ヴォルカニック・ワイン・アワード | The Jancis Robinson Story (ポッドキャスト)

サウスウォールドでのテイスティング総括-ボルドー2018

2022年2月12日 土曜日 • 5 分で読めます
Southwold 2018 tasters
サウスウォールドでのテイスターたち


最高のワインはかなり強く骨太となった、非常に興味深いヴィンテージについて。この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。ボルドー2018の包括的な記事についてはこちらのガイドを参照のこと。

毎年(パンデミックの状況が許す限り)約20名のワインライターやボルドーを専門とするワイン商たちは、高級ワイン商ファー・ヴィントナーズのワンズワース・オフィスに終結する。最高峰の銘柄を含む(訳注:プリムールのようなバレルサンプルではなく)きちんと瓶詰めされたボルドーのワインを250本ほどブラインドでテイスティングするためだ。

これらのワインは快くサンプルの提供に応じてくれたシャトーのスタッフから、ボルドーに拠点を置く、かつてのワイン商ビル・ブラッチが集めてきてくれたものだ。また、ワインを集めて抜栓し、銘柄の記載していない(違和感を否めないが通常はブルゴーニュ型の)ボトルに移し替え、番号を振り、類似したワインごとのフライトに用いられるそれらボトルと正確に詳細を記載したシートの番号を一致させるという重要な作業を、ファーのスタッフが担っている。テイスターは誰一人としてどのワインが何の銘柄か知ることはできないが、各フライトに含まれている銘柄は知らされる。

彼らが我々のスコアを集め、データベースに入力している間、我々はどのワインがどの銘柄かわからない状態でワインについて意見交換を行う。ブラッチがその意見がまとめ、シャトーの所有者と共有するために記録する。この時点でようやくどのワインがどの銘柄だったのかが明かされ、うめき声やしたり顔のコメントが飛び交うのが恒例だ。

私たちは20点満点で評価を行い、私自身は自分のサイトで使っている意地悪いぐらいに厳しい規則を踏襲している。すなわち、15点未満なら欠陥ワイン、18点以上ならまごうことなき偉大なワインだ(多くの場合0.5点単位)。ただ、コメントやスコアを公表する必要のないワイン商の中には悪意のあるほど低い点数しかつけなかったり、基準を拡大解釈し、一桁の点をつけたりする人もいる。

先月は最新のヴィンテージである2018を評価したが、このヴィンテージはこのテイスティングで過去最も幅広い点数がつけられた年と言うべきだろう。一貫して低い評価ではないものの、高得点と低得点のどちらもが見られたヴィンテージだった。

全体的に白ワインについては辛口も甘口も、赤ワインよりも品質が低い傾向にあったが、例外もあった。オー・ブリオン系列の白が全体に好調だった点は驚くことではないだろうし、ドメーヌ・ド・シュヴァリエ・ブランも然りだ。それよりも驚かされたのが、優れた辛口の白ワインが、ペサック・レオニャンではなくサンセールのスタイルで作られたものだったことだ。白の辛口ワインの古典的スタイルの象徴であるボルドーでは新たな試みとも言えるその2本は、シャトー・シュヴァル・ブランの作るル・プティ・シュヴァルとシャトー・ラフルールの手掛けるギノードーのレ・シャン・リーブルだ。

ソーテルヌにとって2018は栄光の2019と違って貴腐菌が上手く付かず、苦戦したヴィンテージだった。暖かく乾燥した秋のおかげで赤ワイン用ブドウの収穫はかなり助けられたが、湿度の高い環境を好む貴腐は10月遅くになってもつかず、あまりの遅さに通常なら安定して生産を行っているシャトー・リューセックやスデュイローですら冬のような気候になるまで収穫を遅らせたほどだ。結果、彼らほど熱心ではないシャトーの造った2018の甘口ワインの多くは明らかにシンプルな味わいとなっていた。

2018の赤ワインについて一般化して議論することは難しいが、本当の意味でスリリングなワインについては(訳注:熟成を)待つ価値があると言えるだろう。ボルドーのエノロジストたちの公式な分析によればタンニンの量は平均的だそうで、偉大な2016との比較ではカベルネ・ソーヴィニヨンでやや低く、メルロではやや高い程度とのことだった。だが実際のテイスティングでは非常に多くのワインでタンニンを強く感じた。非常に雨の少なかった夏のせいで果皮が厚くなったことが一因とも考えられる。雨が多かった冬と春のおかげで土中の水分補填はされていたはずだが、8月終盤にようやく雨が降るまでは特に水はけの良い場所に植えられていたブドウがウォーターストレスにさらされたためだ。対照的にサンテステフやポムロールの一部のように粘土含有量が高く、冷たくて保湿性のよい土壌はそれがメリットとなったとも言える。

