ヴォルカニック・ワイン・アワード | The Jancis Robinson Story (ポッドキャスト)

東ヨーロッパの大冒険

2021年3月13日 土曜日 • 5 分で読めます
Grapes drying in a village near Zorah in Armenia

1週間後に開催されるテイスティング・イベントのワインを揃えることは想像以上に困難だった。この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。テイスティング・ノートはPromising Eastern Europeansを参照のこと。上の写真はアルメニアにあるゾラ・ワイナリー(Zorah winery)の伝統的な屋内施設で乾燥されるブドウ。

近日開催のフィナンシャル・タイムズ、ウィークエンド・デジタル・フェスティバルのオンライン・テイスティングを主宰するにあたり、テーマの選定に迷うことはなかった。

昨年9月に開催した際には、人と違う道を選択した素晴らしいワインを紹介したかったため、新星のカリフォルニア・ワインを選んだ。そして来週開催の春バージョンには、もう少し価格帯の低いテーマ、東ヨーロッパを選択した。

今、この広大な地域では畑と醸造設備の両面で非常に劇的な変化が起こっており、その成果は輸出市場でワイン・バイヤー、プロ、アマチュアにまで感銘を与えるようになってきた。1980年代、ロシアの大統領ゴルバチョフが導入した禁酒政策はワインの生産に多大な影響を与えた。ソビエト時代のワイン生産地域、モルドヴァ、ウクライナ、ジョージア、アルメニアだけでなく、その影響はUSSRに大量のワインを輸出していた国々、特にブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、そしてキプロスまで広く及んだ。

まず、ソビエトへの輸出と生産を監督していた独占組織が崩壊し、ワイン用ブドウ農園はその主要な顧客を失った。結果、東ヨーロッパ全土のブドウ畑は明確な所有者もないまま放棄されることとなった。鉄のカーテンの背後にあるものと同様、1990年代のワイン・シーンは混とんとしていたのである。だが21世紀に入るとEUの加盟国は、新たに独立したかつてのワイン生産国へ手を差し伸べ、莫大かつ非常によく考慮された投資を行った。彼らは数千年にもわたりUSSRに輸出されていたものよりもはるかに品質が良いワインを国内で生産していたためだ。この投資のおかげで心躍るような、しかも多くの場合は良心的な価格のワインが生み出されることとなり、それらは現在活路を西に見出している。

もちろん、国によって違いがあり、テロワールも伝統も大きく異なる。だがこの記事では尊大にも。それらの多様性に富んだあらゆる土地をカバーするつもりだ。今回はシカゴやコヴェントリーのワイン愛好家たちが東ヨーロッパのワインから目を背けないよう説得することができたなら、それでよしとしようと思う。

オンライン・セミナーのために私が選んだ最初のワインはヨーロッパとアジアの境目のもので、アルメニアの2種類の固有品種のブレンドで作られた赤ワインだ。この国はワイン作り発祥の地として隣国であるジョージアとしのぎを削っている。昨年10月には、10ポンド以下のおすすめワインとして、アルメニア・ワイン・カンパニーのエレバン(Yerevan )ワインメーカーズ・ブレンド アレニ・ノワール・カルムラヒュット(Areni Noir/Karmrahyut) 2016 を選び、その縁でインポーターであるシュロップシャーの家族経営のワイン商、タナー(Tanners)と知り合った。彼らはさらに野心的かつ良心的な価格の東ヨーロッパのワインを数多く扱っているため、今回のフェスティバル用テイスティングにふさわしいワインの手配を任せることにした。

ところが、タナーの個人向けセールス・ディレクター、ロバート・ブートフラワー(Robert Boutflower)はヨーロッパのワイン地図の極東に位置するこれらワイン産地からの出荷情報を受けるにつけ、心臓が止まりそうだったと告白している。1月の初旬、彼は「アルメニアのワインは現在こちらへ向かって搬送中です・・・が、状況は11月以来変わっていません。」とメールしてきた。2週間後、「エレバンは輸送中です」そして2月初旬には「アルメニアのエレバンは現在トルコで『積み替え』を行っています。黒海から私の手元まで約2週間かかるとのことです」。2月17日には「ようやくトルコを通過し、3月5日にリバプールに到着予定です」。2月25日「エレバンはさらに2度の遅延と輸送停止に見舞われ、一番早くても到着は3月15日になるとのことです...それでは遅すぎますね」。(私のテイスティングに用いるため次の週末に届く必要があることから逆算すると3月9日が最終締め切りだった)。

アルメニアの代表的な品種であるアレニ・ノワールの特別な品質をテイスターの皆さんと共有できなかったことは大変残念だ。だが以下にそれよりは値が張るが素晴らしく印象的な、伝統的な素焼きの壺、カラス(karas)で熟成されたワインを紹介している。ちなみにアルメニアの生産者ゾラのコンサルタント・ワインメーカーをしているトスカーナのアルベルト・アントニーニはアレニについて、トスカーナのサンジョヴェーゼとブルゴーニュのピノ・ノワールを足して二で割ったようだと表現している。

