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ボトル製造者よ聞け

Thursday 8 June 2023 • 1 分で読めます
Encirc bottle factory
Encirc社の瓶工場

2023年6月8日我々が心を込めた嘆願文を掲載することはめったにないが、本稿は無料で公開する価値があると判断した。近年多くのワイン生産者が軽量ボトルの重要性を認識するようになっている点はよい兆候だが、ボトル製造者側はどうなのだろうか?

2023年5月10日 ワインを造る者とその容器を造る者がより密接に結びつく必要性を感じる。

1990年代初頭、世界中のワイン生産者がコルクの品質の低さ、とくにブショネ頻度の高さに頭をかきむしらんばかりに悩まされていた。当時、コルク業界の最初の反応はその問題の存在自体を否定することだった。そのため彼らがコルクのより厳格な処理方法や試験プロトコルの必要性を認めるまで数年を要することとなった(その間に合成コルクやスクリューキャップが次第に注目を集め、コルクの売り上げが減少する見通しが確実となったことも見直しの契機となった)。

当時まだ「彼(か)の」ワイン・スペクテーターと呼ばれていたアメリカのワイン雑誌にマンスリー・コラムを書いていた私は、コルク生産者がワイン業界と一丸となり、この問題を克服する策を練るべきだという熱烈な記事を書いたことを今でも鮮明に覚えている。その記事の中で私はかつてワイン業界の人々と真摯に向き合った、ワイン周辺製品のサプライヤーの例としてゲオルグ・リーデルの名を挙げた(当時彼は世界中を飛び回って特定のワインのスタイルについて自社と他社のワイングラスの比較テイスティングを実施していた)。

もちろん、その後ワイン業界に起こったことを自分の手柄だと言うつもりは毛頭ない。だがあれ以来アモリムを始めとしたコルク業界の人々がワイン業界に深く入り込み、その懸念に耳を傾けるようになったことは事実だ。結果としてワインの瓶詰業者はより高品質なコルクを幅広く入手できるようになり、コルク生産者のビジネスも計り知れないほど成長した。現実逃避をしていたポルトガル人たちが目を覚ました結果だ。

今回私は同じようなことをボトル製造者たちに働きかけたいと思う。現在彼らと彼らの最も重要な顧客との関係はどんどんややこしくなってきている(下の図を見て欲しい(訳注:飲料・食料品のガラス製パッケージに占める比率の円グラフ=23%がスティルワイン、20%がスピリッツとスパークリングワイン);このグラフに示されている2300万tに対し、除外されたとある医薬品、香水、化粧品の占める比率はたった100万tだ。)。この原因は最近の急激な物価高騰および原料不足、そしてサプライチェーンのボトルネック発生などによるものだが、その理由が決して透明性を伴って説明されているものではない。

EUのガラス製品使用状況

読者の皆様は既に、ワインの炭酸ガス排出量にはガラス瓶製造と輸送が最も大きな比率を占めているという事実はご存知だろう。下のグラフを見ても明らかだ。1枚目のグラフはカリフォルニアワイン協会によるもの、2枚目はイギリスのオンライン小売店、ザ・ワインドサイエティによるものだ(どこで瓶詰め及びワインの消費が行われるかによって計算結果は多少変わるが、少なくとも概要をつかむことはできるだろう)。

カリフォルニアワイン協会によるカーボンフットプリントの分析
ザ・ワイン・ソサイエティによるオンライン販売に伴うカーボンフットプリントの分析

我々はワイン生産者、消費者、販売者、瓶詰業者がこれらの問題を認識するきっかけを造ることができたという点を喜ばしく感じている(こちらの19本の記事参照)。その結果、日常消費型のワインに対してはガラス代替容器への興味が増加し、熟成を目指すワインのためには、ボトル製造者に対して軽量ボトルの開発に対する圧力が高まった(ガラスは本格的なワインにとって、風味に影響を与えない完璧な素材だ)。

最近ではリサイクルしたプラスティック、アルミ、ライニングを施した紙素材などが増加しているし、上質なワインにボックスを使うことにも関心が高まっている。これは消費者の利便性や選択肢のためだけではなく、製作および輸送における炭酸ガス排出量がガラスに比べてはるかに少ないという点によるところも大きい。扁平なリサイクルペットボトルの推奨者であるサンティアゴ・ナヴァロは、(その容器を使った)バンロック・ステーションのパッケージのリピート率の高さをブランド・オーナーであるアコレードが報告していると指摘する。またザ・ワイン・ソサイエティが彼らのPB商品にこの革新的な容器を採用する予定であることにも興奮を隠せないようだった(プラスティックそのものが悪なのではなく、それをどう使うかが問題なのだ)。

ただ、多くの瓶詰業者やワイン生産者がガラス瓶製造者に軽量ボトルの供給を渋られた経験を持つことも指摘しておこう。今のところ軽量ボトルの金型不足が一因であることは否めない。製造者たちがその需要の多さをまだ信じていないからだ。小規模なワイン生産者もまた、大手の瓶詰業者が2,3年先の分まで瓶を確保する手段を講じているため、供給量不足に泣かされている。

瓶詰業者も生産者も、このような抵抗の一因には、重いボトルの方が高く売れるとボトル製造者が考えている節があるのではという疑念を抱いている。だが、軽量ボトルの方が原材料は少なくて済む。それなら価格設定を適切にすればよいだけの話ではないのだろうか?確かに軽量ボトル用に新しい金型をデザインする必要があるが、需要は高まっているのだし、最初にそれを供給することができた業者は健全な利益を得ることができるはずではないのか。

ボトル製造者とワイン(もちろんビールやスピリッツもそうだ)生産者の間で協業を進め、売り上げを伸ばし、炭酸ガス排出量を削減するための議論を行うことは非常に重要なことだ。そしてガラス業界はその主要な顧客の意見に耳を傾けるべきだ。現時点で彼らはワイン生産者を窮地に陥れているのに、彼らの懸念に耳を貸そうとしていない。いったいどれだけのガラスを缶、バッグイン・ボックス、リサイクルプラスティックに変えたら彼らは本当の需要に気付くのだろうか?

