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ストッキンガー、ワインメーカーにとってのストラディバリウス

• 5 分で読めます
Thomas Teibert of Domaine de l'Horizon

オーストリアの小規模樽生産者はじわじわとその存在感を増している。この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズに掲載されている。この記事を最後に4週間の休暇に入る。

流行はワインにおける重要な要素だ。ピノグリージョの大流行、それからプロセッコ、ピクプール・ド・ピネ、ペコリーノ・・・(もしかして頭文字がPというのが条件なのだろうか?)。オックスフォード・コンパニオン・トゥ・ワインにはそんな流行の一覧がまとめてある。ただし、2014年に書かれたものだから、最新情報ではない。

ワインの流行は消費だけでなくワイン生産にも影響を及ぼす。20世紀の末には、タンニンを柔らかくするために微量の酸素をワインに送り込むマイクロ・オキシジェネーションが流行した。かつて流行した事前に破砕を行う手法に代わり、現在は全粒あるいは全房でワインを仕込むことが流行だ。

ここ40年ほどのファッションのバロメーターとなるのがワインを造り、熟成させるための素材だ。オークの物理的性質は特にワインにぴったりだ。小型のオーク樽はよくバリックと呼ばれるが、20世紀最後の20年間に大流行した。樽熟成を行うことが、赤だけでなくシャルドネも含めた上質で近代的なワインを造るための必須条件とみなされていた。例えば南米で当時増えていたワイン輸出業者は毎年新樽をいくつ購入したかで自分たちがいかに洗練されているかの基準にしたものだ。

アメリカは樽業界の盛況を維持しているが、アメリカン・オークは一般的に甘さが出るため上質なワインよりはウィスキーと相性が良い(カリフォルニアのリッジ・ヴィンヤーズはそんな既成概念の驚くべき例外だ)。現在圧倒的に人気の高いオークはフランスのものだ。フランスのオークの森は国の宝であり、特別な政府機関が管理し、フランス国内の樽業者に信頼の出来る原材料を長きに渡り提供してきた。彼らが生み出す1本数百ドルもする樽は野心的な世界中の生産者が追い求め、非常に利益の高いビジネスとなった。ワイン販売のカギとなる売り文句はオークがどこで育ち、トースト具合がどの程度かという点に変わっていった。もっとも、内部のものに言わせればそんなことよりもどれだけ慎重に素材を選び、乾燥させたかの方が重要だと主張するのだろう。

ところが今世紀に入り、新たなワイン造りの装飾品の流行が訪れた。ザルツブルクとウィーンのちょうど中間、アルプスにほど近い小さな町ヴァイトホーフェンのオーストリア人一族が作る木製の発酵容器がその頂点に立つ。ストッキンガーはパンフレットはおろかウェブサイトも持っていない。なんとも洗練されていない販売方針だ。だがストッキンガーの樽及び彼らの職人魂は尊敬を集め、世界中のワインメーカーたちが彼らの手による作品(1990年代半ばからは発酵容器だけでなく小型の樽も手掛けている)に長い列を作っているのだ。

イギリスのインポータ、スウィッグのロビン・デイヴィスによれば「ストッキンガーはワインメーカーにとってのストラディバリウスですよ。訪問者に見せびらかすために持っていなくてはならないもの。1990年代のバリックであり、2000年代のコンクリートエッグ、2010年代のクヴェヴリやコンクリートタンクみたいなものですね」。

ストッキンガーの顔となるのは自身のワイナリーをフランス南西部のルーションに持つ威勢のいいドイツ生まれのワインメーカーだ。トーマス・タイバート(Thomas Teibert)は上の写真の人物で、ラングドックにある我々の別荘に、最近の昼間ワインのサンプルを届けてくれた。コーヒーか水でもいかが、と尋ねると彼は力強く「ワインでお願いします」と言い、自分でボランジェを3杯空けていった。

タイバートはワイン醸造をガイゼンハイムで学んだ(学友であるクラウス・ピーター・ケラーによると、ヴィラ・マスで食事を共にした際、テーブルにあれほど多くのワインボトルが並ぶのを初めて見たと話した)。彼は多くのワイン産地で働いたが、その中でもオーストリアのグラフ・ハーデッグ・ワイナリー(Graf Hardegg)で働いていた1994年に彼はストッキンガーの作品に出会い、ドイツにおける彼らの代理人となり、少しずつフランツ・ストッキンガーの近くで働くようになった。「彼は木の職人なので、私が会社のワイン担当となりました。ブレンドやトーストを提案し、私たちは共に働きました。ワインにオークの味わいが出るのが私も彼も嫌いだったので、他の誰よりも早く、ウルトラ・ライト・トーストを作りました。最初は『なんでバリックの味がしない樽に高い金を払わないとならないんだ』と言われましたが、少しずつ顧客を獲得し、他の市場にも進出するようになったんです」。

