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インド~ワイン最後の未開の地?

Saturday 8 April 2017 • 5 分で読めます
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この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。Indian wine - a progress reportも参照のこと。

そもそもインドのワインが存在すること自体が奇跡だ。まず、その熱帯性気候は、言ってみれば何の助けにもならない。この上ない暑さと何か月にも及ぶモンスーンの雨は、その畑が北半球にあるにもかかわらず、複数回の剪定をすることで南半球の年間サイクルを辿ならなくてはならないことを意味する。すなわち、5月にモンスーン到来前に粗剪定を行い、二回目の丁寧な剪定を夏のモンスーンの後に行うことで生育期を10月から3月に設定するのである。

スパークリングから、ピーター・チズマディア・ホーニッヒ(Peter Csizmadia-Honigh)がその著書「ザ・ワインズ・オブ・インディア(The Wines of India)」で「ワイン愛好家は飲まないことを勧める」と書いた混成酒であるインディアン・ポートまであらゆるスタイルのワインが存在し、地元の労働力はすぐに手に入るため収穫は延々と行われる。例えばワイン生産者の第一人者であるスラ(Sula)では、昨年の収穫は12月15日に最近人気が出てきたスパークリング・ワイン用のベースワインのための収穫を始め、暑さでブドウを発酵不能なほどに干からびたレーズンにする夏が来る前の最後の赤ワイン用品種の4月10日まで続いた。

アジア・ワインの専門家、デニス・ギャスティンは同様なワイン生産の困難を抱える地域としてタイの一部だけがそれにあたると考えるが、インドのワイン業界の困難さはけして「自然な」ものだけではない。アルコールの総合的な禁止事項が今でも法律の一部に残っているためである(多くのインド人男性が好むスピリッツへの制限が厳しくなっている点はワインに有利かもしれないが)。また、「ワイン」という単語ですらネガティブな印象を与える。密造酒を売る小さな店があまりに多く、それらが「ワイン・ショップ」と呼ばれていたためで、最近再構成されたワイン生産を管理する国の機関はインドブドウ加工委員会(Indian Grape Processing Board)という巧みな婉曲表現を用いているほどだ。

曖昧かつ不合理で矛盾を含む税と官僚制度がこの生まれたばかりの業界をさらに不自由なものにしている。各州それぞれに複雑なシステムがあり、他州から「輸入」されたワインにも課税する。例えば、カルナタカのバンガロールに近いナンディ・ヒルズにアある最も長いワインづくりの歴史を持つ生産者、グローバー(Grover)は、そのすぐ北、マーハラシュトラにあるザンパと合併した。ワインをより良い価格で利益の高いムンバイの市場およびマーハラシュトラ内で販売することを可能にするためだ。このことはつまり、同じ名前のワインでも州が異なると中身が異なる可能性を示唆する。だがインド人のうちワインを飲んだことがあるのはほんの一握りであることから、ワインオタクの国で起こるような問題にはならないのかもしれない。

プネ近郊にあるイタリアとインドのジョイントベンチャー、フラテッリ(Fratelli)によると、急成長するインドの中流階級では約3500万人が毎年飲酒可能年齢に達するという魅惑的な側面がある。おそらくこの点が約50件もの(そのほとんどが極小規模の)ワイナリーが設立されたゆえんだろう。インドは長きにわたり生食用ブドウ主体の生産を行っていたが、ワイン用ブドウの畑の面積は約2500ヘクタールとそれほど多くなく、ワイン作りに関する困難が正反対のイギリスとほぼ同等である。

ほとんどのワインに関わるインド人およびインド当局関係者が慣れない点は、州政府が州ごとに異なるラベルを莫大なコストをかけて用意するよう求めるばかりでなく、各州がヴィンテージごとに高額なブランドの再登録料も要求する点だ。

そしてもう一つの大きな問題点は多くのブドウは小規模の農家によって栽培されているが、彼らはワインよりもザクロにはるかに詳しく、当然のことながら質ではなく生産量を最大にする傾向にある点だ。最大のワイン生産者スラの創立者でカリフォルニア時代にナパ・ヴァレーにインスピレーションを受けたラジーヴ・サマント(Rajeev Samant;写真下)は、毎年960万本のワインを供給する畑の所有率がわずか5%と、所有することにそれほど注力していない。「私たちが目指すのは果実味の豊かなワインであり、複雑さを求めているわけではありません。99.99%のインドの過程にはコルク抜きもセラーもありませんから、熟成に値するワインを作るなんて考えていません。」彼はトスカーナのある村をモデルにして自分の地元でムンバイから埃の舞う道を3時間ドライブした土地に最近建設した野心的なブティックホテル、ラ・ソース・デ・スラ(La Source de Sula)でそう話した。

