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避暑ワイン

Saturday 15 July 2023 • 1 分で読めます
Egon Müller and Jancis at Wiesbaden symposium Riesling tasting
エゴン・ミュラーとジャンシス。ヴィスバーデンのシンポジウム、リースリングのテイスティングにて。


真夏に飲むべきワインとは。この記事のショート・バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。上の写真は先日ヴィスバーデンで開催されたMWシンポジウムでエゴン・ミュラーとジャンシスが典型的な夏向けワインを紹介しているところ。写真提供はArne Landwehr。

温暖化によって夏の気温が高くなることは、生産者にとって収穫期が早くなることを意味する。ではワイン消費者にとっての意味はなんだろう。

赤ワインを飲もうと決めている人にとって、気温の高さは大きな壁となる。どんな飲み物も爽やかさをもたらしてくれる要素は持っているが、ワインの温度が20℃を超えると緻密さは失われ、スープのように感じられてしまう。事実、カジュアルなバーやレストランで最も多く見られる失敗は、ワインの保存温度が高すぎたことに由来する。私自身アイスバケツや、ひどい場合には氷を持ってきてくれるよう頼んだ経験も少なくない。

私は夏、あるいは冬でも部屋の気温が高い場合にはいつも、赤ワインを13℃に保っているセラーから出したばかりの温度で提供するか、提供する30分ほど前に冷蔵庫で冷やしてから提供する。

冷蔵倉庫にでも住んでいない限り、ワインはその色に関わらず、グラスに注いだ瞬間から温度が上がり始める。その温度上昇をいかに阻止するか、特に真夏に外でワインを楽しむ場合には非常に重要な問題となる。私は保温機能を備えた、2重構造で中が真空になったボトルホルダーを愛用している。特に透明なタイプは、私がよくやるようにテーブルに複数のボトルを並べる際には(ボトルが見えるので)便利だ。

そもそも、多くの赤ワインには若干温度を下げるメリットがある。特にタンニンが低い、若くて安価な赤ワインや熟成したリオハ、ピノ・ノワールや軽めのブルゴーニュなどがそうだ。柔らかなロワールの赤やボージョレに代表されるガメイ、一部でglou-glou (訳注:フランス語で「ゴクゴク」のような擬音語)と表現される最近流行りのジューシーな赤ワインなども、積極的に冷やして提供するために造られている。

ただし、天然の保存料とも言えるタンニンを豊富に含むワインを冷やす場合には注意が必要だ。冷やすことでタンニンの強さが強調されてしまうからだ。例えば典型的な若いボルドーの赤や北イタリアのカベルネなどは、温度が低すぎると抽出しすぎて冷めた紅茶のように感じられてしまう。ただし、これら品種を使ったワインが南北アメリカ大陸で造られている場合には(この表現はあまりに大雑把な一般化なので注意が必要だが)、ヨーロッパのものに比べて熟した柔らかで優しいタンニンを含むことが多く、アルコール度数も高いため、軽く冷やすことはメリットとなることもある。

アルコール度数の上昇は各地で見られるが、これはブドウの熟度の高さに由来する。もちろん、温暖化に伴う気温上昇の結果だ。アルコール度数の高いワインを味わうと、口の中の後方にアルコールによる熱さを感じてしまうことがある。この場合も、ワインの風味が十分に豊かな場合なら、若干温度を下げてやっても問題はない。

一方で明らかに爽やかな夏の飲み物として設計された、アルコール度数の低い赤ワインや白ワインは、イギリスで徐々に一般的になっている。イギリス政府が8月1日からアルコール度数に応じて税率が変わる複雑なシステムを志向するためであり、これらの人気は発表の前からじわじわと上がっていた。イギリスの倉庫には、8月の税制変更前に現行の税率で保税倉庫から引き出してしまおうと、記録的な量のワインが保存されている。

(イギリスでは)アルコール度数が10%以上のスティルワインへの課税が上がり、10.5%から11%と記載されているものに対する増税はわずかだが、11.5%から14.5%と記載のあるワイン、すなわち現実的にほぼすべてのワインは1本あたり44ペンスの増税となる。一方15%以上のワイン、すなわちポートやシェリー、カリフォルニアの多くや南ローヌのワイン、ブドウの成熟が進んだ年のボルドーのワインは97ペンスもの増税となり、1本あたり3.2ポンドも課税されることになる。そこにもちろん付加価値税(VAT)20%がかかるのだから、秋には大幅な価格上昇がみられることになるのだ。

スパークリング・ワインに対する課税は削減され、シャンパーニュ1本あたり29ペンスの減税となるが、シャンパーニュの価格が大幅に下落するとは考えられない。なおアルコールが8.5%のスパークリング・ワインなら、1.05ポンドの減税となる。

我々イギリス人にとってこれらが意味することは、色やスパークリングの圧によらず、今後は市場に多くの低アルコール飲料の選択肢が増えるだろうということだ。インポーターたちは、生産者にかつてよりもブドウの収穫を早めるよう促し、アルコール度数を低く保つことを推奨することになるかもしれない。これは健康推進派の戦略の一環といえるのかもしれないが、ブドウを樹上に置くことは風味を増すことでもあるのだから、早く摘み過ぎて薄味のワインばかりが生産されることにならないよう願いたい。

