ヴォルカニック・ワイン・アワード | The Jancis Robinson Story (ポッドキャスト)

ロックダウン用ワイン~赤ワイン編

2020年5月9日 土曜日 • 5 分で読めます
Arnaud Aucoeur and family in Morgon, Beaujolais

最適価格帯と思われる9~20ポンドで入手できる家族経営のワイナリーを中心に選りすぐったワインを紹介しよう。多くはイギリス以外の国でも入手できるだろう。この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。白ワイン&ロゼワイン編(和訳)も参照のこと。

イギリスのワイン愛好家が1本7ポンド程度で面白いワインを買えたのはつい先日のことのように感じられる。相次ぐイギリスでのワイン税の増加とポンドの下落のおかげで、この基準はあっという間に10ポンドまで上がった。

他方、アメリカのワイン愛好家はそれほど価格に敏感ではないように感じる。実際アメリカで12ドル、つまり10ポンドに相当する価格で良いワインに巡り合えることは少なく、人によっては良いワインが100ドル以下で買えるならむしろお買い得だとする向きもある。ヨーロッパ大陸で最小限の課税を謳歌している人々にとってみればありえないと感じられる価格に違いない。実際、ヨーロッパに移住したイギリス人にとって、ワインの安さはこれまで大きな魅力とされてきた。

私が以下でお薦めするロックダウン用の赤ワインは10ポンドを下回るあたりから20ポンドまでの価格帯だ。私はこの価格帯が現在お値打ちワインを見つけられるスイート・スポットだと考えている。

比類なき生産者が作る中で最も安価なワインにはお買い得品が見つかることが多い。良い例はクネのクリアンサ・リオハ(彼らの作る他のワインほど長期熟成をさせていないもの)だろう。クネは伝統的な家族経営のワイナリーで、私はそのワインにがっかりさせられたことはないし、野心的に作られたラベルのものは上質なボルドーの赤ワインを凌駕すると思えるものすらある。現行ヴィンテージは2016で、10ドル前後で出回っている他のほとんどのワインが2018や2019であることを考えると、それらよりもはるかに熟成されて複雑さを感じられるものだ。このスクリューキャップを使ったフレッシュでわかりやすいテンプラニーリョはリオハの伝統的なアメリカン・オーク樽で1年熟成されている。広く出回っているからスーパーマーケットの棚にも、独立系小売店でも見つけることができるだろう。

小規模な小売店でも、大規模なそれと同じぐらいお買い得なワインが入手可能な例として挙げておきたいのはウィルトシャーにあるヤップ・ブラザーズだろう。彼らは半世紀ほど前に地元の歯科医が立ち上げた店だが、上記のクネのワインよりも2年熟成させているにもかかわらず、ほんの少ししか値段の変わらない美味しいリオハを販売している。これもまたクリアンサで、現行は2014、フエンマヨールにあるボデガス・ペトラランダからマルケス・デ・ゼアラ(Marqués de Zearra)としてリリースされている。ヤップのワインリスト(現在でもフルカラーで印刷されている)に掲載されている唯一のスペインの生産者で、ヤップ兄弟の一人がスペインの友人を訪ねた際、ほとんど偶然に出会ったワインだ。リオハ、ラングドック、コート・デュ・ローヌ、ボルドーのように生産量の多い産地では低価格帯のワインは競合が激しいため、お買い得品を探す向きには格好のターゲットと言えるだろう。

カタルーニャの岩がちで斜面の多いプリオラートではなかなかお買い得品が見つからないのだが、クネのワインのような、カミンス・デル・プリオラートは購入したブドウを使ったブレンドで、地元のスーパースター、アルバロ・パラシオスの魔法にかかったワインだ。凝縮感と、留まるところを知らないワイン造りの技術がこのガルナッチャとカリニェナ主体のブレンドを輝かせている。

世界がボージョレ・ヌーヴォーに飽きてしまって以来、上質なボージョレは長きに渡り不当に低い価格がつけられている。最近は興味深い新星の若手生産者たちが本格的でブルゴーニュの赤に価格的に太刀打ちできるようなワインを作ろうとしているが、私自身が好むのはフレッシュでライトかつフルーティなスタイルで、熟成させる必要のない、このリヨンの北西にある花崗岩の丘で作られたというだけのワインだ。素晴らしい例として挙げるならランティニエの花崗岩の土地から作られるドメーヌ・ロシェットの2018ボージョレ・ヴィラージュだろう。

*ヴィンテージは2017

モルゴンはボージョレの中でも特別な村の一つで独立したAOCであり、コート・デュ・ピィは伝統的に若いうちは固く、その本質を知るためには長いこと熟成させなくてはならないワインを生み出す地域だが、ヤップはすでに素晴らしく豊満なアルノー・アルクール(Arnaud Aucoeur)の2018を取り扱っている(アシェットのヴィニュロン・オブ・ザ・イヤーにも選ばれ、上の写真は家族と共に写したものだ)。これは、もちろん美しく熟成させることもできようが、現時点でタンニンは完璧な場所に位置する畑で熟したガメイの果実味にすでに完全に溶け込んでいる。

