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テヌータ・ディ・トリノーロ、トスカーナの変わり者~TT

Thursday 1 January 2015 • 4 分で読めます
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TT:木曜特別シリーズの意。最近の事例に関連のある過去の記事を再掲するコーナーです。

2015年1月1日 ハッピーニューイヤー!元旦であっても木曜特別シリーズは健在である。2002年に掲載したアンドレア・フランケッティの紹介を、来週掲載予定のイギリスのインポーターであるコーニー&バロウが開催したトリノーロのヴィンテージ・テイスティングの記事に備えて再掲する。

2002年3月8日 自身がワイン作りに取り組む前の人生をこんなふうに話すとは、魅力的と言わざるを得ないほど率直なワイン生産者である「以前はローマでレストランを経営していて、82年から86年まではニューヨークでイタリアワインの流通に関わっていたけど、その前のことは夢の中のことみたいで全く思い出せないんだ。」

アンドレア・フランケッティ(Andrea Franchetti)の風貌は若き日のイヴ・サンローランを思い起こさせる。すらりと背が高く、度の強い眼鏡をかけ、亜麻色のボサボサ頭でぼんやりとした印象だ。彼のスピーチはつぶやきとワシントン州訛りの唸り声の中間のようなもので、それを歯の隙間から捻り出す。彼には映画スターとしての成功もあり得たのだが、現在は自身の独特な世界であるテヌータ・ディ・トリノーロ(Tenuta di Trinoro)に心酔している。テヌータ・ディ・トリノーロは1992年に栽培を開始したことを考えると現時点でかなりの名声を手にしていると言えるだろう。

彼には母方がサウスカロライナで築き上げた繊維業による資本があり、叔父は芸術家のサイ・トンブリー(Cy Twombley)である。チンザノ社およびモンタルチーノのワイン生産者であるアルジャーノやコル・ドルチャを所有する一族とも遠縁にあり、彼がイタリア中央部の、何世紀もの間ブドウが植えられたことのない羊の国に引き寄せられた一因はこれなのかもしれない。

テヌータ・ディ・トリノーロはブドウ栽培地としては孤立した場所、ちょうどフィレンツェとローマを結ぶ高速道路のすぐ西のサルテアーノ近くの谷にあり、トスカーナ、ウンブリア、ラツィオの州境に位置する。フランケッティはそこを「ローマから北に向かって最初に出会う石灰岩の山の東側にある、海との間には死火山しかない辺鄙な土地」だと言う。標高600mのモンテ・アミアータによってフランケッティのブドウと羊は守られ、夏は暑く、12月になっても葉は落ちない。「天候は僕らの周りを巡っているんだ」ブドウを長いこと樹上に残し、現代のワイン愛好家が愛してやまない幾重にも重なる香りの層を作ることをいとわないフランケッティはこう表現する。彼の2001年のブドウは昨年11月初旬に彼とロンドンで会った時点でまだ収穫されておらず、彼はまだ非常に若いワインを大きなボトルで自慢気にふるまっていた。

私がフランケッティを好きな点は(偏屈な映画スターのような見た目以外に)その強情さである。彼は自分が好きだという理由だけで、見過ごされがちなカベルネ・フランにあえて注力しており、ボルドー人はこの品種を軽んじすぎだと考えている。一方、彼はもう一つのボルドー品種であるプティ・ヴェルドがおそらく彼の土地、それぞれ8ヘクタールの「グラーヴ」と「コート」(彼はサンテミリオンの土壌の命名法に倣っている)で最もうまくいく品種である点も認めざるを得ず、相当数を栽培している。

ここではカベルネ・ソーヴィニヨンは従属的な役割でしかなく、流行のメルローも甘んじて屈辱を受けている。メルローとカベルネ・フランのブレンドであるパラッツィ(Palazzi)がアメリカで絶賛され、数度に分けて作った1000ケース全てを売ることができたにもかかわらず、彼は完全にそれをやめるというのだ。

