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オークの衰退

2021年2月27日 土曜日 • 8 分で読めます
Jean-Marc Roulot of Meursault with cooked earth vessels

オークに対する我々の考え方がいかに変化してきたか。この記事のやや短いバージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。写真はジャン・マルク・ルーロが数あるオークの代替容器の選択肢の一つと共に。

今後2か月ほどは、ワイン・ビジネスに付随するコルクの生産者たちは北半球の天気予報に敏感になる時期だろう。2017年にヨーロッパ全体の収量を減少させたことからもわかるように、霜の被害は彼らにとっても利益に直結する課題だからだ。

この四半世紀の間に台頭してきたスクリューキャップを代表とする代替栓の脅威にコルク業界が立ち向かってきたのと同様、今や世界の樽メーカーは樽への興味の低下という、最近顕著になってきた脅威に向き合わざるを得ない。

オークはワインの樽の材料として圧倒的なシェアを誇ってきた。水を漏らさず、しなやかで頑強なオークがワインと好相性であるのは自然なことだ。ワインが熟成するにつれオークは程よい量の酸素をワインに与え、その安定と清澄を促し、オークが与える風味は特に、多くのワインと相性が良いと考えられている。多くのスピリッツやシェリーの熟成に使われてきたアメリカン・オークもあるが、ワイン生産者にとって最高のものはフレンチ・オークだとされてきた。これはフランス政府がワインメーカーたちの需要に応える形で国内の広大な森を何世紀にもわたり保護してきたことも理由の一つだろう。

しかし、21世紀に入ると消費者はオーク香の強いワインから次第に遠ざかるようになっていった。1980年代から1990年代、ワイン生産者たちは私たちワイン・ジャーナリストに対して毎年どれほどフレンチ・オークの新樽を購入するのかを自慢したものだ。樽1本が数百ドルであることを考慮すれば、それは年間の資本コストの大きな比率を占めるものだっただろう。だがいまや「樽の効いた」という言葉は賛辞から批判のニュアンスへと変わってしまった。

新しく小さな樽は最も樽の香りが強くつく。古くて大きな樽はその逆だ。洗練されたワインを作ることになじまない、あるいは繊細に時を重ねた木材から作られた最上の樽の目利きができない多くのワイン生産者たちが作るワインは非常に粗い樽の味がすることが多くなる。そうなれば果実味は樽の香りに打ち消されてしまうわけで、消費者が樽否定派となったことも驚くことではないだろう。

知識と経験の豊かなワイン生産者の間では、オークがワインに与える風味よりも、その物理的性質、すなわちワインを滑らかにし、複雑さを与える性質にこそ価値があるとされている。しかし、近年は新しい小さな樽の使用を控え、かつては予算に余裕がない生産者に譲っていた、自社ですでに1回以上使った樽を活用することが目立って増えてきている。

同様に、伝統ある225リットルではなく、樽の香りが強く出にくい300から600リットルという大きなサイズへの移行も目立つ。

上質な赤ワインの発酵にも、ステンレス・タンクに並んで木製容器の人気が高かったが、近年はコンクリートが再び注目を集めるようになり、その形もサイズも様々だ。特に卵型の大きなコンクリート・エッグは澱とワインの接触を促すとして注目を集めている。また産地によっては大型の陶器の壺やアンフォラまでが復活し、伝統がテクノロジーを追いやる場面すら見られるようになった。またムルソーの生産者の中にはワインをガラス容器で熟成させるものも出てきた。写真のジャン・マルク・ルーロはガラス製の容器、6種の陶器、ステンレス樽、ストッキンガーの樽、そしてブルゴーニュ伝統のピエスを使いこなす。彼はそれらすべてがどのワインに使われ、結果がどうだったのか、すべて記録している。

私はここ数年、生産者たちが何を自慢とするのか、その変遷を観察してきた。かつてはいかに新しく小さな樽を使うかという点だったが、今はいかに古く大きな樽を使っているかという点であることが増えてきた。

これらを考慮すると、これまで安定な取引を行ってきた顧客がどんどん発注量を削減することになるわけだから、フランスの樽職人たちの収支が心配になる。そこで大手3社に聞き取りを行ってみた。

ジェレミー・ル・デュック(Jérémie Le Duc )はセガン・モローのコマーシャル・ディレクターだ。セガン・モローはコニャック、ブルゴーニュ、そして時代を物語るともいえよう、カリフォルニアのナパにも樽工場を所有している。彼は法律でフレンチ・オークによる熟成が義務付けられているブランデーの生産地、コニャックを拠点としている。

「おっしゃる通りです」。彼のメールはこう始まった。「樽の使用を減らし、大型のものへ移行する傾向は確かにあります。ただ、細かく観察してみると、その流れはゆっくりで、昨日今日始まったものではありません。ワインメーカーの中には完全に樽の使用をやめる人もいますが(流行やインフルエンサーの影響、価格など理由は様々です)、その多くは樽の使用を再開し、新たなバランスを見出しているようです」。

ル・デュックさらに、現在の流れが1000リットル以上の非常に大きなサイズの樽へ向かっていること、そしてかつてワイン生産に用いられていたオーク以外の木材、例えば栗やアカシアなどへ興味が向いていることを指摘した。「ですから、あえて言うとすれば確かにオークは減っていますが、別の形でオークを求める人はいるということです。ワインメーカーやコンサルタントの中にはワインのストラクチャや酸素、タンニン、まろやかさの視点からオークを必要としているけれども、オークの香りがつかないものを求めている人は確かに存在します」。

