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新年の抱負を振り返って

2021年12月31日 金曜日 • 5 分で読めます
Grand Cercle de Bordeaux 2019s

さあ、かつての抱負をどれほど実現できただろうか。新型コロナの影響はかなり大きかった。この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

私がこの新年の抱負を掲載したのは今からちょうど2年前、2020年の初めだ。それを書いていた時、武漢の名も、コロナという言葉も聞いたことがなかった。毎日がとても順調に感じられ、ネタを探しにワイン産地へ旅する自由を謳歌する次の1年を心待ちにしていた。そんな当時の新年の抱負は今、どんな風に映るだろうか。

最初の抱負は「もっとワインを飲む」だった。量という意味では、この抱負は実現していると思う。自宅に何か月もこもらざるをえず、多くの場合車のハンドルを握る時間も短くなったワイン愛好家で、禁酒しようと考えた人はほとんどいないだろう。ただ、この抱負の当初の意味は、個人的なワインのコレクションを飲んで減らそうということだったので、そういう意味では全く実現していない。ワインライターとして、ワイン産地や、私の住むロンドンで「通常なら」数多く行われるプロ向けのテイスティングに出向く代わりに在宅で仕事を行った結果、ワインの方から私の方へやってきたからだ。しかも文字通り、パレットに山盛りで(上の写真は、とある日に届いたグラン・シエクル・ド・ボルドー2019のほんの6割程だ)。(訳注:ケチと言われる)イギリス人にとって、セラーに眠る未開封ではるかに高価なワインのために何十本もの開封済みのワインをなかったことにするのは至難の業だ。もちろん、試飲したサンプルのほとんどは誰かにあげてしまう。ディナーのテーブルで楽しみたいようなワインもあるのだが、今は共にテーブルを囲む人もほとんどいない。

2番目の抱負は「自然派のワインを、先入観をなくしてもっと飲む」だった。残念ながら、自宅に送られてくるワインの中でオレンジワイン(赤ワインのように果皮と一緒に発酵させた白ワインのこと)の比率は低く(それでも増えたほうだが)、純然たる自然派ワイン(亜硫酸を無添加あるいは最小限しか使わないワイン)は更に少なかった。私は当時の抱負をこんな風に締めくくっている。「私はレストランのワインリストの中でも奇抜なものを避けてしまうことが多い点を反省している。ここに、もっと冒険心を持つという誓いを立てたい」。空虚に笑うしかないだろう。レストランへ行く回数が極端に減ってしまったのだから。できる限りの努力はしたが、冒険心を持つにはあまりにも機会が少なかった。2020年と2021年にはできなかったこの点は、2022年の抱負としようではないか。

私はまた、2020年のはじめに「自然派ワインという言葉を撲滅する」とも書いている。更に当時は気軽にこんなことを付け加えていた。「どちらかというとオーストラリアで最近であった「ローファイ・ワイン」という言葉の方が好みだ」。オーストラリア。今や想像を絶するほど遠く感じる国だ。つい最近まで、マーガレット・リヴァーのユーカリの森や打ち寄せる波を当たり前のように感じていたのに。いずれにしても、私が批判していたのは「自然派ワイン」という言葉は他のワインが「不自然である」かのような誤解を与える言葉だという点だ。

そして、そんなことを書いた数か月後、更に恐ろしく誤解を招く言葉が女優のキャメロン・ディアスと起業家のキャサリン・パワーから発せられたことを思い出してほしい。「クリーン・ワイン」だ。ディアスとパワーは自分たちの造るワインにブドウ以外には亜硫酸、培養酵母、酵母の栄養素「しか」含まれておらず、一般的な清澄剤である粘土の一種、ベントナイトを用いて清澄しているのだと言い切っていた。筋金入りの自然派は、培養酵母も酵母の栄養素も使うことはない。それでも「クリーン」という言葉はなんと煽情的なのだろう。私は何年もの間、汚いワインを飲んでいたのかと思わされるほどだ。

感情的な度合いが少ない言葉としては「人的介入を最小限にした」ワインというものがあるが、お世辞にも語呂が良いとは言えない。いずれにしても、ワインメーカーたちにはワイナリーで使う添加物を減らすというこの流れは継続して欲しいと伝えたい。長く望まれてきた、EUで間もなく適用されるワインの添加物表記 (和訳)は、その流れに拍車をかけることになるだろう。メガパープル(果肉が赤いブドウを原料として甘い濃縮果汁)を使った着色ワインよ、さらばだ。

