ヴォルカニック・ワイン・アワード | The Jancis Robinson Story (ポッドキャスト) | 🎁 年間メンバーシップとギフトプランが30%OFF

シュナン、半球を超えた奇跡

Saturday 15 May 2021 • 5 分で読めます
South Africans intronised in Vouvray

上の写真(詳細は下記)で強く結びつけられた二つの産地、ロワールと南アフリカ、そのどちらにも、偉大なシュナン・ブランが存在する。この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

もしかしたらシュナン・ブランは世界で最も過小評価されている品種かもしれない。この品種から作られるワインは酸が高いため、一般的にはその本質が花開くまで時間がかかる。だが瓶内で時を経ることでその本領を発揮し、世界で最も上質な白ワインの頭角を現し始める。重要な点はその熟成が数十年にもわたることだ。長期熟成に耐えることすなわち品質の証でもある。

フランスでシュナン・ブランの故郷と言えばロワール渓谷にあるヴヴレイだが、かつて夏に気温が上がらない冷涼な時代には、若いヴヴレイは比較的気難しかった。商業的な生産者たちはその酸の高さとバランスを取るため、あえて糖分を残していたこともあり、ワイン愛好家たち、特に反残糖派たちはヴヴレイ、あるいはシュナン・ブラン自体をまじめに取り上げようとしなかった。

一方、南アフリカにはロワールよりも多くシュナン・ブランが栽培されている。実際、シュナン・ブランはこの国で最も栽培面積の広い品種だ。だが20世紀が終わるころまで、南アフリカの生産たちはシュナン・ブランを馬車馬的な品種として扱っていたため、その名声が轟くことはなかった。そのためシュナン・ブランは流行の品種や、近代的なフランスからの輸入もの、例えばソーヴィニヨン・ブランやシャルドネなどに植え替えられる傾向にあった。

ところがこの20年ほどの間に南アフリカでのシュナン・ブランの地位は革命的なほどに変わった。その立役者の一人がワイン生産者であるケン・フォレスターだ。彼が1993年にステレンボッシュで既存のワイナリーを購入した際に他と違ったことは、シュナン・ブランを引き抜くことを拒み、以来一貫して南アフリカのシュナンの名声を確立してきた点だ。

「シュナン・ブランが南アフリカの筋書きをどのように書き換えてきたのか、そして今後書き換えていくのかなんて、私にはわかりません。」私が彼にあててケープのシュナンの最近の様子を尋ねた際、彼はメールにこう書いてきた。「ただ、私自身が素晴らしいワインに出合ったり、新しい世代がシュナン・ブランを当たり前のものとして捉えているのを見たりすると本当に嬉しくなります。彼らは市場がシュナン・ブランに興味を示さなかった時代を知りませんから。1990年代、私の隣人たちが比較的真顔で『シュナンにフレンチオークを使って元が取れると思っているのなら、往復チケットの帰りの分を使ってヨハニスブルクに帰ることになるよ!』と私に言っていたこともね。最近の若者たちはシュナン・ブランを素晴らしいワインを作るために必要なブドウだと捉えています。まさに現代のおとぎ話が現実になったようなものですよ!」

フォレスターは2000年の南アフリカのシュナン・ブラン協会設立にも貢献している。そしてその3年後にはロワールのフォントブロー修道院でランデヴー・ド・シュナンというフランスのワインコンクールに南アフリカが参加する枠を確保した。

それとほぼ時を同じくして、1990年代にフォレスターがインターンをしていたベルナール・ジェルマンが、フォレスターが南アフリカで企画したシュナン・シンポジウムで基調講演を行った。ジェルマンはそこで、のちに南アフリカで最も有名なワインとなるサディ・ファミリーのシュナン主体のブレンド、パラディウスを紹介した。内陸にあるワイン産地、スワートランドの無灌漑の株仕立てのブドウを世界に知らしめることとなったこのワインに最初のきっかけを与えたのが彼なのだ。「イーベン・サディはその場にいて、その日はあまりに興奮しているのでテーブルをひっくり返して叫び出したいほどだと私に言っていたことをはっきり覚えています。」

南アフリカでのシュナン・ブランの地位がトップ生産者たちによって確立されたこともあり、2019年7月にロワールのアンジェで初めて開催されたシュナン・ブランに特化した国際会議には南アフリカから45もの生産者が参加した。彼らは冬の南アフリカを抜け出して北半球に向かい、これまで見過ごされてきた品種による2か国の表現法の違いを比較することがかなった。上の写真に写っているオールド・ヴァイン・プロジェクトのアンドレ・モルゲンタール(Andre Morgenthal;左)はその旅の間にヴヴレイのOrdre de la Chantepleure を受章した南アフリカ人の一人だ。