「パラッツィは複雑さに欠けていたんだ。どうして続ける必要がある?」というのが彼の理由である。そのため1999がパラッツィの最後のヴィンテージとなった(1998はアメリカのワイン教祖、ロバート・パーカーが93点を付けている)。彼はメルローを引き抜く予定はないが、プティ・ヴェルドの面積を増やし(「ボルドー人でさえボルドーよりここの方がいいって認めたんだ」)、最終的にテヌータ・ディ・トリノーロの1/4をこの品種で構成する意向だ。

2000年以降、彼はたった一つの旗艦ワインであるテヌータ・ディ・トリノーロ(約600ケース、カベルネ・フランに他のボルドー品種のブレンド)と、2000ケース以上のセカンド・ワイン、レ・クーポレ・ディ・トリノーロ(Le Cupole di Trinoro)だけを作っている。www.tenutaditrinoro.it によると、クーポレのブレンドはきっちり78%のカベルネ・フラン、11%のメルロー、6%のチェサネーゼ・ダフィーレ、5%のウーヴァ・ディ・トロイアとなっているが、イギリスのインポーターによるとその比率は23%のカベルネ・フラン、19%のメルロー、23%のウーヴァ・ディ・トロイア、35%のカベルネ・ソーヴィニヨンとなっている。どちらを信じるかは読者の皆さんに委ねる。

私が初めてフランケッティに会ったのは、彼の偉大な友人であるサンテミリオンのシャトー・ヴァランドローのジャン・リュック・テュヌヴァンと共に2000年代のテイスティングをしていた長い一日の終わりごろであった。(ドミニオ・デ・ピングスのピーター・シセックがこの大志を抱いた赤ワインの生産者3人組の残る一人だった)。彼は自身のワインを最も高価なボルドーの赤ワインたちの隣に何のためらいもなく置いていた。そしてそれは当然のことだったということが以下のメモでわかるだろう。

テヌータ・ディ・トリノーロはわかりやすいほど直球で食欲をそそるワインである。赤のボルドーとは違うが多くのイタリアのボルドー・ブレンドよりはるかに複雑である。それらボルドー・ブレンド同様DOCは取得しておらず、IGTトスカーナを名乗っているが、その典型的な味わいはどこにも見られない。このワインはそのわずかな収量、厳しすぎる選果(セカンド・ワインの存在しかり)、長期熟成を可能にする最高品質の樽の贅沢な使用、ワインに柔らかさをもたらす巧妙な樽内でのMLF、フレッシュさを保つためのわずかなマイクロ・オキシジェネーションなどから、金持ちのワイン生産者のお遊びだとされてきた。

では、マイナス面はなんだろうか?もちろん価格である。テュニュヴァンはけして値下げによる価格競争はしなかったのに、フランケッティがそうするはずがあろうか?ロンドンのコーニー&バロウ(EC1 (www.corneyandbarrow.com tel 020 7539 3200))はイギリスでレ・クーポレ1999をケース300ポンドで販売しているが、テヌータ・ディ・トリノーロとパラッツォは単に「時価」とのみ表記している。

友人であるテュニュヴァンやシセック同様、フランケッティも一か所に落ち着いていられない性分である。彼は新しいプロジェクトとしてシチリアの火山であるエトナの北側斜面、標高1000mに畑を買った。昨年彼はネレッロ・マスカレーゼの初収穫を迎えた。間違いなくこれなら手が出せる価格になるだろう。少なくとも初めのうちは。

テヌータ・ディ・トリノーロはアメリカにはソノマのザ・レア・ワイン・コー(The Rare Wine Co, CA (tel 707 996 4484 and 800 999 4342))とギルフォード(Guilford, CT (www.rarewineco.com tel 203 457 1431))が輸入している。このワインがボルドーの市場で発売されて以降は、高級ワイン商であるファー・ヴィントナーズ(London SW1 (www.farr-vintners.com tel 020 7821 2000))でもケース保税価格450ポンドで入手可能だ。

詳細なテイスティング・ノートも参照のこと。

原文

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