この記事はAIによる翻訳を日本語話者によって検証・編集したものです。(監修:小原陽子)
ついにトスカーナの象徴的なワイン産地キアンティ・クラッシコが、その豊かな地勢の価値に目を向け始めた。
評価の高かった2021ヴィンテージ以降、この地域の最上位カテゴリーであるグラン・セレツィオーネのワインにコムーネの名称が表記できるようになった。約72,000ヘクタールに及ぶこの地域は11のサブゾーンに細分化され、それぞれ(あまり優雅とは言えない名称だが) UGA, (unità geografica aggiuntiva)と呼ばれる。これらは下の地図でもわかるように概ねこの地域の最重要コムーネに対応しているが、地理的境界と行政的境界が一致しない場合には若干の調整が行われている。
木立の茂るこの丘陵地帯を縫う、曲がりくねった道をドライブしたことのある人ならトスカーナの歴史的中心地であるこの地の地勢がいかに多様か、身にしみて知っているだろう(世界のワイン図鑑 World Atlas of Wine の地図参照)。標高300メートルから650メートルを超える地点で栽培されるブドウは、他の多くの有名なワイン産地より、さらに多くの要素から影響を受ける。近くの森から冷たい風が吹き込み、時にはその陰に覆われるブドウ畑もあれば、パンツァーノの有名なコンカドーロのように、トスカーナ特有の眩い光を一日中浴びて贅沢に育つ畑もある。さらに、ブドウ畑全体の向きや垣根仕立ての向きという要素も加わり、それぞれが異なる結果をもたらすのだ。下の写真は、コンカドーロにあるカステッロ・デイ・ランポッラ(Castello dei Rampolla)の有名な畑、アルチェオ(Alceo)の入り口。
本当にはるか昔には、ブドウの樹はこの地で栽培される他の多くの作物や家畜と混在していた。これはいわゆるcoltura promiscua(混合栽培)と呼ばれるもので、現在は一部の熱心な環境再生型農業 信奉者たちによって再評価されるようになっている。その後ワイン造りが本格的なビジネスとなった1960年代からは、かつて小作農が耕していた土地に裕福な新規参入者が流入するようになった。それらの畑はブドウを最大限成熟させるため、意図的にアペニン山脈の麓にある南向きの斜面に作られた(平地はほとんど存在しない)。だが生産者たちは昨今の夏の気温上昇に対応できる北向きの区画を探し始めており、最も標高が高く涼しいコムーネであるラモーレ(Lamole)の土地の人気は非常に高い。一方で1990年代初頭以降、生産者は畑を荒らすイノシシから守るためブドウ畑をフェンスで囲わなくてはならなくなった。(最近ではオオカミがイノシシを抑えてくれているようだが)。
しかし、今月初めにこの地域で過ごした長い週末の間、ちょうど最後のブドウが収穫されている最中に私が最も心躍る変化だと感じたのは、この地域を代表するブドウ品種、サンジョヴェーゼに再び光が当たり始めたことだった。この品種の多様なテロワールを反映し、食欲をそそる形で表現する力、すなわちカジュアルに飲むのではなく食卓で楽しむためにあるようなワインを造る力を発揮させるには、20世紀後半に適切なクローンの探索に時間を割かねばならなかった。そして今、それらのブドウの樹が十分に成熟し、樽ではなく畑由来の個性を表現し、真に生命力あふれるワインを生み出すようになったのである。
キアンティ・クラッシコのセラーでは今、小型で新しいボルドー型バリックはほとんど使われなくなり、より大きく古い樽、あるいは素焼きや コンクリートの容器が好まれるようになっている。その結果、ブドウがそれ自体の個性を発揮できるようになった。
それと並行し、ボルドー系ブドウ品種は存在感を失いつつある。ボルドーの赤ワインをイメージしてカベルネやメルロを主体とし、価格のより高いスーパー・タスカンを世に出そうと生産者たちが躍起になっていた1990年代、それらの品種は熱狂的な人気を誇っていた。しかし今、サンジョヴェーゼへ新たに向けられるようになった敬意の前にその影は薄くなっている。伝統的にキアンティ・クラッシコにブレンドされていた地元の赤ワイン品種であるカナイオーロ、チリエジョーロ、コロリーノを植え始める生産者さえ出てきた(かつて不幸な使用義務が課せられていた白ワイン用ブドウは現在廃止されている)。
アニキーニ家は、パンツァーノで100年以上にわたりブドウ栽培をしてきた元小作農の家系で、2004年に自らのオーガニック・ブランド、ヴァッローネ・ディ・チェチオーネ(Vallone di Cecione)を立ち上げた。彼らは今、100%カナイオーロのワインも造っている。2021年に両親のワイン造りに加わったフランチェスコ・アニキーニ(Francesco Anichini)は、このアルコールとタンニンの低いブドウを愛する理由を「農家のための完璧なデイリー・ワインを生み出してくれるから」と語る。
