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セレブのためのワイン

2021年6月26日 土曜日 • 5 分で読めます
Sonoma winemaker Jesse Katz

セレブのセラーを潤沢に維持しなくてはならない3人の物語。この記事の別バージョンはフィナンシャル・タイムズにも掲載されている。上の写真はソノマのワインメーカーからスターダムを駆け上がったジェシー・キャッツ。

ワイン・アドバイザーのダグラス・ブライドが初めての大口クライアントから7年前に請け負った最初の仕事は(訳注:女優でモデルの)エリザベス・ハーレイと共にプライベート・ジェットに乗ってファーンバラからペルージャへ飛ぶことだった。「その週の残りの日々もそんなことの連続でした」。彼は最近キングス・クロスにあるヴィノテカで軽いランチを共にした際、そう話してくれた。

そのクライアントとはモスクワ生まれでイギリスの教育を受けたメディア・オーナーで、現在は男爵でもあるエフゲニー・レベデフだった。彼の所有する邸宅にはロンドン郊外のハンプトン・コート・ハウスに18世紀に建てられたスタッド・ハウスや、ウンブリアにある巨大な隣接する2つの建物などがある。ブライドは多くの報道がなされた、ボリス・ジョンソン首相も出席したウンブリアのパーティにも出席した。彼によれば「トニー・ブレアは大げさな意味ではなく、とてもいいゲストでしたよ」とのことだ。

ブライドはレべデフと誕生年が同じで、ワインとしては決して良いヴィンテージとは言えない1980年だが、今でもまじめな学生のような風貌だ。彼は14歳ですでにカクテルづくりに強い興味を持つようになっていたため、ケンブリッジシャーにある自宅のベッドルームには冷蔵庫と保管棚を完備したフル・サービスのバーが設置されていたほどで、それらは今も残されている。彼はその後地元のブドウ畑で働き、マジェスティックへ、そしてあっというまになくなってしまったワイン観光地、ヴィノポリスを経て、そのワインの知識を蓄積した。もちろん、ワイン・アドバイザーやコンサルタントとなるためには、無限のワイン知識は必要ではない。よいコネと、潜在的なクライアントよりも少しだけ多くのワインの知識が必要なだけだ。

ところが、イギリスを拠点とし、主にフットボールの有名選手のワイン・コンサルタントを務めるヴィンセント・ガスニエはその名の後ろにMSがつくことでその知識を証明しただけでなく、フランス訛りとつねにたたえた微笑みを武器にしている。彼はロワール育ちで、ウィンチェスターにあるホテル・デュ・ヴァンで故ジェラール・バッセから薫陶を受け、その才能を開花させた。

オールドウィッチにあるロンドン・ソーホー・ハウスでガスニエに会った時、彼はバッセのことを的確に、国際的なソムリエのコミュニティにおける「私たちすべての偉大な父」と表現した。バッセは臍を噛むような経験を重ね、6度にわたる挑戦の末、2010年ついに世界最優秀ソムリエに輝いた。ガスニエが彼のチームに加わった1996年、バッセはヨーロッパ最優秀ソムリエのコンクールに向け、厳しいブラインド・テイスティングの訓練を行っていたが、その準備を担っていたのがガスニエだった。ガスニエが特に自慢にしていることは、心優しいバッセに、プレゼンテーションをもっと外交的にすべきだと助言したことだ。このことはバッセの自叙伝、テイスティング・ヴィクトリー(レビューはこちら)でも触れられている。そのトレーニングは非常に厳しく、質も高かったため、翌年ガスニエは史上最年少のマスター・ソムリエとなった。

これまた恵まれないヴィンテージである1974年生まれのガスニエは2001年、ソーホー・ハウスの創設者であるニック・ジョーンズによって抜擢されワイン担当となった。だが彼がワイン・コンサルタントとして花開いたのは、サッカーチームのマネージャーで、ホテル・デュ・ヴァンの常連でもあったグレアム・スーネスがヴァンサン・ガスニエ・ワイン・コンサルタンシーに出資するとし、多くのコネクションを与えてくれる前年のことだった。ガスニエのウェブサイトにはスーネスを始め、サッカーのコメンテーターのアラン・シアラーやジェイミー・レドナップ、アナウンサーのカースティ・ヤング(ニック・ジョーンズ夫人)など、錚々たる顔ぶれの推薦文が並んでいる。

「グレアムは本当にたくさんの扉を開いてくれました。」ガスニエは私にそう話した。そして愛想よくこう続けた。「ただ、私はワインへの情熱があまりに強すぎて、最初の頃は金を稼ぐということを忘れていました」。拡大を続けるソーホ・ハウス・グループの勢いはとどまるところを知らず、その需要も同様だった。そこで彼は本当に利益を生み出す人だけにクライアントを絞ることにした。「ソーホー・ハウスは私にとって生活の基盤でした。個人の顧客は本当に面白かったですしね。」先月彼に会った時、彼はモナコで開催された(ワインも、参加者も)オール・スターの壮大なパーティから戻ったばかりだった(億万長者やそのゲスト、そしてスタッフにはロックダウンなど関係がないようだ)。

