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政治とジンファンデル

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この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。Celebrating Tribidrag in Croatiaも参照のこと。

ブドウ品種の名前が政治的な意味を持つことがあるのだろうか?最近参加したエディ・マレティック(Edi Maletič)およびイヴァン・ペジク(Ivan Pejič)両教授による「アイ・アム・トリビドラグ」という挑戦的な題が付けられた会議で私はそれを強く感じた。

一日がかりのテイスティングとプレゼンテーションを含むセッションはクロアチアン・リゾート・オブ・スプリトという、会が進むにつれこの会にふさわしい名であることがわかる会場で行われた。

アメリカ人のエミリタ・キャロル・メレディス(Emerita Carole Meredith)教授(下写真;カリフォルニアの「ジンファンデルの王」ジョエル・ピーターソン(Joel Peterson;左)とリッジ・ヴィンヤードのデイヴィッド・ゲーツ(David Gates)(右)とともに)による非常に魅力的な話によってそれは穏やかに始まった。1992年にカベルネ・ソーヴィニョンにその地位を奪われるまでカリフォルニアのワイン生産を一世紀以上にわたり席巻していたブドウ品種を彼女がヨーロッパで特定しようとした経緯に関する話題だ。その品種は事実上現在作られているすべてのワインを支えるヨーロッパ系品種の一つであり、アメリカではジンファンデルとして知られ、最良のものはスパイシーで力強く、長命な赤を生み出すことが可能だ。

ロングアイランドの育苗商だった男性がハプスブルク帝国時代のウィーンにあった膨大なコレクションの中から輸入したものだとわかるまで、数十年もの間その原産地について歴史学者と生産者は様々な説を唱えてきたが、説明のつかないことが多く残されていた。

1960年代にはカリフォルニアのブドウ科学者オースティン・ゴヒーン(Austin Goheen)がこのジンファンデルと、プーリア人がプリミティーヴォと呼んでいる品種の著しい類似性に言及してはいたものの、DNA鑑定によってそれら二つの品種が同一であると証明されたのは1996年になってからのことだった。

だが、この点はそれほど大きな発見とは言えなかった。プーリア人たちはこれが輸入された品種で、おそらくはアドリア海方面からだと知っていたからだ。メレディスは長いことその起源が南クロアチアの主力である赤ワイン用品種、プラヴァッツ・マリ(Plavac Mali)ではないかと疑っていた。ワイン用ブドウの分析にDNA鑑定を使う世界第一線の専門家として(カベルネ・ソーヴィニヨンがカベルネ・フランとソーヴィニヨン・ブランの子孫だと証明したのも彼女だ)プラヴァッツ・マリの様々なサンプルを分析し多くの類似性を発見したものの、その同一性を証明することはできなかった。彼女はいらだっていた。

だが、「1997年12月10日は私にとって幸運な日でした。ペジックがメールをくれた日です。」と彼女は話した。当時彼女はクロアチアでのジンクエスト(ジンファンデルの追及)に力を貸してくれるにふさわしい情報を持った人物を探していた。一方ペジックはザグレブ大学の植物育種学の教授として、クロアチアが2013年にEUに加盟するにあたり固有のワイン用品種のDNA解析ができる人物を探していて、彼女に連絡を取ったのだ。

4年間、ペジックと彼の同僚であるエディ・マレティックはクロアチア中の数百というブドウのサンプルを集め、デイヴィスの彼女の研究室で分析を行ったが、ブドウに葉がついている時期にしか行えないためにそのペースは非常に遅かった。DNA鑑定によりこれらの植物がジンファンデルと近しい関係にあることは分かったが、同一だと言う証明はできなかった。

ところが、2002年、ついに彼らはスプリト近郊のカステル・ノヴィ(Kaštel Novi)に由来する8つのサンプルのDNAがジンファンデルと一致することを突き止めた。それらは地元ではツァリヘナック・カステランスキ(Crljenak Kaštelanski)またはツァリヘナック・カステル(Crljenak of Kaštel)と呼ばれていた。その後2年かけて彼らはそのほか2か所で遺伝子学的に同一なブドウを追跡したが、それらは地元でリビドラグ(Pribidrag)と呼ばれていた。

古いクロアチアのブドウ分類辞典にはトリビドラグは古来から存在する固有品種だとの記載はあったが、最新の技術を用いてようやく2008年、1世紀以上前の乾燥した植物標本のDNA解析に成功し、トリビドラグ、プリビドラグ、ツァリヘナック、プリミティーヴォ、そしてジンファンデルが同一の品種であると結論付けるに至った。

