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ガラス瓶はエコじゃない

Thursday 28 October 2021 • 8 分で読めます
Six designs for a paper Frugal wine bottle

デイリーに楽しむワインのための容器の選択肢は今や非常に幅広く、そして複雑だ。この記事のはるかに短いバージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

我々ワイン愛好家にとって、地球環境を守る第一歩は空いたボトルを他のごみと分けることだろう。この行為によって良いことをした気分になるのだが、我々のほとんどはその後ガラス瓶に起こることについて驚くほど無知だ。

また、サステイナビリティという観点からワインの容器の相対的なメリットについて認識している人はほとんどいないだろう。この点については驚くことではない。なぜならその分析を本業としている人にとっても、この問題の全体像は非常に複雑で、全ての人が納得できるような絶対的な統計値を入手することはこの上なく困難なためだ。

平均的な消費者からすればガラス瓶はリサイクル可能であり、実際にリサイクルされているものだから道徳的な選択肢であるように思えるだろう。だからヨーロッパのガラス生産者組合FEVEが昨年1万人を対象に15分間のインタビューを13か国で実施した際、調査対象者の91%がガラスボトルはワインの最適な容器であると答え、そのデータをFEVEが自慢げに掲げることができたのだろう。(ただし我々イギリス人はガラス瓶に対して最も懐疑的で、賛成したのはわずか82%だった)

この調査結果に力づけられたガラス生産者たちは新しい品質証明マークを瓶に付けることを決定した。だが、そのマークはその容器がガラスでできていることを証明するだけの意味しかないように私には思える。

また、この件に関するオンラインのプレゼンテーションでは、リチャード・スマート博士がCarbon footprints, wine and the consumer でも指摘している重要な視点をあっさりと省略していた。すなわちワイン生産者が二酸化炭素排出量の監査を行う場合に必須とする重大な項目、ガラス瓶生産時および運搬時に関わる膨大な二酸化炭素排出量だ。石油燃料ではなく電気を使った環境に優しい炉の試験運用がドイツで今後数年間にわたり行われることになっているが、ガラス業界が目標とするカーボンニュートラルを2050年までに達成するには膨大な努力と投資が必要とされる。

そのカギとなるのはもちろん、リサイクル率だ。FEVEが好んで引用したがる数値は「ヨーロッパの平均的なガラス回収およびリサイクル率は76%である(この数値を彼らは2030年までに90%まで引き上げたいようだ)」というものだ。しかし、この一文を注意深く読んでほしい。「平均的な」値であって、ガラス全体の76%がリサイクルされているわけではないのだ。イギリスや、ヨーロッパで廃棄物を処理する巨大な施設を1つのサンプルとした推測値なのである。たとえばイギリスでは廃棄物の処理は地方自治体の管理下にある。すなわち、地方によってその基準も実施方法も大きく異なるのだ。イギリス全体としてのガラス瓶のリサイクル率は50%程度に過ぎず、90%を優に超えるスイスや、それ以上を誇るスカンジナビアには遠く及ばない(スイスではガラス瓶の回収が無料、一般ごみの回収は有料とすることで分別を促している)。

英国規格協会としてはリサイクル手順を統一したいと考えている。このような統一化はスウェーデンや(カナダの)オンタリオなどアルコールが専売制である国や地域のほうが容易なのではないかと思ったので彼らに質問してみた。スウェーデンの(訳注:専売公社)システムボラゲのサラ・ノレルはスウェーデンのリサイクル率は90%ほどだと言い、さらに下記の詳細を聞かせてくれた。

「スウェーデンではリサイクルに2通りあります」

「一つは価格の一部にパッケージの代金が含まれており、空き容器を返却すると返金されるシステムです。これは全ての缶およびペットボトルに適用されています。また少数ですがビール瓶に適用されているものもあります。ボトルは洗浄後再利用されます。」

「また、あらゆる容器のリサイクルに適用される生産者や輸入業者の負担分もあり、ガラス瓶はかなり高い率でリサイクルされています。市民はガラス瓶を緑のものと無色のものに分けて大きなイグルー(の形をしたリサイクルステーション)に出します。このリサイクルステーションにはプラスチック、新聞紙、紙容器、金属、布地なども出すことができます。」

