25周年記念イベント | The Jancis Robinson Story (ポッドキャスト)

炎と煙~増え続ける招かれざる客

2017年10月21日 土曜日 • 5 分で読めます
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カリフォルニアの火事で被災した人々のための募金を行う12月2日土曜日の夜にロンドンで開催されるテイスティングについての情報は木曜日のニュースに注目してほしい。また我々の特派員でもあるアルダー・ヤローとエレイン・チューカン・ブラウンが推奨する次の3つの募金も検討してほしい。畑での作業者へはOleHealth.org、ナパの被災者へは The Community Fund via Napa Vintners、ソノマの被災者へはRedwood Credit Union Fundだ。

この記事のショート・バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。ジョージ・ローズ(George Rose)は今週、上の写真をソノマのアレクサンダー・ヴァレー、128号線とチョーク・ヒル・ロードが交わるあたりで撮影した。

山火事は多くの命を奪い、カリフォルニア北部のワイン産地であるナパとソノマ(アルダーエレインの報告も参照のこと)を荒廃させた。さらにポルトガル北部のダンやガリシアのリアス・バイシャスはつい最近この現象に襲われた地域であり、山火事が世界のワイン生産に深刻な影響を与える頻度は高くなってきている。以前よりも暑く乾燥した夏はブドウ畑とそれを取り囲む野原をマッチや落雷、金属と岩がぶつかった際に起こる自然発火の格好の獲物と変える。そしてそれが今回のカリフォルニア北部のように世界で最も高価なワインを生産する地域の畑であれば生産と観光に与える影響は重い。初期の試算ではその損失は数十億ドルとも言われている。

今年の早い時期、6月にはカリフォルニアで最も広大な畑であるサンタ・バーバラのサンタ・マリア・ヴァレーにあるビアン・ナシード(Bien Nacido)に山火事が到達した。1月の終わりにはチリ南部、マウレとイタタ全体で小規模生産者の畑がそれを取り巻く松林に起因する山火事 (和訳)によってことごとく焼けた。この松林は防火帯や緊急時の水の供給などをほとんど考慮せずに植林されたものだった。

フランス南部の森はまだきちんと計画されている方だが、ここでも毎年山火事は起こっており、ブドウ畑に迫ることも多い。南アフリカのワイン産地では毎年起こる壊滅的な山火事に慣れてしまっている。2年前にはカタルーニャ地方、プリオラトの最も優れたワイン産地の一つも焼け出された。これらは世界的なワイン生産に影響を与えている山火事のほんの一部の例だ。

オーストラリアワイン研究機関(AWRI; Australian Wine Research Institute)のマーク・クルスティッチ(Mark Krstic)が1996年にワイン研究を始めた際、自分が火事がワインに与える影響に関する第一人者になるとは思ってもみなかった。現在彼の専門は残念ながら世界的な注目を浴びることになった。

山火事は長い間オーストラリアに損害を与え続けていた。私自身も2009年2月の暗黒の土曜日と呼ばれ、200近い命を奪い、ヤラ・ヴァレーの最良の畑と地元の家を焼き払った山火事が起こった日、メルボルンにいた。記録的な猛暑が一定期間続いた後、暑い強風が吹き荒れ、砂漠のように乾燥した下生えが着火剤の役割を果たすこととなったのだ。火の広がる勢いはどんな乗り物よりもはるかに速かった。

翌日、ヤラ・ヴァレー上空を飛行したのは心に突き刺さる経験だった。収穫を数週間後に控えた畑は鮮やかな緑に映るはずが、一面暗い灰色だった。直後に会ったブドウ生産者たちは何とか火の手に歯止めをかけようと肉体的に疲れ果てており、オーストラリア人の何とかなるさ、という有名な気質が極限まで試されているようだった。

これまでにないほど暑く乾燥した気候とまれにみる強風の組み合わせは先日のカリフォルニア北部の大火の原因でもある。火事は非常に速く広がり、10月8日夜心地よい眠りについた人々は午前3時、煙の臭いで起こされた。

初期に火の手がひどかったのは有名な観光名所でワインの中心地でもあるサンタ・ローザ周辺(ほんの数時間で灰色の殺風景な砂漠へと変わってしまった)と、ナパ・ヴァレーの東側の丘にある人口がはるかに少ないアトラス・ピーク周辺だったが、火はすぐに丘を駆け下り、スタッグス・リープ地区や谷の東側にある幹線道路、シルヴェラード・トレイルまで広がった。