「本当の意味でのサステイナビリティをもっと意識する」というのが3つ目の抱負だったが、これは前回書いたことをそのまま繰り返したほうがよさそうだ。

「サステイナビリティは間違いなく今流行の言葉だ。我々はワインという文脈でサステイナビリティというと、有機栽培やビオデナミへの転換に注目してしまいがちだが、それよりもはるかに包括的に考えなくてはならない。畑や醸造設備で使われるエネルギーを意識するだけではなく、発酵で発生する二酸化炭素を回収することや、水のリサイクルと節約などまで考慮すべきだ。Waterfootprint.comでは1杯のグラスワインが消費者の手に届くまで120ℓもの水が使われているとしている。これはさすがに誇張と言えるかもしれないが、多くの主要なワイン産地での水不足は深刻な問題だ。そしてすべての農業同様、畑での労働力はその多くが低賃金の季節労働者によってまかなわれているという点は、我々ワイン愛好家が目をそらしてしまいがちな事実だ。「手摘み」がいつまでポジティブに捉えられる言葉なのか、改めて考えてみる必要がある。

ワインの世界で今、本当の意味でのサステイナビリティにこれまで以上に貢献している姿勢を目にするのはとても喜ばしいことだ。世界のワイン産業における脱炭素に取り組むInternational Wineries for Climate Actionに加盟する生産者の数は増え続けている。JancisRobinson.comはサステイナブル・ワインによって運営されるSustainable Wine Roundtableを設立した52団体のうちの一つだ。この活動の目標は「ワイン業界においてサステイナビリティを当たり前にする」ことだ。サステイナビリティというコンセプトは(若干漠然とした言葉である点は否めないが)昨年のライティング・コンテストのテーマでもあった(今年のテーマは古木だった)。コンテストの応募者たちを通じ、地球環境保全のために力を尽くしている約100名ものワイン生産者の情報が私たちの下へ寄せられた。ワイン業界で生産に関わる生態学的および社会的コストをもっと意識しようという機運が高まっていることは間違いない。

発酵という工程自体が二酸化炭素を生成し、それが大気中に放出される。一部の炭酸ガス排出に配慮した生産者はそれを回収するためのシステムを構築しているが、ワインが地球温暖化に与える影響のうち、この点はそれほど大きな要素ではない。

次に挙げた抱負は「重いボトルを徹底的に批判する」だったが、これは完全に実行できた。ワインのライフサイクルを精査すると、ガラス瓶の生産と運搬が最も炭酸ガスの排出量への寄与が大きいことが判明した。ただ、まったくもって不正確なのにもかかわらず重いボトルのワインの方が高品質だと考える消費者は依然として多い。

昨年2月から、JancisRobinson.com では可能な限りワインボトルの重量を測定し、それを公開してきた(中身は多少前後するにしても750g程度だから、現実的な効率を考えてワインが入った状態で測定している)。これを可能にしたのは対面でのテイスティングが減り、自宅まで配送されるフルボトルをテイスティングする機会が増えたためだ。おかげで飲み残しを期待する隣人たちも喜んでいる。

こうすることで不必要に重いボトルを使っているワイン生産者を批判することができると考えている。また、例えば有機栽培を実行していることで自分たちを善人だと考えているワイン生産者でも重いボトルを使うことの炭酸ガス排出量への影響を考慮していない場合が多い点も明らかになった。重いボトルのデメリットを知った場合に一番よく耳にする言い訳は「最高級のワインにだけそれを用い、製品のほとんどには軽いボトルを使っている」というものだ。だがこのやり方こそ、消費者の重いボトルの方がよいワインだという思い込みを加速させるものであり、その使用を続ける要因にもなるのだ。

「効果的なリサイクルを進めること」。バラバラな地方自治体のネットワークに依存しているアメリカやイギリスに比べ、国民をしっかりと教育することで、リサイクルを効率的に実行できている国もある。ナパ・ヴァレーやメドックのようにワインが飽和状態にある地域での詰め替え可能な瓶の利用はどうだろうか。サンフランシスコにあるConscious Containerはこれを積極的に推進している。

それから、「東欧のワインをもっと探る」という抱負も書いていた。これは対面ではかなり難しくなってしまったが、2021年中にルーマニア、ウクライナ、キプロス、モルドヴァ、ジョージア(最後の2者のボトルはひどく重かった)のワインをテイスティングすることができ、中にはなかなか良いものもあった(More wines from east of Vienna参照のこと)。チェコとスロバキアのワインはもう少し探りたいと思っているところだ。

他に書いた抱負には「もっと質問をする」「熱意のこもったテイスティング・ノートを書く」「もっと笑う」「仕事を減らし、もっと楽しく」などがあった。最後の2つは大いに関連性があるだろう。

原文

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