ヴォルカニック・ワイン・アワード | The Jancis Robinson Story (ポッドキャスト)

プリオラトはその価格に見合うのか~TT

2014年9月11日 木曜日 • 6 分で読めます
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TT:木曜特別シリーズの意。最近の事例に関連のある過去の記事を再掲するコーナーです。

2014年9月11日 今日の木曜特別シリーズはカタルーニャで最も名高いワインについて2004年に掲載した記事を、火曜日に掲載された「プリオラトのパイオニア、25周年を祝う」というフェランの記事にちなんで再掲する。写真は有名なリコレリャ(llicorella-訳注:スレートと石英でできた土壌)に必死で根を張ろうとしているブドウの姿である。

2004年7月23日 スペインで最も高価なワインは、15年前には存在していなかったとも言える産地のものであり、この地域は今でもスペインの外ではほとんど知られていない。先日、私は全てを網羅しているとは言えないものの32の生産者のプリオラト2001を比較試飲したが、その名を知っていたものは3分の1にも満たなかった。しかしそこで、現代のスペインワインの熱意とチャンスが交錯する全貌が明らかになった。

プリオラト(Priorat)はその地方のカタルーニャ語で(カスティーリャ語でのスペルはPriorato)、修道院(priory)という言葉にちなんでつけられた名であり、その修道院は12世紀にプロヴァンスからこの地にたどり着いたカルトゥジオ教会の修道士たちがタラゴナの丘の上に建てたものである。この時ガルナッチャ(グルナッシュ)のブドウが持ち込まれたと考えられている。ガルナッチャは間違いなく、20世紀に入ってフィロキセラが蔓延するまでは広大なブドウ畑で好んで使われた品種だった。当時数千ヘクタールあったブドウ畑は聖餐用ワインを中心に繁栄していたが、1979年ルネ・バルビエ(René Barbier)が初めてこの地に来たときまでには、荒れ果て、人口も減ったこの地域のブドウ畑はわずか600ヘクタールほどになっていた。彼はペネデスの北東部のワイナリーに生まれ育った人物だが、プリオラトで育つ古木のブドウの可能性を一目で見抜いた。

この古いグルナッシュの中から最も可能性のあるものを特定するためには腕が必要だった。フィロキセラ後の当時、カリニェナ(フランス語でカリニャン)がはるかに生産性の高い品種として広く受け入れられていたが、1980年代後半までにバルビエは4人の熱意ある仲間と出会い、この地で最高のブドウに近代的なワイン造りの技術を導入し、フレンチ・オークの小樽を使うようになった。現代のプリオラトの最初の主導者は5人で、彼らは皆、かろうじて村と呼べるグラタリョプス(Gratallops)の岩山にへばりついた、灼熱の太陽が照りつける納屋のようなワイナリーを拠点に活動していた。彼らは厳選したブドウから手作りしたワインを5種類の、デザインに明らかな共通点があり、クロス(Clos)という単語で始まるラベルで販売していた。

クロス・モガドール(Clos Mogador)はバルビエのラベルだった。クロス・マルティネ(Clos Martinet)はホセ・ルイス・ペレスのもので、彼もまた先見の明のあるパイオニアであり、現在は自身のボデガであるマス・マルティネ(Mas Martinet)をファルセットの街の近くに所有している。クロス・デ・ロバック(Clos de l'Obac)は現在コステルス・デル・シウラナ(Costers del Siurana)というワイン会社を経営している地元の町長のもの、クロス・エラスムス(Clos Erasmus)はダフネ・グロリアン(Daphne Glorian)のもので、これは彼女の夫でワイン・インポーターであるエリック・ソロモン(Eric Solomon)が住むアメリカでほぼ独占的に販売されている。5つ目のクロスはクロス・ドフィ(Clos Dofi)で、1994年にフィンカ・ドフィ(Finca Dofi)と改名されているが、アルバロ・パラシオス(Alvaro Palacios)、プリオラトの顔でもあり、スペインで最も有名なワイン、レルミタ(L'Ermita)の生産者でもある人物が生み出したラベルである。レルミタはコーニー&バロウ(Corney & Barrow)によってイギリスに輸入されているが、その価格表にはおどろおどろしく「時価」とのみ書いてある。アメリカのインポーターはレア・ワイン・カンパニー(Rare Wine Company  www.rarewineco.com)でパラシオスのプリオラト3種全ての幅広いヴィンテージを取り扱っており、更に彼の素晴らしいビエルソ(Bierzo)も扱っている。

パラシオスはリオハ・バハにある家族経営のワイナリー、パラシオス・レモンド(Palacios Remondo)で育ったが、プリオラトの類稀なる自然環境に惚れ込んでしまった。そこはほとんどの気軽な旅行者にとって強く印象に残る特異な環境であった(なにしろそこはいまだにほとんどインフラが整備されていないのだ)。しかし、偉大なワインと恋に落ちたこの若者にとって、どうあがいてもいまだに二流のワイン産地だとみなされているスペインの現状を思うと、このプリオラトのめまいのするような急峻な丘がまるで黄金郷のように見えたのだ。プリオラトで最も重要な自然要素はその独特なシスト、地元ではリコレリャと呼ばれる土壌である。これが日の光を浴びてキラキラと光るのだ。暗褐色で深い溝やくぼみのあるそれはアマレッティ(ビスケット)の包み紙の燃えかすに見えなくもない。比較的柔らかいこの岩石は冷たく保水性が高いため、プリオラトの乾燥した地中海性気候の夏に深く根を張るブドウの木を養うのに最適である。