現在までのところ、16軒のワイナリーが焼け落ち、それを遥かに上回る数のワイナリーが建物の一部を焼失しているが、一部の生産者にとって敵は炎よりもむしろ煙の方だった。

火災が自宅や職場を襲ってよい時期などはないが、ワイン産地を襲う場合、最悪のタイミングのことが多い。すなわち夏の真っただ中、気温が最高でブドウが間もなく収穫を迎える時期だ。マーク・クルスティッチと専門研究員たちの研究によると夏の盛りが訪れてブドウの色が変わり始め、収穫に近づいた時期の大気中の煙がブドウに最も大きな影響を与えるとされている。

クルスティッチによると、ブドウは火事に最も弱い作物の一つであり、特にそこから生み出されるワインに対する煙による汚染が深刻だ。このことは煙に含まれる揮発性フェノール化合物をブドウが吸収しやすく、それらがブドウ中の糖と結合してできた化合物が発酵の過程で遊離し、不快な煙っぽい、灰のような匂いをワインにもたらしてしまうためで、この匂いはボトルの中でワインの熟成が進むに従いより強く表れるようになる。

フェノール化合物はブドウの果皮の下で形成されることが多いため、ワインメーカーたちはこの煙による汚染を最小限とするためにワイン造りの初期の段階でワインと果皮の接触をできるだけ短くするようにし(これは白ワインよりも赤ワインでは困難だが)、化学反応を遅くするためにすべての工程を通常よりも低い温度で行う。

ナパとソノマのブドウのほとんど、特に白ワインに向けられるものや成熟の早いピノ・ノワールなどは火事の前に収穫が終わっていたが、一部の生産者は熟度の高いワインを作るためにブドウ、特にナパ・ヴァレーの特産であり晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨンを長く木に成らせておくことを今でも好んでいる。

例えばセント・ヘレナのキャシー・コリソン(Cathy Corison)は爽やかでありつつ、骨格がしっかりとして薫り高いナパのカベルネを好む我々にとってヒロインのような存在だが、彼女は火事が起こる2週間も前に収穫を済ませてしまっていた。一方でナパの市街地のすぐ東にあるクームズヴィルのような冷涼な産地の生産者はブドウが頑固に成熟を拒んでいたため、カベルネの収穫は行っていなかった。さらに、品種によって煙による汚染への抵抗力は異なり、例えばイタリア中部で生産されるサンジョヴェーゼはことさら弱いとされている。

発酵したブドウ果汁すなわちワインは明らかに畑にあるブドウよりも影響を受けにくい。

焼けてしまったブドウ(今やカリフォルニアでは不足することはないが)についても火によって受けた影響から回復できるかどうかも様々だ。2009年の暗黒の土曜日直後に訪問したヤラ・ヴァレーで私を迎えてくれたデ・ボルトリのスティーブ・ウェバー(Steve Webber)に、彼のブドウがその被害からどう立ち直ったのか、ブドウの深く張られた根が助けになったのではと考えて訊いてみた。だが彼は「焼けてしまったブドウからはあまりよい結果は得られていません。」とあきらめに似た表情で話した。「元気を取り戻したものもありますが、それ以外はあまり良い状態ではないですね。」

クルスティッチはブドウの中には輻射熱によって死んでしまうブドウもあると指摘した。例えば近くで燃えている木や茂みの温度が1000度前後に到達すると、そちら側に面しているブドウは致命的な打撃を受ける。樹齢の高いブドウは、幹の病害の影響を受けているものも多いため特に弱い。

あまり良い知らせがなく、残念だ。

カリフォルニア北部のお気に入り

ソノマ在住のワイン・ライターであるエレイン・チューカン・ブラウンは自身も自宅から避難しているが、窮地に立たされているワイン産業を助けるために彼女が強く勧めるのはカリフォルニア北部のワインを買うことだ。以下は彼女のお気に入りのソノマの生産者で、比較的価格のバランスも良い。テイスティング・ノートとそれらの背景は Elaine's favourite Sonoma Cabernets を参照のこと。

Calluna
DuMOL (wines made by a Scot)
Enfield, Waterhorse Ridge
Laurel Glen
Scherrer

(原文)

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