ガスニエに言わせると、「個人顧客の問題は、間違ったアドバイスを聞き入れ、間違った人を信用してしまうことです。結果として間違ったヴィンテージを抱え込んでしまうか、ワインのことをすっかり忘れてしまうか、開けるべきでないヴィンテージを開けてしまうかなんです。」

彼は自身のクライアントのために、他では見つけることのできないワインを探すことが好きだ。そうすれば30%の手数料は安いものと思ってもらえる。だから彼はWine-Searcher.com を「ある意味敵とみなしています。だから顧客の前ではその存在には触れません」。一方で個人に対する包括的なサービスとして、ワインを配達し、クライアントのセラーに適切に配置し、コンピューターで管理したセラーのリストを更新する作業をすべて請け負っている「彼らからメニューが送られてくると、私は彼らのセラーのワインの中からそれに合うものを提案するんです。そうすることで彼らは自分たちが尊敬に値する人物であるように見せることができますから」。

私の印象では、ガスニエのクライアントは有名どころのワインに集中しがちなのに対し、ブライドの場合はウェーマスの伯爵や伯爵夫人さらには金融界の大物を含む顧客に新たなワインを発掘するよう導いているように思えた。「レベデフですら」彼は続けた。「サンジュリアン(赤のボルドーとしては定番の選択肢だ)で喜んでいた時代から、イギリス・ワインや南アフリカのシュナン、カナダのシャルドネなどに喜びを感じるように導いてきたことを私は誇りに思っています」。別れ際、彼はレベデフから、ボルドーのピション・ラランドの元オーナーがケープで作るグレネリーのレディ・メイを求めるメッセージに目を細めていた。

ブライドのクライアントは数年間手元にワインが届かないプリムールでワインを購入することには興味がないようだ。「彼らは完璧に温度管理をされたセラーにすぐ格納できて、自分が所有しているものを見ることができるワインを好みます。」彼の守備範囲は幅広く、スピリッツや高級なコーヒー、さらには重要なおもてなしの際に必要な上質な花屋からピアニストまでなんでも対応する。

もしあなたが有名人で、アメリカで自分のためだけのワインが欲しいのであれば、ソノマにあるアパーチャー・セラーズのジェシー・キャッツは第一選択となるワインメーカーだろう。彼は著名なワイン写真家アンディ・キャッツの息子でもある。彼が上顧客であるシェップ・ゴードンのために特別にブレンドしたワインは、2017年、セレブ・シェフであるエメリル・ラガッセが企画した慈善オークションでフルボトル1本の市場最高値、35万ドルをたたき出した。彼がオーダーメイドで最初にワインをブレンドしたのは2012年にジャスティン・ティンバーレイクとジェシカ・ビエルの結婚式だったが、彼によれば二人はどんなワインが瓶詰めされるのか、興味津々だったようだ。彼がこの仕事に巡り合ったのは、コロラド育ちだったことが要因で、ジェシカの兄(彼の名もまたジャスティンだ)とスキー仲間だったことが縁だ。

このことはTMZやピープル誌などの興味をひき、当然のことながら裕福で著名な人々からの注文が殺到することになった。その中にはエレン・デジェネレや有名スポーツ選手、例えばデンバー・ブロンコスのボン・ミラーやスケートボード界のエース、トニー・ホークなども含まれていた。最近Zoomでキャッツが話してくれたところによれば、それらワインのオークションでの売り上げは総額で140万ドルに達したそうだ。今のところそれらは主に子供たちのための慈善事業に充てられる。ただし、デジェネレが促進するゴリラの子供のための事業だ。

満たされたセレブのワインが求めるものは慈善的側面と言うことだろうか。

記録的な価格をはじき出したワインたち


以下は慈善オークションのものではなく、定期的に開催される通常のオークションでの価格だ。

750mlのワインでの最高値
Domaine de la Romanée-Conti 1945
ロマネコンティ・グラン・クリュは2018年10月13日、ニューヨークのサザビーズでアジアの収集家に55万8千ドルで売却された。

Ch Lafitte [sic] 1787
ポイヤックは1985年12月5日、ロンドンのクリスティーズで10万5千ポンドで売却され、この記録を何年も維持していた。その記録は破られることなく、それよりも先に強い光の下で展示されている際にコルクが乾燥して瓶内に落ちたことでワインよりも記録のほうが長持ちする結果となった。

アンペリアル(6リットル)のボルドーの最高値
Ch Cheval Blanc 1947
サンテミリオンのプルミエ・グランクリュは2010年11月16日にジュネーヴのクリスティーズで29万8千5百スイスフランで個人収集家に売却された。

マチュザレム(6リットル)のブルゴーニュの最高値
Domaine de la Romanée-Conti 2005
ロマネ・コンティ・グラン・クリュは2020年6月19日、ニューヨークのサザビーズでアジアの個人収集家に29万7千6百ドルで売却された。

プライベート・コレクションの最高値
「トランセンデント・ワインズ」のコレクションは40代の不動産・金融事業を営む男性の所有だったが、2019年3月29,30,31日に香港のサザビーズで総額3千万アメリカドルで売却された。

最近はウイスキーがワインを上回ることもある・・・

マッカラン1926、カスク263は2019年10月24日ロンドンのサザビーズで150万ポンドで売却

日本のウイスキー、山崎55年は2020年8月21日、香港のボンハムスで620万香港ドルで売却

原文

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