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ソルデーラ、疑念をものともしない男

2019年2月21日 木曜日 • 6 分で読めます
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この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズに掲載されている。Tuscany April 2018も参照のこと。

自信の表れとはなんだろうか?米、オリーブオイル、サフラン、魚、シャルキュトリー、パルメザンチーズを自分が食事を楽しむ完璧なレストランに持ち込むことである、と言えるかもしれない。

数週間前、私はモンタルチーノの最も才能あるワイン生産者で御年81のジャンフランコ・ソルデーラにトスカーナ南部サンタンジェロ・イン・コッレにあるイル・レッチョへランチに連れて行ってもらうことに心を躍らせていた。もちろん彼が自身の世界的に有名なサンジョヴェーゼであり、地元の生産者組合と仲たがいするまではブルネッロ・ディ・モンタルチーノ・リゼルヴァと名乗っていたワインを持参するのは予想していた。今や彼はそのワインに平然とトスカーナの赤、というだけのラベルを付けて売っている。

私は食事が彼が明らかにお気に入りと思われる泡で始まったことにはそれほど驚かなかった。カーサ・コステ・ピアーネのフリザンテはもちろん、イタリアのワインだ。「フランス人は売ることには長けているが、いい土を持ってないからね。あれじゃあジャガイモを育てた方がましだよ。」とはソルデーラの談だ。

ところがこの非常に評価の高いレストラン(隣のテーブルでは地元のワイン生産者2人がアメリカのワイン・ライターを接待しているところだった)での食事が進むにつれ、驚くことにほとんどのものがソルデーラによって持ち込まれたものだということに気づいた。リゾットに使われているカルナローリ米はヴェネチア共和国時代からコメを栽培している村にあるデ・タッキ家のものだ。サフランはアブルッゾのもの。パルメザンチーズはパルマの近くのお気に入りの生産者のもの。3年熟成のパンチェッタと4年物のコッパは「伝統的に育てられた」250㎏のブタから作られたものだ。ソルデーラ自身が育てる120本のオリーブから取れたオリーブオイルがそれに加わった。さらに辛抱強いウェイトレスによってテーブルに供された、塩で焼いたフサカサゴはジャンフランコが長年に渡り押さえているセネガルの供給元が一本釣りをしたものに目をつけ、パリへ空輸し、ミラノ経由でモンタルチーノに到着したものだった。

彼こそ自分の欲しいものがわかっている男であり、それをどんなことをしても手に入れる人物だ。私はこの上なく透明感が高くありながら非常に長命な彼のワインを尊敬してきたが、彼のカーゼ・バッセはもう数十年訪れていなかった。その間多くの事件が起こったが、特に2012年、不満を抱いていた元従業員が伝統的な巨大な樽の栓を開き、ソルデーラが近隣のどのワインメーカーよりも長く熟成を行っていたワインを6ヴィンテージ分も流失させた事件は印象に深い。犯人は今刑務所にいる。

現在そのワイナリーは重厚な鉄の柵に囲まれている。監視カメラがそこかしこにあり、二か国語で監視中である旨を次げる注意書きがある。このワイナリーに入ったり出たりするためにはこの複雑に絡み合った金属を潜り抜けなくてはならないが、さして驚くべきことではないだろう。ソルデーラのワインは、この事件で数万本に相当するものが失われたが、今でも1本数百ポンドで販売されている。そしてソルデーラはそれら全て、徹底的に保険をかけている。

彼は元々保険仲介人で、フルタイムのその仕事を辞めて畑とチリひとつないセラー(上写真:コンクリートは使わず、ワインを吐くことも許されない)での仕事に注力するようになったのはようやく2003年、彼がミラノから移ってきてサンジョヴェーゼを植えるのに最適な場所を見つけることにしてから30年後のことだった。タヴェルネッレ郊外にある緩やかで南に面した斜面は、彼曰く最も重要である海風の定期的な冷却効果を受ける場所で、霧の高さ(フォグ・ライン)よりは高いがブドウを十分に成熟させられる、標高320mと十分に低い場所こそがモンタルチーノで最高なのだと強調した。とはいえ、彼はいずれにしてもブドウを完全に成熟させるのではないだろうか?

彼ほど毎年これ以上ない緻密な努力でブドウに継続的に向き合っている人物はいないだろう。彼の質素な事務所は書類の山で埋め尽くされているが、ファイルごとに研究構想が収められている。2001年彼がセラーを改築した際には、科学的な調査をする人たちのための宿泊施設をその上に確保したほどだ。貴重なブドウは今や樹齢が45年に達し、さらに30年をも期待されているが、どんな変化も見逃さない地下の水分センサーと地上のカメラによる恩恵を受けている。

私が到着するや否や、彼は地元のエニシダの開花と収穫開始時期(2017年は早く、今年は遅い)の緻密な関係について話し始めた。「植物は我々人間よりもはるかに多くのことを感じるからね。人間なんて馬鹿なんだ。ブドウが自分の思った通り育ってくれると思っている。そうじゃない、ブドウはブドウが思った通りに育つんだ。」英語については彼は辛抱強い娘のモニカに頼っていたが(息子のマウロはミラノで働いており、下の写真で後ろに映っている妻のグラツィエラは彼がブドウに夢中であるように広大な庭園いじりに夢中だ)、彼が言おうとしていることはこの上なく明らかだった。

数日後、同じ地域の別のワイナリーでは、ワインの世界を突き進もうとしている熱意ある若い女性が彼は素晴らしい先生だと話してくれた。彼は自分の知識を若い人たちに分け当たえてくれるのだと。私自身、彼が子供たちのためのチャリティにどれほど熱心かを知っている。非常に収量の少なかった2010は全てマグナムに詰められた。そのうち2本は前回ロンドンで開催したガラ・ディナーでルーム・トゥ・リードのために8万ポンドで落札されている。

事務所で彼は自慢げに写真を見せながら、昨年、最大の危機は雨と腐敗だと直感したので、ブドウに最大限の日光が当たるよう6月にはバングラデシュ人の畑作業者に葉を取り除かせたことを説明してくれた。日焼けは心配ではなかったのかと尋ねると、彼は笑って肩をすくめた。日焼けしたブドウは選果台で選んで捨ててしまうだけだから、と軽く述べただけだった。ソルデーラは完ぺきを追及することで有名で、できの悪い年には、本来6万本を生産できる畑からほんの十分の一程度しかワインを作らないことでも知られている。

ソルデーラは極端な例かもしれないが、品質への狂信的なこだわり(そしてソルデーラのように、気候変動の影響に非常に敏感になること)は今日のワイン生産の世界では珍しいことではない。彼が普通ではない点と言えば、その視野の広さだ。彼はヨーロッパとアメリカ(現在彼はそのワインの五分の一を輸出している)は今後難しい時代に直面するはずだと考えており、アジアでの販売の割合を今の35パーセントから60パーセントに伸ばしたいと考えている。彼は中国での商標保護について警戒していて(訪問の予定はあるものの)、日本や、可能であればインドを好意的に見ている。私が現在インドのワイン業界では高い税金が障害となっているのではと述べると、「それは私のワインには関係ないね。大量市場向けのワインの話だから。」と切り捨てた。

彼自身はコンピュータは使わないが、今後ワインの販売はオンラインが取って代わり、ワインショップは過去のものとなると確信している。「時代の流れは予測しないと。」彼は非常に強く述べた。彼は自分のワインを売る相手は厳しく選び、ワインを投資に使うのではなく飲んでくれる顧客のついている小さな企業を好む。これはボルドーやブルゴーニュのトップ生産者がまさに今やろうとしていることでもある。

フランスの生産者は彼を訪問したことがあるのだろうか。「お断りだね。」彼は断固として言った。「何しろこの30年間、やつらが作ってきたのはただの毒だ。ボルドーとかボルゲリ(トスカーナ沿岸にあるイタリアのカベルネ生産地域)みたいな湿地で偉大なワインが作れるわけがない。ブドウの根が水を求めて8-10メートルぐらい伸びる場所じゃないとだめだ。」

彼が言うにはアペニン山脈はイタリアの地下水がフランスのものより優れていると証明する明らかな理由になっているのだそうだ。この点については彼がボトルを立てて保存するべきだという主張の科学的な根拠が理解できなかったことと同様、私自身には合点がいかなかった。

しかしながら、テイスティングさせてもらった彼のワインはどれもまったくもって独創的で自信にあふれており、少なくとも彼は自分のしていることが明確に見えているのだということは私にもはっきりとわかった。

モンタルチーノのヴィンテージ情報
以下のように大きく異なる生育期を手軽に体験する方法はブルネッロ・ディ・モンタルチーノの弟分とも言えるロッソ・ディ・モンタルチーノだろう。ソルデーラがそんなものを作るとは夢にも思っていなかったが。

2017 - 非常に暑く、難しい、早熟な年で、ソルデーラは8月27日という早い時期から収穫を始めた。

2016 - 生育期の初めが暖かかったうえ難しい夏の訪れが早く、収量に影響が出た。だが収穫期には好天に恵まれ、最終的に遅めの収穫となった。

2015 - 素晴らしいほどに順調な年で生産者はクラシックなワインを生み出した。ソルデーラのカスク・サンプルはこの上なく素晴らしかった。

2014 - 気温が低く嵐の多い夏のせいで通常より軽いスタイルのワインになった。注意深い選択が必須。

2013 - 凝縮感とフレッシュさの組み合わせにこの上なく期待の持てる年。ソルデーラの現行ヴィンテージで、英国ではジャスティリーニ・ブルックス、ワールド・ワイン・コンサルタンツ、ファイン+レアワインで入手可能。

ソルデーラのワインと多くのブルネッロに関するテイスティング・ノートはこちらのデータベース検索で見ることができる。取り扱い業者はWine-Searcher.comを参照のこと。

(原文)

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