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保管倉庫のセキュリティを強化すべき時

2019年7月20日 土曜日 • 5 分で読めます
Rack and pinion railway leading down 100 feet to Octavian's bonded wine warehouse at Corhsm

この記事のショート・バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

先週の金曜日、ワイン商タギー・メイヤー(Tuggy Meyer)は自身の54歳の誕生日を祝うために15歳の息子を連れ、ロイヤル・ガーデン・ホテルの最上化にある中華レストランで有名な北京ダックとケンジントン・ガーデンの眺めを楽しんだ。

彼は最近、自身のワイン・ショップであるハンツワース・ワイン(Huntsworth Wine)が入るケンジントン・チャーチ・ストリートにあるビルを売却し、すべてが順風満帆だと感じていた。ところが翌日、彼の人生に大きな影を落とす知らせを受け取ることとなった。これはワインを専門の保管倉庫に保管している誰にでも起こりうることだ。

彼が伝えられたのは、彼が委託保管している20万ポンド相当のワインが持ち出されてしまったというのだ。事件はそのイギリスの田舎にある保管倉庫で週末、スタッフが不在で監視下ラメラを見ていない間に起こった。保管契約時の利用規定によるとその損失に対する補償はたったの1000ポンドのみとなっていたという。「もしビルを売却したばかりでなかったら、もっと落ち込んでいたと思います。」彼は話した。だが彼の主な懸念は、高級ワインがこのような被害にあう傾向がいかに高まっているのかについて、ワイン業界全体が無知であるという点だ。

彼は高級ワインの価格が上がったという記事を目にするたびに心が沈み込むという。ワイン投資に群がる悪と戦うという点で彼の理論は、私の同僚でもあるジム・バッド(Jim Budd)も同意しているように、このような不正(しばしば対象となるような投資家への売り込みの電話で始まる)の背後にいる人物はワインを金にするために新たな方法を探り始めていることだ。 「我々が狙われているのは間違いありません」彼は私に言った。「先週私は100名ほどのワイン商に何らかの被害を受けたことはないかと尋ねるメールを送り、あるという回答を3件得ました。」

そのうちの一つは、保税倉庫への輸送中に20フィートコンテナごとワインが消えたというもので、運転手は配送先が変わったと嘘をつかれたと話しているそうだ。別のワイン商はフランスからの受け渡し時にワインが4ケース足りなかったし、もう一人の地方のワイン商は貴重なボルドーの混載ケースだけが消えてしまったというものだった。ワインの引き渡し不足はよくあることだ。例えばメイヤーの場合は、上述の大規模な盗難の後3回も引き渡し量の不足に出くわしている。

このような引き渡し時の運転手は外部の契約業者だ。そのうちの一人が匿名という条件で、セキュリティのレベルは会社によって大きく異なることを教えてくれた。例えば保管料の最も高いオクタヴィアン (和訳)は48か国の投資家、ワイン商、コレクターなどのワインをコーシャムにある、芝地の下に位置する石灰質の洞窟内に100万ケースを超えるワインを保管しているが、セキュリティにはこの上なく厳しい。運転手はその日のリストに名前がある場合にしか敷地に入ることが許されず、すべてのケースは発送時と入荷時に入念に検査して写真を撮影、すべてのトラックも注意深く調べられる。(上の写真はラックピニオン式のレールで地下100フィートにある保管区域まで全てのケースがこの上を通って運ばれる)

だが、上述の情報源によれば他の専門ワイン倉庫の入り口ではセキュリティと呼べるものがわずか、あるいはまったく存在せず、監視もほとんどないこともあるようだ。朝の5時に14,5人の運転手が一度に到着し、それを倉庫担当者が一人で確認するだけのこともあり、すべてを確認することは不可能だという。ワインを守るための予防的手段は、不足があった場合に運転手個人が責任を負うという契約だけだ。彼は、かつてワインと関係ない仕事をしていた際に保管倉庫の担当者に雇われていたことがあり、その際に支払いは現金がいいかワインがいいかと尋ねられたこともあるとも話した。

ワイン偽造と闘う、カリフォルニアを拠点とするシェ・コンサルティングのモウリーン・ダウニー (和訳)もまた、この問題に対するワイン業界の無頓着さに不満を覚えている一人だ。彼女によれば「ワインを販売する免許を持たない人々がこれまでにない方法で不法にワインを販売しているんです。クレイグスリスト(訳注:地域のコミュニティサイト)、フェイスブック、イーベイ・・・売ってしまった後はほとんど痕跡が残りませんから、不正を行っている人物が表に出るリスクが最小限にできるんです」。

