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変わりゆくブルゴーニュのカレンダー

Saturday 24 October 2020 • 6 分で読めます
Lalou Bize-Leroy in Vosne-Romanée, October 2020

この記事のショート・バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

ほとんどの懐に余裕のあるフランス人にとって、夏の休暇は不可侵な存在だ。JancisRobinson.com の読者の多くはコロナ禍のはるか前から、フランスでオフィスも店舗もレストランもみな、8月いっぱいは毎年閉鎖しているのを目にしてきただろう。

一方、フランスのヴィニュロンたちは現在、通年のスケジュールを見直すべき時に来ている。7月の終盤に、彼らは大手を振って休暇に迎えていたはずだったが、気候変動のおかげで収穫期はどんどん早まっている。今年は特に多くの主要なワイン産地でこれまでになく早い収穫が進んだが、ブルゴーニュも例外ではなかった。ワイン生産者の子供のためにサマー・キャンプを企画した人はいないのだろうか?

ブルゴーニュでは、今年最初の収穫は8月12日で、その月の3週目まで順調に進んだ。収穫はかつて8月末に始まるものだった。ヴォルネイのドメーヌ・ミシェル・ラファルジュはブルゴーニュで最も尊敬を集める生産者の一人だ。通常なら休暇の後に1年を経た2019のワインをセラーに移すのだが、2020はブドウの成熟があまりに早かったため、その前にブドウが到着してしまった。シルヴァン・パタイユは24日に休暇から戻った。そしてブルゴーニュの心臓部であるコート・ドールの北端、マルサネでの収穫を始めるため、醸造設備、収穫機材、そしてチームの人員の準備を4日間で急速に整えなくてはならなかった。

ジュヴレイ・シャンベルタンのマリアンヌとピエールのデュロシェ夫妻はそのデリケートな赤のブルゴーニュが一部で絶大な人気を博しているが、当初休暇をカナダで過ごし、8月21日にフランスへ戻る予定だった。だがコロナウィルスの影響で(カナダ行きの)フライトがキャンセルとなったことで、少なくとも2020年の収穫に深刻な遅れをとることはなかった。

パンデミックは別の意味でも今年を例年にないヴィンテージにした。収穫チームはマスクを装着しソーシャルディスタンスを保たなくてはならず、収穫後のお祭り騒ぎもお預けとなった。ピエール・イヴ・コラン・モレ(万が一のために機械収穫機を数年前に購入したがまだ使ったことはないそうだ)は解雇された多くのレストラン従業員が彼のブドウの収穫を手伝いたがっていると知った。ドメーヌ・ベルナール・デュガ・ピィのロイック・デュガが、最近2019をテイスティングするためにブルゴーニュを訪問した際私に語ったところでは、収穫者たちを親しく招き入れ食事を提供する代わりに、まるで機内食のような弁当を手袋をはめた従業員が畑で配布したのだそうだ。収穫完了時のお祝いは中庭でアペリティフをふるまうだけしかできなかった。

(ようやく12月に休暇が取れる)デュガが指摘したように、長く暑い8月にはこれまでの9月の下旬と異なり、ブドウの成熟がはるかに早く進行するという事実にヴィニュロンたちは慣れる必要がある。ブドウを迅速に収穫することが必要となるためだ。だから彼はたった10ヘクタールの畑の収穫者を通常の30人から60人に倍増した。一方でヴォルネイのギョーム・ダンジェルヴィルはコロナのために収穫チームの人数を半分の20名にし、それでも生産性が半減していないことを知って喜んだ。15ヘクタールの畑を収穫するのに、父の時代は2週間かかっていたのにたった1週間で済んだのだ。