そして入手できなかったアルメニアのワインの穴を埋めるべく私が選んだのは偶然にもピノ・ノワールだった。ただし、ハンガリーの赤ワイン生産地として注目の産地ヴィッラーニの、ピュアで香り高い2018ツァニ(Csányi)だ。上述の他の国と比べてハンガリーのワイン文化はゴルバチョフの影響をそれほど大きく受けなかったが、その理由は多くのブドウ畑が個人所有で、比較的手入れをよくされてきたこともあるだろう。

対照的に、ブルガリアの畑はかなり荒廃した。一定の年齢以上のイギリスのワイン愛好家なら、1980年代にブルガリアのカベルネ・ソーヴィニヨンがかなりのお買い得品だったことを記憶しているだろう。だがゴルバチョフの反アルコール政策によってブルガリアの畑は放棄され、この上なく工業的な共産主義時代にセラーは荒れ果てた。そのため、ブルガリアのワイン業界は東ヨーロッパの中でも際立って、外部からの投資でその形を変えることとなった。また、現在のブルガリアのワインメーカーのもう一つの特徴は、その女性比率の高さで、約50%にも及ぶ。おそらく最も時代の流れに乗っているカリフォルニアですら、昨年サンタ・クララ大学が行った調査によればたった14%であったのに。

ルーマニアと隣接するモルドヴァの生き生きとしたワイン・シーンについては既に書いた通りだが、彼らの所有する豊かな財産と言える固有品種の一つ、フェテアスカ・レガーラの熟成した辛口の白ワインは今回のテイスティングに使うことにした。

このフィナンシャル・タイムズのテイスティングに選ばれたもう一つの白ワインは、東ヨーロッパの中で、ある意味革命を体現したワインだ。すなわち、地元の環境に併せて交配した新たな品種である。チェコ共和国や、特にスロバキアの育苗所はこの種の活動に特に積極的だ。そこで私は最初に選んだのは、スロバキアのマーティン・ポンフィ(Martin Pomfy)のワインで、近年人気の高まっているゲヴュルツトラミネールとローター・ヴェルトリーナーから作られたアロマティックな交配種だった。ところがブレグジット後に一気に増加した書類作業のため、輸送をトラックから鉄道に変更しなくてはならず、これもまたテイスティングには間に合わないことが分かったのである。そのため最後の最後の段階で当初予定していた赤ワインの生産者、アルメニアのエレバンの白ワイン2018に差し替えることとなった。このワインは最初に選ぼうとしていた赤ワイン同様、固有品種2種のブレンドだ。

スロベニアとクロアチアはどちらも優れた白ワインの供給源だが、自国民と旅行者がそのほとんどを消費してしまうため、国外でそれらにお目にかかることはほとんどない。

ジョージアもまた、今回のテイスティングには並ばなかったものの、世界有数のワイン文化を持つ国だ。何度か出鼻をくじかれたのだが、近日中に何とか入手してその詳細について書きたいと思う。ジョージアワインはここのところほとんどテイスティングできていないのだ。

もう一つ、来週末のために用意した赤ワインはデリケートなピノ・ノワールの対極と言えるものだ。力強くスパイシーなそのワインは北マケドニアの代表的な品種、ブラネック(Vranec)を使って有力な生産者であるストビ(Stobi)が作ったものだ。このワインは間違いなく、今後何年にもわたり熟成が可能なワインだろう。

私は今回意図的に東地中海の国々(ギリシャ、トルコ、レバノン、キプロス、イスラエル)は除外しているのだが、今回取り上げなかったポーランド(気候変動のおかげでワイン業界が活発になっている)、モンテネグロ、アルバニア、ボスニア、ヘルツェゴビナ、セルビア、コソボ、ウクライナ、ロシアからの苦情は覚悟している。ただ、彼らのワインに私自身が魅了されていることを申し添えておきたい。

そうそう、つい先週には初めて、アゼルバイジャンのワインのテイスティングに招待された。

東ヨーロッパの雄弁なワインたち

白ワイン
Paparuda Fetească Regală 2017 Romania
£7.50 Tanners Wine Merchants

Barta, Egy Kis Furmint 2019 Tokaj, Hungary
£14.95 Corney & Barrow

Martin Pomfy Devín 2020 Slovakia
£15.50 Tanners Wine Merchants (arriving soon)

Chateau Vartely, Individo 2017 Moldova
£16 Moldovan Wine

Urban Petrič, Natural White 2018 Slovenia
£16.50 Wanderlust Wine

Kolonics, Juhfark 2018 Nagy-Somló, Hungary
£17 Wanderlust Wine

Gašper Rebula 2016 Western Slovenia
£127 per case of 6 The Fine Wine Company

赤ワイン

Stobi, Vranec 2019 Tikves, North Macedonia
£8.95 Tanners Wine Merchants

Rumelia, Merul Mavrud 2016 Bulgaria
£9.95 The Old Cellar

Armenia Wine Company, エレバン Winemaker's Blend Areni Noir/Karmyahrut 2019 Armenia
£9.95 Tanners Wine Merchants (arriving soon)

Via Verde, Expressions Cabernet Franc/Melnik 2015 Bulgaria
£12.60 The Old Cellar

Fáutor, Negre 2017 Moldova
£23 Moldovan Wine

Zorah, Karasì Areni Noir 2018 Armenia
£26.29-£34.50 various independents including Symposium Wine Emporium, Hedonism, The Wine Reserve

テイスティング・ノートはPromising Eastern Europeansを参照のこと。

原文

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