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メゾン・ルロワの60年

Saturday 25 April 2015 • 4 分で読めます
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これはフィナンシャル・タイムズに掲載した記事のやや長いバージョンである。

詳細はtasting notesも参照のこと。

私は日差しのこぼれる日曜日の朝ボーヌの駅に座り、この記事を書いている。私の血管を今流れているのは、血液よりも1955のブルゴーニュの比率が多いに違いない。昨夜はブルゴーニュで最も才能あふれるヴィニュロンがワインを選び、そして作るというキャリアを選んでから60年を祝うひと時だった。彼女は24名の参加者に彼女のデビューしたヴィンテージ、すなわち彼女がわずか23歳だった頃に選んだ22本のブルゴーニュを振る舞い、一度も腰を下ろすことはなかった。

テーブルからテーブルへ忙しく動き回って自身の献身的なチームが注ぐ全ての滴に目を配り、満足げに頷く彼女に話しかけるのは容易なことではなかった。しかし私は彼女が偉大な、間違いなく本物の1955のブルゴーニュをこれだけの数集めたことに感銘を受けた。なぜならこの時代の多くのブルゴーニュワインは、はるかに安価なフランス南部のワインや、当時フランスの植民地で国際的なワイン取引の三分の二を占めていたアルジェリアのワインを混ぜているものが非常に多いことで悪評高かったからである。「特別なことをしたわけじゃないのよ」彼女は肩をすくめた。「ブルゴーニュを肌で感じながら育ったんだもの。私が生まれてすぐ、父は私の唇を1929のミュジニーで湿らせたの。」

マルセル・ルロワとして生まれたが人生のほとんどをラルーと呼ばれてきた彼女は、今でも父であるアンリ・ルロワを崇拝している。彼はブドウ栽培農家の三代目であり、ワイン商を経て蒸留事業にも取り組み、とりわけコニャックの生産に情熱を注ぎ事業を大きく拡大した。しかし彼を最も有名にしたのはブルゴーニュの最も有名なドメーヌであるドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティの半分を、共同所有者のエドモンド・ゴーダン・ド・ヴィレーヌ(Edmond Gaudin de Villaine)の義理の兄(弟)から第二次大戦中に譲り受けたことだろう。自身の家族のワイン事業に対して非常に偏った視点を持っているラルーに言わせると「アンリ・ルロワはその後40年間、彼の全てをドメーヌ・ロマネ・コンティに捧げたの。彼はこのドメーヌに彼の持てる最高の物を注ぎ込んだわ。知性、プロフェッショナリズム、そして彼の心。それが今のロマネ・コンティを作っているの。」

コート・ドールの北部にあるヴォーヌ・ロマネ村にあるロマネ・コンティに対するアンリの献身を示す一つの出来事が、当時から明らかにテイスティングの才能があった自身の娘に仕事の機会を与えることだった。彼はコート・ドールの南部、オクセイ・デュレス村にある伝統的な拠点で今でも事業を行っている一族のネゴシアン事業、メゾン・ルロワのためのワインの選定を任せたのだ。しかし、私たちが昨晩テイスティングしたような高品質の1955を見つけるのは年々難しくなっている。非常に多くの生産者が今では自身のラベルでワインを作っており、弊サイトでも最近紹介した通り、残されたワインへの市場の需要が激しさを増しているからだ。

ラルーは高い価格について全く心配していないようだった。彼女がメゾン・ルロワのために獲得したもの、あるいはヴォーヌのドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティから少し道を下った先で彼女がビオデナミで作るドメーヌ・ルロワの物なら特に、そのワインには成層圏に届く勢いの価格が付けられている。そしてその価格で売られているのだ。私がブルゴーニュの最も偉大なワインに常に名を連ねるドメーヌ・ルロワのワインについて経験からコメントできるのは11月に樽から試飲したものだけである。その際にテイスティングした目もくらむような品揃えの9つのグランクリュを補完してくれるのが各アペラシオンの最盛期を代表する22以上のワインで、1988年に取った抜け目ない戦略のおかげで集めることが可能になったものだった。ラルーがドメーヌ・ルロワの基幹となる設備を購入できたのは、メゾン・ルロワの三分の一を日本のインポータで高級小売商であるタカシマヤに売却したためなのだ。

販売権に関する諍いの後1992年には彼女はドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティを同僚だった役員たちに追い出され、現在その代表を務めるのは今でも共同経営者であるヴィレーヌ一族と、彼女の娘ペリンヌ(Perrine)である。ロマネ・コンティのワインだけが価格という意味でも品質という意味でも、ドメーヌ・ルロワと肩を並べられるものだと言える。

