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ワイン業界の女性比率は

Monday 8 March 2021 • 5 分で読めます
Almudana Alberca MW celebrates in Vintners' Hall

国際女性デーにちなみ、ワイン関連の様々な活動のうち、比較的算出が容易なデータを用い、女性がどれほど重要な役割を果たしているのか見てみることにした(世界中のワインメーカーの女性比率を調査することは興味深いと思われたものの、それには長期的なプロジェクトが必要となるため断念した)。

ワインの世界に女性が少しずつ進出してきていることには誰もが同意するだろう。かつて女性は、写真の寧夏の畑作業のように裏方で最も賃金の低い仕事にばかり追いやられていた。しかし今ではバイヤー、営業、ソムリエ、技術者、コメンテータ、教育者、ワインメーカー、さらには栽培家が女性であることも特別なことではなくなった。ここイギリスでは今世紀に入り、ずば抜けた才能を持った女性がワイン業界で頭角を現してきた。アメリカではバーバラ・バンケ(Barbara Banke)が多国籍企業であるジャクソン・ファミリー・ワインズを率い、特にサステイナビリティに重きを置いて活躍しているし、ワイン業界のベテランでヴェインテージ・ワイン・エステートの社長でもあるテリー・ウィートレー(Terry Wheatley)は数億ドル規模のワイングループを上場した初の女性になろうとしている。しかし、全体的に見てアメリカのワイン・シーンはまだまだ男性社会だ。

だが先週、リバティ・ワインズのデイヴィッド・グリーヴ(David Gleave)MWがイギリス政府に対し提出したポスト・ブレグジットの官僚制に対する意見書の署名欄を見て、私は愕然とした。

該当の意見書はこちらVI-1 Industry Letter.pdf (359.54 KB)

経営者53名の署名のうち、女性だったのはたった4名(アコーレード・ヨーロッパ、ル・カーヴ・ド・ピレーヌ、マシュー・クラーク、ノース・サウス・ワインズ)だけだったのである。今の時代、特に複数の研究結果によって女性のほうが男性よりも優れたテイスターだとされている時代に、8%に満たないこの比率は嘆かわしいとしか言いようがない。

一方でワインを学ぶ女性の比率ははるかに健康的だ。MWやMSを含む各種教育団体の厚意で経時的な変化を見られるよう2010、2015、2020年のデータを集めることができた。

上の表が各種教育団体でワインを学習中、あるいは卒業した女性の比率で、全体の傾向としては増加していることが見て取れる。女性の比率を示す棒グラフが50%以上に達している数はショッキングピンクの2020年のほうがグレーの2010より多い。グラフ内で数値が表示されていない部分は単純に該当するデータがなかったことを示す。また、2020年のデータ集計が間に合わなかった団体については2019年のデータを用いている場合もある。

世界中に10万人以上の生徒がいるWSETのデータはおそらく概要をつかむうえで最も重要だろう。毎年ロンドンで開催されているWSETディプロマの授与式に私も出席しているが、世界中から参加した卒業生の中で、近年の優秀賞は非常に多くの割合で女性が獲得している点は指摘しておこう。

最も著名な資格であるMWとMSもまた、世界中に展開しているという意味でWSETのグラフのすぐ下に表示している。ただし、MSについてはアメリカとヨーロッパにそれぞれ拠点を置く2つの「CMS(支部)」によって運営されている。毎年認定されるMWとMSの数は少なく、場合によっては一桁のこともあるため、パーセンテージの変化はおのずと大きくなる。たとえば2015年にMSに認定された人はアメリカ支局のみだ。また、MWの数は(上の写真の)スペインのアルムンデナ・アルベルカ(Almudena Alberca)MWを含めて順調に増加しているが、女性のMSはそうとは言えない。その理由の一部はおそらくアメリカのCMSで発覚した恥ずべきセクハラ問題 (和訳)だろう。現在アメリカのCMSを率いる全員が女性の新制CMSが真の意味での変化をもたらしてくれることを願いたい。

上述の資格に占める女性比率のデータに続いて、ヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、日本の順に主要なワイン教育機関の女性比率を示した。最初に本データを公開した当初、オーストラリアのワイン学の権威であるアデレード大学の女性比率を実際より低く算出してしまっていたが、現在は修正したものを掲載している。同様にオーストラリアで主要なワイン学部を有する、ワッガワッガにあるチャールズ・スタート大学のデータも加わった。また、日本の女性がワイン学習に高い興味を持っている点は特筆に値するだろう。(なお、日本ソムリエ協会はプロのソムリエだけで構成されているものではなく、ワインに興味のある人も会員である点は付け加えておく)。

各年の平均値を算出してみると、下記のような概要となった。すなわち、少なくとも女性はワイン学習者の中に占める比率という意味で影響力を増してきていることが示唆される。

また、数値化が可能であるとすれば、女性の各種合格率は男性に比べて高い印象だ。その代表的な例がベルギー第一線のワイン講師であるワイン・ワイズのシビル・トルブレイン(Sybille Troubleyn)の報告で、この10年間で女性がワイン教育に強い興味を持つようになってきたというものだ。だが、現実はもう少し複雑だ。「ベルギーで我々はWSETの全レベルの講座を運営していますが、女性の比率が高いのは低いレベル(レベル1や2)で、高いレベルまで継続するのは男性の方が多いんです。女性はレベル3に参加することにためらいを見せますし、レベル4のディプロマはなおさらです。ベルギーのディプロマ受験生のうち女性はたった三分の一です。もっとも一度受験を決めると、女性の方が成績もよく、早く取得しているのですけれどね。」この点はおそらく、他の人生のあらゆる場面でそうであるように、女性は家族や子供の世話などに時間を取られていることが一因と言えるだろう。

一方、JancisRobinson.com の性別と年齢の分布はどうだろうか。うれしいことに若い世代の方が女性比率が高いことがわかる。未来に希望が持てるというわけだ。

グラフからは25歳から34歳がこのサイトの訪問者のなかで最も大きな比率を占めることがわかるだろう。その中で女性の占める比率が最も高いのである。これはサイトの有料会員ではなく全閲覧者だから、これらの年齢層が多いのは彼らがインターネット世代であることも理由の一つだろう。

パープル・ページの会員についてみてみると、女性比率がゆっくりと増加している点は喜ばしいが、まだまだ20%に達していない。もっとこの比率が増えてくれることを願うばかりだ。このサイトは有名な女性ワインライターの名前が冠してあり、才能ある多くの女性スタッフの力で運営されている。女性のワイン愛好家たちが自然と立ち寄りたくなる場所であるはずなのだから。

原文

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