「(訳注:アルコールを専売するシステムボラゲの)販売店舗にはそれぞれの容器がどのようにリサイクルされ、環境に与える影響がどれほどなのかが掲示されています。私たちが特に推奨しているのは紙容器(テトラパック)、ペットボトル、缶ですが、軽量ガラス瓶についても同様の評価をしています。できるだけ多く紙の容器の製品(小さな箱状のもの、1~5リットル程度のもの、価格帯が高いものについてはテトラパックなど)を導入する方針ですが、高級なワインをパウチで提供しているイタリアの生産者もいます。缶入りワインはどんどん増えていますし、高級ワインの生産者たちも缶入りを好むようになってきました。」

オンタリオのアルコール専売公社であるLCBOからの返信はなかったので、オンタリオでThe Globe and Mail にワイン記事を書いているクリストファー・ウォータースに聞いてみた。


「面白いことにLCBOはリサイクルの主導権を取ろうとしなかったんです。オンタリオ州では醸造業者の小売部門がザ・ビア・ストアを運営していて、そこでビール、ワイン、スピリッツの瓶を消費者やバー、レストランから引き取っています。私が知る限りの最新データでリサイクル率は97%です。(多くの自治体では各家庭からリサイクルボックスに出される瓶を収集する小規模事業者もいて、この成功に貢献しています)。」

「私たちの多くはLCBOが『より良いオンタリオ州への貢献』を提唱しているにもかかわらず、リサイクルに関与しなかったことに驚きました。しかも空き瓶を回収する競合的なビジネスを消費者任せにするなんて。」

「LCBOはかつてオークヴィルのジェリネック・コルク(Jelinek Cork)がコルクのリサイクルプロジェクトを実施した際にしばらく参加していましたが、結局そのプロジェクトは成功だと言われたにもかかわらず終了してしまいました(160万個ものコルクが回収され、再生に利用されました)。またパンデミックのおかげでワイナリーのテイスティング・ルームや回収場所となっていた関連事業が閉鎖され、明らかに収集効率は下がりました。ホール・フーズなどのチェーン店も回収ボックスを用意していましたが、コロナ対策の一環でウィルスの感染経路を絶つために撤廃されてしまいましたしね。」

「私の知る限り、コルクは建材として再利用されています。リンク先をご参照ください
https://putacorkinit.ca/program/

私自身もかつてコルクを常に集め、リサイクルをしてくれるニコラス・ワイン・ショップに提供していたので、イギリスでのコルクのリサイクル状況について調べてみた。コルクのリサイクルを受け付けるrecorkeduk.orgというものは見つけられたが、残念ながらホール・フーズは受け付けていないようだ。(ちなみにコルクの森はワインに関連するものの中で二酸化炭素排出量を相殺できる有用な二酸化炭素吸収源だ)。

一方でボトルのリサイクルは複雑だ。まず色が様々で、ラベルやフォイルなどとも分ける必要がある。イギリスでは透明なガラスの需要が最も高いようだ。

長期的な視点をもつカタルーニャのトーレス・ファミリーは世界中の、あるいは手始めとしてヨーロッパのどこでもリサイクルし再利用可能な標準的なボトルの規格を強く求めている(http://www.rewine.cat/en 参照のこと)。だがミゲル・トーレスは実現のためにはEU法の改正が必要であることも認識しているし、私から見てもワイン生産者たちがワインの個性を表現するために様々なデザインと重さ(そう、特に重さだ)のボトルを選んでいることを考慮すれば実現の可能性はかなり低いと思われる。(ちなみに最近ワインの未来について語り合うオンライン・フォーラムでは、重いボトルを使っている生産者に対する強い批判が繰り返されていた)。

近年サステイナビリティに注目が集まっていることもあり、ワインのパッケージについては新たなデザインが急増している。この記事のトップとこの下の写真にあるFrugalpac は本物のガラス瓶を模したパッケージだが94%がリサイクルした紙で、内側に食品基準を満たしたコーティングをほどこしてある。これらはリサイクル可能で、両者およびプラスチックのストッパーは分別できる。

