ヴォルカニック・ワイン・アワード | The Jancis Robinson Story (ポッドキャスト)

なぜ安かろう良かろうがあり得るのか

2018年7月28日 土曜日 • 4 分で読めます
Image

この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

このあと4週間、ラングドックでの休暇に入る予定があるのだが、ロンドンの家を出ようとすると届くかのように思えるワインの山のテイスティングに忙しくしている(同情は期待していないが) 。

このようなテイスティングを行うと、ことワインに関しては価格と品質の間に直接的な関係はないという私の信念を改めて裏打ちする結果が得られる。あまりに多くのワインがワインを愛する人々ではなく、明らかにマーケティング側の人間、あるいは名声を博したり守ったりすることに熱心な人々によって価格付けされているためだ。比較的新参のワイン生産者たちは幅広い品ぞろえのワインを持つべきだと考えているようだ。すなわち、エントリー・レベルのものから、疑いもなくプレミアムと呼べるもの、さらにはスーパー・プレミアム、そして多くの楽観的な商売人によってアイコン・ワインと呼ばれるものまでである。

大量市場を対象としたワインに関しては、真ん中の層が最も価格に対する価値が高い傾向にあると感じている。安い価格帯のワインは個性に欠け、最も価格が高いものは樽やアルコールが強すぎる傾向にある。一方であまり工業化されていない生産者のワインとなると、今飲むのに最も魅力的を感じられるのは彼らのワインの中で最も安価なものであることもある。

非常に多くの場合、同じ生産者から作られる様々なワインは、その味わいの違いが品質や品種の性質ではなく、セラーの中で行った作業の違いに由来しているように感じられる。高級なワインになればなるほど凝縮感が高く、他のワインに比べ樽の使い方がより積極的になるのだ(それが新樽の比率の高さや樽熟成の長さで表されることもある)。これらが意味することは、ワインがリリースされたばかりの段階ではワインはまだ赤ちゃんであり、ここまで野心的に作られていないワインに比べて飲みやすさには欠けるということだ。

この現象はスペイン北西部、ビエルソから作られる固有品種、メンシア主体の3本の赤で顕著に見られた。これらは賞賛を集めるドミニオ・デ・タレスのもので、彼らは2000年の設立以来、この復活を遂げたワイン産地の旗艦といえる生産者であり続けている。

よくあることではあるが、この3本の中で私が最も気に入ったのは最も価格の低いものだった。バルトス2016は市販価格が1本15ポンドである。樹齢40年の古木から作られ、古樽で6か月熟成させている。愛すべき、すぐ手の届く果実味と魅力を兼ね備え、ビエルソ、あるいはメンシアがそれと知られるようになった繊細な高い酸のバランスが明確に感じ取れる。

セパス・ビエハス2015は、バルトスより1本あたり5ポンド高い。ブドウは樹齢60年のものを使い、古樽で9カ月熟成してある。おそらく古木で収量も非常に低いはずだが、悪い意味でバルトスよりも明らかに濃く凝縮感が高い。その結果アロマと表現力に欠けてしまっていた。辛口で骨格とタンニンが強いのは特に果皮の厚い品種で作ったワインに見られる強烈な性質だが、収量の低いブドウ、特に干ばつの年に顕著にみられる。このワインは3本の中で一番好みではなかった。

ドミニオ・デ・タレスは最高級のP3を今回のセットに入れていなかったが、3本の中で最も価格の高いベンビブレ2015、北アイルランドのジェームス・ニコルソンで32.99ポンドで販売されているワインは野心を感じさせる作りだったが、そのボトルの重さも然り、だった。ワイン生産者やマーケッターには、消費者がワインを瓶の重さで選ぶというある意味幼稚な概念から早く抜け出してほしいと心から願う。そんなものはおしっこを遠く飛ばせた方が勝ちと考える小中学生のようなものだ。ガラスは作るのも運ぶのも金がかかるのだ (Down with bodybuilder bottles 参照のこと)。

