ヴォルカニック・ワイン・アワード | The Jancis Robinson Story (ポッドキャスト)

空の上のワイン

2019年2月23日 土曜日 • 6 分で読めます
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この飛行機内でのワインに関する記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

1995年、私はブリティッシュ・エアウェイズのワインを選ぶチームに招聘された。その時私は自分がずいぶんと成長したものだと感じた。そのチームのメンバーは世界で最も売れているワイン本の著者であるヒュー・ジョンソン、クリスティーズのワイン部門長であるマイケル・ブロードベント、そして当時アライド・ライオンズで多くのワイン買い付けの責任者をしているためにその鼻にロイズの保険をかけていることで知られるもう一人のMW、コリン・アンダーソンだった。

我々は全員でハットン・クロスまで出向き、機内で楽しむことができるだろうと期待を込めて送られてきた数百におよぶワインをブラインドでテイスティングし、最終的に最も適切なもののリストをブリティッシュ・エアウェイズの購買チームの手掛かりになるように提案したのだ。特にワインに熱心な元客室係のピーター・ニクソンとアンディ・スパロウを要するこのチームは入札を管理し、品ぞろえのバランスを整え、適切な倉庫にワインを格納し、その数量を管理するという非常に困難な業務を非常によくこなしていた。

当時はブリティッシュ・エアウェイズの全盛期だった。キャビン・クルーは特別なワイン・セミナーに通うよう推奨されており、予算は潤沢にあった。ファースト・クラスのワインは通常、最高格付けのクラレットや1級のブルゴーニュ白などだった。当時我々が誇っていたコンコルドもまたその最高の輝きを放っていた時代だ。テイスティングはコンコルドが離陸する音がBGMだった。

そのコンコルドのワイン・セラーは、そのためにチケットを買う価値があると言えるほど自慢できるものだった。通常の航空機だと数千ケースが必要とされるため、小規模な生産者が多いブルゴーニュのような産地にはハードルが高かったのだが、コンコルドで使うワインに求められるのは「たったの」100ケースほどだった(ボーヌの大きなワイン商やシャブリの協同組合が航空会社のワイン・リストの多くを占めるのには理由があるのだ)。アンディとピートはコンコルドのCを口にしただけで、それまでかたくなに閉ざされていた門戸を開いてくれた著名なブルゴーニュの生産者にも出会ったという。

だがあの2001年9月が訪れ、航空業界はそれまでと大きく変わってしまった。我々に訪れた変化はブリティッシュ・エアウェイズのワイン・コンサルタント・チームを私だけに縮小し、アンディは料理の方に回されたことだった。ピーターと私はともにブラインドで最高のワインを選ぶ良い仕事をしていたと思うのだが、その楽しみが減った原因の一部は予算の削減が始まったことだ。ブリティッシュ・エアウェイズはコンコルドを賄う余裕がなくなり、2003年に飛行が中止された。

2009年、当時ブリティッシュ・エアウェイズの長だったウィリー・ウォルシュ(Willie Walsh)は、ワインを味わいによって選ぶのをやめ、コスト削減のため3つのクラスそれぞれに単一の供給業者を指名することにした。2010年、私は職を辞した。

それでも、私は航空会社のワインには常に魅力を感じている。医師の中には高度33,000フィートでのアルコール摂取に反対する向きがあるのは知っているが、長時間におよぶフライトの間、30分はワイン・リストを眺めて楽しむことができる。もちろん、その中身をテイスティングすればその楽しい時間はもっと長くなるわけだ。私がブリティッシュ・エアウェイズの仕事をしていた頃、比較的私を知っている人は多くなかったが、最近はどんな航空会社を利用しても、ワインに興味のあるキャビン・クルーが進んで、前の方の座席で提供されているワインをテイスティングできるよう私のもとに運んでくれる。

格安航空会社とサーチャージの影響で、現在は航空会社がワインをブラインド・テイスティングで採用するためにコンサルタントを抱えることは少なくなった。だがシンガポール航空は年に2回、ワイン・ライターのオズ・クラークとジェニー・チョー・リーMWを招聘し、そこにオーストラリアのMW、マイケル・ヒル・スミスを加えて1週間をかけ、数多の候補の中からワインを選んでいる。そこで選ばれたワインは洋の東西を問わずビジネス・トラベラーやグローバル・トラベラーなどの雑誌による機内ワイン審査でも常に高い評価を得ている。(もちろん、それらの受賞ワインは審査のために特別に選ばれたごく一部ではあるのだが)。