南アフリカで最も上質で(今や)最も尊敬を集めるワインの多くはシュナン・ブランを主体としていて、特にこの国の豊かな遺産とも言える古木によるものが多い。ありがたいことに、今では古木を使ったワインを見つけるのは簡単だ。南アフリカのオールド・ヴァイン・プロジェクトによる認証シールがボトルネックに貼られているからだ。この認証制度には樹齢が35年を超えるおよそ2000ヘクタールものシュナン・ブランが登録されており、中には樹齢が80年を超えるものもある。

樹齢のせいか、はたまた温暖な気候のせいか、南アフリカのシュナン・ブランはロワールに比べてフレッシュで早熟の傾向にあるが、瓶内で優に10年は熟成が可能で、中にはその品質の高さの証として、20年以上熟成するものもある。イーベン・サディは、自身のデビュー・ヴィンテージである2002ですら、今でも繊細で健全な状態だと語る(それに比べ、例えば多くの2002ブルゴーニュ白は現在ではかなり不安定だ)。

私は最近シュナン・ブランについて考える機会が多かった。読者からのリクエストに刺激され、40種ものシュナンをテイスティングしていたからだ。そのヴィンテージは2019から、ロワールのブドウの達人で、ドメーヌ・ド・ラ・タイユ・オー・ルーの、その名もジャッキー・ブロットが作った驚くべき2002に至るまで幅広い。

彼は自身のテリトリーでシュナンを使うことについては、ことさら強調する必要はなかった。その品種は長きにわたり重要な選択肢として崇拝されてきた歴史があるからだ。だが、彼が強調する必要があったのはそのアペラシオンだ。モンルイはヴヴレイの近くにある小さなアペラシオンで、常にヴヴレイより劣っているとみなされてきた産地だ。だがブロットはその献身的な努力によって上質な成果物を生み出し続け、最も尊敬を集める醸造家の一人にまで登りつめた。

1988年、彼は8ヘクタールの古木の畑をモンルイでも最高の場所で購入し、少しずつそれを拡大していった。現在ドメーヌ・ド・ラ・タイユ・オー・ルーは樹齢20年から100年のシュナン・ブランを45ヘクタール所有し、その一部は隣のヴヴレイにもある。彼は(近年のロワールではそれほど一般的ではない)手摘み、有機栽培、目立った傷がなくてもブドウを厳しく選果すること、そして地元の岩盤を掘って作ったセラーで、テンションのある引き締まったシュナンをほぼ古樽で発酵及び熟成を行うことの先駆者だった。これらの技術は全て広く受け入れられるようになったものだが、1990年代当時は革新的だった。彼は自身の畑を映し出す長命なスティルワインだけでなく、世界で最もお買い得なスパークリングワインも作っている。

ロワールと南アフリカはシュナン・ブランが本当の意味で重要視されているただ二つの場所と言えるかもしれない。だが世界にもシュナン愛に溢れる飛び地は存在する。ニュージーランドのザ・ミルトンや、カリフォルニアではデルタにあるクラークスバーグやサンタ・イネズ・ヴァレーにあるジュラシック・パーク・ヴィンヤードなどはシュナン・ブランの古木で有名だし、新進気鋭の生産者たちが長年にわたり注目している品種がシュナンなのだ。

最後に、シュナン・ブランは最もバリエーションに富んだ品種でもある。シャルドネ同様シュナンはその酸の高さのおかげで偉大なスパークリングワインも作るし、ソーヴィニヨン・ブランとセミヨンのように最高品質の甘口ワインも作る。これほどまでに多様なスタイルのワインを作ることができる品種を私は他に知らない。

シュナン・ブランの王者たち
以下のリストの他にも沢山あるのだが・・・

南アフリカ
100%シュナン・ブランではなくシュナン主体のブレンドも含む。

Alheit, Cartology

カルトロジー [ 2018 ]アルヘイト ヴィンヤーズ ( 白ワイン )
価格:4730円(税込、送料別) (2021/5/24時点)



David & Nadia, Skaliekop, Hoë-Steen and Plat'bos vineyards

デイヴィッド&ナディア・サディ シュナン・ブラン "スカリーコップ/ホー・スティーン/プラタボス" スワートランド [2017]/[2018] (正規品) David and Nadia Sadie Skaliekop/Hoe-Steen/Plat'bos
価格:10450円(税込、送料別) (2021/5/24時点)



DeMorgenzon

デモーゲンゾン シュナン ブラン "リザーヴ" ステレンボッシュ [2017] (正規品) DeMorgenzon Chenin Blanc Reserve [白ワイン][南アフリカ][ステレンボッシュ][750ml]
価格:5980円(税込、送料別) (2021/5/24時点)



Ken Forrester
Mullineux, Old Vines White
Perdeberg Cellars, The Dry Land Collection
Rall

エヴァ シュナン ブラン [ 2018 ]ラール ワインズ ( 白ワイン )[S]
価格:6600円(税込、送料別) (2021/5/24時点)



Sadie Family, Palladius

パラディウス [ 2018 ]サディ ファミリー ( 白ワイン ) [S]
価格:12100円(税込、送料別) (2021/5/24時点)



