The Jancis Robinson Story (ポッドキャスト) | Mission Blind Tasting | Wine writing competition

ワインの温度を保つには

• 7 分で読めます
Image

2019年4月9日 気温が高い中でワインの温度を低く保つ方法について様々な提案が届いているので、この記事の最後に追加した。

2019年4月6日 ワインの提供温度に関するこの記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

地球環境が急速に悪化していく中でこのテーマを取り上げるのはあまりに自己中心的で浅はかなことと思われるが、そう言ってしまうと私がプロとして人生をささげてきた世界が浅はかなものだったことになってしまうので、この点はご容赦願いたい。

どこか暖かい地域でワイン・グラスを手にして休暇を過ごしている自分を想像してほしい。目の前の砂浜には波が打ち付け、頭上にはヤシの木が揺れている。仕事を抜け出した牧歌的生活の典型のような景色だが、ここには決定的な間違いがある。

問題はあなたがお金を払って手にしたグラスの中のワインが最高の状態にあるのはほんの数分間のことだけだという点だ。暖かい気温のせいで、リフレッシュするための飲み物は生ぬるいスープに変わってしまう。ワインがどんな色であれ、この不都合な現象からは逃れられない。

つい最近までこのワイン温暖化症候群は熱帯にしか当てはまらなかった。だが最近は地球温暖化のせいで赤道からはるかに離れた場所でもワインが不愉快なほど生ぬるくなってしまう夏は多く存在する。

ワインを楽しむためにどれほど提供温度が重要か強調しすぎることはないだろう。冷たすぎれば香りが揮発せず何の味も感じなくなってしまう。低温では酸や固いタンニンが強調されるが、それは常に好ましいことではない。だがあまりに温度が高すぎると、白やロゼだけでなく赤ワインでも、ワインは面白みと風味を失い、ビネガーのような香りを感じるようになる。最も深刻なことは、特に暑い日にワインが爽やかさを失うことだ。だが飲み物の最も重要な役割はこの爽やかさなのである。

ワイン用温度計を神経質に使うことを推奨するわけではないが、理想的なワインの提供温度はほとんどの白ワインの場合6-10度だ。この幅の中でも低い温度帯は泡として溶けこんでいる二酸化炭素を維持するためスパーリング・ワインにふさわしいし、一部の甘口ワインやとくに軽いワインにも適切だろう。もう少しフル・ボディに近い白ワイン、たとえば高級な白のブルゴーニュ、最高品質のシャルドネ、ローヌやその他地域のヴィオニエなどはもう少し高い温度、だいたい10―14度で提供することでその香りやワインの特徴を引き出すことができる。この温度帯は理想的で、時に「セラー温度」とも呼ばれることがある、なぜならどんな色のワインにも適切な保管温度であり、ボージョレのように軽くフレッシュな赤ワインやシンプルなピノ・ノワール、ポートやシェリーなどにも最適な温度と言えるからだ。

フル・ボディの赤、特にタンニンの強いワインには(カベルネ・ソーヴィニヨンなどの若いワインにとくに当てはまるが)18度程度まで温度を上げて提供する方が好ましいこともある。

それでもこれらの温度は世界のほとんどの地域の夏の外気温よりははるかに低いし、現実的には温度管理された室内の気温よりも低いことがほとんどだ。(かつての赤ワインの提供に最適な温度は「室温」であるというのははるか昔、まだ気温が低かったころの話だ)。では、最適な状態でワインを楽しむためにワインの温度を低く保つにはどうしたらよいのだろうか。

これがスピリッツやカクテルなら話は早い。飲み物の温度が高くなったと感じたら氷を足せばいいのだ。だがワインと氷はあまりよい相棒とは言えない。その理由の一つはワインの持つ力強さだけでなく、味わいとバランスも変えてしまうことだ。(最近アントワープで開催された世界ソムリエコンクールの審査をしていた際に、かつての優勝者から聞いたアドバイスは、ワインを飲んでいる人にワインに入れるための氷を提供する適切なエチケットはそのゲストに自分で氷をいれてもらうことだそうだ。)

気温が高い場合はワインを通常より少し冷たくして提供するのも一案だろう。たとえば提供の30分ほど前に赤ワインを冷蔵庫に入れておき、温度が上がることで最適な提供温度に到達させることだ。だがもちろん、最初のうちワインは理想よりも温度が低いことを意味するし、結局はスープのように生ぬるくなってしまうことには変わりはない。

ああ、これこそワイン愛好家の前に立ちはだかる壁ではないか!