実は驚くほど多くの航空会社が、ワイン消費地としてはあまり知られていない中東に拠点を置く会社からワインを供給されており、香港のキャセイパシフィックも例外ではない。MMIはドバイに拠点を置き、中東の航空会社にワインを提供しており、(ここでもまた驚くべきことに)空で楽しめるワインとしては最高の選択肢を誇っている。エミレーツはボルドーの1級シャトーをファースト・クラスで提供し、ビジネス・クラスでも2級シャトーがお目見えすることがある。エティハド航空やカタール航空もまた、ワイン好きのための選択肢としてそれらに追随している。

これら中東の航空会社はおそらく国有である点が有利であるとも思われるが、ワイン生産国の国有航空会社、例えばオーストラリアやニュージーランドのそれも我々のように何を飲むかが重要だと考える向きには興味の対象となる。彼らが誇るその国の最高級のワインは、私が通常使っているフライトではお目にかかれないのだが。

アメリカ系の航空会社は多くがナパに拠点を置くインターヴァインからワインの提供を受けている。アメリカ人は国内線に文句を言うのが好きなはずだが、最近提供されるワインのセレクションは良くなってきたと言われている。

残念なことに、イギリスを拠点とする2つの航空会社、ヴァージンとブリティッシュ・エアウェイズは世界のワインの中心であるというこの国の立場(London, capital for wine (和訳)参照のこと)を裏切っている。ヴァージンはワイン愛好家よりもカクテル好きにアピールしているようだし、現在ブリティッシュ・エアウェイズのワイン購入はとある業界の識者によると「どん底にあり、それ以上下がることはない」と表現されるほどだ。

ブリティッシュ・エアウェイズの購買は現在、親会社であるIAGに勤務するワインの購買経験の全くない2人のフランス人によって行われている。その予算の悲惨さはFlyertalk.comでのディスカッションからも読み取れる。当時ブリティッシュ・エアウェイズのファースト・クラスで提供されていたヴィラ・マリア・ソーヴィニヨン・ブランはモリソンズで1本5ポンド、2本で9ポンドのものだ。もっと最近ではアルゼンチンのマルベックで小売価格10ドルのものがファースト・クラスで提供されていた。最近のファースト・クラス用の入札ではセラー・ドアで6ユーロを超えるものは全て却下されたそうだ(かつて先物買いでクラレットを購入していた際の予算は25ユーロだった)。

一方、数千ポンドを出して航空機の前方の座席を購入している人たちを迎えるシャンパーニュは飛行機で提供されるワインの中でも最も重要なものと位置付けられている。ブリティッシュ・エアウェイズですら、ファースト・クラスで提供しているローラン・ペリエのグラン・シエクルは削っていない。もちろん、それを保つためにどんな駆け引きがあったのかは想像の域を出ない。そして彼らは狡猾にも、はるかに安価なシャンパーニュと、当然のことながらイギリスのスパークリング・ワインも同時に提供することでコストを下げようとしているようだ。クリュッグやドン・ペリニヨンはアジア系の航空会社では定番だし、エミレーツは非常に特別な、長期熟成を行ったドン・ペリニヨンP2を提供することで知られている。もし欲張りになれば、チケット代のもとを取ることも可能かもしれない。

航空会社のワインに関して一言

私の友人であるワイン・ライターのチャールズ・メトカーフはビジネス・トラベラー誌でビジネス及びファースト・クラスのワイン審査のチェアを10年以上勤めている。月曜に彼は総合優勝にカンタス航空を選んだ(カンタスは審査員賞のカテゴリーで複数のメダルを受賞し、ファースト・クラスでは最上位を獲得している。一方ブリティッシュ・エアウェイズにメダルはひとつもなく、かろうじて昨年ノミネートされたワインに基づいてビジネス・クラスの最上位に入るだけの点を得たにすぎない。エミレーツ、エティハド、シンガポール航空はワインを提出していない)。彼の意見はこうだ。

・機内に硬い赤は向いていない。今飲みごろのものでなくてはならない。
・だが航空会社は常に赤のボルドーを送ってくる。最近のヴィンテージは熟して丸いワインが多いので少しよくなってはいる。
・赤のボルドーや白のブルゴーニュはいまだに圧倒的に多いものの、全体的に航空会社は冒険を好むようになってきた。
・ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワールは安心して飲めるのでそつがない。
・自信を持つワイン生産国が増えたのはいいことだ 。イタリア、スペイン、ポルトガルなどのワインを目にするのは楽しい。
・我々はファースト・クラスのシートにもたれている時に楽しめるものを選ぶのであってその名前ではないということに航空会社は気づいていない。ブラインドで審査するのだからラベルで印象が変わったりはしないのだ!
・予算の削減は必ずしも問題ではない。なぜなら安価なワインでもよいものを見つけることはできるからだ。多くの航空会社が「有名な」ワインばかりを選ぶ傾向にあるが、それらが常に最も楽しめるものであるとは限らない。

原文

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