ヴォルカニック・ワイン・アワード | The Jancis Robinson Story (ポッドキャスト)

エキゾチック・ワイン

2021年5月1日 土曜日 • 5 分で読めます
Grapes drying at Beykush winery in Ukraine

エチオピア、アゼルバイジャン、フィンガー・レイクス、ウクライナ、キプロス、そして中国のワイン。この記事のショート・バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。上の写真はウクライナにあるベイクシュ・ワイナリー(Beykush winery)のアーセン・フェドセンコ(Arsen Fedosenko)によるもので、テンプラニーリョとサペラヴィをブレンドして作る素晴らしいカラ・ケーメン(Kara Kermen)に使うブドウを干しているところだ。

称賛を集めるクラシックなワインは偉大だ。だがもし世界に存在するワインがそれだけだったら、なんと退屈なことだろうか。私は新たなワインを発掘するのが大好きだ。聞いたことのない名前を目にするにつけ、単一の果物の果汁を発酵させるだけでこれほどまでに複雑なスタイルのワインと、それに伴う刺激をもたらしてくれることは奇跡だと思わずにはいられない。ワインを生産する新たな産地や国に出合うたびに、私自身の驚きと興奮は多くの人と共通のものである証だと感じるのだ。

エチオピアが(その他11のアフリカの国と並んで)ワインを生産するとは聞いていたものの、これまでテイスティングをしたことはなかった。だが先日、メールアドレスから判断するにコーヒー貿易商と思われる人物から、いくつかのワインを提供される機会を得た。リフト・ヴァレー(Rift Valley)の6本のワインは、ブレグジット以降ワインのサンプルに課せられた大きな障壁(和訳)を乗り越え、なんとか私の手元に届いた。それらは全てよく知っている国際品種で作られているため、エキゾチック感はやや低めではあるが、うち2本はヴィンテージ表記がされていなかったこと、また2018と表記された残りの4本もはるかにそれより若く感じられたことは少し特異な気がした。また、赤ワインのうち1、2本は汚れた布巾のような香りがした点も指摘しておきたい。

一方、エチオピアのシャルドネ2本はあらゆる意味で優れたもので、世界で3番目に大きいと自負するボルドーのカステル社が運営する事業によるものだ。カステル社と言えばアフリカにおけるビールやソフトドリンクの主要な販売業者としても知られており、どうやら2007年にエチオピアの首相であったメレス・ゼナウィが、アディスアベバの南にあるジウェイにブドウ畑とワイナリーを設立するよう彼らに頼み込んだ結果であるようだ。1600mという標高のおかげで緯度が低くても夜は涼しく保たれる。ただ、もし私自身がエチオピアにいるなら確かにリフト・ヴァレーのシャルドネを選ぶだろうが、輸出市場で果たしてそれを選ぶかどうかは疑問が残る。

最近初めてお目にかかったもう一つのエキゾチックなワインはアゼルバイジャンのもので、「シルクロードの秘密」と題されたアゼルバイジャン観光局によるオンライン・テイスティングによるものだった。主催者によれば、ワインは「文化的および社会的外交の推進力」であり、実際にその外交ルートを通じ、ブレグジットによって生じた厄介な障壁を越えて、それらのワインが届いたのである。アルメニアはワイン発祥の地とされる地域に近く、アルメニアとカスピ海の間にあり、様々な文化が交錯する地でもある。

(アゼルバイジャンのワインとちがい、アルメニアのワインは国外でも入手が可能であり、かの地で起こっているワイン革命の素晴らしい成果を私自身何度も目の当たりにしてきた。特に固有品種であるアレニ主体で作られ、素焼きのカラス(karas)で熟成された赤ワインは特に注目だ)

アゼルバイジャンのテイスティングで取り上げられた3つのワインは、国の北東部、雪降るコーカサス山脈を見上げるイスマユルにあるシャビアン(Chabiant)という生産者のものだった。冬は非常に寒いが夏は十分に暖かく、800mという標高でもブドウは完熟し(ヨーロッパでは標高500mほどがブドウが完熟する現実的な限界だ)、カスピ海からの冷却効果のある風の恩恵も受けられるとのことだった。

エチオピアと違いアゼルバイジャンはその固有品種を誇り、白ワインには非常にニュートラルだがキレのいいバヤンシラ(Bayanshira)、赤ワインには果皮の厚いマドラサ(Madrasa)などがある。中でもマドラサが大きな可能性を秘めている点は明らかだった。旧ソビエト連邦諸国同様、アゼルバイジャンもまたワインの重要な供給源だったが、その主流はソビエト向けの甘い赤ワインだった。一方で、上述のワインはアゼルバイジャンを本格的なワイン産地として世界の地図に乗せることとなるだろう。かつて「キャビア外交」と揶揄された手段に変わる「ワイン外交」となるかどうか。

さて、もしあなたがマンハッタンに住んでいるのならそうは思わないだろうが、ヨーロッパのワイン愛好家にとってニューヨーク州北部、カナダとの国境からさほど遠くない場所にあるフィンガー・レイクスのワインは間違いなくエキゾチックなワインと言える。北にあるオンタリオ湖とこれら深い氷河湖のおかげで冬は長く春が遅いため、遅霜のリスクを下げることでブドウ栽培を可能にしている。また湖に蓄えられた熱のおかげでブドウの成熟を秋の遅い時期まで待つことができる。今のところフィンガー・レイクスの生産者たちの十八番はリースリングであるのは明らかだが、中でも私の経験上最も腕の立つ生産者の一人はレッド・ニュート(Red Newt)だ。

