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軽量ボトルを視野に

Saturday 18 February 2023 • 6 分で読めます
Bottles straight from the furnace at Encirc
Encirc社のガラス炉から出てきたボトル

ワイン生産者たちはガラス瓶の入手が困難かつ高価になり続けていると嘆いている。ボトルの軽量化はこの問題の緩和につながるのだろうか。そしてそのための最善の策は?上の写真はガラス炉から出てきたばかりの熱々のボトルだ。この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

ガラス瓶の製造と運搬がワインの炭酸ガス排出量に占める割合が最も大きいということは今やまぎれもない事実である。国際的なグループでは、その削減を最も効率的に進める手法を検討しており、実際に大きな進歩を遂げている。

もちろん、理想的なのは全てのボトルがリユースまたはリサイクルされることだ。他の素材と違い、ガラスは実質的に、無限にリサイクルが可能だからだ。しかし、驚くほどのリサイクル制度を確立し、消費者へのガイドラインも明示されている国ですら、それは現実には起こりえない。一方イギリスでは、リサイクルは自治体にゆだねられており、イギリスだけでその数は333団体に及ぶ。彼らのリサイクル法はバラバラで、ウェールズは比較的効率が高いものの、それ以外では決して高いとは言えない。また、スコットランド人はウェストミンスターからの独立を進める動きの一つとして、複雑なリターナブル・ボトル制度を提案している。

正しい行いをしたいと願う一消費者としては、この件に関してウェストミンスターからの介入をもっと積極的にして欲しいと思っている。ガラス瓶や、その他リサイクルすべきものに対し、標準化された明確なガイダンスは大歓迎だ。だが現実には、自分が注意深くリサイクル・ボックスに入れたものが埋め立てに使われたり、インドネシアあたりに送られたりせず、適切にリサイクルされているのかどうかについては、多くのイギリス人同様に私自身も疑念を頂き、混乱し、全く納得できていない。

イギリスではリサイクル制度を標準化しようにも、多くの自治体がBiffa社のような廃棄物処理会社と結んでいる超長期契約にがんじがらめとなり、標準化を阻まれているのが実情だ。

どうやらイギリスでのリサイクルは、例えばドイツやスイス、スカンジナビア諸国やフランスと比べてかなり遅れているようだ。ザ・ワイン・ソサイエティのサステナビリティ責任者、ドミニク・ド・ヴィルによれば「イギリスはヨーロッパの汚れ者とみなされて」いるという。世界最大の市場であるアメリカと比較した場合、イギリスのリサイクルははるかにましなのだが、決してそれはいいことではなく、逆に不安材料でしかない。

ワイン・ボトルの炭酸ガス排出量削減に関して現在最良の選択肢は、ボトルの軽量化であるようだ。ワインの生産者、中間業者、小売店、輸送業者らによる独立連合であるサステナブル・ワイン・ラウンドテーブルの支援の下、事態を憂慮している小売業者(ウェイトローズ、ザ・ワイン・ソサイエティ、ホール・フーズ、オランダの小売店アホールド・デレーズ、スウェーデンとフィンランドのアルコール専売業)はこの点についてピーター・スタンブリー研究員への資金提供をし、あらゆる側面での可能性を探るべく調査を依頼している。

昨年9月以降、彼は関係者への取材や文献の調査を行い、生産者たちが顧客の要望にこたえる形でより軽量なボトルへの移行が進むだろうという予測を立てた。ケベックのアルコール専売公社、SAQはそのような制度を導入している。言うまでもないことだが、ケベックのように(唯一の販売店である)専売公社が特定の重量を超えるボトルを使っているワインを拒否できるのであれば話は容易に進むだろう。

SAQは目標重要として空瓶の重量を420 gと決めている(スタンブリーによれば、彼がこれまで出会った最も重いボトルは2,850 gだそうだ)。業界団体であるブリティッシュ・グラスによれば、その会員は既に350gを下回るガラス製のワイン用ボトルの生産を2億5千万本ほど、問題なく生産しており、それらの強度が十分であることも証明済みだ。

私自身も2006年以降、軽量ボトルの推進運動を続けている。これはケースでワインを持ち上げる人々のためでもあり、地球環境のためでもある。そしてここ2年間は自宅でテイスティングしたワインのボトル重量をレビュー内に記載するようにしてきたが、軽量ボトルを導入するワイン生産者の数は増加しているように感じている。一方で私自身がボトル重量を重視しているにもかかわらず、見た目と感触だけでどれが軽量ボトルなのか予測する精度は下がってきているようにも感じている。おそらくボトルのデザイナーたちも、500g以下のボトルを多く取り扱うようになり、その外観の(訳注:軽く見えないような)「偽装」技術も上達してきているのだろう。

スタンブリーによれば、ボトルの軽量化に伴う明白な実用上の問題はないそうだ。ただし、ボトルが最も割れやすい部分の強化のため、ボトルの型には多少の変更が必要だ。また、非常に高速で瓶詰めするラインには多少の変更が必要となるかもしれない。だが彼の結論では420gあるいはそれより軽いボトルでも、長距離の輸送に十分耐えうるだけの完璧な堅牢性は備えているとのことだ。それに、私自身の体験から付け加えると、現代の段ボールの選択肢は幅広く、ガラス瓶の梱包で破損リスクをゼロにすることも可能だ。

