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変わるボルドーのすべて

• 6 分で読めます
Proprietotrs of Bordeaux's crus classés in 2021

2020ヴィンテージのテイスティングはまさに喜びそのものだった。多くの生産者たちが暑く乾燥した天候に抗い、喜ばしいほどにフレッシュで表情豊かな「新しくて古い」ワインを生み出したのである。guide to coverage of 2020 bordeauxも参照のこと。この記事の別バーションはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。上の写真はクリュ・クラッセのオーナーで、UGCBのメンバーたちだ。

今我々はボルドーのプリムール・シーズンの真っただ中にいる。ワイン商やシャトーのオーナーたちはその空気を読み、批評家たちのスコアを考慮に入れながら、不明瞭かつ不安定な経済状況となるだろう市場にリリースする2020ヴィンテージに適正な値付けをする時期である。

昨年のプリムールは想定外の成功をおさめたが、その主たる要因は品質の高さと価格の低さが両立するという、これまでならあり得なかった現象だろう。更に、自宅でくつろいで画面を見ながら支払いをすることができたという現実も追い風となった。

だが、どうやら2019プリムールの成功体験(和訳)がそのまま繰り返されることはなさそうだ。昨年同様画面に表示される近年のボルドーのヴィンテージの価格には際立った変化はない。ではなぜ、瓶詰すらされていないワインにわざわざ大枚をはたくのだろうか。一つの論理としては、2020は比較的収量が低かったこと、さらに最近の霜の影響(和訳)で次ヴィンテージの量も少ないと予測されることが挙げられる。とはいえ、ほとんどのボルドーのワインはそもそも非常に生産量が多いのだが・・・。そしてプリムールの利用者が忘れがちなのはそれら若いワインの保管のために毎年かかってくるコストだ。

2019ほど安定したヴィンテージではなかったものの、2020の中には息をのむほど素晴らしいワインも存在している。ボルドー人たちは、EUからの輸入ワインに課された関税が保留されたことによってアメリカの、対ユーロ高を示すポンドに後押しされてイギリスの、潜在的なバイヤーたちが勢いを増すことを願っている。だが、あらゆる状況証拠からは、ボルドーはワイン投資家にとって確実な投資先という位置づけを失いつつあることが示されている。ブルゴーニュ、バローロ、シャンパーニュ、ブルネッロ、ローヌ、カリフォルニアよ、さあどうする。

だが私が今のボルドーについて最もわくわくしているのは商業的なことではなく、いつものように畑や醸造所で何が起こっているかという点だ。まさに革命と言っていいほどのことが起こっているからだ。ボルドーはこれまで長きにわたり、慢心していたと言える。トップシャトーは毎年完売し、批評家、特にアメリカの彼らはある意味ナパ・ヴァレーのカベルネに似たスタイルのワインに安定的な賛辞を送っていたからだ。しかし、ボルドーは畑における化学農薬の使用量が最も多い地域でもあり続けたことも指摘すべきだろう。海洋性気候のために湿度が高く、ブドウがかかりやすいカビ系の病気のリスクが高いことをその言い訳にしてきたのだ。

しかし、変化は起こり始めている。おそらくワインにもそれを感じることができるだろう。たとえば国際品種を離れ固有品種に注力するようなワインが多く流行するようになったことと似て、その変化は消費者よりも生産者が先導しているものだ。おそらくその原動力としては、生産者自身が飲んで楽しめるワインを作るということもあるのだろう。端的に言えば、世界の多くのワイン生産地と同様に、ボルドーでもリッチで凝縮感を高めた醸造テクニックを反映したものから、次第にフレッシュで、畑の環境を明確に表すワインへと変わってきたのである。アルコール度数の高さはいまや意図的に追及するものではなくなった。その点暑く乾燥した夏は役に立たないとは言える。だがシャトー・ラフィット2020のアルコール度数はたったの12.8%だ。これら「新しくて古い」ワインは伝統的なボルドーのワイン作りと、近代的なワイン作りと洗練されたブドウ栽培技術を絶妙に融合した結果なのである。

ボルドーじゅうの樽から抜き出され、ロンドンにある私の自宅まで送られてきた、出来立てほやほやの2020ヴィンテージのカスク・サンプルをテイスティングしている間に、メールボックスは生産者からのメールでいっぱいになった。そのどれもがワイン作りのアプローチを革命的に変えたと主張しているのである。

長期的なサステイナビリティに関心のある我々にとって心強い兆候は、それらカスク・サンプルのうち、有機認証団体のロゴのついたものの多さだ。20年、いや10年前ですら考えられなかったことだろう。除草剤、殺虫剤、そしてカビ系の病気や腐敗などを予防する薬剤への依存を減らそうとするシャトーが、夏に雨が少なくなってきた現実に助けられていることは間違いないが、それに加えて善意をもってそれに対処する志がそこかしこに感じられる。