ボルドーの上級シャトーではパンデミックのさなかにまだヨチヨチ歩きの2019を発表するプリムールの開催について大きな困難に見舞われていたが、その一方で数多存在するそれほど有名ではないワイナリーの作るボルドー赤は世界で最もお買い得な狙い目ワインの宝庫だ。ザ・ワイン・ソサイエティやヘインズ・ハンソン&クラークなどは長い経験をもとにそんなお買い得品を嗅ぎ分けることに長けてきた。私は彼らが最近提供しテイスティングした10.65ポンドから16.95ポンドの価格帯の4本のワインにいたく感銘を受けたが、その中で最もコストパフォーマンスに優れていたのは優れたヴィンテージである2016のシャトー・ラ・ゲリニエール(La Guerinniere)だと思う。ランボー家のメルローとカベルネ・フランはサンテミリオンの南東部にあり、フレッシュなトップ・ノートを持つ、熟度が高く濃厚でベルベットのようなワインは控え目なポムロールに似ていなくもない。このことからも、ブドウが十分な手を入れて育てられていると伺い知ることができる。

もしかするとアルゼンチンの対抗馬であるソルサルのエゴ(Eggo)・カベルネ・フランはそれよりも価格は高く熟成は進んでいないと言えるかもしれない。だが意図的に早摘みしたためにこの上なくフレッシュで、澱の循環を促すとされる卵型のコンクリート容器で熟成されたこのワインは間違いなくシャトー・ラ・ゲリニエールの古いコンクリートタンクよりもコストがかかっている。ミケリーニの兄(弟)であるイギリスのインポータは彼らがアンデスの高地で用いている手法を「非侵襲的ワイン造りで、活力よりも厳格さを表す」のだと説明している。このワインにはサンテミリオンの肉付きの良さと鋭いコントラストを見せるテクスチャとテンションが感じられる。

グルナッシュは今、尋常でないほどの情熱を持って迎えられている。以前ロンドンでソムリエをしていたカーステン・ミグリアリーナは、流行の透明感があり羽のように軽いピノのようなグルナッシュを南アフリカの古木から作っている。さらにお値打ちなのは同じようにかつてロンドンでソムリエをしており、グラスゴーでオンライン・ワイン・ビジネスに携わったセヴリン・スロボダが作るシャトー・ジュヴェナル(Ch Juvenal)2017で、新進気鋭のヴァントゥのアペラシオンで作られたローヌの偉大なヴィンテージのワインだ。地元のトップ・コンサルタント、フィリップ・カンビのアドバイスでシラーを20%加えたことでワインに芯が通り、価格から想像されるよりもはるかに余韻が長い。

シラーズはシラーのオーストラリアでの呼び名だが、北半球の人々が想像するよりもはるかに多様なスタイルで作られている。私はティム・スミスのバガラグス(Bugalugs)2018がとても気に入った。温暖な気候を思わせるスパイシーな香りはまさに南オーストラリア的で、ヘンチキの美しくも遥かに高価な芳しさを思い起こさせる。2015はまさに今飲み頃というところだろう。ただしバガラグスは熟成させて飲むのではなく、今すぐ楽しむべきワインだ。やや甘みがあるが重みや固さは感じられず、シラーズによくみられる塩気のある余韻へと続く。

そして最後に、オーストラリアらしくないオーストラリアのワイン、繊細で甘みのないピノ・ノワールは流行の冷涼で湿った産地、ヴィクトリア州の海沿いにあるギップスランドで作られるもので、20ポンドを下回る価格だ。フランコ・ダナがヤラ・ヴァレーのホドルス・クリーク・ワイナリーで作るウイッカムズロードは仲間のワインメーカーたちがその「ユーザーフレンドリー」な価格に憤慨しているほどだ。

お薦めの赤


CVNE, Crianza 2016 Rioja 13.5%
£9.29 Dennhofer of Northumberland, £9.45 Cheers of Wales, £9.99 Majestic, £10 Edencroft of Cheshire, £10.95 Winedirect,co.uk, £12.29 Christopher Piper of Devon

*ヴィンテージ明記なし

Marqués de Zearra, Crianza 2014 Rioja 14%
£11.50 Yapp Bros

Ch Juvenal, Les Garrigues 2017 Ventoux 14%
£12.20 SevsloWine.com

Dom Rochette 2018 Beaujolais-Villages 13.5%
£13.95 Lea & Sandeman

Arnaud Aucoeur, Côte du Py 2018 Morgon 13%
£14.95 Yapp Bros

Ch La Guérinière 2016 St-Émilion 14%
£15.75 Haynes Hanson & Clark

Zorzal, Eggo Franco Cabernet Franc 2018 Tupungato 14.5%
£16.50-£19 various independent retailers

Tim Smith, Bugalugs Shiraz 2018 Barossa Valley 14%
£17.95 Lea & Sandeman

Wickhams Road Pinot Noir 2019 Gippsland 13.2%
£18.50 Stone, Vine & Sun

*ヴィンテージは2018

Carsten Migliarina Grenache 2017 Wellington 13.5%
£19.95 Yapp Bros

Álvaro Palacios, Camins del Priorat 2018 Priorat 14.5%
£19.75 Woodwinters, £23.49 Noel Young, £23.50 Berry Bros & Rudd, £24.95 Philglas & Swiggot

テイスティング・ノートはこちらのデータベースで、国際的な取扱業者はWine-Searcher.comを参照のこと。

原文

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