このベンビブレ2015 はまさに自己を確立していると言えるにふさわしい品質だ。すがすがしいほど標高の高い場所にある「非常に樹齢の高い」ブドウから作られ、フレンチ・オークで15カ月熟成しているため、高品質のビエルソに見られるエネルギーに満ち溢れ、あらゆる点で多くのポムロールのように壮麗でビロードのようななめらかさを持ち合わせているとはいうものの、そのやや粗い角が丸くなるにはあと数年は寝かせておくのが理想的だろう。不満と言えば、これがまだ飲み頃ではなかったことだ。最近は数週間以上ワインを保管するのにふさわしい涼しい場所を確保できている家庭は多くないのだから。

このスペインの3本のワインをテイスティングしたのと同じ時期、私の尊敬するもう一人の生産者、ステレンボッシュで賞賛すべきケビン・アーノルドが経営するウォーターフォード(上写真)の一連のテイスティングも行った。彼はウォーターフォードの所有者であるジェレミー・オードの高い評価を受け、彼の名前をその優れたシラーズ2014に関することを許された人物だが、グルナッシュ2015にもまた私は感銘を受けた。

一方、私の価格と品質が反比例するという法則を裏付けることとなったのはカベルネ・ソーヴィニョン主体の2本のワインだった。彼らの作る、広く知られた品種であるカベルネ・ソーヴィニョン2014は純粋な喜びを与えてくれるものだった。あまりに素晴らしかったため、ディナーに参加したゲストたちははるかに贅沢で4,5倍の価格はするトスカーナのボルドー・ブレンド、テヌータ・ディ・トリノーロ2016よりも早く、あっという間にそのボトルを空にしてしまった。真のクラレットスタイルであるケープ・キャブ(訳注;ケーブのカベルネ)は完熟(ケープの広くウイルスにやられている畑では常に完熟したブドウが得られるわけではない)とフレッシュ感、そしてニュアンスのある旨味の間のバランスの中心を絶妙に射抜いていた。バルトス2016同様、すぐに心地よく飲めるワインだ。

ところが、それよりも2年古い(そして遥かに価格の高い)ジェム2012はまだ飲み頃ではなかった。このワインはウォーターフォードの所有者の名前にちなんだもので、またしても馬鹿々々しく重い瓶に入っていて、セパス・ビエハスをほうふつとさせるようなものだったが、現在楽しんで飲むには居心地の悪いほど酸とタンニンが高いにも関わらず、すでに市場に出回っている。

もちろん、ここに述べたことは私が常に出くわす現象のごく一部だ。 だがここには構造的な欠陥が見て取れる。ほとんどの人が自分のセラーを持たないこの時代、そして保管のためにお金を払うという習慣が確立されている対象は非常に高級で古典的なヨーロッパのワインだけであるという事実にきちんと向き合うのならば、生産者は自分のワインが飲み頃になってから販売するという点についてもっと慎重に考えるべきだと思う。

スペインの生産者の中には素晴らしいほどこの点を考慮している人たちがいる。特にリオハやリベラ・デル・デュエロの歴史ある生産者たちだ。だがほとんどのワイン生産者たちは飲み頃になるよりも遥かに早く最も高価なワインを販売してしまう。もし彼らが、ボルドーの傑出した生産者やブルゴーニュのこの上なく心を尽くした生産者が今行っているように、それらのワインをもっと若くして楽しめるように作るのだとすれば、その方がよほど思慮深いことだと思う。

ボルドーの格付けで上の方に位置するワインのセカンドワイン、例えばシャトー・パルメのアルテ・レゴなどは10年も20年も待っていられない、あるいはワインを寝かしておく手段がない人々にとって、グランヴァンよりもはるかに良い選択となるはずだ。

今飲むために最高にお買い得な赤ワイン

Fattoria San Francesco 2015 Cirò
£11.95 Jeroboams

Vidal-Fleury 2015 Côtes du Rhône
£11.99 Majestic

Dominio de Tares, Baltos Mencía 2016 Bierzo
2015 is £12.79 James Nicholson, Northern Ireland

Seifried Zweigelt 2014 Nelson
£16.80 The New Zealand Cellar

Waterford Estate Cabernet Sauvignon 2014 Stellenbosch
£21.95 Amazon.co.uk, £30.50 Berry Bros & Rudd