Wolf & Woman

ロワール渓谷
Vincent Carême, Vouvray

ヴーヴレ・セック [2013] ヴァンサン・カレムVincent Careme Vouvray Sec
価格:3850円(税込、送料別) (2021/5/24時点)



Dom du Closel, Savennières
Damien Laureau, Savennières

【6本〜送料無料】サヴニエール ル ベル ウーヴラージュ 2015 ダミアン ロロー 750ml [白]Savennieres Les Bel Ouvrage Damien Laureau
価格:5984円(税込、送料別) (2021/5/24時点)



Anne-Claude Leflaive, Clau de Nell, Val de Loire

■お取寄せ クロー ド ネル IGP デュ ヴァル ドゥ ロワール シュナン ブラン [2018] [ 白 ワイン フランス ロワール ]
価格:5128円(税込、送料別) (2021/5/24時点)



Frédéric Mabileau, Anjou
Pithon-Paillé, Anjou
Dom de la Taille aux Loups, Montlouis

こちらの記事も参照のこと。

原文

この記事は有料会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

Celebrating 25 years of building the world’s most trusted wine community

In honour of our anniversary, enjoy 25% off all annual and gift memberships for a limited time.

Use code HOLIDAY25 to join our community of wine experts and enthusiasts. Valid through 1 January.

スタンダード会員
$135
/year
年間購読
ワイン愛好家向け
  • 285,295件のワインレビュー および 15,800本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
プレミアム会員
$249
/year
 
本格的な愛好家向け
  • 285,295件のワインレビュー および 15,800本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
  • 最新のワイン・レビュー と記事に先行アクセス(一般公開の48時間前より)
プロフェッショナル
$299
/year
ワイン業界関係者(個人)向け 
  • 285,295件のワインレビュー および 15,800本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
  • 最新のワイン・レビュー と記事に先行アクセス(一般公開の48時間前より)
  • 最大25件のワインレビューおよびスコアを商業利用可能(マーケティング用)
ビジネスプラン
$399
/year
法人購読
  • 285,295件のワインレビュー および 15,800本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
  • 最新のワイン・レビュー と記事に先行アクセス(一般公開の48時間前より)
  • 最大250件のワインレビューおよびスコアを商業利用可能(マーケティング用)
Visa logo Mastercard logo American Express logo Logo for more payment options
で購入
ニュースレター登録

編集部から、最新のワインニュースやトレンドを毎週メールでお届けします。

プライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます。

More Free for all

JancisRobinson.com team 15 Nov 2025 in London
無料で読める記事 Instead of my usual monthly diary, here’s a look back over the last quarter- (and half-) century. Jancis’s diary will...
Skye Gyngell
無料で読める記事 Nick pays tribute to two notable forces in British food, curtailed far too early. Skye Gyngell is pictured above. To...
Kistler Chardonnay being poured at The Morris
無料で読める記事 Recommendations of very varied wines for very varied budgets, from £11.50 to £60 a bottle. A much shorter version of...
Cornas view © Bernard Favre
無料で読める記事 A guide to all our coverage of vintage 2024 in the Rhône Valley. Master of Wine and Rhône expert Alistair...

More from JancisRobinson.com

Karl and Alex Fritsch in winery; photo by Julius_Hirtzberger.jpg
今週のワイン A rare Austrian variety revived and worthy of a place at the table. From €13.15, £20.10, $24.19. It was pouring...
Windfall vineyard Oregon
テイスティング記事 The fine sparkling-wine producers of Oregon are getting organised. Above, Lytle-Barnett’s Windfall vineyard in the Eola-Amity Hills, Oregon (credit: Lester...
Mercouri peacock
テイスティング記事 More than 120 Greek wines tasted in the Peloponnese and in London. This peacock in the grounds of Mercouri estate...
Wine Snobbery book cover
書籍レビュー A scathing take on the wine industry that reminds us to keep asking questions – about wine, and about everything...
bidding during the 2025 Hospices de Beaune wine auction
現地詳報 A look back – and forward – at the world’s oldest wine charity auction, from a former bidder. On Sunday...
hen among ripe grapes in the Helichrysum vineyard
テイスティング記事 The wines Brunello producers are most proud of from the 2021 vintage, assessed. See also Walter’s overview of the vintage...
Haliotide - foggy landscape
テイスティング記事 Wines for the festive season, pulled from our last month of tastings. Above, fog over the California vineyards of Haliotide...
Leonardo Berti of Poggio di Sotto
テイスティング記事 Following Walter’s overview of the vintage last Friday, here’s the first instalment of his wine reviews. Above, Leonardo Berti, winemaker...
JancisRobinson.comニュースレター
最新のワインニュースやトレンドを毎週メールでお届けします。
JancisRobinson.comでは、ニュースレターを無料配信しています。ワインに関する最新情報をいち早くお届けします。
なお、ご登録いただいた個人情報は、ニュースレターの配信以外の目的で利用したり、第三者に提供したりすることはありません。プライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます.