ヴォルカニック・ワイン・アワード | The Jancis Robinson Story (ポッドキャスト) | 🎁 年間メンバーシップとギフトプランが25%OFF

シャンパーニュ~詳細求む

Saturday 4 April 2015 • 5 分で読めます
Image

これはフィナンシャル・タイムズに掲載された記事のロング・バージョンである。詳細なテイスティング・ノートは「Current champagne vintages」を参照のこと。

私は長年とても不思議に感じていることがある。我々が購入する中でも最も高価な部類に入るワインがベイクドビーンズの缶詰よりも「いつ作られて、何が使われているのか」という情報に乏しいにも関わらず、当たり前のように販売され続けていることである。少なくともベイクドビーンズのラベルには原料が何で、賞味期限がいつなのか記載されている。だが典型的なノン・ヴィテージのシャンパーニュにはそのような情報は一切示されることなく販売されているのである。法律では、全てのワインのボトルには小さなロット番号が押印されなくてはならないことになっているが、これらはブランドのオーナーと瓶詰業者のみが解読できるもので、我々消費者には何の意味もない。あなたの近所のコンビニエンス・ストアで煌々とした灯りに照らされて置かれている37ポンドのマムは、実はとても長いことそこに置かれていて、本来のきらめきをずっと前に失っていることだってあるかもしれないのだ。

スティルワインに関しては、そのほとんどにヴィンテージの記載があるため、我々は一目でそれがいつ作られたのか知ることができる。そしてそれらの多くはフロントラベル(最近はバックラベルも増えてきたが)が貼られていて、中に何が入っているのか、多くの情報を与えてくれる。公式なアペラシオンが記載されていれば、よく勉強しているワイン愛好家ならその地理的な由来について多くの情報を得ることができる。品種は多くの場合、フロントラベルに無かったとしてもバックラベルには記載がある。事実、私のようなワインオタクのためにバックラベルに記される情報量は気持ちの良いぐらい増加している。

ところがシャンパーニュやスパークリングワイン、特にヴィンテージを記載しないもの(シャンパーニュの全生産量の98%を占める)については全く何の情報も得られないことがなんと多いことか。典型的なノン・ヴィンテージ・シャンパーニュは最新のヴィンテージのワインにごく少量の古いワインをブレンドして作られる。許可されている主要な3品種、シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエはどのような組み合わせで使ってもよい。そしてそれらのブドウは数多ある村のどこで獲れたものでもいいのだ。理想を言うと、私はこれら原料全ての情報があればうれしいと思うのだ。

中でも私が特に知りたいのはブレンドがいつ行われたのかである(そのボトルに入っているワインの主なヴィンテージがその前年にあたることを意味する)。これを「ティラージュの年」と表現することもある。ブレンドしたばかりのワインを、二酸化炭素を発生させる二次発酵を瓶内で起こすために追加の酵母と共にボトルに入れ、セラーに寝かせた日付のことである。

いや、更に重要な情報として、そのボトルが流通ルートに乗ってからの時間も必要だろう。これはワインが新しいかどうかを知るためだけではない。シャンパーニュはそのカギとなるデゴルジュマンという工程 ―死んだ酵母細胞をボトルから抜出し、ほんの少しの甘味(一般にドサージュと呼ばれる)に少量のワインを混ぜたものを注ぎ足す工程― の前後で異なった熟成をするからだ。(甘味が全く足されなかった場合はそのシャンパーニュはゼロ・ドサージュ、あるいはブリュット・ナチュレと呼ばれる)。

デゴルジュマンのあと(理想的な環境で)長く熟成されればされるほど、シャンパーニュはよりトーストの香りが強く豊潤な味わいになり、デゴルジュマンの直後では溌剌として酸の強い味わいになる。

ここでの大きな手掛かりはデゴルジュマンの日付だが、シャンパーニュの革新者、ブルーノ・パイヤール(Bruno Paillard)とその名を冠したシャンパーニュ・ハウスが1983年以来、全てのシャンパーニュのバックラベルにデゴルジュマンの日付を記載していることは称賛に値する。ほとんどのシャンパーニュ・ハウスは(15年後にパイヤールに倣ったフィリポナを例外として)何十年もの間この問題への取り組みが鈍い。一方デゴルジュマンの日付の重要性に自信があるパイヤールは、それらがどれほど違うのかを示すため同じワインでデゴルジュマンの日付の異なるものを販売している。