最良の畑はやせた丘に位置し、日焼けを避け、地中海からの風を受けることのできる北あるいは東向きの斜面、標高500mほどの場所に多く点在する。標高がそれより高いと土壌はシストでなくなり、それより低いと土壌が肥沃になりすぎ気温も高いため洗練されたワインが作れないのである。レルミタの4000本のワイン全ては60度のリコレリャの斜面で作られているため、作業者は(私が訪問した2000年当時はほとんどがコートジボワール出身だった)ロープで体を固定しなくてはならず、アイゼンも支給されていた。

実際には、この魅力的で大変貴重なプリオラト2001のコレクションのテイスティングで、私はそれらに最も多く認められる欠点が安易な過熟とせっかくのリコレリャに由来するキリッとしたミネラルの欠如だと気付いた。おそらくこれは多くの新しいブドウ畑があまり適切ではない土地に作られているためだろう。この地域では今や1500ヘクタール以上のブドウ畑がワインを生産しているが(その多くはアルバロ・パラシオスが真に偉大なプリオラトは決して生まれないと指摘した、再開拓された段々畑なのである)、若木が多いために繊細な果実が少ないことも意味している。

最も上質なプリオラトのブドウは古木で、1本の株仕立ての木からようやく1本のワインができるというほど収量が低く、そしてそのほとんどがガルナッチャである。このような土壌で収量を抑えて初めて、ガルナッチャは非常に繊細で凝縮し、深い果実味をもつワインを生み出すことができるのだ。偶然にもあの卓越したレルミタは80パーセントのガルナッチャと少しのカベルネ・ソーヴィニヨンで作られている(2000年にアルバロ・パラシオスから聞いたところによると極少量の古木のカリニャンとガルナッチャ・ブランカもブレンドされている)が、テンプラニーリョが幅を利かせているスペインの他の地域で嘆かわしいほど評価の低いガルナッチャの地位を挙げることができていないことは注目すべき点である(もしテンプラニーリョやピノ・ノワールのような成熟の早いブドウ品種をプリオラトに植えたら、間違いなく8月中旬には収穫しなくてはならなくなるだろう。)

私は長いこと、良いプリオラトというのは世界で最もテロワールの表現されたものの一つだと考えてきた。若いプリオラトはオーストリア、ヴァッハウのアハライテン・ヴィンヤード(Achleiten vineyard)のワインに似て、石を舐めているかのような(もちろんいい意味で、である)味わいがある。私がテイスティングしたワインは急なシストの斜面で育った古木に由来する上質な粗いタンニンが感じられるものと、完璧に作られ、完熟したジューシーな赤だけれども、他のどの地域でも作れるようなものにはっきりと分かれた。

プリオラトの古木はガルナッチャまたはカリニャンである。非常に古いカリニャンは興味深いワインを生み、シムス・デ・ポレラ(Cims de Porrera)のような作り手は「クラッシック」に85パーセントもこの品種を使っている。彼らのワインは樹齢が15年以下の場合、アタックと酸のかなり強いワインとなることが多い。貴重なブドウ畑のための土地にカリニャンを植えて無駄にする者はいないだろう。より見込みのある候補はガルナッチャ、あるいはカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、シラーであり、どれもこの地域の規則で栽培が認められている品種である。ただしメルローはここではあまりその輝きを発揮できないことが多い。現在、あらゆる品種のブレンドが「赤のプリオラト」として販売されている(そしてフルボディでたいていはぼやけた味わいの白も存在する)が、私が気に入ったワインのほとんどは古木のガルナッチャである。


この産地はまだ産声を上げたばかりであるため、(都合のいい常套句ではあるが)そのタンニンの非常に高いワインたちがどのように熟成していくか予測することは難しい。一握りのクロスシリーズの1990年代初頭に作られたワインをテイスティングしたが、そのパターンはほとんど読めない。クロス・マルティネ1992はよく熟成したポムロールの柔らかいヴィンテージ、たとえば1990のような味わいだが、同じ年の他のワインは飲み頃までまだ数年かかりそうだった。しかしおそらくこれは初期のワイン造りの技術と荒っぽいタンニンのせいだと思われる。また、現在のプリオラトのワインメーカーは狂ったように抽出技術や樽発酵に頼りすぎである(レネ・バルビエの新しいクロス・マニエテス(Clos Manyetes)は上質な例である)。

ほんの5分ぐらいかけて自分のテイスティング・ノートを見直してみて気づいたが、6本のお気にいり2001ヴィンテージのうち4本は元祖クロスの開拓者たちのものだった。

お気に入りの2001プリオラト

L' Ermita 2001 Álvaro Palacios

(Clos Dofi 2001はテイスティングしていない)

Clos Erasmus 2001 Daphne Glorian

Clos Fontá 2001 Mas D'en Gil

Clos Mogador 2001 René Barbier

Clos de L´Obac 2001 Costers del Siurana

Lo Givot 2001 Celler del Pont

Clos Martinet 2001 Mas Martinet

詳細はテイスティング・ノートを参照してほしい。40以上のプリオラトの詳細と点数を見ることができる。

追伸。南アフリカ人のイーベン・サディの作るディテス・デル・テラ(Dites del Terra)2001プリオラトも非常に良いことを思い出した。他の多くのものよりも大変洗練されている。

原文

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