このジレンマを解消すべく多くの器具が開発されてきた。私のお気に入りはワイン・ボトルの温度を一定に保ってくれる真空断熱の層を備えた円筒形の保冷容器だ。これは刺すような日差しの下でも非常に効果的で、氷を入れたバケツに比べて場所も取らず、エネルギーも使わない。

バケツは氷だけを入れるよりも氷と水を一緒に入れる方が効果的だが、急速にボトルのワインを冷やしたい場合には間違いなく効果的だ。私はレストランで赤ワインを頼んだ際、テイスティングして(温度が高いと思ったら)氷の入ったバケツで冷やしてもらうよう頼んだ経験も多い。だがこれはかなり場所を取るし、氷を作り、それを保管するためにエネルギーも使うし、ボトルも水で濡れてしまうので取り扱いづらくなる。

冷凍庫で冷却しておけるような球状、あるいはオセロの駒の厚さを倍にしたような形をした金属製の製品を使うのも選択肢の一つだろう。これならワインを薄めたり、味を変えてしまったりすることなく冷やすことができる。だが私からするとワインを口にするたびにそれらが歯にぶつかるのであまり心地のいいものではない。タムによるとジョン・ルイス(訳注;百貨店)で6個15ユーロで販売されているgranite whisky stones も同じ働きをするそうだ。これらは小袋に入っているので冷凍庫の匂いが石についてしまうこともない。

(ちなみにワインを凍らせることは推奨できない。ワインは凍らせると急激に膨張し、コルクをボトルから押し出してしまうことがあるためだ)

我々ワイン愛好家が最適な温度に近い状態でワインを飲むためには2つの方法しかないように思う。一つは氷の入ったバケツか真空保冷容器でボトルを最適温度よりやや低く保ち、毎回ほんのわずかな量ずつ注ぐことだ。もう一つはワインを大急ぎで飲んでしまうことだが、これは決してお勧めできるものではない。

このワイン温暖化症候群へ対処するためのアドバイスは大歓迎だ。一方で私は以下の予測も立てている。気温が上がるにつれ、我々はフル・ボディの赤よりも冷やして飲める赤へより注目するようになるだろう。複雑で深刻な赤ワインは温度が高いと、さらに夏の気温が高いとその本領を発揮することができないため、我々の多くは爽やかなワインを切望するようになるだろう。だがこれは白やロゼに限ったことではなく、少し冷やして提供する需要にうまくこたえられる赤もその中に含まれるだろう。以下のおすすめを参照のこと。

冷やして飲めるお勧めの赤

以下のワインはタンニンが低かったり非常にライト・ボディだったりするので少し冷やして提供することも十分に可能だ。

Ringleader, Old Vine Grenache 2018 Riverland £5.99 Aldi (アルディでの在庫は少ないが実質的に同じものがMorala, Old Vine Grenache 2018 Riverland £8.99 でマジェスティックで取り扱いがある)

Percheron Old Vine Cinsault 2016 Western Cape £6.99 Purple Foot of Oxfordshire and many more

Jean-Paul Brun, Le Ronsay 2017 Beaujolais 1ダースあたり保税価格£62.50 Justerini & Brooks

De Martino, Gallardia Cinsault 2016 Itata £14.50 Berry Bros & Rudd

Pedro Parra, Imaginador Cinsault 2016 Itata $23.96 Astor Wines, New York

Domaine Chapel 2017 Juliénas £23.48 Uncharted Wine, £25 Quality Wines, £28 Lechevalier

Jane Eyre 2017 Chénas £25 D Vine Cellars, The Wine Reserve, Morrish and Banham

Le Grappin 2017 St-Amour £26 legrappin.com

Julien Sunier 2017 Fleurie £28.50 Berry Bros & Rudd

Kutch Pinot Noir 2017 Sonoma Coast £360 a dozen in bond Farr Vintners

Tasting notes on Purple Pages. Other stockists via Wine-Searcher.com

テイスティング・ノートはこちら

読者から寄せられた追加のおすすめ

(訳注;翻訳後にも続々と追加されているようですので興味のある方は原文からどうぞ)

Guy Smithのおすすめはこの2本用の電気式冷却器だ。コンセントが必要だが個別に温度が設定できる。なかなかよさそうだ!