ここでワイン評論家独特の問題が浮上する。我々がバックラベルに日付の記載のないノン・ヴィンテージのシャンパーニュを評価する際、我々は実際にテイスティングしたボトルを特定する手段を持たない。これは読者とて同じだ。これでは新たなボトルが毎年少なくとも1回は生み出され、流通ルート上に優に2、3種類のロットが存在する現状では全く何の意味もないではないか。

この疑問に対する擁護論は長い間、シャンパーニュのブレンドはノン・ヴィンテージのボトル差を減らすことが目的であるというもので、ボトル差はほとんどない、というものだった。しかし、この議論に大きな衝撃が走った。2012年にクリュッグ、シャンパーニュで最も重要な地位にあり、LVMHグループ傘下にある豪奢なシャンパーニュ・ハウスが、以後は彼らの「マルチ・ヴィンテージ」グラン・キュヴェ(クリュッグのものはノン・ヴィンテージほど多く見かけるものではないが)の全てのバックラベルにID番号を印刷し、スマートフォンやウェブサイトで各ボトルの完璧な由来を知ることができるようにすると宣言したのである。

先月、毎年恒例のイギリスのワイン業界を対象としたシャンパーニュ生産者の展示会が開催された。私はテイスティングをヴィンテージの表記されたワインに集中して行い、それらが少なくとも私が推薦できるレベルで特定可能なボトルになっているかどうか、あるいは否かを基準として見て回った。結局9つの異なる現行ヴィンテージの49種のワインをテイスティングすることができた。2008が最も多く、喜ばしいことにアヤラ(Ayala)、ボーモン・デ・クレイエール(Beaumont des Crayères)、ベスラ・ド・ベルフォン(Besserat de Bellefon)、ボランジェ(Bollinger)、ポール・デテュンヌ(Paul Déthune)、シャルル・エドシック(Charles Heidsieck)、ランソン(Lanson)、アンリ・マンドワ(Henri Mandois)、ムタール(Moutard)、サンゲール(Sanger)、ヴーヴ・フルニ(Veuve Fourny)、そしてもちろん、ブルーノ・パイヤールとフィリポナはバックラベルにそのデゴルジュマンの日付を記載していた。また、アンドレ・ジャカール(André Jacquart)はこの重要な情報を明示するパネルは掲示していたが、私が見たボトルには印字されていなかった。出展していたシャンパーニュ・ハウスのほぼ四分の一が(そのほとんどが大規模なハウスだったが)、今やデゴルジュマンの日付は少なくともヴィンテージの記載されたシャンパーニュに関しては、顧客に知らせる価値のある重要な情報だと認めたことになる。

私はここ数年、最高品質のシャンパーニュ生産者(4500軒を超す生産者の頂点に立つ超一流の生産者)は自社製品に関する情報の公開に非常に長けていることに気づいた。品種やヴィンテージの比率、g/Lで表示されるドサージュ(あるいは残糖)、そして地理的な由来をバックラベルから読み取ることは、小規模な生産者、たとえばベレッシュ(Bérèche)、ユリス・コラン(Ulysse Collin)、ディエボル・ヴァロワ(Diebolt-Vallois)、エグリ・ウーリエ(Egly-Ouriet)でも珍しいことではないのだ(ウーリエについては少なくとも、ワインは濾過せずに48か月澱と共に寝かせ、2013年の7月にデゴルジュしたことがわかる)。

物事は間違いなく、いい方向に向かっている。

お勧めのヴィンテージ・シャンパーニュ

Billecart Salmon, Cuvée Nicolas François Billecart 2002

Bollinger, La Grande Année 2005

Paul Déthune, Grand Cru 2005

Deutz 2007

Duval-Leroy, Blanc de Blancs Grand Cru 2006

Pierre Gimonnet, Gastronome Blanc de Blancs 2008

Gosset, Grand Millésime 2004

Alfred Gratien 2000

Charles Heidsieck 2005

André Jacquart, Le Mesnil Expérience Blanc de Blancs Brut Nature Grand Cru 2007

Cave Co-opérative Le Mesnil, Blanc de Blancs Grand Cru 2007

Bruno Paillard, Blanc de Blancs 2004

Philipponnat, Blanc de Noirs 2008

Louis Roederer 2008

Pol Roger 2004

Veuve Fourny, Blanc de Blancs Premier Cru 2008

詳細なテイスティング・ノートは「Current champagne vintages」を参照のこと。

原文

この記事は有料会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。
JancisRobinson.com 25th anniversaty logo

JancisRobinson.com 25周年記念!特別キャンペーン

日頃の感謝を込めて、期間限定で年間会員・ギフト会員が 25%オフ

コード HOLIDAY25 を使って、ワインの専門家や愛好家のコミュニティに参加しましょう。 有効期限:1月1日まで

スタンダード会員
$135
/year
年間購読
ワイン愛好家向け
  • 286,112件のワインレビュー および 15,816本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
プレミアム会員
$249
/year
 
本格的な愛好家向け
  • 286,112件のワインレビュー および 15,816本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
  • 最新のワイン・レビュー と記事に先行アクセス(一般公開の48時間前より)
プロフェッショナル
$299
/year
ワイン業界関係者(個人)向け 
  • 286,112件のワインレビュー および 15,816本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
  • 最新のワイン・レビュー と記事に先行アクセス(一般公開の48時間前より)
  • 最大25件のワインレビューおよびスコアを商業利用可能(マーケティング用)
ビジネスプラン
$399
/year
法人購読
  • 286,112件のワインレビュー および 15,816本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
  • 最新のワイン・レビュー と記事に先行アクセス(一般公開の48時間前より)
  • 最大250件のワインレビューおよびスコアを商業利用可能(マーケティング用)
Visa logo Mastercard logo American Express logo Logo for more payment options
で購入
ニュースレター登録

編集部から、最新のワインニュースやトレンドを毎週メールでお届けします。

プライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます。

More Free for all

My glasses of Yquem being filled at The Morris
無料で読める記事 Go on, spoil yourself! A version of this article is published by the Financial Times . Above, my glasses being...
RBJR01_Richard Brendon_Jancis Robinson Collection_glassware with cheese
無料で読める記事 What do you get the wine lover who already has everything? Membership of JancisRobinson.com of course! (And especially now, when...
Red wines at The Morris by Cat Fennell
無料で読める記事 A wide range of delicious reds for drinking and sharing over the holidays. A very much shorter version of this...
JancisRobinson.com team 15 Nov 2025 in London
無料で読める記事 Instead of my usual monthly diary, here’s a look back over the last quarter- (and half-) century. Jancis’s diary will...

More from JancisRobinson.com

Wine news in 5 logo and Bibendum wine duty graphic
5分でわかるワインニュース Plus news on potential fraud in Vinho Verde, recognition for Burgundy appellations in China, and an update on the fight...
Brokenwood Stuart Hordern and Kate Sturgess
今週のワイン A brilliantly buzzy white wine with the power to transform deliciously over many years. And prices start at just €19.90...
Fortified tasting chez JR
テイスティング記事 Sherry, port and Madeira in profusion. This is surely the time of year when you can allow yourself to take...
Saldanha exterior
現地詳報 南アフリカの人里離れた西海岸で、思いがけない酒精強化ワインの復活が起こっている。マル・ランバート (Malu Lambert)...
Still-life photograph of bottles of wine and various herbs and spices
現地詳報 リチャードの著書から抜粋した、アジアの風味とワインをペアリングする方法に関する全8回シリーズの第3回目...
Old-vine Clairette at Château de St-Cosme
テイスティング記事 ジゴンダス・ブランは2024年に新アペラシオンの名に恥じない出来栄えを見せている。写真上は、この年のヴィンテージの傑出した生産者の一つ...
Hervesters in the vineyard at Domaine Richaud in Cairanne
テイスティング記事 南部のクリュの中で2024ヴィンテージの注目株はケランヌとラストーだが、他のアペラシオンにも気に入るワインが数多くある。写真上は...
Gigondas vineyards from Santa Duc winery
テイスティング記事 2024年はジゴンダスが優位に立っているが、どちらの産地も多くの飲み応えを提供している。写真上は、サンタ・デュック(Santa Duc...
JancisRobinson.comニュースレター
最新のワインニュースやトレンドを毎週メールでお届けします。
JancisRobinson.comでは、ニュースレターを無料配信しています。ワインに関する最新情報をいち早くお届けします。
なお、ご登録いただいた個人情報は、ニュースレターの配信以外の目的で利用したり、第三者に提供したりすることはありません。プライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます.