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ワイン界のガラスの天井

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この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。

男社会での女性という立場にある者として、その経験がどのようなものか答える言葉は多く持っているつもりだ。物書きとして、どちらかと言えば得したこともあり、例えば多くの男性よりも(名前のおかげもあって)覚えてもらいやすいことや、最初のころはホストや主要なゲストの隣に座らせてもらえたことで、テーブルの反対側に座っている男性たちよりも多くの情報を得られたこともあった。

しかし、私がいつも付け加えるのは、ワインを取引する現場で女性であることはけして容易ではない点だ。他の多くの職業同様、女性が成し遂げた偉業は数多いにも関わらず、トップの座を女性が占めることは非常に少ないと何十年もの間感じてきたのも事実だ。

一方、少なくとも最近になってイギリスでは変化が起きている。イギリス最大のワイン企業、コンヴィヴィアリティ(Conviviality)は2013年から女性(Diana Hunter、写真右)が指揮を取っているし、2番手のエノトリアも経営者は女性だ。3番手のベリー・ブラザーズ・アンド・ラッドのCEOは男性とはいえ、ワイン・バイヤーのトップと、12月からは取締役も女性となる。やや小規模にはなるがアーミットやレイ&ウィーラーはイギリスのワイン業界でガラスの天井を突き破った別の例となるだろう。

しかし、どこでも等しく進化が起こるわけではない。オーストラリアのワイン出版者でありライターでもあるジェーン・トムソン(Jane Thomson)は女性だけによるワイン戦略を積極的に推奨しており、伝統的に男性が主体のワイン業界で模範的な女性を取り上げるためオーストラリア・ウーマン・イン・ワイン・アワード2015を思いついた。(私が1981年に初めてオーストラリアを訪問した際、「女性のワイン・メーカーです」と単数で紹介されたことを記憶しているのがチャペル・ヒルのパム・ダンスフォード(Pam Dunsford)で、オーストラリアの有名なワイン専門のローズワーシー大学では医務室で眠らなければいけないほど特別な存在だった。)

ジェーン・トムソンは今やその賞の対象者として多くの女性候補を抱え、先月ロンドンで3回目となる例年の授賞式を行った際にはこれまでにないほど多くのオーストラリアのワイン・メーカーをオーストラリア・ハウスで目にすることができた。もちろん全員女性だ。

一方で彼女はネット上では手ひどく痛めつけられることもある。サイバースペースは男女平等という意味で最後の未開の地であるようだ。自分の意見を持つ賢い女性は明らかに頭は悪いが何らかの意見を言わずにいられない男性にとって最も狙いやすい標的であると考えられる。このことはまれに参加者が女性だけとなるプロの会合では、議論になりやすい題材ではあるものの好んで取り上げられるように思われる。

この授賞式に出席した翌週、ニューヨークで第6回ウーマン・イン・ワイン・リーダーシップ・シンポジウムで話す機会があったこともあり、先々週の金曜に流したメールマガジンではワイン界の女性に注目した特別な欄を設けた。それに対しこれまでにないほど多くの肯定的かつ体験に基づく反響が男女ほぼ同じ比率で寄せられた。

最初の反応のひとつは伝統的なロンドンのワイン商でありMWでもあるチャールズ・テイラー(Charles Taylor)で、彼はあらゆる職種の募集広告に応募してくる女性は男性よりもはるかに質が高く、現在彼の職場での比率は女性2対男性9であるとのことだ。

意外なところからも賛同の声が舞い込んだ。インド人の注意をIMFL(インドのウィスキー)からワインへ向けようとしている人物や、西オーストラリアで女性醸造家に注目している映画製作者、あるいはカナダのワイン業界で男女平等な社会を満喫したが、「残念ながらアイルランドに移住して以来愛国主義で女性蔑視的な多くの男性がおり、まるで共産時代に戻ったカトリックのように感じています。」という女性からのものもあった。

非常に快活な男性からは「ヴィニュロンからソムリエまで、研究室からジャーナリズムまで、女性は常に私が大好きなワイン界における戦力ですし、それぞれの世界で女性がその適切な地位を獲得することを希望と自信を持って待っています。一方ブラジルの女性によるテイスティング・グループの代表はそれを「一口ずつ」進めるのだと述べた。

先週ウーマン・イン・ワイン・リーダーシップのためにニューヨークに招待された100名のワイン・プロフェッショナルの一団はお互いに対してひときわ支援できであるように感じられたが、好戦的というよりは諦観の境地にあうようにも見えた。招待されたメンバーの内訳はワイン・ライター、小売業者、ソムリエ、大企業の従業員(だがおそらくスポンサーであるインポータのワインボウ(Winebow)の直接的な競合相手は含まれていなかった模様)であり、自分たちの前途に大きな障害物があることを当たり前のように感じているように見えた。

革新と多様性を促すために作られた委員会では、ロサンゼルスから参加した小柄なメキシコ人ソムリエ、マリア・ガルシアが履歴書には非常に重いワイン1ケースに相当する「40ポンドの荷物を運べます」と書かなくてはならないと感じていた頃の気持ちを述べた。(女性を歓迎しない理由の一つとして肉体的な弱さを長く取り上げてきたのは料理のプロも同様だ)

威厳ある認定ソムリエであるチェロン・カーワン(Cheron Cowan)はニューヨークにあるハロルズ・ミート・プラス・スリーで働いているが、若い男性スタッフを指導している際、ゲストに必ず彼女がワイン・ディレクターであることを明言する必要があると話した。そうしないとペアを組んでいる相手より彼女が格下だと自動的に判断されてしまうからだ。

彼女とパネルの同僚であるドロシー・ゲイター(Dorothy Gaiter)は長年ウォールストリートジャーナルの週末版を執筆し非常に有名になった庶民的な夫婦の一人だが、ニューヨークでの業界向けテイスティングで、もはや白人以外の参加者が自分だけではないと知ってどんなに勇気づけられたかを話した。初期のころは「ブラックパーソンズ・ノッド(訳注:黒人が少数の場所で他の黒人と出会ったときに交わす会釈)」を黒人同士で交わしていたことを苦々しい様子で話してくれた。

「ウーマンズ・ノッド(訳注:上述の黒人を女性に置き換えた会釈)」があるかどうかは知らないが、私自身ワイン業界における女性の進出推進にはこれ以上ないほど支持をしている一方、女性によって作られたワインの特殊性について誰かが話すたびに聞こえる不満の声を抑えなくてはならないとも感じている。性別にかかわりなく、我々はワインに対して異なった思考、異なった感覚を持っているが、女性の作るワインが男性の作るものと常に異なるものになる理由はわからない。

しかし、正確性と一貫性を科学的に測定すると、一般的に女性の方が男性よりも優れたテイスターであるという事実が少しずつ認識されるようになってきた点は喜ばしい。このことはおそらく女性の方が舌にある受容体が多い点とも合致するし、私が個人的に長いワイン生活のなかで得た経験でも、そのワインが本当はどんな味わいなのか知りたいとき、女性のパートナーに尋ねるのだと告白する男性が非常に多いのも事実だ。

(原文)

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