ストッキンガーは長いことオーストリア内で尊敬を集めていたが、1980年代に初めて彼の発酵容器を購入した海外のワイン生産者は、フィレンツェの重鎮であるアンティノリで、彼らのスーパータスカンであるティニャネロとソライアにそれを使った。その後ストッキンガーの容器はジャコモ・コンテルノなどイタリアのトップ生産者に愛されるようになった。

2003年、自身のドメーヌを持ちたいと考えていたタイバートはルーションのジェラール・ゴビーとスイスで開催された洗練されたワインフェアで出会い、彼がビオデナミで作るワインがあまりに気に入ったため、2004年に同じカルス村にドメーヌ・ド・ロリゾンを立ち上げた。今では彼は15ヘクタールの、低収量かつ樹齢100年近いブドウの畑を所有し、心を惹きつけるワインを造っている。

フランスを拠点とすることは樽を販売する上で有利になる。ことさら繊細な白ワインと、もちろん赤ワインも造るグラーヴのドメーヌ・シュヴァリエは、樽の香りが明確なスタイルから繊細なスタイルへと世の中の潮目が変わり始めた時にストッキンガーに扉を開いたボルドーのエリートだ。タイバートは、彼のお気に入りのラングドックの生産者でロック・ダングラードを作るレミー・ペドゥレノが「樽業者には二種類あり、一つは木を見ている業者、もう一つはワインを見ている業者だ」と述べたことを誇らしげに話してくれた。

2014年、タイバートはカリフォルニアの元ソムリエでワインメーカーのラジャ・パーに紹介された。ワイン業界で共通の友人がワインに取りつかれた二人の性格に共通点を見出し、二人がボーヌにいるタイミングを見計らって会えるよう取り計らったのだ。その結果パーはアメリカ国内でストッキンガーの数百もの樽を流通させるための手伝いを申し出た。ソーシャル・メディアでパーの露出が高いことと、ストッキンガーの評判も相まって、たった1度のフェイスブックの投稿で予定数量は完売した。「自分たちがそれほど認知されているなんて知らなかったんです」タイバートは誇らしげに話した。

父のフランツと同じく樽職人の30歳のマティアス、二人のストッキンガーは頻繁にワイン業界に顔を出すわけではない。酒もめったに飲まず、1516年に樽工房で有名な街に設立した、世界最古と自負する樽工房の30人程の職人たちと働き、家に帰るのが幸せと感じるタイプだ。フランツの父はこの事業を1950年に跡継ぎのいなかった一族から買い取った。かつては装飾を凝らしたバルコニーを得意としていたが、次第にワイン容器や樽がそれにとってかわった。

フランスの樽工房は自然とフレンチオーク専門となるが、現在では社会主義時代よりも森の管理が行き届くようになった東欧からオークを仕入れる者も出てきた。多くの者がストッキンガーに探りを入れに来たが、なぜこのオーストリア産が良く売れるのかを見極めるのは難しいようだ。

ストッキンガーではフランスを含む多くのオークの原産地を試してきたが、現在ではオーストリア(首都の周辺で栽培されるものだ。ウィーンの森、という言葉を思い出してほしい)、ドイツ、ハンガリー、ルーマニアの原材料をほぼ同率で使用している。ルーマニアには優れた樽工房は少ないが、素晴らしい森は多い。

樽の効いたスタイルが流行から外れた結果、私が話を聞くワイン生産者たちは新樽の購入頻度はかつてよりも減っていると話し、明確な樽の香りがつきにくい、より大型のサイズを好む傾向にある。私はこのことがフランスの樽工房の収益に影響するのではと想像したが、タイバートは心配する必要はないと断言した。中国のように、新たなワイン生産国で樽を探している生産者は常に存在するし、いずれにしても「アメリカは樽の市場としては夢のような、最高の市場なんです」と話した。


フランスの樽業者の系譜
これらは全てストッキンガーよりも大規模だ

比較的大規模なもの:

François Frères group
Seguin Moreau, owned by Oeno, who also own the Diam technical cork business
Charlois group, including Berthomieu and Saury
Taransaud

中規模:

Damy
Vicard
Sylvain
Boutes
Dargaud & Jaegle (incorporating Vallaurine)

原文

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