ベルギーから寄せられた情報はかなりオシャレ(そして高い)Qelviq のワインクーラーで、今年中には発売されるものだ。プロフェッショナル・バージョン(€399) とソムリエ・バージョン (€499) がある。電池でも稼働可能で非常に静かだ。ソムリエ・バージョンは35万本におよぶワインの理想的な提供温度情報を搭載したアプリがついている。プロフェッショナル・バージョンはアメリカだけの配送になるようだ。

デンマーク人Arne Jensenのお勧めはボダムのダブルウォールグラスで、4客セットで35ポンドだ。だが、ワインに最適な形ではない。手前味噌だが、自分がデザインしたワイン・グラスの方がいいと思ってしまった。

原文

購読プラン
スタンダード会員
$135
/年間
年間購読
ワイン愛好家向け
  • 297,050件のワインレビュー および 16,151本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
  • askJancisへのアクセス(AIワインアシスタント)
プレミアム会員
$249
/年間
 
本格的な愛好家向け

「メンバー」プランの内容に加えて

  • 最新ワインレビューへの早期アクセス(48時間前)
  • 最新記事への早期アクセス(48時間前)
プロフェッショナル
$299
/年間
ワイン業界関係者(個人)向け 
  • 297,050件のワインレビュー および 16,151本の記事 読み放題
  • The Oxford Companion to Wine および 世界のワイン図鑑 (The World Atlas of Wine)
  • askJancisへのアクセス(AIワインアシスタント)
  • 最新のワイン・レビュー と記事に先行アクセス(一般公開の48時間前より)
  • 最大25件のワインレビューおよびスコアを商業利用可能(マーケティング用)
ビジネスプラン
$399
/年間
法人購読

「プロフェッショナル」プランの内容に加えて

  • 最大250件のワインレビューおよびスコアを商業利用可能(マーケティング用)
  • レビュー依頼用のワインを提出可能
  • 従業員向けにメンバーシップを提供し、一元的に管理可能
  • APIアクセス(※別途料金)
Visa logo Mastercard logo American Express logo Logo for more payment options
で購入
ニュースレター登録

編集部から、最新のワインニュースやトレンドを毎週メールでお届けします。

プライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます。

More 無料で読める記事

Markus and Eben Sadie at Berry Bros April 2026
無料で読める記事 この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。 パラディウスのヴァーティカル・テイスティングも参照のこと...
Sam Neill
無料で読める記事 ジャンシスが、これまで出会った中で最も魅力的なワイン生産者を偲ぶ。写真上は、自身のトゥー・パドックスのブドウ畑にいるニール。...
A glass of Sauvignon Blanc at an airport bar
無料で読める記事 第一次審査を終え、今年のライティング・コンペティションの優秀作品の掲載を開始できることを嬉しく思う。選ばれた作品はすべて編集なしで掲載され...
Boscastle harbour
無料で読める記事 この記事はAIによる翻訳を日本語話者によって検証・編集したものです。(監修:小原陽子) ザ・ロケット...

More from JancisRobinson.com

Barale estate and vineyards
テイスティング記事 困難なヴィンテージに関する最終報告。驚くほどフレッシュでアクセスしやすいワインに仕上がっている。本日は、複数の村のワインと、ケラスコ...
Valle de Guadalupe vineyards
現地詳報 メキシコのワイン産業は気候変動への対処法について教訓を与えてくれる、とメキシコを拠点とするジャーナリスト兼ソムリエのカルロス・ボルボア...
Richard Hemming and Hiromi Ohno outside Sushi Oono
Vinomakase リチャードの新連載「Vinomakase」では、専門家たちがワインと日本料理をどのようにマッチングさせているかを探る。第1回は...
Hops hang from the ceiling at Dylan's at The Kings Arms in St Albans
Bite-sized セント・オールバンズの大聖堂地区にある15世紀のパブで、最新の料理を堪能できる。 フロント・バーは今も安心できるほどパブらしさを保っている...
Person in Domaine Sérol's vineyards in the Côte Roannaise (credit Le Bon Cliché)
今週のワイン フランス中部の赤ワインに見る、渇きを癒すフレッシュさ。 £15.50、$26.95から 。...
CWL Wines of Brazil over map
書籍レビュー クラシック・ワイン・ライブラリーへの3つの新刊と、ポルトガル・ワインに関する自費出版ガイド。 以下のレビューのうち3冊は、アカデミー・デュ...
Sadie Family winery exterior
テイスティング記事 南アフリカで最も人気の高い白ワインの進化をたどる、示唆に富んだヴァーティカル・テイスティング。このワインは...
Léoville Barton - line-up of wines for vertical tasting
テイスティング記事 ボルドーの伝説的なシャトーによる25年分のワイン。 ボルドー・ヴァーティカル・テイスティング・ガイド[/ja/articles/guide...
JancisRobinson.comニュースレター
最新のワインニュースやトレンドを毎週メールでお届けします。
JancisRobinson.comでは、ニュースレターを無料配信しています。ワインに関する最新情報をいち早くお届けします。
なお、ご登録いただいた個人情報は、ニュースレターの配信以外の目的で利用したり、第三者に提供したりすることはありません。プライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます.