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ピンカンズ

Saturday 21 July 2018 • 5 分で読めます
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この記事のショート・バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。そのフィナンシャル・タイムズはかつてザ・ピンカン(The Pink'un)と呼ばれていた。最近のロゼワインに関する記事のリストはこのガイドを参照のこと。

ロゼワインの復権に伴う偉大な副作用の一つは、今や本格的なロゼワインがそこかしこに存在し、選択の余地が大いにある点だ。そしてその色調にすら大きな幅がある。

白とロゼ、そして赤の間の本当の境界線はどこなのだろう。ワインそれぞれの色は境目のない連続したスペクトルではないか。例えば、ピノグリ(グリージョ)やゲヴュルツトラミネールなどの品種は果皮がピンク色をしており、ワインメーカーがそれをワインと接触させておく時間の長さに依存して、出来上がるワインは明らかな淡いピンク色から、時には非常に深い色あいまで呈することがある。

さらにそのピンクのスペクトラムの反対側では、あらゆる種類のワインが淡い赤、あるいは濃いピンク、と表現されることがある。ジュラの赤、特に地元品種であり色素の薄いプールサールから作られたものはロゼと赤の境界線上にあると言えるだろう。同じことが果皮の色素の濃い品種から作られ、ロゼとして販売されている多くのワインにも言える。赤ワインにも多くのカテゴリーがあり、スペインでクラレテ、ボルドーでクラレットと呼ばれるものはあえて色を薄く、完全な赤ワインよりも軽やかに作られている。それらはロゼではないのだろうか?

私は最近上質な赤や白ワインと同じぐらい、ピンク色をしたワインに注目してきた。そしてもちろん、ロゼワインは全てができるだけ若いうちに飲むべきだということは真実ではない。数年前に経験したバンドールのドメーヌ・タンピエ (和訳)の垂直テイスティングでは、このプロヴァンスのアイコン的なロゼは30年もの長期間熟成が可能だと教えてくれた。リオハでは、最も尊敬を集めるボデガの一つ、ロペス・デ・ヘレディア(López de Heredia)を取り仕切っている女性は、あえてヴィーニャ・トンドニア・グラン・レゼルバ・ロザードを非常に遅くリリースしている。現行ヴィンテージは2000と2008である。

昨年11月ブルゴーニュで経験し最も勉強になったテイスティングは、拡大するディジョン市の郊外と言ってよい場所にあるマルサネにあるシルヴァン・パタイユの、暗く天井の低い洞窟で行ったものだった。この村ではピノ・ノワール主体のロゼが主要な役割を演じていた時代があり、パタイユはその伝統を復活させようと手を尽くしている。彼は2016から2011まで一連のフルール・ド・ピノ(Fleur de Pinot)を抜栓したが、ヴィンテージを遡るごとに興奮は高まっていった。私のテイスティング・ノートにはこれらのうち最も若いワインについて「非常に魅力的で、こちらに向かってウィンクしているようだ」と書いている。2011は瓶内でこれほど長く熟成したため、まるで最も尊敬を集めるムルソーのように、セイバリーな(旨味があり、甘みのない)満足感をもたらしてくれた。果皮との長い接触が功を奏していると言えよう。この奇跡のようなワインに使われているブドウは最も若いものでも第二次大戦中に植えられたものだ。

一方、昨年を通じてテイスティングしたロゼのうち最も楽しめたものを振り返ってみると、それらは伝統的なロゼの故郷であるプロヴァンス、またはロゼへの熱狂にいち早く気づいたラングドック・ルーションのものである。私の同僚でもあるタムリン・カリンはラングドックの生産者に、この初夏に訪問する際にブラインド・テイスティングを開催したいと考えている旨を広めたところ、なんと驚いたことに400ものサンプルが届けられたそうだ。(その結果はLanguedoc rosés in 2018と後日公開されるRoussillon rosés in 2018を参照のこと)

最近お気に入りのラングドックのロゼを二つあげるとすれば、その一つは彼女のテイスティングでもトップに挙げられている生産者、モンペリエの北東、サン・ドレゼリーにあるシャトー・ペッシュ・オー(Château Puech Haut)だ。その2017プレステージ・キュヴェは意匠をこらし、エッチング処理を行い、ガラス栓を使ったボトルと、より一般的なテート・ド・ベリエ(羊の頭の意)の2種類がある。2018以降は全て前者に統一するそうだ。

お気に入りのもう一つはフォジェールで、フレッシュ感と高い酸を伴うシストが特徴的なアペラシオンで、ドメーヌ・デュ・メテオールの深いピンク色をしたボディと個性があふれるレ・カシオペイデ(Les Cassiopéides)はそれをまさに体現していた。ほとんどのバンドール・ロゼ同様、ワインだけを楽しむのではなく、すぐに食べ物が欲しくなるスタイルのワインだ。この小売業者は納得のいくドメーヌ・ド・ラ・リボット(Domaine de la Ribotte)のキュヴェ・アナイス(Cuvée Anaïs)も掘り出している。ただし、きれいなサーモン・ピンクと深みのある魅力的な土っぽさを伴う味わいがやや奇妙な取り合わせに感じられる1本だ。