大西洋のこちら側で最もエネルギッシュで思慮深い発明家と言えば、ギャルソン・ワインズ(Garçon Wines)を扱うDelivering Happiness 社を経営するサンティアゴ・ナヴァロだろう。こちらの記事(和訳)で紹介したように、彼はほとんど平らで郵便受けにすら入るほど薄く、従来のガラス瓶よりもはるかに軽く省スペース、さらに割れにくいワインボトルをデザインした人物だ。活性酸素除去オプションを適用すれば12か月以上ワインはフレッシュなままだというのが彼の主張だ。

熱心なダイバーでもある彼はサー・デイヴィッド・アッテンボローのブルー・プラネット・シリーズで鮮明に描き出されたようなプラスチックゴミの問題に精通している。彼の食品用PET樹脂でできたオリーブ色の整形ボトルは使用済みプラスチックのリサイクル品だ。プラスチックはガラス瓶よりもはるかに二酸化炭素排出量が低いにもかかわらず、まだまだ多くの消費者は全てのプラスチックが悪だと決めつけている。実際にはPET樹脂が最もサステイナブルである多くの例が存在しているにも関わらず。ナヴァロは自身が開発したこの新しいボトルがアコレードによってバンロック・ステーションのパッケージに採用された(下の写真)ことを祝福するデイヴィッドからの手紙を大切にしている。

プラスチックの問題は素材そのものではなく、使用済みのプラスチックの扱いだ(しかもガラスと違ってプラスチックは浮くので川や池、ビーチなどで同じように捨てられていてもガラスよりも目立つ)。英国プラスチック協会によれば、イギリスの全プラスチック製品のおよそ50%がリサイクルされており、その比率はインドを除く主要諸国よりも高い(ただし、情報源によってはドイツなどの国のほうが良いというデータもある)。しかし何度もリサイクルできるガラスと違いプラスチックは劣化するため(改善の試みはされているものの)リサイクルの回数には限度がある。ただし、ガラス瓶も瓶として永遠にリサイクルされるわけではなく、価値の低いものに「ダウンサイクル」されることもある。

アメリカでは缶入りワインの人気が次第に高まっている。アメリカはもともとあらゆる飲料のパッケージで缶の占める割合が高い。缶入りワインはフルボトルの4分の1、3分の1、2分の1の容量だ。単純に、750mlのボトルははるかに不利だと言える。1人で飲むには多すぎるし、2人で消費する場合でも多すぎることさえある。当然缶のものに比べて単価ははるかに高く、今後ワインを飲んでくれるかもしれない若者にとって、ビールやカクテルよりもはるかに高価であるという点はワインに抵抗を感じる要因の一つとなっている。一方で缶入りワインが普及した大きな要素の一つはピクニックバックにも、ポケットにすら気軽に放り込むことができる利便性だ。鉄またはアルミニウムでできているため、缶はほぼ永遠にリサイクルができる。ただしガラス瓶同様その製造工程はエネルギーと資源に大きく依存している。

ガラスはワインの味わいに全く影響を与えないこともあり、長期熟成に向いた高級なワインの容器としては今後も主要な地位にあり続けることは確かだ。しかし地球の未来を考えれば我々は購入して数日で飲んでしまうようなワインに用いられる代替容器にもっと寛容になる必要があるのではないだろうか。なにしろ、それらは流通しているワインの大半を占めるのだから。

最後にロンドンのバラ・ワインズ(Borough Wines)のサステイナブル・ワイン・ソリューションの取り組みについて触れておく必要があるだろう。ボトルの返却はもちろん、バッグインボックスに関わる廃棄ゼロや、彼らが「イギリスで唯一100%再利用可能な容器」と主張するケグの導入などに取り組んでいる。ケグはレストランやバーにとって(彼らが営業を再開できれば)素晴らしい解決策となるはずだ。

缶入りワインのおすすめと警告はWine in a can for Brits A can hunt in the USAを参照のこと。

原文

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