レッド・ニュートのリースリングは3種が現在イギリスに輸入されている。それらをテイスティングしたのはステファン・ヴィンター(Stefan Winter)の素晴らしいドイツのリースリング2018ラインヘッセンをテイスティングした直後だったのだが、まったくもって、比して遜色ないできだった。

それからつい最近、ウクライナの6本のワインもテイスティングした。キエフに拠点を置くドリンクス+マガジンのチーフ・エディターであるオルガ・パインビッチ(Olga Pinevich)が、現在縮小傾向にあるウクライナのワイン産業の代表として厳選したものだ。彼女が熱心に強調した点は、ウクライナの生産者たちはジョージアやモルドヴァとは違い、政府から一切の支援を受けていないという点だった。ボルドーのワイン・コンサルタント、オリヴィエ・ドーガ(Olivier Dauga)は、イギリスに代理店も持つウクライナのワイナリー、コロニスト(Kolonist)の仕事も請け負っている。さらにキエフは地元生産者のワインを多く扱うワイン・バーに不足はないことも確かだ(Kiev for wine loversも参照のこと)。

非常に驚いたことに、この現代的なウクライナのワインの一つは、イタリア北部ですら、ほんのわずかしか生産されていない白ブドウ、ティモラッソのものだった。一方で今回の主役はウクライナがその由来だと主張しているものの、トルコ原産とされているテルティ・クリーク(Telti Kuruk)から作られた辛口の白だ。ただし、家族経営のベイクッシュ(Beykush)を例外として、これらウクライナのワイン生産者たちはパッケージに関してはいまだに暗黒時代にいるようだ。特に350gほどのボトルでも十分にその役割を果たすというのに、1本あたり900gにもなる不必要に重いガラス瓶を好んで使う。

最近のギリシャ・ワインはエキゾチックとするにはその栄光が周知されすぎてしまっているが、キプロスの畑から生み出される上質なテーブルワインはまだまだ新たな発見と言えるのではないだろうか。この地に関しても、ごく最近テイスティングした限られたワインの中では赤ワインより白ワインに深く感銘を受けた。おそらくその理由の一つは、赤ワインには樽がワイン作りにおける重要な要素であることが多い点で、エキゾチックな産地ではなかなか最高品質の樽が入手できないことにあるのかもしれない。この島の特徴的な白ワイン用品種はクシニステリ(Xynisteri)だ。長年にわたりキプロスで最も有名かつ不当に価格の安い、粘度が高く甘いコマンダリアの主要品種だったが、どうやら非常に洗練された辛口の白ワインとしての才能を開花させたようだ。この島で最も期待の持てる畑はやはり標高が高く冷涼な場所にあるもので、ヨーロッパで最も標高が高いワイナリーであると主張するキペロンダは東地中海を見下ろす海抜1140mの場所にある。

今やほとんどのワイン愛好家は中国が重要な国であることを認識しているだろう。だが、輸出されている中国ワインはそれほど多くない。ヨーロッパ人たちはようやく、寧夏にある家族経営のシルバー・ハイツ・ワイナリーでエマ・ガオが作る、ボルドーにインスピレーションを受けた赤ワインがどのようなものか知ることが可能となった。これはロンドンに拠点を置き、クラシックなワイン産地以外にも貪欲に目を向ける新事業、オエノ(Oeno)のおかげだ。彼らはエチオピア、アゼルバイジャン、ニューヨーク州、ウクライナ、キプロスのワインにはまだ手を出していないが、それも時間の問題だろう。


お勧めのエキゾチック・ワイン

Rift Valley Chardonnay 2018 エチオピア 13%
About £13 M J Wine Cellars, not yet in stock

Rift Valley, Cuvee Prestige Chardonnay 2018 エチオピア 13%
About £16 M J Wine Cellars, not yet in stock

Red Newt, Dry Riesling 2016 フィンガー・レイクス 13%
£26.99 Handford Wines, £31.99 Museum Wines

Red Newt, Tango Oaks Vineyard Riesling 2013 フィンガー・レイクス 10.6%
£36.99 Handford Wines

Red Newt, The Knoll Riesling 2016 フィンガー・レイクス 13.2%
£46.99 Handford Wines

Shabo, Grande Reserve Saperavi 2015 ウクライナ 13.3%*
£55.20 Hedonism

Zambartas Xynisteri 2020 キプロス 13%
£12.95 M J Wine Cellars

Kyperounda, Petritis Xynisteri 2018 キプロス 13.5%
£14.95-£17.95 various independents

Vlassides, Alátes Xynisteri 2018 キプロス 13.5%
£19.95 (2019) M J Wine Cellars

Silver Heights, Emma's Reserve 2017 中国14%
£96 Oeno

注:*のついたワインについては、テイスティングはしていないが、イギリスで入手可能な唯一の近代的なウクライナのワインである。以前はヘドニズム(Hedonism)が非常に良いウクライナにあるベイクシュの、乾燥ブドウで作ったサペラヴィとテンプラニーリョのブレンドを扱っていたのだが。

その他の取扱業者はWine-Searcher.comを参照のこと。

More wines from east of Viennaにもその他のワインの紹介がある。

原文

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