最近発表したボルドーの概要、Inside Bordeauxの中でジェーン・アンソンは、有機栽培や、さらに高度なビオデナミ農法に転換している影響力のあるシャトーの長いリストも掲載している。著名な先駆者としてはシャトー・オーゾンヌ、デュルフォール・ヴィヴァン、グリュオ・ラローズ、ギロー、ラトゥール、モンローズ、パルメ、ポンテ・カネ、スミス・オー・ラフィットなどが挙げられるが、彼らに続くシャトーは数えきれない。

醸造よりも栽培に注力するようになったことで、畑の区画ごとの性質をより深く理解し、それに対応する必要が生まれた。この、現在では精密栽培(プレシジョン・ヴィティカルチャー)と呼ばれるアプローチに私が初めて出合ったのはボルドーではなく、ナパ・ヴァレーのハーラン・エステートで、彼らを初めて訪問した20年以上も前のことだ。現在その手法は世界中の野心的な生産者たちに受け入れられ、ボルドーの最高級のシャトーでも必要不可欠なものとなった。品質に最も敏感な生産者や、そこに資金を十分に投入できる生産者たちは区画に合わせたサイズの発酵槽を準備し、区画ごとにブドウの成熟の状態を見ながら最善のタイミングで収穫するようになった。昔よりもフレッシュなワインを生み出すため、生産者によってはかつてより1か月早く収穫を行うことすらあるそうだ。

シャトー・ジスクールのアレクサンダー・ヴァン・ビークも自社の革新的な変化を知らせたくてたまらない一人だが、彼によれば区画どころかブドウ1本1本ごとに収穫時期を変えているそうだ。ジスクールでは所有者が変わった1996年、畑に点在していた枯れかけのブドウ13万本を植え替えている。そのため2018年からは、それら若木だけは別に、早めに収穫を行うようになったのである。畑の収穫スタッフは時期を変えて同じ畑で3回収穫するという複雑な工程を理解せねばならず、臨時労働者を使うことができなくなった。同様な仕組みはアルゼンチンのチャカナでも見かけたが、ジスクールでも労働者たちは野菜や、シャトーで育てている羊も含めて好きなものを(副収入源として)選ぶことができる。

(ちなみに先駆者であるハーランでは2013年から栽培従事者の教育を行って個々人に区画を割り当てている。栽培責任者のコーリー・エンプティングに言わせれば彼らに「生涯を通じ注意深い管理責任を負うことで自身の最高傑作を創り出す」機会を与えているのだそうだ)

もう一つのボルドーの格付けシャトー、ペサック・レオニャンにあるシャトー・マラルティック・ラグラヴィエールでは、ボニー一族がブドウの根をより深く伸ばすため耕起を行うようにしている。こうすることでブドウが砂利層を突き抜け、サブソイル(下層土)である石灰質まで届き、安定して水を吸収できるようになるのだ。その結果、房は小さく、数が減り、房を落とす必要がなくなったという。これはブドウがその環境に調和したためだといい、ジャン・ジャック・ボニーに言わせれば「ブドウは凝縮感が高まり、活力があり、生き生きとしています。」とのことだ。

シャトー・ラフィットでの新たなアプローチは、サスキア・ド・ロスチャイルドによれば単一栽培の廃止だ。かつてはブドウだけが植えられていた土地に生垣や木立を作り、生物多様性を促進することで「緑の回廊」を作り、ブドウに、そしてワインにフレッシュさをもたらすことが狙いだ。ラフィットでの取り組みを説明するメールで彼女はシャトー・ラフォン・ロシェとパルメでもすでにその手法を採用していると書いていた。

このような傾向は今のところ私がテイスティングした多くの2020に明確に感じ取ることができた。一方で特にボルドー左岸のカベルネ主体のシャトーの中で最高のワインは、最終ブレンドで満足のいかないワインを却下するだけの財力がある作り手のものである傾向も明確だ。ボルドーでは相変わらず、品質の高低の差が激しい。


フレッシュさの増したボルドー2020

2020のテイスティングはジャンシスロビンソンドットコムの3名のスタッフで行ったため、私個人のテイスティングは特定のアペラシオンに限定されていること、現地のみでカスク・サンプルを提供するシャトーについては除外せざるをえなかったことは申し添えておく。

サンテミリオン
Ch Chauvin, Clos Fourtet, Clos St-Martin, Chx Fonplégade, Fonroque, La Gaffelière, Grand Corbin-Despagne, Grand-Pontet, Jean Faure, Laroque, La Marzelle, Pavie Macquin, Le Prieuré, Rochebelle, La Serre

ペサック・レオニャン
Ch Carbonnieux, Domaine de Chevalier, Chx de France, Haut-Bergey, La Louvière, Malartic Lagravière, Smith Haut Lafitte

サンジュリアン
Chx Beychevelle, Gloria, Langoa Barton, Léoville Barton, Léoville Poyferré, Talbot

ポヤック
Chx Fonbadet, Haut-Batailley, Lynch-Bages

センテステフ
Ch Lafon-Rochet

テイスティングノートguide も参照のこと。

原文

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