彼は伝統的な生産地からの需要が減少したことは認めつつ、ポーランドやスウェーデンなど新たな冷涼産地からの需要によってその減少が補われているとも話した。

セガン・モローの持ち株会社でディアムの製造者としても知られるエネオ(Oeneo)は少し前から事業の多角化を進めている。ディアムはテクニカル・コルクの第一線を走る製品で、細かなコルクの粒子から作られ、誰もが恐れるコルク臭が発生しないことを保証する。ちなみにディアムは抜栓してすぐに戻さない限り、再びボトルに挿入することは極めて難しい。彼らはまた、非常に装飾の凝った樽や円形のコンクリートタンクの開発にも余念がない。彼らのウェブサイトには(今では流行遅れとされるものの)オークの香りをつけるためにタンクの中に吊るす「代替品」としてオークチップ、オークステーブ(板)、オークスティックなどが掲載されている。

フランソワ・フレレは最も知られたブルゴーニュの樽製造元だ。そのマネージング・ディレクターであるマックス・ギガンデ(Max Gigandet)はオーストラリアやカリフォルニアの山火事が自分たちにもの影響すると指摘した樽職人の一人だ。ブドウがスモーク・テイントの影響を受けた生産者の中には通常の樽熟成を2020ヴィンテージについては行わないことを決めたものもいる。そうなれば今年のセガン・モロー・ナパの売り上げ記録が昨年を上回ることはないことは想像に難くない。

フランソワ・フレレの樽のうち優に80%はブルゴーニュの拠点から輸出されている。ギガンデによればカナダ、中国、ブラジル、東欧からの発注が増えているそうだ。ここ10年、大型の樽の需要は非常に高いものの、その傾向は横ばいに近づいていると言う。一方、彼らがボルドーに所有する樽貯蔵用のセラーは多くの予算をつぎ込んで225リットルの樽を保管できるようにしてあるが、その変更は単純に物流上の理由で困難だ。

シェヌ&Coは世界で最も重要な樽製造元の一つで、フランス、ハンガリーそしてウィスキー用のアメリカン・オークに特化したケンタッキーに製造拠点がある。そのCEOであるアンリ・ド・プラコムタール(Henri de Pracomtal)はメールで「確かに多くの産地で新樽の比率が変わってきて、味わいの薄いワインに過剰な新樽を用いることは減りました。一方でローヌやイタリアで伝統的に使われてきた300から600リットルの大型の樽の需要は増えています。しかし、著名なカベルネやピノの生産者で新樽での熟成をやめた生産者は聞きません。アンフォラを試している人もいるとは聞きますけれどね。」と書いている。

彼は近年クリュッグやボランジェだけでなく、シャンパーニュの多くの小規模ブランドや生産者が差別化とグラン・ヴァンとしての地位を再確認する目的でワインを樽で熟成するかつての手法に立ち返る傾向に力づけられているとも話した。

ド・プラコムタールはフランスでの樽事業であるタランソーが、蒸留所からの需要増加もあって2014年から2020年にかけて順調な伸びを示している点に誇りを感じているが、カリフォルニア火災の影響については警戒もしている。

セガン・モロー同様、シェヌ&Co はオークを用いた様々な樽の代替品を提案しているが、ド・プラコムタールはそれ以上の多様化には及び腰だ。「弊社の名前、シェヌ&Coは樽会社という意味ですから、イメージを守り、信頼性を保つという意味でも、また営業経験という意味でも、ステンレスや陶器を売ることはできません」。

オークとワインは理想の結婚を果たしたのかもしれないが、その離婚率は次第に増している。

実験者たち
以下はワインを熟成するためにオーク樽の代替品を積極的に探している生産者だ。

フランス
デュフォール・ヴィヴァン(マルゴー)
ポンテ・カネ(ポイヤック)
ドメーヌ・ギィ・ルーロ(ムルソー)
ドメーヌ・ガイダ(Gayda)(ラングドック)

イタリア
アッヴア・ノヴァ(Abbia Nòva)(ラツィオ)
カステッロ・モンテリナルディ(キャンティ・クラシコ)
ロビン・バウム(Robin Baum)

イベリア半島
ペペ・メンドーサ(アリカンテ、スペイン)
エルダーデ・ド・ロシン(アレンテージョ、ポルトガル)

その他ヨーロッパ、ユーラシア
ヘイマン&フィアイ(Heimann & Fiai)(セクサールド、ハンガリー)
ルートヴィヒ・ノル(フランケン、ドイツ)
マインクラング(ブルゲンラント、オーストリア)
ゾラ(Zorah)(アルメニア)

北アメリカ
パックス・マーレパックス・マーレ(カリフォルニア)
ザカ・メサ(カリフォルニア)
ベッカム(オレゴン)
シンクライン(ワシントン州)
オカナガン・クラッシュ・パッド(ブリティッシュコロンビア、カナダ)

南アメリカ
アルトス・ラス・オルミガス(アルゼンチン)
フィンカ・ラ・セリア(アルゼンチン)
ズッカルディ(アルゼンチン)
ヴィーニャ・レイダ(チリ)
ペドロ・パッラ(チリ)
ガルソン(ウルグアイ)

加えてジョージア、チリ南部、アンダルシアの(伝統を維持している)モンティーリャ・モリレス、(新たな道を開拓している)オーストラリアなどの多くの生産者もこれに加わるだろう。

テイスティング・ノートについてこちらを、またオークに関する様々な記事はこちらを参照のこと。

原文

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