現在、キアンティ・クラッシコには3つのカテゴリがある。ヴィンテージ表記をするアンナータはサンジョヴェーゼを80%以上用い、12か月以上の熟成が義務付けられている。リゼルヴァは同様のワインだが熟成期間が24か月以上だ。そして比較的新しいグラン・セレツィオーネはサンジョヴェーゼを90%以上用い、同一のエステート(ワイナリー)で栽培から瓶詰めまでを行わなければならない。これは単一畑のワインでも特別に選ばれたロットでも良い。最新のユニークな特徴と言えば、ラベルにUGAを表記できる点だ。グラン・セレツィオーネにはカベルネやメルロの使用はできず、30か月以上の熟成、最低アルコール度数13%、テイスティング委員会の審査を通過することが求められる。
このグラン・セレツィオーネの誕生は順調とは言えなかった。当初選ばれたワインはこの地の最高品質のものとは言い難く、大手企業のものに偏っているように見えたからだ。だが、これは驚くべきことではない。生産者団体であるキアンティ・クラッシコ協会(コンソルツィオ)には何百もの会員が所属し、その大半は中小規模の生産者だ。彼らはアンティノリ、フレスコバルディ、リカーゾリといった最大手の老舗生産者とかなりの緊張関係にある。
しかし、パンツァーノ(上の写真)のコムーネに拠点を置きキアンティ・クラッシコ協会のトップでもあるフォントディ(Fontodi)のジョヴァンニ・マネッティ(Giovanni Manetti)の巧みな調整力と強い意志のおかげでUGAの導入が決まり、このカテゴリに新たな価値がもたらされた。さらにテイスティング委員会の審査にも明らかな改革の兆しが見られる。というのも、他の地域同様、これまでの委員会は高齢のテイスターが中心で、その嗜好はあまりに「20世紀的」だったからだ。たとえば、色が淡いことは当然の個性であるにもかかわらず、ラモーレの非常に優れたワインが却下されてしまったこともあったほどだ。
パンツァーノにあるイル・モリーノ・ディ・グラーツェ(Il Molino di Grace)のダニエル・グラーツェによると、「グラン・セレツィオーネは本当に進化しました。上げ潮がすべての船を押し上げているような感じで、キアンティ・クラッシコ全体の水準も今では比較にならないほど向上しています」。
それでもなお一部の生産者は、グラン・セレツィオーネの仲間入りをするよりもトップレンジのワインを旧スーパー・タスカンのカテゴリーであるIGTトスカーナとラベル表記することを好んでいる。現代に入り、いち早く国際的な称賛を得た家族経営ワイナリーの1つで、現在はシャルル・エドシックやビオンディ・サンティと同じくパリを拠点に置くEPIグループに所属するイゾレ・エ・オレーナ(Isole e Olena)のチームは、有名なサンジョヴェーゼ100%のチェッパレッロ(Cepparello)のラベルにUGAは必要ないと、やや軽蔑的な口調で述べた。「マーケティングの観点からは何の助けにもなりませんし、そもそも私たちは自分たちの出自をきちんとわかっていますから」。
ある意味キアンティ・クラッシコの生産者が地理的な由来を主張するまで、これほど時間がかかったのは不思議なことだ。中世から続くコムーネ同士の対立は今も健在で、この地域の住民は自分たちのコムーネに極めて強く、排他的な誇りを抱きがちなのだから。グレーヴェにあるクエルチャベッラで15年間醸造を担う南アフリカ出身のマンフレド・イング(Manfred Ing)は、世界中のワイン産地で経験を積んだ人物だ。2人の子どもがラモーレで育っていることを誇らしく感じている一方、生産者たちにコムーネのレベルではなく地域全体の視点で動いてもらうことは難しいと嘆く。 「今、私たちはみな同じ問題に直面しています。一緒に行動すればもっと強くなれるはずなのに。」
おそらく地理的な細分化に抵抗していたのは、協会で最も効果的にロビー活動をする力を持っている大手生産者たちだろう。地域全体で自由にブレンドを行える方が彼らにとってメリットだからだ。しかし今、広く賞賛される2021ヴィンテージでは、あのアンティノリ家の26代目という大御所がガイオーレ、サン・カシャーノ(San Casciano)、カステリーナそれぞれのグラン・セレツィオーネを発表した(こちらの記事も参照のこと)。
これはグラン・セレツィオーネというカテゴリーに対する大きな支持表明とも言えるが、今後もその規定は修正されていくのではないだろうか。例えば低収量を維持するための規定と思われる最低アルコール度数13%という残念な要件だ。最も標高の高いコムーネであるラモーレで造られたワインの中には12%をわずかに上回るほどでありながら、豊かな風味と個性に溢れているものがある。それはまさに今の市場が求めているスタイルではないか。
そして私は思う。いずれはピラミッドの下位クラスのワインからもフランス系品種は締め出されることになるのだろうか? あるいは、それらのワインにも地理的表示が認められるようになるのだろうか?
