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ボルドー2012、引っ込み思案なヴィンテージ~TT

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TT:木曜特別シリーズの意。最近の事例に関連のある過去の記事を再掲するコーナーです。

2014年12月11日 この記事はフィナンシャルタイムズに2013年4月20日に掲載されたもののロングバージョンである。木曜特別シリーズとして、先日行ったこれらのワインの瓶詰後のテイスティング・ノートを補足する意味で再掲する。

ボルドー2012に関する詳細記事と約450本のテイスティング・ノートも参照してほしい。

ロバート・バーンズがハツカネズミに捧げた詩をご存じだろうか。「小つちゃな、つやつやした、びくつく、臆病な獣つ子、ああ何といふ大騒ぎがお前の小胸を悩ましている事だろう!(訳 中村為治/『バーンズ詩集』岩波文庫)」私は先週業界およびメディア向けに公開されたボルドーの2012を思い起こすと、この詩が頭に浮かんでくる。というのもこのヴィンテージはその品質の高さをこれでもかと見せつけた2009や2010とは対極にあるからだ。非常に小振りで抜け目なく、縮こまった臆病なヴィンテージであり、もしそれが成功するとしたら(その確率は低いのだが)非常にきわどいところで、畑とセラーに費やされた膨大な努力とコストによって作り出されたものである。恐慌という言葉があるが、まさにこのワインを販売するにあたっては恐慌に似た空気が流れているのは間違いない。とくに2011年のプリムール・キャンペーンが悲惨な結果だっただけに、現在の経済状況で、中国の勢いもなくなり、いったい誰がこれを買うのだろう?そしていったいいつ?

2012を表面的に表現するとしたら、メルローの年ということになろう。全体的に季節が遅く、カベルネ・ソーヴィニヨンの成熟が非常に難しかったためだ。しかしおそらく、生産者たちが成長期にあまたの試練に直面した年である、と表現したほうが正確だろう。その結果が成功を収めたかどうかは個別に評価され、どこまで手をかけられたかにかかってくる。トップシャトーは2009と2010のプリムールの売り上げで潤沢な資金があったため、多くがワイナリー全体を刷新しており、シャトー・シュバル・ブラン、ムートン、パルメ、マルゴー、ル・パン、ペトリュスなどは毎年偉大なワインを生み出すことが可能だ。十分な人員を畑に投入し、彼らが言うところのトワレタージュ(toilettage)、すなわち過剰な実を切り落としてしまえばいいだけのことであり(カベルネ類、特に若いカベルネにとって2012年には重要な作業である)、グランヴァンには最高の品質のワインだけを使えばいいのだから。

しかし今や最高のボルドー赤は1本あたり3桁の価格が付き、ほんの一握りの人しか興味を示さない。しかも、彼らのほとんどは飲むためではなく、投資の対象として購入するのだ。このような2012のテイスティングで私が最も注力したのは、利益ではなく喜びをもたらすような中価格帯のワインを探すことだった。メドックのアペラシオン、特にオー・メドックは2009や2010のような容易な年にはこのようなワインに恵まれていた。しかし、畑に特段の注意を払う必要があった2012は、それほど資金に余裕のないこれらのアペラシオンで突出したワインを作ることははるかに難しかったはずだ。特に彼らが依存しすぎているとも言える晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨンは、9月の終わりでも未熟なままだった。9月の24日から26日にかけて強い雨がメドックを襲い、10月になっても乾燥した日は少なかった。さらに10月半ばには土砂降りが追い打ちをかけたため非常に難しい年となり、収量の減少に伴い価格は上昇した。これはタンニンなどのフェノリックがきちんと熟し、十分な糖のある真に成熟したカベルネだけを選んだ結果である。シャトー・マルゴーの代名詞とも言えるポール・ポンタリエは当然ながら自分たちの由緒あるカベルネに誇りを持っている人物だが、2012に関しては自然がもたらした結果を補うためにシャプタリゼーション(補糖)を行わざるを得なかったと認めた。

JancisRobinson.com に掲載するために右岸のテイスティングを行ったジュリアは、多くの素晴らしいワインがあり、特にポムロールが良かったと報告している。一方で安価なポムロールは少なかったそうだ。安価なものはどちらかというとサテライトのAOC、例えばラランド・ド・ポムロールなどに多く見られた。甘口の白をテイスティングしたのもジュリアだが、2012年はけして素晴らしい年ではなく生産をしなかったシャトーもある一方、シャトー・クリマンスは素晴らしい出来になりそうだと述べている。