ドイツ北部のリースリングほど、香り高くもアルコール度数の低い典型的な夏向けのワインを生み出す品種と産地の組み合わせはないだろう。先月、ヴィスバーデンで開催された第10回マスター・オブ・ワイン・シンポジウムで、私は世界トップクラスのリースリング14種を生産者と共に500名ものワイン愛好家に向けて紹介するという素晴らしい経験をした。会の後、それまでリースリングに持っていたネガティブなイメージを大きく変えられたと私に告げてきた人々がどれほどいたことか。シャンパーニュ、ボランジェのCEOは個人のセラーにリースリングが1本も入っていないことを告白した上で、それを変える強い決意をしたと教えてくれた。

特にプロのテイスターたちの度肝を抜いたのが最初の2本のリースリングだった。どちらもルクセンブルグに近いザール渓谷にある有名なシャルツホフベルガーの畑でエゴン・ミュラーが栽培しているもので、2015のカビネットと2005のアウスレーゼだ。それぞれアルコール度数はたった8.5%と7%。それらにかかるイギリスの関税は来月40ペンス以上下がる計算だ。ただし、彼らの名声の高さ故、それらの価格はそれぞれ1本あたり140ポンドと450ポンドだから、その恩恵は大して感じられないだろう。もう少しお手頃価格なものを下記のお勧めリストに入れておいたので参照してほしい。

これらのようにアルコール度数が低くアロマティックで酸が高い、樽を使っていない白ワインはフレッシュさを感じられる7-10℃程度の低温で提供すべきワインの筆頭だろう。ただ、真夏なら飲み物に冷たさを求めるのは当然だが、全ての白ワインがしっかりと冷えているべきだとは限らない。一般的に力強い白ワインほど、10℃以下で提供するとその魅力は失われる。例えば超フルボディのシャルドネやヴィオニエの場合、最も重要なアロマやフレーバーが抑制されてしまい、支払っただけの対価を得ることができなくなる。上質な白のブルゴーニュ、例えばムルソーや名前にモンラッシェがつくワインなどは熱波の時期に味わうべきものではない。どうしてもシャルドネをというのなら、より冷涼な場所で造られたシャブリや、ソノマコースト、サンタ・リタ・ヒルズなどのものを選べば、ボディも軽やかでフレッシュな高い酸も楽しむことができる。

もしリースリングのようなパワフルなフレーバーが好みじゃないというのなら、ソーヴィニヨン・ブランは酸の高い代替品として好適だし、近年その人気も増している。カリフォルニアのワイン・リストではソーヴィニヨン・ブランがシャルドネを凌駕しつつあることは有名だ。もちろん典型的なソーヴィニヨン・ブランであるサンセールなどはベイ・エリアでは今最も選ばれているワインだが、お隣の発音しづらいプイィ・フュメや、もっと不思議なことに断然お買い得なムヌトゥー・サロンなどはそこまでの人気ではないようだ。

最高品質のニュージーランドや南アフリカのソーヴィニヨン・ブランもまた、真夏にその本領を発揮する。切れのいい柑橘系のアロマはしっかりと冷やしても維持できるし、海の影響で保たれている酸は暑さの中で求められるフレッシュさを与えるのにもってこいだ。これらを選ばない理由はなかろう。

ところでロゼワインを抜きに夏のワインを語ることができるだろうか?答えはもちろんノーだ。典型的な、まるで白ワインのようなプロヴァンスのロゼより、ずっと個性的なお勧めも以下に記載したので参照してほしい。

典型的な夏ワイン

繊細なザールのリースリング

Peter Lauer, Ayler Kupp Stirn Fass 15 Riesling 2020 Saar 9.5%
€29.50 (2021) producer's website

Forstmeister Geltz Zilliken, Saarburger Rausch Riesling Auslese 2009 Saar 7.5%
£52 The Wine Society

Forstmeister Geltz Zilliken, Saarburger Rausch Riesling Auslese 2005 Saar 8%
£52.45 Lay & Wheeler

上質なソーヴィニヨン・ブラン

De Grendel Sauvignon Blanc 2022 Cape Town 13.5%
£11.99 Waitrose

Terrapura, Gran Reserva Sauvignon Blanc 2022 San Antonio 13%
£11.99 Waitrose

Greywacke Sauvignon Blanc 2022 Marlborough 13.5%
From £16.95 Divine Fine Wines, London End Wines, Wine Trust and other independents

Blank Canvas, Holdaway Vineyard Sauvignon Blanc 2022 Marlborough 13%
From £18 London End Wines, VINVM, Vino Gusto, Shelved Wine and other independents

趣のあるロゼ

Ch Ollieux Romanis, Cuvée Classique Rosé 2022 Corbières 12%
£10.95 The Wine Society

Muga, Rosado 2022 Rioja 13.5%
£10.99 Waitrose

Dom de la Ribotte, Cuvée Anaïs Rosé 2022 Bandol 13.5%
£19.50 Stone, Vine & Sun

軽やかで冷やして楽しめる赤ワイン

Rui Roboredo Madeira, Altos da Beira 2021 IGP Terras da Beira 13.5%
£8.75 The Wine Society

Les Vins Aujoux, Artisans 2020 Chénas 13.5%
£12.95 The Wine Society

Clos des Cordeliers, Cuvée Tradition 2019 Saumur-Champigny 13%
£12.95 The Wine Society

Dom Begude, Le Cerisier Pinot Noir 2022 IGP Haute Vallée de l'Aude 13%
£14.50 Stone, Vine & Sun

De Martino, Legado Pinot Noir 2021 Limarí 13%
£15.95 Berry Bros & Rudd

テイスティング・ノートとお勧めの飲み頃、スコアは22万6千本以上のワイン・レビューが見られるデータベースを、各国の取扱業者はWine-Searcher.comを参照のこと。

原文

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