彼女はまた、最近ベイ・エリアで頻繁にみられるようになった、ワイン店に大口の注文が午前中にクレジットカードで入るという手口についても言及した。ウーバーの運転手が商品を取りに来るが、午後になってそのクレジットカードが機能しないことが判明するというものだ。

メイヤーやダウニーと違って、私はプロの窃盗団が自分たち用のセラーを所有していない限り、ワイン業界だけが特別に標的とされているとは思っていない。少なくともイギリスでは、盗まれた高級ワインが販売されているという根拠ある事実に出会ったことはない。そのような高級ワインを購入しようとする人はほぼ、非常に結束の固いイギリスのワイン業者から購入するはずで、それ以外の提供元から、例えば由来のわからないボルドーの格付けシャトーを買わないかという提案があった場合、この上なく怪しい。もちろん、イギリスのワイン業界も裏で不正を行っている可能性があることを私が知らないだけなのかもしれないが。

一方でメイヤーの経験は別の点について私に確証を与えた。すなわち高級ワインの価格が飛躍的に上昇しているにも関わらず保険価額も専門的なセキュリティ対策もそれに追い付いていないということだ。「ワイン業界で私のコレクションよりはるかに価値のあるワインを所有している人々のうちおよそ40%は自分がワインを預けている倉庫に実際に足を運んだことがないと思います。」とメイヤーは主張する。「だから例えば、24時間の監視カメラが設置されているのか、まったく知らないわけです。ある意味無知で古典的な、信用に基づいたビジネスで変化になかなか追いつけないので、消費者はますますリスクにさらされるようになっています。」

そもそもイギリスの高級ワイン取扱業者や洗練されたワイン商の販売するもののうち、飲み頃のものはほんの一握りだ。このことは、彼らの顧客は購入したワインをほとんどの場合は何年も、場合によっては数十年も保管しなくてはならないことを意味する。近年のワイン収集家は適切に温度が低く暗い、個人的なセラーを設置するための十分な保管場所を持たないため、購入した業者に12本1ケース、あるいはケースのなん分の一という単位で料金を支払い保管を依頼することになる。その金額は年間8から25ポンドと幅が広い。(こちらも参照のこと)

イギリスのワイン商で自社の保管倉庫を所有しているものも少ないため、ほとんどはその膨大なワインを専門の保管倉庫、典型的には顧客がそのワインを飲もうとするまで税金を支払わなくて済む保税倉庫に委託することになる。(それらはワイン商自体の取引としてイギリスの内外を問わず同業の顧客に販売されることも多い)

保険は大きな問題だ。すべてではないが一部のワイン商や保管業者は損失に関してその時点での価値で全額を保証する制度を設定している。特にこの「その時点での価値」というのはワインの価格が上昇の一途をたどる近年では非常に大きな意味を持つ。メイヤーは彼が盗難にあった倉庫の保管料が比較的安かったことを認めている。高級ワインの価値が非常に高まっている今、最高級の倉庫を使い、利用規約を詳細に至るまで読み込むことは恐らく十分に価値のあることだろう。さらに多くのワイン収集家にとってワインを容易に動かせることと配送のスピードも重要な要素になる。

盗まれたメイヤーの20万ポンド相当のワインに何が起こったのかは知る由もない。おそらく最近、パリの3つ星レストラン、ミシェル・ロスタンのセラーの壁の隙間から盗まれた60万ポンド相当のワインと同じルートでどこかに運ばれたのだろう。

傷口に塩を刷り込むようだが、所有していたワインが盗まれた場合でも付加価値税や諸税は課される。「業界人の半分はそのことを知らないんじゃないですかね」とメイヤーは話した。

販売と同様に保管も請け負うイギリスのワイン商
多くのワイン商は顧客のワインと自社の在庫を区別するためグッドハウス(Goedhuis)のプリベート・レザーブ、プライベート・セラーズのプライベート・セラー・リザーヴス、ジャスティリーニ・ブルックスのセララーズなど専用保管倉庫の会社を運営しているが、直営の倉庫は所有していない。

ただし以下は自社の保税倉庫を所有している。

Averys and Laithwaite's, Gloucester
Berry Bros & Rudd, Basingstoke
Seckford, Suffolk
The Wine Society, Stevenage

無料で閲覧できる世界の専門ワイン保管倉庫のガイドについてはこちらを参照のこと。

原文

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