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ワインの成分表示に大きな進歩

Saturday 2 January 2021 • 6 分で読めます
back label of Aldi Muscadet with lots of detailed information
この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。写真はアルディのミュスカデのバックラベルだ。これ以上書くことはないように見えるが、まだまだあるのだ。 加工食品に何が含まれているのかについてはあらゆる詳細がラベルに記載されている世の中で、ワインに何が含まれているのか長いこと全く知らされてこなかったのはある意味不思議なことだ。 1980年代、イギリスのワイン業界に私がこの問題を提起した際には、このような消費者主義の話題を取り上げることが彼らの期待への裏切りであるかのように非常に冷たい反応をされたことを思い出す。当時彼らから得られた公式見解は、原材料と加工用添加物の区別をつけることが難しいため表示は不可能だというものだった。この加工用添加物とは清澄剤などのように理論上はワイン中に残存しない(実際にはその限りではない)ものという意味だ。 ワイン醸造に用いる技術は毎年異なるため、バックラベルを毎年更新するのはあまりにコストがかかりすぎるという意見もあった。またそれらの情報を目にすることで消費者が離れてしまうのではないか、あるいはワインに使うすべてのものを記載するほどスペースがない、などの意見や、それだけの労力を用いて表示を行ったとしてもそもそも消費者は興味を持たないだろうという声もあった。 こうして成分表示という厄介ごとから長きにわたり逃れてきた世界のワイン業界の協力体制には敬意を示すべきかもしれない。だが言うまでもなく、現在私たちはアレルギーや過敏症などの問題がある世界に生き、21世紀の消費者たちは商品の透明性を求めている。 ワイン業界の頑なな姿勢にほころびが見られるようになったのは、アルコールが胎児に有害であるという警告をラベル表記することが1989年にアメリカで、2006年にはフランスでも義務となった頃からだ。2005年には、今では当たり前に目にする「亜硫酸塩含有」という表記がされるようになった。ワインのみならず果物を使った製品に広く使われ、ワイン中にも存在する亜硫酸塩が喘息患者に悪影響を及ぼすと認められたためだ。イギリスのスーパーマーケット、ウェイトローズでは週に4,5件の亜硫酸に関する問い合わせを今でも受けるという。 しかし、ワインを生産する側はそれを購入する側、とくに潜在的な顧客とも言える若い消費者と息を合わせることは難しいようだ。若者たちは、これまで成分表示をほとんどしてこなかった製品に対して疑問を呈するよう誘導する賢明なマーケティング戦略に乗せられ、ワインに何が含まれているのか、これまでよりも多くの情報を積極的に得たいと考えるようになっている。映画スターのキャメロン・ディアスは昨年7月に彼女が「クリーン・ワイン」と表現するワインを発売し、生産者たちの逆鱗に触れた。(訳注:彼女が広告塔を務めた)アヴァライン(Avaline)は有機ワインだが、そのマーケティング手法を除いて決して特別なものではない。ウェブサイトによると「ワインの醸造工程でワインの味、色、口当たりなどを変えるために用いられる70以上の添加物について明示する義務がないという現実に対抗して作られた」とある。 この件についてワイン業界で40年の経験を有し、私の友人でもあるリチャード・バンプフィールドMWはSustainable Wineというウェブサイトで次のように書いている。「クリーン・ワインという表現は当然、その定義に従えばほとんどのワインはクリーンではないと連想させる点でワイン業界の人々を激怒させました。しかし、世の中すべてが明確に白黒つけられると考えている人々を私は羨ましいと思います。私はめったに白黒つけられるものごとがあるとは思っていません。この件に関してワインがクリーンではないという主張に反発するワイン業界について同情はしますが、私自身は世の中のほとんどの事柄は多かれ少なかれ汚いものだとも考えています」。 彼のこの発言は、欠点を補うため着色剤や香料を加えたり、あえて甘さを残したりする、いわゆる商業的なブランドに関するものと考えられる。