1980年の9月にまで遡る。見方によっては「無謀にも」彼が私と故トニー・ロード(Tony Lord)、当時のデカンター誌の編集者をレバノンの彼の家族経営のワイナリーに招いたときのことである。我々はベイルート郊外にある彼のワイナリーに辿り着くまで武装した検問所をいくつも通らねばならなかった。市街地の壁には当時すでに戦争の傷跡が刻まれていたが、レバノン人の心は生き生きとしていた。彼は最初の夜、街を見下ろす魅力的な屋外のレストランへ連れて行ってくれた。はるか遠くから不吉な音が鳴り響き、それに続く光が数分間瞬く間、誰もまばたきできなかった。私はセルジュが地元のスペシャリテである生レバーをしきりに勧めてくれたのを覚えている。それに抵抗しなかったのは私の大きな間違いだった。

私の記憶が確かなら、セルジュはレオニダスのチョコレートショップを彼が住んでいたアパートの1階にあった瀟洒なブティックで経営していたが、ワインに関しては当時ブドウを栽培していたベッカー・ヴァレーからベイルートにある彼のワイナリーまで、内戦中の1975年から1990年の間ずっと、トラックでブドウを運び続けたことで最も知られているだろう。その直接的な結果として、1984年に出版者であるコリン・パーネル(Colin Parnell)がセルジュをデカンター初のマン・オブ・ザ・イヤーに認定し、彼は以来その後継者たちの選抜と表彰に携わってきた。我々は本当に、心から彼の死を悼む。

シャトー・ミュザールはセルジュの父、ガストン(Gaston)が1930年に最初のブドウを植えて設立した。とりわけ第二次大戦中レバノンに駐在していたシャトー・レオヴィルバルトンのロナルド・バルトン(Ronald Barton)に強い影響を受けている。ガストンの長男はもともとエンジニアリングを学んでいたが(これはセルジュの息子、ガストンとマークも同じである)、すぐにボルドーのエミール・ペイノーの元で学ぶことを決意した。彼は何とか父を説得して隠居させ、1959年から正式にシャトー・ミュザールの醸造家となった。この時に「自分のやり方でワインを作りたい。そしてそれを世界中に知ってほしい」と述べている。

彼はこの二つの目標をみごと達成し、1977年までにはミュザールの赤ワインのレシピを開発したと述べている。ミュザールのワインは世界でも最も特異なワインと言える。誰もがそれを好きになるか、戸惑うか、のどちらかである。まるで現代のワイン作りの流行から逸脱していることを誇りに思っているかのようなのだ。どの色のワインも(そして比較的早くから茶色の色調を見せるが)どのワインよりも長く熟成するように作られており、彼らのウェブサイト、www.chateaumusar.com によると1950年代のワインもまだ販売しているというのだ。更に彼らは異論をはねつけるほど頑固に人の手を加えないことに喜びを感じているようだ。赤は古木で株仕立てのカベルネ・ソーヴィニヨンとカリニャン、サンソーのブレンドで、非常に独特な深い黄金色をしたワインはオークで発酵した地元のオバイデ(Obaideh)種とメルワー(Merwah)種のブレンドである。

ホシャール家とブロードベント家の結びつきは非常に強く、マイケルがシャトー・ミュザール1967を1979年のブリストル・ワイン・トレード・フェアのセミナーの後に「美の発見(the find of the fair)である」と述べた時からの付き合いだ。マイケルはロンドンのヴィントナーズ・ホールで開催した自身の誕生パーティでミュザールを振る舞ったほどだし、数十年にわたってアメリカでミュザールの代理店を務めていた彼の息子、バーソロミュー(Bartholomew)は、「もう一人の父」の死を嘆き悲しんでいるとソーシャル・メディアで述べている。

セルジュの息子ガストンは今シャトー・ミュザールで日々のワイナリー業務を統括し、彼の弟マークは経営面を伯父のロナルドから引き継いでいる。彼らの今後の幸運を深く深く、心よりお祈りする。

原文

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