研究者たちによる大量のデータからわかる唯一の明確な特徴は、2018の酸の量が平均をやや下回っていた点だ。そのため(実際にはタンニンは2019よりも全体に低かったにも関わらず)タンニンを強く感じたという可能性もある。また比較的成績の良くない赤ワイン(繰り返すが2018は品質にばらつきのあるヴィンテージだ)に最も多く見られる共通の欠点として挙げられるのが、苦痛を感じるほど収斂性の高いタンニンとバランスを取るだけの十分な果実味がなかった点だ。この傾向はペサック・レオニャンで特に顕著だった一方、サンテステフのシャトーはこの(春のカビ病や雹のため順調な滑り出しとはいえなかった)2018の環境の中で善戦したようだ。

9月と10月の初旬は例年より暖かく乾燥し、収穫を急ぐ必要がなかった。そのため多くの生産者がより熟度の高い(すなわち酸が低い)ブドウを求める決断をしたことは明らかだった。非常に熟したブドウを使ったためアルコール度数が全体的に高かったのだ。ラベルの記載が正確であるという前提で書くと、我々が試飲した205本の赤ワインのうち、14%未満だったのはわずか19本、15%以上は19本で、そのうち4本(すべてサンテミリオンで、マグレ・フォンブロージュ、ペビー・フォジェール、カンテュス、ヴァランドロー)に至ってはラベル表記が15.5%だった。最も多かったアルコール度数は14.5%だ。(白ワインは辛口、甘口にかかわらず、それらより1度ほど低い傾向があったが、ヴァランドロー・ブランは15%だった)。

喜ばしかったのは著名なサンテステフのスーパースターであるモンローズやコスデストゥルネルなどが作る、比較的価格の低いセカンドワインの中に素晴らしいものがあった点だ。また、いつもこのテイスティングで絶大な力を発揮するポイヤックのシャトー・ピション・バロンは、効果的にタイプの異なる2つのセカンドワインを造っている。メルロの比率が高いレ・トゥーレル・ド・ロングヴィルと、より長期熟成が可能なレ・グリフォン・ド・ピション・バロンだ。どちらも人気が高かったが、個人的に2018はグリフォンのほうが良いと思った。

我々テイスターの間で最も激しい議論となったのはミジャヴィル一族が作り上げた2本のワイン、サンテミリオンのテルトル・ロトブッフと、比較的マイナーなコート・ド・ブール地区でも環境の良い飛び地にあるロック・ド・カンブのペアだ。これらは非常に熟度が高く、臆面もないほど官能的と言えるワインで、花びらを失いかけ、茶色くなってしまった満開のバラのような液体だった。タンニンが目立つことなど忘れてしまうワインだった。他のワインと比べて明らかに目立っていたため、多くのテイスターが低いスコアをつけていたが、私はとても気に入った。過去の経験から、これらのワインが十分に熟成可能であるということも申し添えておこう。

これらのワインは新型コロナの影響で価格が下がった2019より高い価格でリリースされており、掘り出し物は少ないかもしれない。以下のおすすめ一覧では、お買い得感で印象が強かったワインにアスタリスクをつけてある。

お気に入りの2018ボルドー
以下のワインには全て20満点中17点以上をつけた。カッコ内はテイスティングした本数だ。お買い得な価格のものにはアスタリスクをつけた。

辛口の白 (20)
Bouscaut*
Les Champs Libres
Domaine de Chevalier
Le Petit Cheval

甘口ワイン (22)
Rayne Vigneau*
La Tour Blanche*
Yquem

サンテミリオン (52)
Angélus
Ausone
Bélair-Monange
Canon
Cheval Blanc
Figeac
Larcis-Ducasse
Pavie
Pavie Macquin
Quintus
Tertre Roteboeuf
La Tour Figeac*
Troplong Mondot

ポムロール(27)
Le Bon Pasteur
L'Église-Clinet
Le Gay
Gazin
Lafleur and Les Pensées
Petrus
Le Pin
Roc de Cambes* (Côtes de Bourg)
Trotanoy
Vieux Château Certan

ペサック・レオニャン (19)
Bouscaut*
Domaine de Chevalier
Haut-Bailly
Haut-Brion
La Mission Haut-Brion

マルゴー(25)
Cantenac Brown*
Issan
Malescot St-Exupéry*
Ch Margaux
Marquis d'Alesme*
Prieuré-Lichine*
Rauzan-Ségla

サンジュリアン (19)
Ducru-Beaucaillou
Léoville Barton
Léoville Las Cases
Léoville Poyferré
St-Pierre*
Talbot

ポイヤック(27)
Lafite
Latour and Les Forts de Latour
Haut-Batailley
Lynch-Bages
Mouton Rothschild and Le Petit Mouton
Pédesclaux*
Pichon Baron and Les Griffons de Pichon Baron*
Pichon Longueville Comtesse de Lalande

サンテステフ (17) とメドック (13)
Calon Ségur
Cos d'Estournel and Pagodes de Cos*
Lafon-Rochet*
Montrose and La Dame de Montrose*
Les Ormes de Pez*
Sociando-Mallet* (Haut-Médoc)
Tronquoy-Lalande*

テイスティングノートはそれぞれ右岸の赤左岸の赤白ワインを、世界の取扱業者についてはWine-Searcher.comを参照のこと

原文

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