だが高価なワインですらタンニンや酸を加えたものは存在するし、現在のようにブドウが安定して完熟できる気候となる前には、フランスの最高級ワインのほとんどにアルコール度数を上げるため日常的に糖が加えられていた。また現代はサマンサ・コール・ジョンソンがナパの収穫インターンの日記(訳注:特にPart1と4、5)に書いたように有害な微生物や様々なリスクからワインを守るために作られた商業的な添加物には事欠かない時代だ。 フランス南西地方でシェーヌ・ブルーを作る著名な生産者であり、ワインのシンクタンク (和訳)も主宰するニコール・シエラ・ロレ(Nicole Sierra Rolet)はある意味現実主義者だ。彼女はSustainable Wineが運営するワインのラベル表記に関するオンライン討論会で次のように述べている。「ワイン業界はワイン(あるは畑)に対して誰かが行った悪事に関するスキャンダルに非常に弱いと思います。そういうニュースは大きく取り上げられ、私たち皆が彼らと同類だとされてしまうからです。そういう事例はあとを絶ちませんから、私たちはもっと迅速に対応すべきです」。 我々にとって幸いなことに、EUにはとある計画がある。ヨーロッパはワイン産地およびワイン消費地として圧倒的多数を占めることを考慮すれば、この計画が世界的に採択される可能性も高いだろう。2017年以降、ブリュッセルに拠点を置くヨーロッパのワイン生産組合であるCEEVはワインのラベル表記について検討を重ね、ついに成分および栄養分(例えばカロリー)などのラベル表記には意味があることを生産者とEUの当局両方に納得させたのだ。 この歓迎すべき新たなラベル規定は次の共同農業政策の一部として検討されており、(ブーイングをしないでほしいのだが)2023年には新たな規則として発効する可能性が高い。 パリに拠点を置くワイン業界団体で同様な提案を行っているOIVと決定的に異なるのは、この規則は食品および飲料で初めて、ラベルに記載するのではなくデジタルで提示されるという点だ。CEEVはEU内外(つまりイギリスも含まれる)のワイン生産者に提供するためのデジタル・プラットフォームを構築中で、それを用いればワインがどこで作られたものであろうと、e-ラベルが統一した様式で表示されるように監視することが可能となる。 私自身はこの手法は非常に賢明だと思う。我々のようにワインがどのように作られ、何が使われたのか詳細に知りたいと考える場合にはそれらQRコードを使って満足するまで情報を得ることができる一方、単にワインを飲みたいだけの人にとって、余分な情報のないラベルはすっきりと見やすくなるだろうから。 栄養素などの情報はカロリーを気にする人や糖尿病患者がすぐに参照できるよう当然ラベルにも記載されるはずだ。だが特定のアレルギーのある人がワインに含まれる成分を知るにはスマートフォンを取り出す必要がありそうだ。いずれにしてもパンデミックに伴って生み出された追跡および情報提供システムのおかげで、QRコードは特別なものではなくなっている。 私は長きにわたり、ワイン業界は赤ワインまたは白ワインのどちらかだけが体質に合わない多くの人々への対応があまりに遅いと感じてきた。問題は、ワイン業界で働く人々はどんなワインでも情熱をもって飲むという点だ。そのため彼らからするとどちらかのワインが飲めないのは「単なる偏食」であり、そういう人たちに対する理解が不足してしまうのだ。その結果ワインのアレルギーや過敏症に関して調査する努力がほとんどなされてこなかった。 ただし、ワインに含まれる最も有害な物質はそれが自然派だろうが、「クリーン」だろうが、有機だろうが、アルコールであることを指摘しておきたい。こう書くことで読者のみなさんの期待を裏切ることにならないといいのだが。 ワインの成分表示を行っているワイン ワインの成分表示を初めて行った生産者の一人はボニー・ドゥーン・ヴィンヤードを所有していたカリフォルニアのランドール・グラハムだ。一方で数えきれないほどの自然派の生産者たちはラベルに単に「発酵したブドウ果汁」と記載することを誇りに思っている。下記は全ての自社ワインに成分表記を行っている生産者の一部だ。 イギリスのCo-opで販売されているすべてのワイン カリフォルニア Ridge Vineyards Atlas Wine Co Ampelos Cellars オレゴン Omero Cellars ロング・アイランド Shinn Estate Vineyards イギリス Westwell Wines (原文
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