他のアペラシオンをテイスティングした私から見ると、2012の最高のアペラシオンはペサック・レオニャンだったと思う。この美しく、森に囲まれた地域はボルドー市の南の郊外に位置し、メドックより温暖なためブドウの成熟は比較的良好だった。事実、シャトー・オー・ブリオンとラ・ミッション・オー・ブリオンの赤は市街地に非常に近い場所に位置するが、アルコール度数が15%近くにまで達しているにも関わらず美しくバランスのとれたものだった。それらの後にこのようなテイスティングではよくあるブラインド・テイスティングでペサック・レオニャンのグランクリュ組合(the Union des Grands Crus)のものを飲んだが、玉石混交で、甘味を強調しすぎているものも散見されたし、特にタンニンの際立ったものはほとんどなかった。それでもこのアペラシオンは私の興味をそそるに十分な品質の赤と白があったので、ペサック・レオニャン組合(Syndicat de Pessac-Léognan)のテイスティングで比較的知名度の低いワインを更に試したが、実にすばらしいワインが蔵出し価格で1本当たり11ユーロという値段で見つかった。(ただしこれらのワインはプリムール・キャンペーンには含まれていない)

辛口の白はペサック・レオニャンとそのすぐ南にあるグラーヴの得意とするものだが、2012のボルドーとしては最も成功したものの一つと言えるだろう。さらにもう一つ非常にコストパフォーマンスの高いものが、(熟成のために購入するものではないが)アントル・ドゥ・メールでも見つけられる。白は通常のヴィンテージよりはるかに生き生きと快活で、成功している生産者の多くは樽のさじ加減が絶妙である。これはボルドー2012の赤を作る際に非常に優しく抽出を行う必要があったのと同様だろう。アペラシオンによっては(私の心に浮かんだのはサンテミリオンとマルゴーだが)はるかにブドウの成熟が進むいつものヴィンテージと同じレシピで作られているワインが多すぎて、魅惑的な香りは楽しめるものの、余韻ではタンニンが痛いほど収斂し、果実味の芯に欠けている。2012にはまったく特筆するべき点はないのだ。全体的に赤はアルコールと酸が低く、中には未熟なカベルネ・ソーヴィニヨン由来の茎っぽさすら感じられるものもある。2010にあったような成熟したタンニンの強さに欠けている。

シャトー・ラトゥールはそのオーナーであるフランソワ・ピノー(François Pinault)が恒例のプリムールのばか騒ぎへの出品をしないと決めた最高級シャトーの一つである。さらにこのシャトーには今毎日のようにクレーンがひっきりなしに列をなしている。現在は数年瓶で熟成させたものだけを提供する方針であるため、おそらくその熟成用のスペースを作るのに大忙しなのだろう。この動きは控え目に言ってもボルドーのワイン商の間ではあまり評判がよくないのだが、プリムールでの販売を万が一行うとすると、手元に若いワインが過剰にあることから2012の価格は劇的に引き下げる必要に迫られている彼らが非常に神経質になっている証とも言える。

2012で比較的買う価値のあるもの
(数字はwine-searcher.com に掲載されている価格の平均をポンドで示す)

辛口の白

Grand Village, Bordeaux 10
Bouscaut, Pessac-Léognan 20
Chantegrive, Graves 10
Clos Floridène, Graves10
Olivier, Pessac-Léognan 18

Batailley, Pauillac 25
Carbonnieux, Pessac-Léognan 18
Couhins-Lurton, Pessac-Léognan 11
Cos Labory, St-Estèphe 19
Dauzac, Margaux 25
Faurie de Souchard, St-Émilion 15
Ferrande, Graves 9
Fonroque, St-Émilion 16
Franc Maillet, Cuvée Jean Baptiste, Pomerol 26 (2010)
de France, Pessac-Léognan 11
Jean Faure, St-Émilion 27
Gloria, St-Julien 22
La Croix de Beaucaillou, St-Julien 24
Laroze, St-Émilion 21
Larrivet Haut-Brion, Pessac-Léognan 18
Lynch Moussas, Pauillac 22
Malartic Lagravière, Pessac-Léognan 25
Malescot St Exupéry, Margaux 34
St Pierre, St-Julien 33
Virginie de Valandraud, St-Émilion 29

ボルドー2012の詳細と450本におよぶテイスティング・ノートも参照してほしい。

原文

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