歴史学者はこの地域の長い歴史のなかで主導権を握ってきたベニスの貿易記録の確認に飛んだ。彼は1488年トリビドラグの樽がベニスからプーリアに発送された記録を見つけ、その品種の名声からもそれは明らかに高貴な人のために作られたものだとわかった。

会議はこのクロアチアとのつながりが発見されて15周年という節目に開催されたもので、地元の人々は明らかに何年にもわたってその概要を知らされてきたようだ。私が乗ったタクシーの運転手は私がワイン関係者だと知らず、スプリトはジンファンデルの生まれ故郷であると自ら語ってくれたし、会議の参加者の一人は「ジンファンデルの生まれ故郷はカシュテラ(Kaštela)である」と誇らしげに書いてあるスポーツシャツを着ていた。

アメリカの副大使までもザグレブから参加しており、ジンファンデルの身の上は貧しいヨーロッパの移民がいかにして大西洋を渡り、そして「二つの国の懸け橋となる」ことに成功したかという意味でアメリカン・ドリームとも言えるとクロアチア人たちに向かって弁舌をふるった。

しかし、その起源があまりに長く不明だったため、このブドウは商業的に、クロアチアの中ですら複数の異なる名前で呼ばれるという珍しい状況にある。

ブドウの新規植え付けをEUが禁止する前に急速にこの品種が植えられた約100ヘクタールもの畑から作られた製品のほとんどの表記委はツァリヘナックだが、ややこしいことにジンファンデルまたはプリミティーヴォとラベルに記載のあるクロアチアワインも知られていないわけではない。また生産に使われる材料はイタリアからの輸入品だ。下の写真はザダル(Zadar)近郊にあるロイヤルワインヤード(Kraljevski (royal) vineyard)で、アドリア海と、その向こうに島々が見渡せる。

世界的にみるとジンファンデルという名前が量の上では最も主要な位置を占めている。しかし、プーリアの力強い赤ワインのほとんどはプリミティーヴォの名で売られているし、2012年に出版した商業的に生産されているワインを作るあらゆるブドウを網羅しているワイン・グレープスでは私自身この品種の主要な名称としてトリビドラグを採用している。それが最も歴史のある名前と考えられるためだ。

そのようなわけで、ペリクとマレティックがこの会議に付けた名前はカリフォルニア、プーリア、クロアチア、そして私と共著者であるブドウ遺伝子学者であるホセ・ヴィーアモス(José Vouillamoz)が世界中からかき集めたワインのプレゼンテーションを通じてこの品種にスポットライトを当てることとなった。

しかし、何もかもが平和と光に包まれていたわけではない。眠れる森の美女に出てくる意地悪な妖精を思い出した出来事もあった。この品種に関わるすべてのプレゼンテーションが終了したところで5人の屈強なモンテネグロ代表が立ち上がり、その本当の起源はクロアチアではなくその名がクラトシュヤ(Kratošija)として知られいてるモンテネグロである、と主張したのである。

残念ながら我々は「世界その他の地域」のテイスティングでもモンテネグロのワインに出会うことはなかったが、やや精彩に欠けるアルバニアのワインをかろうじて見つけることはできた。この品種がバルカン半島の政治的なるつぼのどこかに由来するとだけは明白だと言えよう。

メレディスはキャリアのある科学者だが、55歳の誕生日に大学のお役所仕事から自身のナパ・ヴァレーの畑へそのキャリアを転向し、ジンファンデルをトリビドラグと呼んで生産している。彼女は我々がその品種の本当の由来を知ることは永遠にないかもしれないと話した。ただし、現存する近縁の品種を考え合わせると、内陸は冷涼すぎることからその起源はアドリア海沿岸の近くであることはほぼ間違いないだろう。

その由来は重要なのだろうか?マーケティングという意味では、確かにその答えはイエスだ。

お薦めのトリビドラグ

カリフォルニア

Carlisle, Montafi Ranch Zinfandel 2013 Russian River Valley
Frog's Leap Zinfandel 2013 Napa Valley
Ravenswood, Old Hill Zinfandel 2008 and 2013 Sonoma Valley
Ridge, Lytton Springs 2014 Dry Creek Valley
Turley, Judge Bell Vineyard Zinfandel 2013 Amador

イタリア

Felline, Cuvee Anniversario Riserva 2010 Primitivo di Manduria

クロアチア

Stina Crljenak 2012 Brač
Zlatan Crljenak 2011 Makarska

オーストラリア

Cape Mentelle Zinfandel 2015 Margaret River

これら全てのワインのテイスティング・ノートはCelebrating Tribidrag in Croatia およびdatabaseで読むことができる。取扱業者についてはWine-Searcher.comを参照のこと。

(原文)

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