ホテルから我々テイスターをボーヌのドメーヌ・ドーブネ(Domaine d'Auvenay)へ送るバスの中から、ラルーのブルゴーニュの自宅である雰囲気のある家屋が見えた。私の隣にはマーティン・ソニエ(Martine Saunier)が座っていた。彼女はラルーと彼女のセラー管理者であるトトと意気投合し、才能のあるテイスターだと見出された1986年以来ルロワのアメリカのインポータをしている。我々は、才能あふれる二世代のひたむきな女性の関係が修復されているという噂があったため、ペリーヌが今夜顔を見せるのではないかと話した。

しかし実際のところペリンヌは姿を見せず、その家屋の広間に沢山飾られている写真の中に見られただけだった(そのほとんどは彼女の亡くなった父であるマルセル・ビーズ(Marcel Bize)が主役だった)。この特別なテイスティングに招かれたのはピエール・トロワグロ(Pierre Troisgros)や私とテーブルが同じだったジョルジュ・デュブッフ(Georges Duboeuf)のような彼女の古いテイスティング仲間に、ワイン・アドヴォケイトのニール・マーティン(Neal Martin)やヴィノス(Vinous)のアントニオ・ガッローニ(Antonio Galloni;元ワイン・アドヴォケイト)、近刊のル・パン・マガジンの香港のジェニー・チョー・リー(Jeannie Cho Lee)、このテイスティングのためだけにニューヨークから飛んできたワイン・スペクテータのブルース・サンダーソン(Bruce Sanderson)などの新しいメディアが加わっていた。フランスのワイン・コメンテーターにはミッシェル・ベタン(Michel Bettane)とティエリー ドゥソーヴ(Thierry Desseauve)が、特別ゲストにはアメリカのワイン・ライター、マット・クレーマー(Matt Kramer)と彼の妻カレン(Karen)が名を連ねた。クレーマー夫妻は1980年に自転車でロマネ・コンティを訪問しラルーと初めてで会ったのだが、ちょうどその日はリチャード・ニクソン大統領がそこを訪れた日でもあった。それからもちろん、日本人とロシアおよびラルーが拠点を置くモナコからの招待客もいた(私は前回のラルーのテイスティングで参加者だったアルベール・モナコ(訳注:モナコ大公)と思われる人物が誰なのかマーティンに質問して大恥をかいた。)

その広間の花で満たされたテーブルに4人ずつ座ると、その後に続くビュッフェスタイルの豪華な食事を横目に見ながら、22種類の1955が5フライトに分けてラルーのチーム・メンバーによって注がれた。そのチームには彼女の畑の責任者として30年目を迎えるジル・AC(Gilles AC (スペルは違うかもしれない))と、彼女の右腕としてこれまたタイミングよく20年目のフレデリック・ロメール(Frédéric Roemer)もいた。

3本のフルボトルが我々24名のテイスターのために開けられた。それは心が痛む量の1955が大きな銅の吐器に吸い込まれていったことを意味する。我々の間をその吐器が行き交い、それよりもやや高い頻度でラルーの黒いプードル、イネスと最高に愛想のいいスパニエル、シルヴァンもうろうろしていた。

彼らが実際そうするよりも早く空いたグラスを回収したいのだろうと考え、私は何の気なしに私に注がれていたニュイ・サン・ジョルジュのポレ(Porrets)、ヴォーヌ・ロマネのスショ(Suchots)、グラン・エシェゾーを一つのグラスに合わせたのだが、その結果もまた完璧なほどに美味しかった。ベテランの三ツ星シェフ、ピエール・トロワグロ(彼の父はニュイが大嫌いだと明言していたが、おそらくあまりに多く偽物に出会ってしまったからだろう)も同意し、このあとのディナーのために1杯とっておきたいと進言した。

結局我々は残ったワインを自由にできることとなり、おかげでテイスティングの後には嬉しいことに1955のクロサンジャックでテリーヌ・アン・クルートを流し込むことができた。

突出したルロワ1955
以下の各ワインはそのアペラシオンを表現する比類ない例であり、その守り手と同様60年経ってもまだ力強い。

Volnay Santenots
Grands Échezeaux
Richebourg
Clos de Vougeot
Le Musigny
Gevrey-Chambertin, Clos St-Jacques
Gevrey-Chambertin, Cazetiers
Ruchottes-Chambertin
Le Chambertin

原文

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