2020年、この上なく乾燥して暑い夏の後、ヴォルネイにあるドメーヌ・マルキ・ダンジェルヴィルの前の「芝生」

ブルゴーニュ人たちがようやくブドウの日焼け問題に慣れてきた暑く乾燥した夏は、それでもまだ、1世代前にはブドウを完熟させることに悩んでいた生産者たちに難題を突き付ける。かつてワイナリーに到着した時点で選別されたブドウは雨で腐ったものだった。だが今、選果台で分ける必要があるのは果汁が少しも含まれていない干からびたブドウだ。午後半ばの時間帯は日焼けのリスクが最も高く、農薬散布の残渣があればそのリスクはさらに高くなる(私が話を聞いた生産者たちはこの農薬は有機栽培用のものだと強調していたが)。

ある生産者は2020年のブドウの品質にいたく興奮しており、彼女によると特別に仕立てを高くして葉の数を極端に増やしたブドウでは全く日焼けが起こらず、この上なく健康だったとのことだ。ヴォーヌ・ロマネにあるラルー・ビーズ・ルロワ(上の写真はヴォーヌにある彼女のダイニングルームで撮影した)は月の影響を考慮したビオデナミ栽培の先駆者で、自身の2020ヴィンテージを「偉大だ」と形容し、2018や2019よりも良いと話した。彼女の2020のアルコール度数は場合によって15%にもなったが、ワインは完璧にバランスが取れているのだと彼女は私に保証した。2019も2020も、私が話を聞いた誰一人として酸の低さに問題を感じていることはなかった。太陽にさらされて水分の抜けた果粒の中で糖と同時に酸も濃縮されたためだろう。

このラルーの突飛な仕立て方は当初嘲笑されもしたが、次第に多くの栽培者たちがこの手法を自分たちの最も価値のある畑に採用するようになったのは驚くことではないだろう。労力と言う意味ではコストがかかる手法で、彼女は22ヘクタールの畑に手を入れるため、12人から24人の間で常勤のスタッフを維持している。それでも、結果は出たということだ。

この夏は暑かっただけでなく、この上なく乾燥していた。あまりに雨が降らなかったのでジュヴレイ・シャンベルタンのドニ・バシュレは乾燥に耐え切れず枯れてしまった古木の数にひどく絶望したという。通常干ばつに最も弱いのは地中深く根を伸ばすことができていない若い樹のはずなのだ。だが今年はバシュレも、ムルソーのジャン・フランソワ・コシュも古木に与える干ばつの影響を目の当たりにした。ヨーロッパ以外の地域と異なり、幼木以外に灌漑を行うことはフランスでは禁止されている。私は率直に、当局に灌漑を求める動きはないのかと尋ねてみたが、彼は「その水はどこで手に入れるんですか?」と即座に返してきた。

醸造作業も9月には終わってしまい、生産者たちは今、予想外に暇な時間を持て余している。コロナの影響で、通常なら忙しい秋のテイスティング・シーズンの来訪者が劇的に減少したのだからなおさらだ。彼らは今、通常なら真冬に行うようなメンテナンス作業を行っている。

おそらく雨の少なかった夏は、私がブルゴーニュ滞在時に多く見かけた建築業者にとっては少なくとも歓迎されているだろう。モレサンドニの小さな村はクロ・デ・ランブレイのベルナール・アルノー、クロ・ド・タールのフランソワ・ピノー、ドメーヌ・デュジャックのセイス家の新たなセラーを建築するための人々でいっぱいだ。ジュヴレイ・シャンベルタンでは、ルソーの真新しいセラーのためのクレーンと、もう一人のフランスの著名な実業家、マルタン・ブイグのドメーヌ・ルブルソーの改築のためのプレハブ小屋で溢れている。アルノー、ピノー、ブイグともに、ファッショナブルでありながら変わりゆくブルゴーニュの買収劇にこの6年でかかわってきた人物だ。彼らが数百万ユーロを投資する際、スタッフたちは気候変動のもたらす変化の可能性を分析しなかったのだろうか?

ジュヴレイ・シャンベルタンにあるドメーヌ・ルブルソーの改築用プレハブ

ジュヴレイにあるルソーの新しいセラーを想像してみよう。

ブルゴーニュのワイン・カレンダー、今と昔

前年度の瓶詰は通常12月から4月の間に行われる


(原文)

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