Encirc社のライン
チェスター近郊にあるEncirc社では、3つのガラス炉から32本のラインを通じ、1日600,000本が送り出される。

もちろん、重いガラス瓶を使うにはコストもかかる。スタンブリーとド・ヴィルと私は1日かけてイギリスで最も野心的なボトル生産者、Encirc 社を訪問し、ガラス炉の温度を365日安定して1500℃に保つエネルギーさえ確保できれば、ボトルの生産は非常にシンプルな行程だという点を理解した。原材料はケイ砂、ソーダ灰、石灰だけだ(同社ではリサイクル・ガラスの使用量増加を目標としており、現在その比率はヨーロッパで52%だそうだ。緑色ガラスの方が透明ガラスよりもその利用率が高い)。だが現在はエネルギーのコストが高騰しており、ボトルの価格もそれに伴う。

訳注:原文ではこちらに出来立ての(熱々の)ガラス瓶動画が挿入してあります。こちらのページ中程でご覧いただけますので是非ご覧下さい。

アメリカではほとんどのワイン生産者が中国製のボトルを使っているが、カリフォルニアのヴィニュロン、ラジャ・パーは自身のフェラン・ファームのワインにはアメリカ製の(軽量)ボトルを使うことにしている。昨年そのコストは1本38セントだったが、今年は1.1ドルを支払っているそうだ。

ルーマニア最大手のワイン輸出業者であり生産者でもあるクラメレ・レカシュのフィリップ・コックスはカーボン・フットプリントに特に配慮している人物だが、最近私にこう書いてよこした。「正直なところ、ガラスは今やエントリー・レベルのワインには高すぎるんですよ。ヨーロッパでは昨年20セント以上も値上がりしていますから、1本6ポンドを切るワインにとっては特に大きな打撃です(すなわち利益と付加価値税を加えると小売価格としては1本50セントの値上げとなる)。しかも価格が上がっただけでなく、入手も非常に難しくなり、状況はどんどん悪化しています。十分なガラス瓶は入手できず、スペイン、フランス、イタリアではもっと深刻です。」

スタンブリーによれば、彼が話を聞いたボトル生産者は軽量ボトルの生産に非常に好意的だったそうだ。製造コストが下がるし、生産量は増やせるからだ。

大手の小売業者なら、取り扱うワインの生産者にボトルの最大重量を提示することは容易だろう。そしてその結果多くの棚のスペースが生まれ、輸送コストが削減できるのなら歓迎されるはずだ。

唯一のボトルネックは、消費者が抱く商品イメージではない。ブランド・オーナーが想像している「消費者が抱く商品イメージ」だ。消費者はボトルの重量とワインの品質が比例すると考えるものだとする生産者が多すぎるのだ(例えば2世紀近くにわたり最高品質のワインを代表してきたボルドーの1級シャトーですら、特に重いボトルは使っていない)。

確かに、シャトーヌフ・デュ・パプなどの一部のアペラシオンは特に重い、特別なボトルを売りにしている。だがこれらの生産者は考えを変えるか、重い従量税を課されるべきだろう。

ただし、最近の若い消費者たちは一般的なワイン愛好家同様、(環境面だけでなく、経済面、社会面からも)サステナビリティに敏感になっている。環境意識の高いイギリスの小売業者、レイスウェイトが1年前に100%リサイクル・ガラス製のボトルでワインを販売したところ、72時間で売り切れたことからもそれは明らかだ。

スタンブリーの調査によれば、重いボトルで安心するのは経験豊かなワイン愛好家ではなく比較的最近ワインを飲むようになった層だということだから、教育によって変えることができるはずだ。彼が調査した文献によれば、消費者が1本のワインを選ぶ際に重視するのは価格やラベル、産地であって、ボトルの重量はさほど大きな要素ではないことが示唆された。そもそも、今は多くのワインがオンラインで購入できる時代だ。あるいはバーやレストランで飲む場合にも、そのボトルの重さはワインを選ぶ基準とはなり得ない。

スタンブリーはあと2か月ほどでこの調査を終え、小売業界への提言を行う予定だ。もしあなたがいつも飲んでいるワインのボトルが軽くなっても、どうか苦情を入れないでほしい。

非常に軽いボトルに入った美味しいワイン

白ワイン
Verum, Las Tinadas Airén 2020 Vino de la Tierra Castilla, Spain 12.5%
£26.96 Great Wines Direct

赤ワイン
Ch Pesquié, Edition 1912m 2020 Ventoux, Rhône 14.5%
£12.99 Majestic (£10.99 Mix Six price)

VidAs, Vive La Vida 2019 Cangas, Asturias 13.5%
£18.80 Savage Selection

Marion, Borgo 2020 Valpolicella 12.5%
£19.95 Wine & Greene

パープル・ページ会員ならテイスティング・ノートとスコアへのアクセスが可能だ。各国の取扱業者はWine-Searcher.comを参照のこと。

原文

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