おそらく彼のやっていることは正しいのだろう。なぜならスラは聖都ナーシクに近く、彼が言うところの「ワインと寺院」ツーリズムを提供し、サマントによれば年間24万人もの訪問者を誇るのだ。彼はさらに下の写真のテラスからは先月カラカラになった畑、新しい貯水槽、そしてはるか遠くにはダムを見下ろすことができ、地球上で唯一、最も多くの人が初めてのワインを味わうことができる場所だと主張した(記事最初の写真は外国人向けにスラが企画した歓迎委員だ)。彼はさらにスラフェスト、すなわちハリウッドのように大きな文字の看板が遠くに見えるようしつらえた音楽祭も紹介してくれた。円形劇場、二軒のレストラン、ギフトショップ、フリーマーケットがあり、ふれあい動物園の計画もある。そこで飼育される動物たちが熱帯由来のものであることを切に祈るばかりだ。

最もワインに優しい州であるマーハラシュトラのナーシクは南部にあるまだ穏やかなカルナタカに比べてその気候はさらに厳しいものであるにもかかわらず、インド・ワインのかなりの生産量を占める。年間降雨量は3000mmにもなる(高品質ワインの生産のための降雨量は通常500㎜程度だ)。だがその雨は生育期には降らないため、全てのブドウは収穫されるまで常に灌漑が必要だ。

グローバー・ザンパ・ワイナリーもまたナーシクにあるが、都市の南部にあり、ムンバイから(グローバー一族が期待するには)車で45分の近さにある。ヨーク・ワイナリー(York winery)を所有するグルナニ(Gurnani)一族もまたスラから道を下ったところにあり、グローバー家はインドでワインを販売するのにワイン・ツーリズムは欠かせないと考えているため、ちょうど彼らのワイナリーの裏手の丘側にホテルと一番近いダムを見下ろせるビジターの設立を許可する契約を結んだところだ。下の写真で世界のこの地の地平線の面白さがわかるだろう。

最も近い村、サンジェガロン(Sanjegaon)で私は2人の女性が巨大な鉄製の水入れを頭の上に載せていたり、緩やかなチュニックを着た老人が水の入ったフラスコを自転車のハンドルにぶら下げていたり、裸の3歳ぐらいの子供が道端で壺から水浴びをしていたり、7歳ぐらいの女の子が桶一杯の洗濯物の上でスクワットをしていたりするのを見て驚いた。グローバー・ザンパのブドウ同様、彼らも容易に入手可能な水の恩恵を十分に受けているようだが、ここでの洗濯物は、あまりに乾燥しているため洗濯ロープに放り投げられたままの状態だ。乾かすために広げる必要がないのである。

一方、主要な都市では若い女性も最新の地元の店でワインを飲んでいるのを見かけることができる。ワインと料理を一緒に楽しむというのはまだまだ始まったばかりではあるのだが。それにしてもインド人にとってワインというのはまだまだ目新しいものである故、以下のワインが飲んで楽しめるものであるだけでも素晴らしいことだ。

インドのワイン愛好家のために
インド人は明らかに赤ワインが好きなようだが私にとって印象的だったのは白ワインである。

お薦め

白ワイン

Grover Zampa, Zampa Soirée Brut 2014 Nashik Valley
Grover Zampa, Vijay Amritraj Reserve White 2015 Nandi Hills

赤ワイン

Fratelli, Sette (any vintage except 2010) Pune
Grover Zampa, Insignia 2015 Nandi Hills

飲んで楽しめる

白ワイン

Fratelli, Sangiovese Bianco 2016 Maharashtra
Fratelli, MS Chardonnay/Sauvignon Blanc 2016 Maharashtra
Fratelli, Vitae Barrel Fermented Chardonnay 2015 Maharashtra
Grover Zampa, La Reserve Blanc 2015 Nandi Hills
Soma Chenin Blanc 2014 Nashik Valley
Sula Reserve Chenin Blanc 2016 Nashik Valley
Sula Riesling 2016 Nashik Valley
Sula Riesling 2014 Nashik Valley

赤ワイン

Fratelli, MS Red 2015 Maharashtra
Grover Zampa, Zampa Chene Grand Reserve 2014 Nandi Hills
Grover Zampa, Insignia 2014 Nandi Hills

上のザ・ワイン・オブ・インディアに掲載されているインドのワイン地図はCosmographics Ltd.と The Press Publishing Ltd のご厚意で転載を許可頂いたものである。

(原文)

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