だが世界のロゼの大半を生み出す古典的な生産地はバンドールのすぐ北、および東にあり、それらのほとんどはコート・ド・プロヴァンスとラベルに記載され、単純なピンク色、しかも非常に淡い灰色がかったピンク色をしている。JCBとデイルズフォードで知られるバンフォード一・ファミリーはまさにこの色あいの一致をイエールから海岸沿いにあるロゼの聖地から生み出されるリウブ(Léoube)のシリーズで実現している。この地はドメーヌ・オット(Domaine Ott)が彼らすべての祖父であると言える場所だ。

もしオットがプロヴァンス・ロゼの祖父であるとしたら、ドラギニャン方面の丘を遥か登ったところにあるシャトー・デスクラン(文頭の写真)のサシャ・リシーヌ(上写真)はピンク色をしたワイン全体を再活性化した立役者であり、どのワインよりも高級なロゼの例をガリュ(Garrus)で確立し、地元品種で今やプロヴァンス中でもてはやされているグルナッシュとサンソーを、とめどなく供給されるウィスパリング・エンジェル・ロゼを通じて黄金に変えた人物だ。そのファースト・ヴィンテージは2006とかなり最近だが、瞬く間に大きな成功を収めたため、それが生産者元詰めされたのは最初で最後となった。最近の記事でアルダーがホワイト・ジンファンデルの成功について述べているが、フランスのロゼも一気にアメリカで人気が高まり、そのブームはウィスパリング・エンジェルによって爆発的に広まった。それが金持ちのアメリカ人の間であまりに人気が高まったため、ハンプトンズの水、あるいはミレニアルのシャンパーニュと呼ばれるようになったほどだ。ついにアメリカで最も大きなフランスワインのブランドとなり、今年は600万本が生産されている。2014ヴィンテージからは元詰めでグルナッシュとヴェルメンティーノ主体のシャトー・デスクランがロック・エンジェルと名称を変えた。私見だが、これは高級品として価値があると言えると思う。ガリュは製品の中では間違いなく最高と言えるものの、85ポンドはどんなにボトルが美しくても、私にとっては冗談のような価格に思えてしまう。

商業的に同じぐらい成功していて、より興味を惹かれるのはシャトー・ミラヴァルだろう。これもまたコート・ド・プロヴァンスのロゼで、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーと関連付けることで誰にも真似できないマーケティングの強みを持っている。南ローヌのペラン・ファミリー(シャトーヌフ・デュ・パプのシャトー・ボーカステル、ラ・ヴィエイユ・フェルムなども所有)がこれほどまでの売り上げにも関わらずこのワインの品質を維持しているが、明らかに他と異なるずんぐりした瓶のおかげで新しいワイナリー(写真下)はこのブランドのためだけに設計しなくてはならなかった。彼らは素晴らしい仕事をしているし、これがまだ5回目のヴィンテージにもかかわらず、販売数量はすでにウィスパリング・エンジェルの半分にまで達している。

何より面白いのは、今や世界中でロゼの生産に惜しみない労力が注がれていることだろう。例えばオーストラリアではありとあらゆる地中海品種でロゼを作ろうとしている。偉大なロザートがイタリアからも出てきているし、スペインでは地元もガルナッチャがロザート生産の重要な一翼を担っている。このようなワインは夏の気温が上がっている昨今、食事と共に楽しむフレッシュで冷えた白ワインの代わりになるワインを求めるようになってきた時代にはさらに人気が出ると考えられる。

本格的なロゼ

Dom du Météore, Les Cassiopéides 2017 Faugères
£11.50 Stone, Vine & Sun

Ch Gassier, Le Pas de Moine 2017 Côtes de Provence, Ste-Victoire
£13.29 Great Western Wine

Le Grand Cros 2017 Côtes de Provence
£13.95 Berry Bros & Rudd

Ch Puech Haut, Prestige or Tête de Bélier 2017 St-Drézéry
£14.25 Le Vignoble of Devon, £14.95 Grand Cru of London

López Heredia, Viña Tondonia 2008 Rioja Gran Reserva
€15.90 El Sumiller of Galicia

Dom de la Ribotte, Cuvée Anaïs 2017 Bandol
£17.50 Stone, Vine & Sun

Chêne Bleu 2016 IGP Vaucluse
£17.59 waitrosecellar.com, £19 Huntsworth Wine

Ch Miraval 2017 Côtes de Provence
£19 Marks & Spencer

Dom Tempier 2016 Bandol
£27.95 Lea & Sandeman

Ch Léoube, Le Secret de Léoube 2017 Côtes de Provence
£29.95 Davys Wine Merchants, The Oxford Wine Co

Dom Sylvain Pataille 2015 Marsannay
€33.50 Grands Bourgognes of Brochon, $49 SommPicks of San Francisco

Ch d'Esclans, Garrus 2016 Côtes de Provence
£85 Jeroboams

原文

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