原文

この記事は有料会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。
スタンダード会員
$135
/year
年間購読
ワイン愛好家向け
  • 288,650件のワインレビュー および 15,872本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
プレミアム会員
$249
/year
 
本格的な愛好家向け
  • 288,650件のワインレビュー および 15,872本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
  • 最新のワイン・レビュー と記事に先行アクセス(一般公開の48時間前より)
プロフェッショナル
$299
/year
ワイン業界関係者(個人)向け 
  • 288,650件のワインレビュー および 15,872本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
  • 最新のワイン・レビュー と記事に先行アクセス(一般公開の48時間前より)
  • 最大25件のワインレビューおよびスコアを商業利用可能(マーケティング用)
ビジネスプラン
$399
/year
法人購読
  • 288,650件のワインレビュー および 15,872本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
  • 最新のワイン・レビュー と記事に先行アクセス(一般公開の48時間前より)
  • 最大250件のワインレビューおよびスコアを商業利用可能(マーケティング用)
Visa logo Mastercard logo American Express logo Logo for more payment options
で購入
ニュースレター登録

編集部から、最新のワインニュースやトレンドを毎週メールでお届けします。

プライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます。

More 無料で読める記事

Australian wine tanks and grapevines
無料で読める記事 世界は不要なワインで溢れかえっている。この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。 写真上は南オーストラリアのワイン...
Meursault in the snow - Jon Wyand
無料で読める記事 この困難なヴィンテージについて我々が発表したすべての記事。発表済みのワイン・レビューはすべて こちらで見ることができる。写真上は、レ・グラン...
View over vineyards of Madeira sea in background
無料で読める記事 しかし、偉大な酒精強化ワインの一つであるマデイラは、この特別な大西洋の島での観光開発にどれほど長く耐えられるだろうか...
2brouettes in Richbourg,Vosne-Romanee
無料で読める記事 イギリスの商社による2024年ブルゴーニュ・アン・プリムールのオファーに関する情報。写真上は、ヴォーヌ・ロマネのリシュブール・グラン...

More from JancisRobinson.com

September sunset Domaine de Montrose
テイスティング記事 タムはそう考えており、それを証明する赤ワインの推薦が200本近くある。2部構成のレビューの第1部。 ラングドック白ワイン – 未来への展望と...
Vietnamese pho at Med
ニックのレストラン巡り Nick highlights something the Brits lack but the French have in spades – and it’s not French cuisine. This week...
South Africa fires in the Overberg sent by Malu Lambert and wine-news-5 logo
5分でわかるワインニュース Plus an update on France’s ban on copper-containing fungicides for organic viticulture. Above, fire in South Africa’s Overberg, sent by...
A bottle of Bonny Doon Le Cigare Blanc also showing its screwcap top, featuring an alien face
今週のワイン You need to know this guy . From $23.95 or £21 (2023 vintage). Whenever I mention Bonny Doon, the response...
Wild sage in the rocky soils of Cabardès
テイスティング記事 The keystone of Languedoc viticulture, explored. See also Languedoc whites – looking to the future. ‘Follow me!’ And I do...
the dawn of wine in Normandy
現地詳報 Turning tides have brought wine back to the edges of north-west France, says Paris-based journalist Chris Howard. This is part...
Nino Barraco
テイスティング記事 マルサラの評判を復活させる新世代の生産者たちを詳しく見るウォルターの記事の第2部。写真上は、この運動のスターの一人、ニーノ・バラーコ...
Francesco Intorcia
現地詳報 Perpetuo, Ambrato, Altogrado – these ancient styles offer Marsala a way to reclaim its identity as one of Sicily’s vinous...
JancisRobinson.comニュースレター
最新のワインニュースやトレンドを毎週メールでお届けします。
JancisRobinson.comでは、ニュースレターを無料配信しています。ワインに関する最新情報をいち早くお届けします。
なお、ご登録いただいた個人情報は、ニュースレターの配信以外の目的で利用したり、第三者に提供したりすることはありません。プライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます.