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エトナの開墾ラッシュ

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この記事はフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。また、詳細なテイスティング・ノートも参照してほしい。

最新のデータによるとイタリアには575もの認証産地があふれているが、その中で今どこよりもエキサイティングな産地がシチリア東部のエトナである。この名前はうれしいことに綴りも発音も容易で覚えやすい。しかし何より忘れがたいのはそこで生み出される官能的なワインである。

この活火山の山肌には世界のどこにもない独特のワイン産地が広がり、エトナ山自体が普遍的な存在である。この夏鳴り止まなかった警報(エトナにとって偉大な年の予告と言える)しかり、劇的な溶岩の流れしかり、冬から春にかけて雪の帽子をかぶり、夏と秋には雲の羽飾りをまとう山の姿しかり、その地形しかり。大地はどんなデザイナーも生み出せない、マグマでできた奇妙な形の黒い岩に覆われ、トレッテと呼ばれる塔が点在する。このトレッテは土地の所有者が必要なだけの畑を開墾した証として溶岩石を積み上げて作るものである。このあたりは平坦な場所がほとんどないため大きな区画は存在しないし、小さな区画ですらそのばらつきが大きい。最高級のブドウ畑は手間暇かけて溶岩石を壁とした段々畑になっており、多くのブドウは樹齢が100年を超えている。このようなブドウ畑で働くには、エトナという非常に特殊な土地を深く理解していなくてはならない。

ミッシェル・ファロ(Michele Faro)の祖父は2ヘクタールのブドウ畑とレモン畑をエトナの南部に所有していた。当時家族を養うにはそれで十分だった。(写真はマイケル)その後父ベネランド(Venerando)は大きな事業を立ち上げ、エトナ山に見守られた非常に温暖で湿度の高いシチリアの片隅で地中海産の果物の販売を始めた。しかし2004年にエトナが溶岩ではなくワイン生産者の波に飲み込まれるのが時間の問題だということに気づいた彼らは、果実の成熟に時間がかかる北部地区で樹齢40、80、100年の特に優れたブドウを手に入れ、ピエトラドルチェ(Pietradolce)のワイン事業を始めた。この地区の生育期の長さは特に赤ワインの生産に向いている。彼らの所有する小さなバルバガッリ(Barbagalli)・ヴィンヤード(写真でマイケルが立っている場所)はエトナDOCの標高限界である1000mにあるすり鉢状の土地で、蝶やサボテン、野生のシクラメン、フェンネルなどがそこかしこに見られる。

チルクムエトナ鉄道は単線で、その切り替えは今でも手動で行われる。係員はキャビンにふんぞり返って座っていて、前の駅から電話が来ると切り替え作業を行う。「15年前には」マイケル・ファロはその一人を指さしながら言った「ここに来る人間なんていなかったんだ。ワイン生産者なんてせいぜい5人ぐらいしかいなかったからね。」エトナが大きな注目を集めている今では、イタリア北部の巨大なワイン企業の代表たちが頻繁に彼のブドウ畑の見学にやってくる。しかしそのほとんどはこの小さく妥協を許さない厳しい土地、そこに植えられているブドウの古木が1本からボトル半分ほどのワインしか生産できない現実を目の当たりにし、首を振って帰っていく。それでも、シチリアの大きなワイン企業の多く、クズマーノ(Cusumano)、ドゥーカ・ディ・サラパルータ(Duca di Salaparuta)、フィリアート(Firriato)、プラネタ(Planeta)、タスカ・ダルメリータ(Tasca d'Almerita)などは山腹の土地に投資しているし、そこにワイナリーを建設した企業すらある。ここには現在60軒のブドウ農家があり、少なくとも20軒がワインを作っている。

昔から小規模生産者たちはワインを作り、自分たちで消費したり、地元の生協や数少ない地元の業者に販売したりしていた。その業者の中にはミロに拠点を置く老舗のバローネ ディ・ヴィアグランデ (Barone di Villagrande)、ムルゴ(Murgo)やベナンティ(Benanti)などがある。ミロはエトナの東部斜面にあり、白ワインの生産に最適な土地である。エトナのワイン革命は2001年に始まり、パッソピッシャーロ (Passopisciaro)のファースト・ヴィンテージがきっかけだった。ここは古くからの標高の高いブドウ畑に設立された小さな作り手で、南トスカーナの型破りな企業、テヌータ・ディ・トリノーロ(Tenuta di Trinoro)のアンドレア・フランケッティ(Andrea Franchetti)が所有する。またこの年はベルギーのワイン・ブローカーであり熱烈なワインマニアでもあるフランク・コーネリッセン(Frank Cornelissen)の挑発的な自然派ワインが初めて生み出された年でもあり、イ・ヴィニェーリ(I Vigneri)のファースト・ヴィンテージもまた、この年に生まれた。イ・ヴィニェーリはシチリアの生産者たちの連合のようなもので、典型的な地元民であるサルボ・フォーティ(Salvo Foti)がそのワイン作りを担当している。そしてイタリア人とアメリカ人のハーフでワイン・ブローカーのマルコ・デ・グラツィア(Marco De Grazia)が彼らの背中に食らいつき、今や彼のテッレ・ネレ(Terre Nere)は最も広く流通しているエトナワインの一つとなった。

3年前まではフォーティはベナンティ(Benanti)のエノロジストだったが、今ではラバのジーノの助けを最近まで借りつつ、愛情をたっぷり受けて育った曲がりくねったブドウの栽培に力を入れている。この畑は伝統的なエトナの品種であるネレッロ・マスカレーゼ(Nerello Mascalese)、ネレッロ・カップッチョ(Nerello Cappuccio)、グルナッシュが混植されており、その葉は秋の陽を受けてオレンジや黄色に輝いていた(最近では多くの生産者がマスカレーゼに注力しているが、樹齢200年を超える古木の所有者はほとんどいない)。ブドウ畑を仕切る壁の上に作られた石だらけの小道を注意深くゆっくり歩きながら、彼はトスカーナのエノロジスト(とまるで呪いの言葉のように言った)にアドバイスを受けている隣の畑の鮮やかな緑のブドウを軽蔑するように指さした。そこでは黒い灌漑用のチューブがワイヤーで固定されたブドウの列の間を縫っていた。エトナは降雨量が多いが、水は火山岩の上の肥沃なローム層をすばやく抜ける。灌漑をしたらブドウの根が土の浅いところにしか広がらないのに、と彼は批判的につぶやいた。

古くからの作り手とコルヴォ・ブランドの所有者であるドゥーカ・ディ・サラパルータのブドウ畑の比較ほど、明らかな対比はないだろう。彼らは9ヘクタールの畑をピエトラドルチェが最も注力しているブドウ畑のすぐ上に購入した。縁起のいいことに標高はちょうど700mで、彼らはすぐにそこにあった段々畑を取り壊して整地し、ほぼ平坦な土地に変えた。そこに植えられているピノ・ノワールは列幅が広く取られ、高く仕立てられていて、まるで機械収穫用の畑のようである。彼らは全て手摘みだと説明していたが、そこから生み出されたワインからピノの特徴を感じるのは難しかった。エトナの赤の多くは品種によらず、温暖で山の土っぽさが前面に出てしまう。エノロジストによってはその特徴を新樽で消そうと躍起になっている向きもあるようだ。

これと対照的なのがシチリア中部に拠点を置く大手のワイン生産者クズマーノが、2年前にブドウ栽培を辞めたベナンティから購入した最高級の畑である。彼らは手間暇かけて段々畑の再生に取り組み、政府の助成金と島に所有する600ヘクタールのブドウ畑で働く労働者たちの助けを借り、ブドウを密集したアルバレロ(albarello)に仕立てた。これは伝統的仕立て方で、ブドウを1本ずつ支柱に固定する方法である。

しかし、フォーティのような伝統主義者はこの土地のブドウ栽培を本当に理解するためには地元のエトナ人の手が必要だと主張する。「エトナ人は自分たちの足元に宝が眠っていることを理解していないんだ。」彼は言う。たったの10ユーロで彼とラバが愛情込めて生み出したワインが手に入る彼の直売所の価格から想像するに、彼は真のロマンチストなのだろう。


エトナのお気に入り

Terre Nere, Calderara Sottana 2012
£110 6本セット Justerini & Brooks

Pietradolce, Archinieri 2011
£25 Hic Wines, £167.94 6本セット、関税込 Armit

I Vigneri, Salvo Foti, Rosso 2012
£25.50 L'Art du Vin, Hedonism Drinks, Kensington Wine Rooms

Graci, Contrada da Arcuria 2012
£29.95 Berry Bros

Passopisciaro single-contrada 2012
コーニー&バロー(Corney & Barrow)より11月20日から販売予定(2009は40ポンド以下で今でも入手可能)。多くのブドウはエトナDOCの区域より標高が高い場所に植えられているため、ワインはIGTテッレ・シチリアーネ(Terre Siciliane)として販売され、この地区の名前ではなくイニシャルだけが記される。

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