とはいえ、良いニュースもないわけではない。何人かの生産者は、ヨーロッパのガラス生産者、Verallia に対して好意的だ。彼らはブランド・オーナーと協力してサステナブルなプロジェクトに参加している。パープル・ページ会員なら気付いているだろうが、我々はできる限り、テイスティング・ノートにボトル重量を併記するようにしている。ただ、スパークリングワインのボトルについては、内圧に耐えるために重いものが多く、除外してきた。そんな中、シャンパーニュのテルモンからはいい知らせが入った。彼らはVerallia と協力して当初900gあったボトル重量を835gに減らすことに成功したのだ。さらに最近はそれを800gまで減らしたボトルの試験にも成功している。

更に、環境に配慮を求める消費者からの増え続ける需要は、炭酸ガス排出量の少ないガラス炉への投資へ拍車をかけるに違いない。この問題は365日24時間、非常に高温となる炉を常に維持しなくてはならないエネルギーを考慮し、延び延びになっているのだ。

さらに、ガラスを製造するために欠かせない砂不足も大きな懸念だ。ヨーロッパのガラス製造者組合FEVEによると、彼らはその砂の代わりにリサイクルガラスを使用し、その比率を95%とすることを目指しているが、現時点での平均は52%と、まだまだ先は長そうだ。それでも、ヨーロッパはイギリスやアメリカに比べてガラスのリサイクルシステムがはるかに確立されている方だ。飲料とそれを入れるガラス瓶を生産するすべての人々が一丸となることができれば、サプライチェーンの改善、地球のニーズへの対応、そして必要とされる変化に対する運動を後押しできるのではないだろうか。

いくつかの成功例
● タブラス・クリークのジェイソン・ハースの計算では、軽量ボトルを採用したことで少なく見積もっても14年間で220万ドルの節約になったことがわかったそうだ(まあ、ガラス業界にとっては朗報ではないだろうが)。
● ニュージーランドの大手ワイナリー、クラッギー・レンジは長きにわたり超重量ボトルを使っていたが、彼らはその重量を900gから500gに変えた。ヘッド・ワインメーカーであるジュリアン・グラウンズは「流通業者からのプレッシャーが一番効果的でした」と話してくれた。この軽量化に伴う経費削減は「オーナーに見せる最も強力な武器」となったそうだ。
● オレゴン、ニューバーグのネイティブ・フローラは2010年以来平均で500g以下のボトルを使っており、現在は467gより重いものはないそうだ。オーナーによれば「私どもは生産量の90%をアメリカ全土の消費者に発送していますが、1000回の発送のうち破損の発生率は3,4回、0.2%程度しかありません」。(訳注;計算が合わないが原文ママ)
● オーストリア、シュタイヤーマルク州の300以上のワイナリーはユニークなSteiermarkflascheと呼ばれるリユーザブル・ボトルを使用している。この返却システムは2011年に州の農業会議書所のブドウ栽培部門とスーパーマーケットのSPARによって考案されたものだ。年間6,000tのCO2、96%のエネルギー消費を削減できたそうだ。
● ルーマニアのワイン輸出業Recaş のフィリップ・コックスの報告によれば彼らは数千万本もの365gのボトルを購入し使っている。これは彼が地元の工場を「長い説得の末」実現したのだが、「実際には炭酸ガスの排出はボトルの生産後に起きているということが分かった」そうだ。しかもリサイクルやリユースはその重量を考慮すればそれらを動かすたびに二酸化炭素が排出されることとなり、更なる悪循環を生み出すのだという。これは考慮すべき事実だろう。

カリフォルニアからの知らせ
先日ナパを訪問した際、ナパヴァレー・ヴィントナーズのメンバーに、テイスティングの際彼らが使っている軽量ボトルを送ってもらえないかと頼んでみた。クラップ・ブラザーズとザ・ヴァイスは明らかにその連絡をきちんと読まなかったのだろう。彼らが送ってよこしたボトルはそれぞれ空瓶の状態で860gと750gだった。つまり、ワインが入った状態なら1,610gと1,500gになる計算だ。重すぎる!

1本あたりの重量が空瓶の状態で500gを切る、すなわちワインが入った状態で1,250gというボトルを送ってよこしたのは(通常彼らのラインナップのうち高価ではないものが多かったが)、エーカー(Acre)、アルテサ(Artesa)、ガーギッジ・ヒルズ、ホーニッグ、マーカム、サン・スペリーだった。特筆すべきはガーギッジ・ヒルズで、彼らは軽量ボトルを非常に高価なワインにも使用していた。一方、ガリカのローズマリー・ケークブレッドについては、私が2020年のナパ・カベルネのテイスティング記事で、中国からの輸入ボトルではなくアメリカ国内で製造されたボトルを使用すると決めていることを評価しつつも、彼女が2020のワインに使ったボトルの重さについて批判をしたことがある。彼女が先週書いてよこしたところによると、彼女はようやくアメリカ国内産の、以前よりも300gも軽い、500gのボトルを見つけ、2021のワインに使うことにしたそうだ。素晴らしい!

原文

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