週末に行ったパンツァーノの2015ヴィンテージの大規模テイスティングで明らかになったことが1つある。これらのワインは樽での長期熟成には必ずしも向いているとは言えないが、最高品質のものは確実に瓶内で長年にわたり素晴らしく発展する力を備えている。まさにボルドーの赤ワインのように。
なお、キアンティ・クラッシコの優れたワインを、その地以外で栽培された極ベーシックなキアンティと決して混同してはならない。
お気に入りのキアンティ・クラッシコ生産者
以下は私とイタリア担当エディターのウォルター・スペラーによって選ばれた、キアンティ・クラッシコのお気に入り生産者とその拠点だ。
- Badia a Coltibuono Gaiole
- Castell’in Villa Castelnuovo Berardenga
- Castello dei Rampolla Panzano
- Castello di Ama Gaiole
- Castello di Bossi Castelnuovo Berardenga
- Castello di Monsanto San Donato in Poggio
- Castello di Volpaia Radda
- Fèlsina Castelnuovo Berardenga
- Fonterutoli Castellina
- Fontodi Panzano
- Isole e Olena San Donato in Poggio
- Istine Radda
- Le Boncie Castelnuovo Berardenga
- Monte Bernardi Panzano
- Monteraponi Radda
- Poggerino Radda
- Querciabella Greve
- Principe Corsini San Casciano
- San Giusto a Rentennano Gaiole
- Tenuta di Carleone Radda
そしてウォルターが追加した小規模生産者は以下の通り。
- Cigliano di Sopra San Casciano
- L’Erta di Radda Radda
- I Fabbri Lamole
- Podere Castellinuzza Lamole
- Terreno Greve
- Tregole Castellina
- Val delle Corti Radda
- La Vigna di San Martino ad Argiano San Casciano
- Montesecondo San Casciano
(ほぼすべてのワインについて複数存在する)テイスティング・ノート、スコア、おすすめの飲み頃については3,600以上のキアンティ・クラッシコを掲載するデータベースを参照のこと。各国の取扱店についてはWine-Searcher.com.を参照のこと。
基本の復習
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トスカーナのその他の重要なワイン |
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ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは、キアンティ・クラッシコ同様にサンジョヴェーゼから造られるが、こちらは「ブルネッロ」として知られる地元のクローンを用いている。また、より気温が高い南に位置し、トスカーナの中でも標高が低い場所が多いためワインはより濃厚なスタイルで、深い色調と凝縮した風味を好む市場の嗜好に合いやすい。キアンティ・クラッシコよりも恵まれない出発点だったにもかかわらず、この産地とそのワインは世界中にファンを獲得し、価格面でもキアンティ・クラッシコを上回るようになった。ロッソ・ディ・モンタルチーノは同じブドウから造られるが、より早い飲み頃を想定して造られており、特に優れたヴィンテージでは、より良い価値を提供してくれる場合もある。
類似点はあるもののブルネッロ・ほど劇的ではないのがヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノだ。サンジョヴェーゼを主体とするが、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノとは異なり、必ずしもサンジョヴェーゼ単一ではない。この地でもブルネッロと同じようにロッソ・ディ・モンテプルチャーノというワインも造られている。モンテプルチャーノの特産は、陰干ししたブドウから造られる長期熟成の甘口ワイン、ヴィン・サント・ディ・モンテプルチャーノだ。なおヴィン・サントはトスカーナ州全域で造られる。この場合のモンテプルチャーノは地名であり、アドリア海沿岸でよく見られるブドウ品種のモンテプルチャーノと混同してはならない。 トスカーナで最も高価で最も有名なワインの一部は、海岸沿いのマレンマで造られる。サッシカイアはその草分け的存在で、イタリア版「格付けボルドー」として誕生したが、その後ボルゲリ地区で多くの後続ワインが続き、それらの多くはどちらかというとイタリア版「ナパ・ヴァレーのカベルネ」といったスタイルが多い。
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